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トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ブログ翻訳

シク村チプケ地区の結婚式

結婚式の当日は、あたかも天からの祝福のように
抜けるように真っ青な空が広がっていた。
朝早くから、花嫁宅へと向かう車がひっきりなしに
我が家の家を通りぬけて行った。
目の前の公園には、美しく着飾った兄妹の姿があった。

szeki lakodalom (24)

花嫁行列を今か今かと待ちわびる、ご近所さんたち。
元家主だったロージおばさんの姿も見える。

szeki lakodalom (9)

カロタセグから友人一家も遊びに来ていた。
シク村の男性よろしく麦わら帽をかぶった男の子たち。

szeki lakodalom

町の出身の花婿や親類一同は、
車で村へやってきて、村の中心の教会の方から行列がはじまると耳にした。
かなたの方から、かすかな楽団の音色が聞こえてくるような気がした。
花婿行列の集団が小さく現れ、
見とれているうちにだんだんと近づいてきた。

szeki lakodalom (25)

白いブラウスに黒いベストとスカート、
誰もが長く腰までのばしたお下げに赤いリボンが揺れている。
楽団の音色とリズムに誘われ、
足取りをそろえて歩む艶やかな人の群れ。
葦ののびた石橋を渡って、我が家の前を通り過ぎていく。

szeki lakodalom (26)

ふだんは静かな通りが人の活気で満ちている。
ご近所たちが見守る中を、行列は晴れ晴れしく歩みを進ませ、
花嫁宅に到着した。

szeki lakodalom (27)

ボクレータの飾りをつけたのは、ブーフェイと呼ばれる男性。
昔は花嫁行列の先導者だけで、
それは花嫁花婿の近い友人の内から選ばれていた。
今では、村の美しい晴着を着させたい親心から、
親戚の子どもたちは皆がボクレータを装うという。

szeki lakodalom (29)

行列が花嫁宅へ吸い込まれるように消えていくと、自然と小休憩に入る。
中では行列のもてなしと、花嫁の「手をもらう」、
つまりは求婚の儀式が執り行われる。

やがて昼食の後に、花嫁が登場した。
まるでクジャクの羽根のように鮮やかなローズマリーの冠を頭にのせて、
その姿はまるで王女さまのよう。

szeki lakodalom (38)

2人の先導人、花婿、
花嫁とその付添人が手をつなぎながら歩き、子どもたちがつづく。
この通りを何度となく、幸せな花嫁花婿が歩んでいったのだろう。

szeki lakodalom (34)

カルバン派教会では、神前での結婚の儀式と礼拝が行われていた。
子連れの私たちは、外で待機することにした。

szeki lakodalom (36)

教会の広い庭をかけっこしたり、落ち葉で遊ぶ子どもたち。

szeki lakodalom1

小さな参列者たち。
村の美しい衣装を着させたいとする親心が、
今にまで職人技を続けさせる原動力になっているのだろう。

szeki lakodalom (37)

できたばかりのローズマリーの冠は、
彼らが家に持ち帰ることができる。
結婚の日までにいくつのボクレータが集まるのだろう。

szeki lakodalom (35)



結婚式の翌日の朝、
朝食を取った後、帰りの荷物をまとめていると、
ドアをノックする音が聞こえた。
振りかえる間もなく扉がひらいて、
近所の花嫁さんの母親が皿にいっぱいのったケーキを手にのせて立っていた。
突然のことで驚きふためいていると、
テーブルの上にケーキのお皿が置かれ、
「おすそ分けよ。」とはじめてその顔が微笑んだ。
ピラミッド型に美しくのせられたケーキの山に
子どもたちの目は釘付けとなった。
何名もの女性の手で作られた何種類ものケーキを
ほおばりながら、結婚式の楽しい余韻に浸っていた。



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comments(0)|trackback(0)|セーク村|2019-11-15_00:00|page top

シク村、ローズマリーの冠作り

夏休みも終わりに近づく頃、 
シク村で今年最後の結婚式がひらかれるという噂を耳にした。 
場所は、チプケ地区。
しかも、我が家から目と鼻の先のご近所さんのお宅が舞台となる。
その日を今かと待ちわびていた。

村では、結婚式の準備は二日前からはじまる。
花嫁宅では、天幕を張って、
男性も女性も慌ただしく出入りしていく姿が見られた。
お隣のロージおばさんも、お菓子を焼くと話していた。
誰が何を焼くのか、事前に話し合いがあるのだという。

ロージおばさんは伝統的な焼き菓子、ジュジ・キフリにとりかかる。
80年代頃、村ではじめてジュジャさんが作ったというお菓子だという。
といっても、ジュジャという名前はこの村ではありふれていて、
ジュジャでない女性のほうが少ないくらいだから驚かされる。
卵黄と砂糖、サワークリーム、小麦粉、油を混ぜた生地を
うすく、うすく手間暇かけて伸ばしていく。

szeki lakodalom (3)

