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トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニアのフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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第三回「トランシルヴァニアから伝統手芸を広めたい!」Onlineワークショップ

 

フォークロアの宝庫であるトランシルヴァニア地方。


現地では手仕事の担い手が高齢化し、その存続が危ぶまれています。


このコロナ危機の中、お年寄りのおばあさんたちは 


人々との交流の機会も失われている現状ですが、


現地のおばあさんたちを元気にしつつ、 私たちも手仕事のメッセージを受け取り、


お互いを活気づけるプロジェクト。






今回はカロタセグ地方とトロツコー地方の村へ、ご案内いたします。

現地に14年在住の伝統手芸研究家が皆さまとトランシルヴァニアのおばあさんたちとの 

橋渡しをして、皆さまに手仕事の素晴らしさをお伝えます。

こちらの企画も、今回で第三回を迎えることになります。




 


プロジェクトが成立しましたら、

10月に現地のおばあさんたちから 手仕事のレクチャーをしてもらえる

ワークショップを企画いたします。

お忙しい方でもご参加いただけるよう、日にちもいくつかお選びいただけます。

日本にいながらにして、まるでトランシルヴァニアの村々を旅するような

そんな体験をしていただけます。

ワークショップの後にワークショップを編集した映像を、お送りさせていただきます。

たくさんの方々のご応募をお待ちしております。

講習費 2時間2500円 (ご希望の方には、簡易キットとして材料をお届けします。)







・10月1日(土)午後8時~10時 (現地時間午後2時~4時)

第1日 トロツコーのサテンステッチ


・10月2日(日)午後8時~10時 (現地時間午後2時~4時)

第2日 トロツコーの編みクロスステッチ


・10月8日(土)午後8時~10時 (現地時間午後2時~4時)

第3日 カロタセグのイーラーショシュ


・10月9日(日)午後8時~10時 (現地時間午後2時~4時)

第4日 カロタセグのビーズ刺繍






*参加者の方々にはZOOMミーティングをダウンロードしていただき、

それを通じてワークショップを行います。(1回につき100名まで参加可能)

ワークショップ数日前に一度テストをいたします。



*資金の関係上、1つのWSにつき24名以上集まった時点で決行とさせていただきます。

最低募集人数24名さまが集まった時点(またはWS決行がほぼ確定した段階)で

こちらからご入金先のメールをお送りさせていただきます。

それで、お申し込み完了となります。


*材料込みか、ご自身で用意される場合は材料なしをお選びください。

材料の発送は9月半ばごろを予定しております。


*図案はあらかじめメールにてお送りいたしますので、講習日までに布に写してください。


*ご事情により、当日にワークショップに参加することができなかった方には、

ご返金の代わりに、当ショップでのみ使うことのできるクーポン券を配布させていただきますため、

ワークショップ前日までにメールにてご連絡くださいませ。





谷崎 聖子(たにざき せいこ)

伝統刺繍研究家、民俗衣装コレクター。

大阪外国語大学ハンガリー語科卒業後、

ハンガリー政府奨学生として2002~2004年までハンガリーのブダペスト大学フォークロア学科在籍。

2008年にルーマニア、トランシルヴァニアに移住。

現地の伝統刺繍ならびに民俗衣装を収集し、伝統刺繍の担い手を訪ね、研究をしている。

2012年から定期的に日本、台湾で展示会、刺繍のワークショップを主催している。

トランシルヴァニアの村に暮らす女性たちの手仕事を支援すべく、

展示会などで刺繍の作品を販売している。

クチュリエのイーラーショシュ、ビーズ刺繍、アウトライン刺繍など、

手芸キットの開発にも携わっている。

現地で手芸ツアーの企画、案内人としても活動中。

2021年より現地のおばあさんたちと一緒に本場の刺繍の楽しさを伝える、

「トランシルヴァニアから伝統刺繍を広めたい!」と題したオンラインワークショップを企画している。

HP 「森の彼方-Transylvaniaへの扉」 著書 

文化出版局 「トランシルヴァニアの伝統刺繍イーラーショシュ」
   
誠文堂新光社 「カロタセグのきらめく伝統刺繍 受け継がれる、ハンガリー民族のきらびやかな手仕事」

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comments(0)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2022-08-23_13:24|page top

「トランシルヴァニアの手仕事展」とワークショップ

バハールの春日さまから10年ぶりに連絡を頂いたのは、

去年の暮れ頃だった。
ニットの雑誌「毛糸だま」に寄稿の依頼があり、
その際に東京から逗子へと引っ越しをされたとのこと、

そのきっかけになったのが昨年春の横須賀美術館での展示を見に行かれたことだったとの
不思議なご縁を感じた。
それから雑誌の記事のやり取りから、
いつか帰国した際にワークショップをしてほしいとのお誘いも受けた。

パンデミックが起こってから約3年ぶりに、ようやく海外からの渡航の規制が緩和されそうだ。
4月の下旬に航空券を購入して、すぐに春日さまに連絡、
響くような返事がすぐに着て、ワークショップや販売イベントが実現することになった。
しかし5月下旬に突然、フライトがキャンセルされたとの連絡がきた。
瞬時に頭の中が真っ白になり、旅行会社に問い合わせのメールを送りつつ、
それでも心配でそわそわと心が落ち着かず、
航空会社のページで調べている内に日程変更の問い合わせ先を見つけて、
藁をつかむような思いでメールをした。
もしもの時のために航空券を探してみたが、
4月の予約時の2~3倍の値段に跳ね上がっているのに愕然とした。
翌日には航空会社から航空券変更の連絡が届き、
今週中には出発の日が迫っている。

これまでは航空券さえ買えば、簡単に帰国できると思っていた。
ここ数年でさまざまな障害が起こり、
そんな中、遠い故国に帰ることができるという幸運を信じたい。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


トランシルヴァニアの手仕事 ワークショップ


トランシルヴァニア在住の伝統手芸研究家、
谷崎聖子さんをお迎えしてのワークショップを開催します。




7/6(水)10:00~ アーラパタク村の編みクロスステッチ

作るのは、編みクロスステッチのブックマークです。
布を長く用意していますので、ベルトを作ることもできます。



編みクロスステッチは、トランシルヴァニア地方全域でみられるテクニックです。
普通のクロスステッチより手間がかかる分、それだけ赤色が濃く見えるのが特徴です。
ぷっくりしていて、密度がある面白いクロスステッチです。
猫のラベルがかわいいルーマニア製の8番糸、クロスステッチ用の布と針、
刺繍リボン、というキットを谷崎さんが組んでくださいました♪



ベルトを作られる方は、ベルトを結ぶひもを刺繍リボンにしても素敵です。
布は78×10cmくらいで大きめをご用意しています。
何種類かの図案を載せて、見本のようなブックマークにしてもいいですし、
バッグの持ち手にしたり、ベルトにしたりしても素敵です。
谷崎さんは当日までにベルトに仕立てたものを作られるそうですので、
会場でご覧になってくださいね。

お申込みはこちらから。

7/8(金)10:00~ カロタセグのビーズ刺繍

作るのは、ビーズ刺繍の帽子飾り「ボクレータ」です。
ルーマニア、カロタセグ地方に伝わるビーズ刺繍で、
元々は女性から男性へ愛の贈り物として捧げられたものです。
ブローチとして、バッグやTシャツにも。
真夏の太陽の下、いきいきと輝きを増すことでしょう。



現地で使用されている材料を使って体験します。
8×8cmの土台、ヴィンテージ布を使用した裏布、ビーズ刺繍用針、ブローチピン、
各種ビーズがセットになっています。
柄はいくつかご用意しておきますので、会場でお選びいただけます。
花々がかぐわしく咲き乱れ、小鳥たちがさえずる、おとぎ話さながらのイメージで
色とりどりのビーズで平面を埋めていきましょう。

お申込みはこちらから。

7/9(土)10:00~ シク村のアウトライン刺繍
 

作るのは、アウトライン刺繍のポーチです。
トランシルヴァニアのセーク(シク)村に伝わる刺繍です。



まん丸なお花や葉っぱが、ぎっしりと密に固まった、そんな印象を受ける刺繍です。
セークの刺繍は、いかにも田舎らしい、その素朴で可愛らしい感じが特徴です。
太い糸を使うので針目はたっぷりと大きめに、表から一回、針を入れては、 

裏からまた通す・・・ただその繰り返し。
そのため時間がかかるのですが、その分だけ、
その刺繍には 丁寧さ、やさしさがしっかりと縫いこまれるのです。
イーラーショシュと同じ糸を使います。

お申込みはこちらから。

7/10(日)10:00~ カロタセグのイーラーショシュ

作るのは、写真1枚目のイーラーショシュのピンクッション1個、 ブローチ1個です。
ブローチはお好きな図案を会場でお選びください。







トランシルヴァニア西部、カロタセグに伝わる伝統刺繍イーラーショシュ。
その魅力は、赤や黒、青、白による単色のステッチと、
太いコードのようなラインを生かしたヴァリエーション豊かな図案にあります。
イール(描く)という言葉が語源になっているイーラーショシュ。
作り手が自由に図案を描き、刺繍をします。 伸びやかな気持ちでどうぞ。

お申込みはこちらから。

「トランシルヴァニアの手仕事展」
7月6日(水)~10日(日)13:00~18:00 

*7月7日(木)は、谷崎聖子さんの在廊はございません。

トランシルヴァニア在住の伝統手芸研究家、谷崎聖子さんをお迎えして、
トランシルヴァニアの手仕事を堪能できる展示を行います。
手芸キットや材料、現地の方が刺繍したクロスや小物、民族衣装を販売いたします。

こちらにてご住所、アクセスをご確認くださいませ。


comments(0)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2022-06-13_19:27|page top

伝統刺繍研究家 谷崎聖子 7/2(土)刺繍ワークショップ in 広川町

テキスタイルデザイナー綿貫亜希さんとの出会いは、

5年前のトランシルヴァニアだった。
当時フランスで留学されていた彼女は、
ジプシーダンスのキャンプに参加するべくトランシルヴァニアを訪れていた。
アーラパタク村の刺繍のおばあさんのお宅へご案内してから、
ブラショフのジプシーマーケットに行った。
いつかお仕事で関われたらという話をして別れたのだが、
再び連絡を頂いたのは、3年前。
福岡の広川町にあるアトリエでお仕事をされているということ、
そしていつの日か帰国に合わせてワークショップが実現できたらというお誘いだった。
その後パンデミックがやってきて、帰国がいつの日になるか不確かなまま年月が過ぎていった。
この4月にオンラインワークショップが終わった後に
航空券を購入して、すぐに彼女に連絡をした。
伝統の久留米絣の工房を見学させてもらい、
トランシルヴァニアの伝統刺繍をお伝えするという光栄な仕事をさせていただくことを幸せに思っている。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

伝統刺繍研究家 谷崎聖子

7/2(土)刺繍ワークショップ in 広川町



ルーマニアトランシルヴァニア地方の刺繍を研究をする谷崎聖子さんを
伝統織物久留米絣をつくる広川町お迎えし、
刺繍ワークショップを開催します。



 

1.ミニクロスへのイーラーショシュ刺繍

2.ワッフル地エプロンへのスモッキング刺繍 2種類の刺繍をご用意しました。

どちらもトランシルヴァニア地方の伝統図案、地域性をもつ刺繍技法です。

材料、道具はこちらで用意しますので手ぶらで参加できますが、

ご自宅に糸切りハサミ(1と2参加者)、布用ペンシル&定規(2のみ参加者)のある方はぜひご持参下さい。

時間内に刺繍が終わらない場合、ご自宅で続きをして頂きます。

本ワークショップは谷崎さんのミニレクチャーつき。

また現地で収集された伝統刺繍のコレクションもご紹介 いただきます。

一時帰国中の谷崎さんにトランシルヴァニアの刺繍について直接学ぶことができ、

お話しを聞ける貴重な機会です!ぜひ皆さまのご参加をお待ちしています。


日時と料金: 2022年7月2日(土)

1.イーラーショシュ刺繍10:00-12:30 料金4,000円

2.スモッキング刺繍13:00-15:30 料金5,000円

※1,2両方に参加される方は500円引きとなります


場所: Kibiru (福岡県八女郡広川町久泉814-1)駐車場あり

定員:1,2、各回8名 申し込み: 6/23(木)までに
・DM ・電話 080-4660-2423 ・メールcontact@akiwatanuki.com のいづれかへ
ご希望ワークショップ/お名前/居住地域/電話/ メールアドレス をお書き添えの上お申し込み下さい。


企画運営: @bonvoyage_hi @akiwatanuki 綿貫(広川町地域おこし協力隊)

・昼食をご希望の方へは筑後地方の食材を使った広川町のお店「ナチュラルスープ」

のサンドイッチ?ミニスープ・ドリンク・ミニデザートランチセット(1300円)の予約注文も承ります。

詳細はワークショップ予約時にお伝えします。



comments(0)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2022-06-12_18:55|page top

4月のワークショップへ向かって

第二回「トランシルヴァニアから伝統手芸を広めたい!」の募集が始まって、

そろそろ2か月になろうとしている。
1月終わりの時点では、イースターの時期に
もう一度ワークショップを実現させたいという気持ちで一杯だった。
暗い空気を吹き飛ばし、楽しいことに向かってつき進みたいという思いが
新しい行動を決心させた。

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募集開始から1週間ほどで目標金額の半分に達し、
さらに1か月で目標金額に達することができた。
ワークショップ決行できることに喜ぶ半面、
2月終わりにはウクライナ情勢が大きく変わり、
2週間ほどは隣国で起こること、ニュースが気になり、
思うように仕事に集中できなかった。

3月に入っても、氷点下の日が続き、
一向に冬の終わる気配がなかった。
ルーマニアも戦争に巻き込まれるのでは、
核の危機でこちらも避難せざるを得なくなるのでは、
徴兵制が導入されるのかもしれない。
いつこの平穏な日常が崩されるのかもしれないという不安が募る。
たまにプロジェクト援助の知らせが来ても、
素直に喜ぶことができず、
本当にワークショップを決行することができるのかどうか、
不安に思う日が続いていた。

モニター越しに、久しぶりに故郷の母の顔を見た。
3年も会うことができずにいるのに、
寂しいなどと弱音を吐くこともなく、
毎日を生きる力でみなぎっていた。
手仕事を伝え、生きがいにする姿は、
70歳を過ぎてもなお現役で活躍する母の姿から学んだことだだった。

世界中どこにいても、安全かどうかわからない。
先の不安を案じるよりも、今ある平和の恩恵に感謝して毎日を過ごすしかない。

幼稚園や学校では、先生が子供たちに楽しい活動で毎日を過ごさせることに
全力を尽くしてくれている。
子どもたちが社会の不安にさいなまれないように、
当たり前の日常を過ごすことがいかに大切か気が付いた。

不安な時期に書いた、ワークショップの決行、不決行についての知らせにも、
たくさんの参加者の方からご連絡を頂いた。
何よりも私の家族の安全を第一にしてほしいと、
状況を案じる思い、慈しみにあふれる内容ばかりだった。
中には、大きな病気を抱えて毎日な毎日を前向きに過ごすため、
ワークショップに参加される方、
ウクライナ情勢に仕事が左右され、
疲労の毎日の中で時間を割いてくださる方も・・・。

不透明で不安な世の中であればあるほど、
今、私たちが地に足をつけて生きること、
私たち女性にとって大切な仕事であり、
精神的なよりどころであった手仕事の文化を今に伝えることの
大切さを実感している。

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募集終了まであと4日、
ラストスパートを走っている。
トランシルヴァニアの各地をあたかも旅するような気分になれる4日間。
平和への祈りをこめて、いっしょに手仕事をしませんか?

第二回「トランシルヴァニアから伝統手芸を広めたい!」

~ワーク・ショップ日程~

・4月9日(土)午後8時~10時(現地時間午後3時~5時)

カロタセグ地方イーラーショシュ

・4月10日(日)午後8時~10時 (現地時間午後3時~5時) 

シク村アウトライン刺繍

・4月16日(土)午後3~5時 (現地時間午前9時~11時) 

バルツァシャーグ地方スモッキング刺繍

・4月17日(日)午後3時~5時 (現地時間午前9時~11時) 

ジメシュ地方イースターエッグ絵付け


お申し込みはこちらまでお問い合わせメールからでも受け付けています)










comments(0)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2022-03-24_18:30|page top

カロタセグの編みクロスステッチ

フェリシモ社のハンドメイドカタログ、クチュリエ。
イーラーショシュの本が出た年に初めて声をかけていただき、
イーラーショシュ、ビーズ刺繍のボクレータ、
ネット編み刺繍、ビーズの針金細工、アウトライン刺繍・・・。
さまざまな刺繍の企画、見本づくりの仕事をさせていただいた。
一昨年くらいからお話があった新企画「編みクロスステッチ」、
コンセプトを決めて、図案を起こし、
材料を選び、見本づくりとスムーズに進むはずだったのだが、
コロナ禍のために材料がそろわず、
去年の年明けにすでに図案は決定していたのに、
材料が届いたのは8月に入ってからだった。

日本ールーマニア間の国際便EMSや航空便などがストップしたため、
個人の宅配サービスで荷物が届くはずだった。
それが、厳しいルーマニアの税関で止められ、
7,8種類の書類を提出したり、
翻訳事務所や税関へ行かされ、
こちらの申し分には耳も傾けず、事務的なメールしか送ってこない。
宅配サービス会社に腹を立てつつ、時間が過ぎ、
結局、材料の入った小包は日本へ送り返されてしまった。
とうとう日本の会社が宅配サービス会社の日本支店と
やり取りをして、私の手元に届いたのは8月も半ば頃だった。

ちょうど子供たちとの夏休み、
そのあとは9月の日本の日、そして阪急のイベントと
次から次へと押し寄せるイベントの波にもまれ、
なかなか手が付けられずにいた。
手が空いた時には、もう締め切りまで一か月しかなかった。

お姑さんに助力を頂いて、
それでも週1,2個を完成させるペースで、
10個の編みクロスステッチを作らなければならなかった。
図案によっては比較的簡単なものも、
複雑で分量の多いものもあった。
最後の週になって、お姑さんが4つしかできないことが分かり、
その分を引き受け、
荷物発送の前日には夜なべで刺繍をすることもあった。
完成間際になって、図案の間違いに気が付き、
ほとんどを泣く泣く解かなければならないこともあった。

こうして、端の始末と図案の一部をやり残したまま、
不本意な形ではあったけれど、発送することになった作品。
日本で社員さんに最後の作業をしてもらい、
何人もの手でようやく大きなタペストリーが完成した。

こうして完成した作品を見ていると、
涙ながらに解いた苦労の跡もまったく残さず、
整然とすまして撮影されている。


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編みクロスステッチは、かつてトランシルヴァニア一帯に見られた刺繍。
普通のクロスステッチと違い、ひと手間かかる分、
隙間が空かず、色がより鮮やかに、
そして編み目のような立体感が生まれる。
手間がかかることから20世紀に入っては、
ほとんどの地方で廃れてしまった。
ここでは、カロタセグ地方で60~70年代にかけて
リバイバルした編みクロスステッチの図案。
バラやクジャク、花びんなどの19世紀の終わりの都市の流行と
カロタセグの民俗モチーフが融合したスタイル。
白地に赤と緑は、ハンガリーのトリコロール・カラーである。

毎月ひとつずつ図案が届き、10か月で完成させる大作。
同封されたコラム記事では、カロタセグの春の習慣や
トランシルヴァニア各地の編みクロスステッチに触れることができる。
この春の時期に、どうぞカロタセグの編みクロスステッチをお楽しみください。

comments(0)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2022-03-24_17:53|page top

第二回「トランシルヴァニアから伝統手芸を広めたい!」 (Onlineワークショップproject)

昨年の夏に初めての試みである
トランシルヴァニアからオンラインでワークショップが開かれた。
今まで考えてもみなかった形で、
一般の人から直接、支援を受けて、実現させるプロジェクト。
結果、予想以上の参加者、たくさんの支援金が集まった。
その気持ちにこたえるべく、
ワークショップを記録し、
さらに手仕事の背景を伝えるために
おばあさんたちにインタビュー、手仕事でいっぱいの部屋を取材する
特典映像をつけてお届けすることに決めた。

4日間(実際には5日間)のスケジュールは確かにハードだった。
私たちの住むセーケイ地方からカロタセグまで200キロ以上もあるので、
初日のアーラパタク村へ前日に取材に行き、
当日のワークショップを終えてから移動となった。
5時間以上に及ぶ車の運転も私が請け負った。

連日、村につきワークショップの場所を決めて、
おばあさんにインタビューをし、
(これも、カメラマンの助言によるもので、
初対面の時には多くのことを語るという体験からくるものだった)
手仕事のある部屋や村の風景を映像に収めて、
翌日の朝8時からワークショップの準備で本番に臨むというものだった。
こうしてできた映像を見ている内に、
導入部分、ワークショップ部分、インタビューと手仕事の取材部分の
三部構成にしようと思った。

7月末にワークショップが盛況のうちに終わり、
10月までにリターン(返礼品)の手仕事やキットを発送して、
11月にワークショップ映像をお届けする予定だった。

しかし、カメラマンのスケジュールが付かず、
年末は仕事が多忙になるので年明けになってからという話になった。
未知の言語でできた資料、予想以上の仕事の量に、恐れを感じたのかもしれない。
1月は10日まで子供たちの冬休みがつづいたので、
開始もまた遅れてしまったが、実際に打ち合わせをして、
編集プログラムを使って、仕事の様子も見せてもらった。
日本語を理解しないため、言葉の区切りもわからない。
手仕事に関する知識も深くない彼女にとって、
編集作業は私たちが思ったよりも困難な仕事であるらしかった。
それでも、1日目のアーラパタク村がようやく完成に近づいている。

ドラム奏者の弟さんにお願いをして、
この映像のためのテーマ曲のようなものも作ってもらった。
ハンガリーの民謡「息子アンドラーシュが泣く」というバラードだそうだ。
どこか哀し気なメロディーが胸を打つ。
初めて聴いたとき、美しい音色の楽器はツィテラだろうと思ったのだが、
実はツィンバロムという鉄琴のような打楽器とのことだった。










この混沌とした世の中の様子が晴れていく気配がない。
世界情勢も平和から遠のくような動きがみられるばかりである。
今だからこそ、世界のどこかで地に足のついた生活をする人々の息遣い、
そして手仕事の文化をここトランシルヴァニアから広めたい。
そうした思いで、第二弾のワークショップに踏み切った。


第二回「トランシルヴァニアから伝統手芸を広めたい!」(Onlineワークショップproject)

フォークロアの宝庫であるトランシルヴァニア地方。

現地では手仕事の担い手が高齢化し、その存続が危ぶまれています。

このコロナ危機の中、お年寄りのおばあさんたちは

人々との交流の機会も失われている現状ですが、

現地のおばあさんたちを元気にしつつ、

私たちも手仕事のメッセージを受け取り、お互いを活気づけるプロジェクト。

カロタセグ地方、セーケイ地方、シク村、アパーツァ村など、

現地に14年在住の伝統手芸研究家が皆さまとトランシルヴァニアのおばあさんたちとの

橋渡しをして、皆さまに手仕事の素晴らしさを伝えます。


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プロジェクトが成立しましたら、

4月に、現地のおばあさんたちから

手仕事のレクチャーをしてもらえるワークショップを企画いたします。

お忙しい方でもご参加いただけるよう、

時間帯や日にちもいくつかお選びいただけます。

日本にいながらにして、まるでトランシルヴァニアの村々を旅するような

そんな体験をしていただけます。

たくさんのご支援が集まった場合は、後にワークショップを編集して、

映像特典をつけてお送りさせていただきます。

たくさんの方々のご応募をお待ちしております。


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目標金 20万円(4日間)

(おばあちゃんたちへの謝礼、カメラマン謝礼、現地までの交通費、宿泊費、

機材のレンタル費)

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~ワーク・ショップ日程~

・4月9日(土)午後8時~10時(現地時間午後3時~5時)

カロタセグ地方イーラーショシュ

・4月10日(日)午後8時~10時 (現地時間午後3時~5時) 

シク村アウトライン刺繍

・4月16日(土)午後3~5時 (現地時間午前9時~11時) 

バルツァシャーグ地方スモッキング刺繍

・4月17日(日)午後3時~5時 (現地時間午前9時~11時) 

ジメシュ地方イースターエッグ絵付け


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*1つのワークショップにつき2時間、2千円でお申込みいただけます。

*材料はそれぞれ、各自でご準備いただけますようお願いいたします。

簡易キットが、FOLK ART TransylvaniaのHPで販売しております。

*参加者の方々にはZOOMミーティングをダウンロードしていただき、

それを通じてワークショップを行います。(1回につき100名まで参加可能)

ワークショップ数日前に一度テストをいたします。


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谷崎 聖子(たにざき せいこ)

伝統刺繍研究家、民俗衣装コレクター。

大阪外国語大学ハンガリー語科卒業後、

ハンガリー政府奨学生として2002~2004年までハンガリーの

ブダペスト大学フォークロア学科在籍。

2008年にルーマニア、トランシルヴァニアに移住。

現地の伝統刺繍ならびに民俗衣装を収集し、伝統刺繍の担い手を訪ね、研究をしている。

2012年から定期的に日本、台湾で展示会、刺繍のワークショップを主催している。

トランシルヴァニアの村に暮らす女性たちの手仕事を支援すべく、

展示会などで刺繍の作品を販売している。

クチュリエのイーラーショシュ、ビーズ刺繍、アウトライン刺繍など、

手芸キットの開発にも携わっている。

現地で手芸ツアーの企画、案内人としても活動中。

2021年より現地のおばあさんたちと一緒に本場の刺繍の楽しさを伝える、

「トランシルヴァニアから伝統刺繍を広めたい!」と題したオンラインワークショップを企画している。

HP    「森の彼方-Transylvaniaへの扉」 

著書 文化出版局 「トランシルヴァニアの伝統刺繍イーラーショシュ」

   誠文堂新光社 「カロタセグのきらめく伝統刺繍 

           受け継がれる、ハンガリー民族のきらびやかな手仕事」



お申し込みはこちらまで。

comments(1)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2022-02-07_21:52|page top

「毛糸だま」 2022年 春号 vol.193

その雑誌のことを知ったのは、大学生の頃だった。
何気なく、実家にあった雑誌をめくっていると、
ルーマニアのことが書いてあった。
ルーマニアの民俗を追いつづけるライター、写真家のみやこうせい氏と
ケルト美術史を研究する美術史家、鶴岡真弓氏との対談だった。
それから、ちくま書房の「装飾する魂」を読み、
装飾、文様から民族を知るという手法、美しい文章に魅せられ、
当時は卒業論文でアールヌーヴォーにおけるハンガリーの民俗モチーフに
方向性を見出していた私は、すぐに立命館大学に電話をして、
何とか鶴岡真弓とお話させていただき、ゼミや授業に参加させていただいたり、
卒論におけるご指導を賜ったりした。

みやこうせい氏はそれより前に、
「ルーマニアの赤い薔薇」という写真集を大学の図書館で見出して、
トランシルヴァニアを実際に訪れた後だったので、
かの地に焦がれる思いを、氏の文章と写真にてさらに掻き立てられるような気がした。
当時はあの赤い薔薇の衣装を見たいと思い、
やがて20年後に、この地とこれだけ交流を持つことになるとは
当時は思いもよらなかった。
そして、一昨年に武蔵野市でイベントをさせていただいたときに、
写真家の方が氏をご紹介くださり、
実際にお電話で何度かお話させていただいた。
シク村からセーケイ地方の家へ帰ってきたとき、
刊行されたばかりのみやこうせい氏の写真集が我が家に届いていたのは、驚きだった。
表紙にはカロタセグとシク村の衣装が大きくクローズアップされていた。

昨年の秋に、以前、展示会でお知り合いになった
編集者でいらっしゃる春日一枝氏からご連絡があり、
雑誌「毛糸だま」の世界手芸紀行というシリーズとして
ルーマニアを特集したいこと、
民俗衣装のエプロンとボンネットについて記事を書いてほしいとの依頼があった。

こうして不思議な縁につながれた「毛糸だま」に記事を書き、
本日発売されることとなった。
今から手に取ることができるのを楽しみでならない。

こちらからお求めいただけます。

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comments(0)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2022-02-07_17:39|page top

本当の冬

トランシルヴァニアに遅い冬が訪れたのは、12月の半ば近くだった。
まるで堰を切ったように、ねずみ色の空から後から後から白い雪が舞い、踊り狂うようにして
大地はまたたく間に真っ白く塗り替えられた。
雪が解け、また降りしているうちにクリスマスが近づいていった。

クリスマスイブの前日、町じゅうの人が祝日前の準備で明け暮れている中を、
子どもたちを連れて、町はずれに繰り出した。
体はすっぽりと分厚いスキーウェアで覆い、
塵取りの形をしたプラスティックのそりと巨大なビニール袋だけをもって。
町の墓地の裏手に広がる谷間は、大切な宝物であり、いつしか私たちの庭となっていた。

トランシルヴァニアに住みはじめた頃、
13年前はまだ冬の過ごし方がわからなかった。
短い日照時間と寒さのため、閉じこもりがちになり、
雪ですら疎ましく、いつになったら冬が明けるのかと明るい夏と太陽が待ち遠しくて仕方なかった。

長い年月と友人たちと過ごした時間が、
陰鬱な冬の時期を楽しみに変えてくれた。
温暖化が進んだ今となっては
ことさら本当の冬が、雪が積もるのが楽しみとなっている。

息の詰まる高層住宅から離れ、
目の前に大自然が広がるとき、初めて自分が自由であることを感じる。
真っ白な雪が丘と谷間をより鮮やかに、地上で最も美しい場所のひとつに変えていた。
そり遊びをする子どもはどこにも見られない。
墓地の裏手の坂道を走ってくだり、小川の上の橋を渡って、向こう側の丘に登っていく。
いつもと同じ散歩コースなのに、季節それぞれの表情があるので、飽きることはない。

いくつかそりの跡が残る丘からコースを選んで、
平らなプラスティックの板の上に腰をのせ、丘をすべりおりると、
まるで初めてする遊びのように子供たちの笑い声がはじける。
ビニール袋も負けじと滑るものの、でこぼこの大地を直にお尻に感じるので多少は痛い。
1時間ほど滑ったころ、向こうの丘に太陽が沈みはじめた。

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厚い毛糸の手袋をした手もかじかみ、
太陽の光が傾くと、とたんに寒さが増していくのが感じられた。
まだ遊び足りない子供たちを、やっとのことで連れ出し、家路についた。

クリスマスイブには、雪は幻のようにすっかりと溶けていた。
夜、クリスマス劇などを楽しみ、
教会から帰る途中で小雨が降った。
長男は、最近仲良くなったルーマニア人の少年グループが
コリンダというクリスマス・キャロルを歌うのに、
伴奏をギターで弾くため駆り出されて不在だった。
旦那も、夜勤の仕事で不在。

子供が寝静まった後、ツリーをベランダから出して、
ただ一人で飾り付け、プレゼントをそろえて木の下においている内に12時が過ぎた。
やがて1時すぎに長男が帰宅して、やっと一日の疲れをいやすことができた。

クリスマスイブから新年までの間の穏やかな時期、
昔は村ではたくさん冬の行事でにぎわっていた。
トゥルクと呼ばれる、美しい布を重ねて作ったヤギをもち、
羊の革を着た少年たちがコリンダを歌い、家から家へと尋ねまわる習慣。
ボリツァという、ブーツに鈴をつけ、手に木の棒をもって踊る少年たちのお祭り。
熊の革をきた人たち、白い衣装を着てホイッスルを吹き踊り狂うモルドヴァ地方の祭り。

人々が、味気ない日常を、
興奮と喜びで満ちた祝日へと変えていった伝統行事も、
この数年で存続が危ぶまれていっている。
まだ見られるうちに、見てみたいと願う想いとは裏腹に
家族の事情で今年はどれも見送らざるを得なかった。
こうして、2022年が静かに明けた。

どうか今年は本当の自由が戻ってきますように、
人々の生活が喜びで満ちたものになりますように。
そして、何よりも家族が健康で穏やかに過ごせますように願いを込めて、
新年あけましておめでとうございます。

comments(0)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2022-01-06_19:42|page top

刺繍の達人おばあちゃんたち

7月下旬にトランシルヴァニアからワークショップをお届けする

支援型プロジェクトは、新しい可能性を示してくれた。

5月28日に募集を開始して、5日後には目標金額に達することができた。

私自身も信じられないほどの反響に驚いている。

応援してくださる方々の気持ちが後押しをしてくれ、

これまでにないあり方のワークショップを実現することができそうだ。


まずはじめに、おばあさんたちに連絡を取り、

この良き知らせを伝えることに決めた。

私はふだん電話でのコミュニケーションが得意でない。

特に用事がないときに、人を呼びだし、

何となしの会話をするのが苦手だ。

しかし今回は大切な報告があるので、心は弾み、ボタンを押した。

はじめに、ビーズ刺繍のエルジおばあさんを呼んでみたが、出ない。

次に、シク村のエルジおばさんの番号を押し、懐かしい声が飛び込んできた。

ちょうど今、娘さんの住む町から帰ってきたところで、

片足の痛みのためにマッサージに通っていることを話した。

「いつ家に帰ってくるの?」おばさんは尋ねる。

シク村に古い家をもつ私にとっては、もう一つの故郷である。

それなのに、200kmの距離は遠く、なかなか帰ることができないでいる。

我が家の庭にも草がぼうぼうに茂っていることなども聞き、

古いが美しい家に対して、何とも申し訳ない気持ちでいっぱいになる。

そして、ワークショップの話をもう一度詳しく聞かせると、

「ええ、いつでもいらっしゃい。待っているわ。」と

いつも包み込むようなエルジおばさんの声が耳に残る。


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イーラーショシュの図案描きアンナおばさんの電話は、電源が切れている。

普段はよく電話に出ることのないアーラパタク村のピロシュカおばあさんが、

珍しく電話を取ってくれた。

調子を聞くと、あまり良くないと答える。

それもそのはず、6月初めなのに寒波がやってきて、

連日雨ばかりで肌寒い日が続いている。

「私はやることがなかったり、閉じこもって人に会わないでいるとき、

調子も悪くなるのよ。」

80代半ばでひとり暮らしのおばあさんは、

ここ数年で目に見えてやせてきて、私も心配している。

もしかしたら当日、体調不良になってしまう可能性もないわけではない。

他にも、刺繍ができる人を迎えようと提案をすると、

「大丈夫、私一人でできるわ。

忘れたの?あなたにだって教えたじゃない。」と強気な返事が返ってくる。

おばあちゃんの声がだんだん力強さを帯びてくるのを感じ、

安心して電話を切った。


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しばらくして、エルジおばあさんから呼び出しがきた。

いつもなら、おばあさんから暇なときに電話をかけてきてくれる。

「今ちょっと仕事があってね。」と前置きをしてから、

「ね、今どんな仕事に取り掛かっているか分かる?」といらずらっぽい口調で尋ねるので、

こちらが興味を持つと、

「我が家にお風呂場を作っているのよ!」と重大ニュースを打ち明けた。

伝統的な村の住まいには、風呂場はなかった。

昔はどこの家庭でも、たらいで体を洗うのが普通だった。

「まさか70過ぎてから、こんな大掛かりなことをするなんて夢にも思わなかったわ。」

ひとり息子のバンディはもちろん手伝わないし、

働き手を雇って工事をしているという。

ワークショップのことを話すと、

「私がそれまで元気だったら、もちろん手伝うわ。」と張りのある明るい口調で答えた。


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何度かけても、アンナおばさんの電話につながらない。

クルージの町に住む娘さんに尋ねてみると、夜なら出るだろうとのこと。

ちょうど自宅でお風呂に入っているときに、電話をもつ旦那の手がのびてきた。

アンナおばさんからだった。

ペトリ村は、ほとんどが未亡人のおばあさんたちでなる小さな村だ。

70歳のアンナおばさんはそれでも若い方で、教会のオルガンも弾き、

皆に頼られるしっかり者だ。

何よりも、イーラーショシュの図案を創造性豊かに描く、芸術家でもある。

5年ほど前からパーキンソン病を患い、

健康の状態も年々衰えていっているのが分かる。

ワークショップのことを話すと、「いいわ。」としっかりした答えが返ってきた。

数年前に、雪の積もる中、文化服装学園の社会人講座の受講生の方々といっしょに村を訪ね、

村のおばあさんたちと刺繍で交流をしたことが忘れられない。

女性特有の活気と、共通の趣味でつながる想いは、

時に言葉の不自由さも乗り越え、心と心でつながる時がある。

あの奇跡のような時間を、もう一度と心の中で思い描いてきた。


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私たちを隔てる距離は大きいが、刺繍を通じて見えない手でつながっている。

その手がさらに一人、もう一人と繋がっていき、

ひとつのものを作り上げることができたらどんなに素敵だろう。

今ここでできること、

ここから発信できること。

その力を信じ、ワークショップを成功させたい。


トランシルヴァニアから伝統手芸を広めたい!
(Onlineワークショップproject)
現在も支援者を受け付けています。

comments(0)|trackback(0)|その他|2021-06-03_21:32|page top

トランシルヴァニアから伝統手芸を広めたい!

トランシルヴァニアから伝統手芸を広めたい!(OnlineワークショップProject)

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フォークロアの宝庫であるトランシルヴァニア地方。

現地では手仕事の担い手が高齢化し、その存続が危ぶまれています。

このコロナ危機の中、お年寄りのおばあさんたちは

人々との交流の機会も失われている現状ですが、

現地のおばあさんたちを元気にしつつ、

私たちも手仕事のメッセージを受け取り、お互いを活気づけるプロジェクト。

カロタセグ地方、シク村、アーラパタク村など、

現地に13年在住の伝統手芸研究家が皆さまとトランシルヴァニアのおばあさんたちとの

橋渡しをして、皆さまに手仕事の素晴らしさを伝えます。


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プロジェクトが成立しましたら、

7月に、現地のおばあさんたちから

手仕事のレクチャーをしてもらえるワークショップを企画いたします。

お忙しい方でもご参加いただけるよう、

時間帯や日にちもいくつかお選びいただけます。

(ワークショップ不参加の方には、刺繍の品々やキットなどのリターンをたくさん準備しております。)

日本にいながらにして、まるでトランシルヴァニアの村々を旅するような

そんな体験をしていただけます。

たくさんの方々のご応募をお待ちしております。


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目標金額10万円

(おばあちゃんたちへの謝礼、カメラマン謝礼、現地までの交通費、宿泊費、

ビデオカメラ、マイク)


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ワーク・ショップ日程

7月22日(木・祝)午後3時~5時(現地時間午前9時~11時)

アーラパタク村編みクロスステッチ刺繍

7月23日(金・祝)午後3時~5時 (現地時間午前9時~11時) 

カロタセグ地方ビーズ刺繍 

7月24日(土)午後3時~5時 (現地時間午前9時~11時) 

カロタセグ地方イーラーショシュ  

7月25日(日)午後3時~5時 (現地時間午前9時~11時) 

シク村アウトライン刺繍 


1つのワークショップにつき、2千円でお申込みいただけます。

(45分+休憩15分+45分+質問等15分)


*材料はそれぞれ、各自でご準備いただけますようお願いいたします。

FOLK ART TransylvaniaのHPでも販売しております。


*参加者の方々にはZOOMミーティングをダウンロードしていただき、

それを通じてワークショップを行います。(1回につき100名まで参加可能)

ワークショップ数日前に一度テストをいたします。


*お申し込みはこちらから

(7/17日で募集終了となります。

(たくさんの方に知っていただくため、ご賛同頂ける方には拡散をお願いいたします。)



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comments(0)|trackback(0)|イベント|2021-05-28_17:14|page top

「糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。」

イディッフの柴田さんと知り合ったのは、

3年以上も前のことだ。

梅田の催事で、チェコの文化を紹介するブースを持っていた彼女が、

いずれ刺繍の展示を企画したいと話を持ち掛けてくださった。


2年前の秋には、トランシルヴァニアに下見に来られた彼女をご案内した。

和装姿の柴田さんをお連れして、

ブラショフの民俗博物館、サチェレの民俗博物館や村の織り工場、

そしてセーケイ民族博物館を一通り見て回った後、

我が家のコレクションをお見せした。

最後には、アーラパタク村のおばあさん宅で実際に村の刺繍を見て頂いてからお別れした。


その間にパンデミックが到来し、

この企画も立ち消えになったと思い、諦めていた頃、

昨年の秋の終わりに連絡がきた。


こうして展示品のリストの作成、

展示品の解説や目録の記事の執筆、

現地の写真家を探し、展示品の写真撮影、展示品の発送など。

この数か月は、この仕事でかかりきりになった。


気が付くと4月、

企画展の告知もはじまり、

やっと展示会が近づくという実感がわいてきた。

残念なことに、私は自分の目で展示を見ることができないが、

刺しゅうを愛する人々に、

トランシルヴァニアの衣装と刺繍の美しさを十分に堪能してほしい。





横須賀美術館の企画展「糸で描く物語 刺繍と、絵と、ファッションと。」が


4月24日(土)~6月27日(日)まで開催されます。



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ショップオーナー所有のトランシルヴァニアの伝統衣装と刺繍が30点展示されますので、


ぜひこの機会にご覧くださいませ。


期間中はキットや刺繍作品など、ミュージアムショップでお買い物もできます。


ファッションプレス誌からの紹介はこちら


横須賀美術館HP

横須賀美術館FBページ(展示場の様子がご覧いただけます。)





comments(0)|trackback(0)|イベント|2021-04-01_16:41|page top

リアの声

それは去年の春の日だった。
外出禁止令が発令され、
私たちの生活が見えない紐で縛られるようになってくるのを
感じ始めていたとき、電話が鳴った。
「もしもし、セイコ!」
第一アクセントが強く発せられるハンガリー語に対し、
ルーマニア語では真ん中が強くなる。
それが数少ないルーマニア人の友人リアであることが、すぐにわかった。
電話番号が変わったのか、音信不通となり、
久しぶりにかかって来た電話だった。

「私は病気なんだけれど、
うちに注射に来てくれる近所の看護師さんがハンガリー人で、
久しぶりにハンガリー語で話したところよ。」
と彼女は楽しそうに話す。
トランシルヴァニア地方でルーマニア人とハンガリー人の確執があるのは事実だが、
もちろんそれは人によって違うし、
何よりトランシルヴァ二ア人はそんな偏見を持たないのが普通だと思う。
彼女は、クルージュ県トルダの近くの村出身で、
小さいころからルーマニア語、ハンガリー語が聞こえてくる環境にあったという。
変なプライドは持たず、ハンガリー人には進んでハンガリー語を話すし、
彼女は自分がもう一つの言語を持つことに誇りを持っているように感じる。

今から21年前の大学生時代に、
単身でトランシルヴァニアにやって来た私が
彼女の娘デリアとルームメイトになったのは幸運なことだった。
北部の町ビストリツァで生まれ育ったデリアは、ハンガリー語はできなかった。
高校生で英国留学をしたので、流ちょうな英語を話した。

ある日、娘に会いにやって来た母親がはじめて対面するなり、
「私はあなたのルーマニアの母親よ!」と迎えてくれたのだった。
同じ年ごろのデリアより、
不思議と母のリアの方が親しくなっていた。
無邪気で屈託のない彼女は、
時にまるで子供のような態度でデリアに叱られていた。
「気をつけないと、先生に怒られるから。」といたずらそうに
娘の顔をうかがっていたものだった。

彼女たちが信仰するバプティスト派の教会にも呼ばれていったことがあった。
お説教も、ミサの雰囲気もひとつも心に響くものはなかったのだが、
リアの手をとって祈るときだけ、
彼女の心の中に神が感じられるようだった。

彼女は愛を実行することのできる人だった。
見知らぬ人でも困っている人なら誰にでも救いの手を差し伸べた。
ある日、ハンガリー人の年寄りの女性が一人暮らしで困っているからと誘われて、
一緒に高層アパートの最上階へ訪ねたこともあった。
リアもそれほど深く知っているわけでないらしかったが、
構わず食べ物を差し入れ、一人で孤独な女性の話相手になっているようだった。

10年前に一度、彼女に出会うことができた。
クリスマス前のある日、クルージュの町の喫茶店で、
彼女は魔法のような手料理(持ち込み)で私たちをもてなしてくれた。
その時に、乳がんの手術をしたことを話した。

娘のデリアは、大学を卒業して以降ずっとイタリアで働いている。
彼女とFBで繋がり、母親の様子を尋ねてみたのだが、
「毎日、生きていることが奇跡。神に感謝している。」という漠然とした答えしかなかった。
恐らく、病気が再発をしたに違いない。
暗い予感の中で、彼女の明るい声の調子だけが心を軽くしてくれた。
それから、何度か電話を試みてみたことがあったと記憶している。
いつでも電話をとれる状況でなかったのかもしれない。

3月10日、彼女の誕生日というリマインダーが来た。
彼女のページに誕生日を祝うメッセージを残したが、
デリアに「もし調子が良ければ、電話をしたい」という旨を伝えた。
数日後、返事が来て、
「調子はまあまあ。それでもあなたからの電話は嬉しいだろうから、試しにやってみて。」
という言葉に励まされ、彼女のダイヤルを打った。
しばらく待って、電話口に出たのは男性の声だった。
拙いルーマニア語で、自分だと伝えると、
彼女に電話に出られるかと確かめてから、受話器を彼女に渡した。

彼女の声は小さかった。
「セイコ、病気だから、あまり長くは話せないかもしれない。」
といいながら、咳をしていた。
「誕生日だから、電話をかけようと思ったの。
すぐにでも飛んでいきたいけれど、今の状態ではとても・・。」と私は弁解した。
「COVIDね。」と彼女。
「ちいさな孫の写真を見せたいから、送るわ。What's UPは持っている?」
「ええ、息子が先日ダウンロードしてくれたから、探すわ。」
今のひと時を噛みしめるようにゆっくりと話した。
「今は歩けないけれど、
神様が助けてくれて、元気になったら、また会いましょうね。」
「ええ、必ず。」と私は声の調子を強くした。
「私の電話で出られなかったら、主人の番号を鳴らしてちょうだい。」
彼女の話すルーマニア語の番号を集中して書き取った。
咳をする彼女に、
「病気なの?」と自分でも子供らしいと思いながら尋ねると、
「ええ・・。でもそんなに悪くないわ。」と少し余裕を感じさせる軽い口調で言った。
「神様のご加護を。」
「神様のご加護を。」と言って別れた。

すぐに慣れないスマートフォンをいじって、
彼女の連絡先を検索したのだが、出てこない。
リストにも名前がなかった。
どうしたのだろうと思っていたら、
デリアが私を探し出してくれ、彼女のアドレスを教えてくれたのだった。

デリアの送ってくれた写真。
白髪のリアが、ベッドで手を振ったり、明るくふるまっている写真から、
天使のような赤ちゃんを膝に抱く、車いすの姿、
やがて、ベッドの上で半年くらいの動き盛りのお孫さんを抱く姿など。
この半年くらいの間で、みるみるうちに痩せて年を取っていく
彼女の様子が克明に記録されていた。
それでも、病人の姿は哀れをそそるものではなく、
彼女の内面から発せられる明るさで満ちていた。

彼女のコンタクト先を見ると、
2,3週間前から誰かが写真付きのメッセージを立て続けに送ってきて、
閉口していたのだが、その相手だった。
色とりどりの花束に詩が載せられたものを長女が眺めながら、
私の携帯の待ち受け場面に設定していた。
彼女が前から、サインを送っていたのに気づかずにいた・・。

私が彼女にしてあげられることはないだろうか、と思いめぐらせていたら、
ふと、思いついた。
この週末に、シク村の家でガスを引く手続きをしに行こうと思っていた。
それでは、いっそ、北上してビストリツァに寄ってはどうか。
彼女に会えなくても、ご主人を呼び出して、
誕生祝いに花束を届けることならできるかもしれない。
運がよければ、窓から私たちの姿も見えるかもしれない。
そう決めて、デリアにその旨を伝えると彼女も喜んでくれた。

やがて、リアから録音メッセージが届いた。
「ハロー、セイコ。セイコ・・・。」
私はそれを聞くとほっと安心して、
後でメッセージを送ろうと思い、携帯を閉じた。

もうひとつ、プレゼントを思いついた。
それを英語に訳してみよう。
デリアならルーマニア語に訳して、彼女に届けることができるだろう。
その日の午後をかかりっきりで、
辞書を引き引き、何とか訳し終えた。
「これは、あなたたちへのプレゼント。」とデリアに送った。
「あなたは、私たち家族にとって特別の存在よ。」とデリア。
「私にとってもよ。あなたたちが私のトランシルヴァニアへの扉だったの。」
素敵な家族に迎えられ、孤独だった私はひと時の安息の場を得た。
そして、のびのびと留学時代の半年を過ごし、
それが私の一生を大きく変えることになったのだ。

その翌日、カロタセグから友人一家が訪ねてきて、
共通の友人宅で会うことになっていた。
楽しい再会にお昼までごちそうになってから、
午後は出発のための準備をして、お菓子を焼いたり、
食事の準備をしたりで忙しかった。
やっと、食べ物の準備ができたと気が抜けたとき、
携帯の着信がなった。
ルーマニア語で何か書いてある。
旦那に頼んで読んでもらった。
「ママが、今日の午後亡くなった。」

ああ、リアのことだった。
しばらく、脱力感で呆然とベッドに座っていたのだが、
やがて、自分の無力さとこの10年という時間が悔やまれて仕方なく、
とめどもなく涙があふれてきた。
あの時、彼女は最後の力を振り絞って、私と話したのではないか。
訪ねようと思えば、彼女の元へ行けたのではなかったのか。
無為に過ごしたあの時期に、彼女のために何かしてあげることはなかったか。
後悔がとめどもなく、押し寄せる。
次男が心配そうに私を見つめ、
「元気になって。僕、いい子になるから。」と慰めてくれる。

明け方、長男が原因不明の腹痛を訴えていたが、
夜にまた痛みが出てきた。
旦那が救急病院へと連れていく。
盲腸になる一歩手前とのことで、痛み止めでもし治らなければ
手術が必要だということだった。
こうして、私たちの遠出の予定は引き伸ばしとなった。

会いに行く予定だった日曜の朝、
ベッドの中でデリアに返事を書く。
「彼女は遠くへ行ってしまった。
やさしい両親と天国で会えますように。
彼女は病気で苦しんでいるときでも、
私をはじめ他人に優しさを届けてくれた。
彼女のことが、ただ恋しい。」
「彼女はあなたの声が聴けて幸せだったわ、そして次の日のメッセージも。
今はきっと天国にいて、神様の威光の元で永遠を楽しんでいるに違いないわ。」
彼女からの返事にほっとした。

火曜日の昼に、リアとの告別式がある。
10年ぶりの再会がこんな形でやってくるのはやるせないが、
彼女との別れのためにビストリツァへ。

comments(0)|trackback(0)|その他|2021-03-15_23:17|page top