紙のように薄い生地をまたクルクルと丸めて、
生地を休ませる。

szeki lakodalom (4)

数時間休ませた後、
生地を再びうすく伸ばしていき、
4等分したものに、白味と砂糖で作ったメレンゲをのせる。
慣れた手つきで丸めて、オーブンへ。

szeki lakodalom (6)

粉砂糖をかけて出来上がり。
まるでパイ生地のように繊細な生地と
中のメレンゲがとけて、まるで空気のように軽い口ごたえ。
シク村の人の好みをよく表すような、繊細な焼き菓子である。

szeki lakodalom (2)

一方、こちらは花嫁宅。
冠作りの職人ジュジャおばさんが働いている。
きれいに切りそろえたローズマリーの茎を
針金で作った型に並べて、一束一束縫い付けていく。
香り高いハーブの香りが、部屋いっぱいに満ちていた。
冠を持つのは、花嫁の祖母のおばあさん。
  szeki lakodalom (1)

二列と、さらに顔の横にくる飾り部分を作った後、
今度は、花嫁がリボンで作った小さなバラの飾りを縫い留めていく。

szeki lakodalom (8)

ローズマリーの緑と、リボンの赤が鮮やかに目に飛び込んでくる。
このローズマリーの冠は一度切りだから、
まわして使うことはできない。
二日かけて作るから手間暇かかることこの上ないが、
そのためにこの職人技が今に残ってきたのだろう。


花嫁のもう一人の祖母も見にやってきた。
ローズマリーの冠は結婚式の目玉である。
そのために、花嫁の母親やその他の親戚も何度となく
出来栄えをのぞきに来ていた。

szeki lakodalom (17)

三列のバラの花を並び終えたところ。
さらに、金色アルミ紙を四角く切ったものをつけていき、完成となる。

szeki lakodalom (12)

花嫁の頭に合わせてみる。
150~200束のローズマリーを使うというのだから、重いはずだ。
花嫁の祖母も、満足そうに眺めていた。

szeki lakodalom (15)

花嫁宅の出入り口では、先ほどまで
酒盛りに演奏と男性たちが盛り上がっていたのだが、
男性も女性もともどもボクレータ作りに取り掛かっていた。

szeki lakodalom (19)

ご近所のマルトンおじさんの家でも、
やはりボクレータ作りが行われていた。
まるで植木屋さんのようにローズマリーを剪定し、
奥さんがリボンのバラを縫い留めた後、
再びマルトンおじさんの手によって蝋のバラが埋め込まれていく。

szeki lakodalom (20)

かつて花嫁行列の先導者を何度も経験したおじさんは、
自分でボクレータを作るうちにその道を究めたという。
夏のわずかな期間しかない仕事だが、
その取り組む姿は真剣そのもの。

szeki lakodalom (21)

赤、白、紫、ピンクなどの
甘いお菓子のような滑らかな光沢を帯びた蝋のバラ。
生の草を使うため、永遠にはその緑は続かない。
結婚式その一日のために、
美しいものを生み出そうとたくさんの手が動いている。
その人々の心は、100年前とまったく変わらない。

szeki lakodalom (22)

花嫁のパールタと花婿のボクレータは、
結婚式の後、額装される習慣もある。
緑色は失われるものの、茶色く干からびた冠と帽子飾りは、
結婚式の美しい記憶とともに永遠に封じ込められるのだ。

szeki lakodalom (23)

*ジュジャおばさんのローズマリーの冠作りは、
11/20~25まで阪急うめだ催事「東欧バルト三国やさしい冬時間」でご覧いただけます。

comments(0)|trackback(0)|セーク村|2019-11-14_00:03|page top

シク村の夏休み

夏の終わり、シク村へと旅立った。
家の修復と家族で夏休みを過ごすため、
たくさんの荷物を車にのせて、約200キロ離れた村へと向かった。

村での最初の一週間は、
朝から晩まで家のことにかかりきりだった。
旦那とラツィおじさんは雨漏りの修復をしたり、
箱型の田舎トイレを作ったりと、仕事にかかりきりだった。
一方で、私と姑は食事や子供の世話のことに追われていた。
日々、通りの井戸から水を運び、
洗い物や洗濯、そして午後の子どもたちの水浴び用に使った。

じりじりと大地を焦がす太陽が沈んだ後は、
村のはずれの塩水プールへ向かった。
車のランプが消えると、目の前に星空が広がった。
そこは、村の灯りもとどかない原っぱの中に佇む水浴び場。
ゆっくり体を沈めると、水の中の塩分のために体が押し上げられる。
心地よい沈黙の中で、ただ水の音だけが静かに耳に入る。
押しつぶされそうな大きな空に見入っていると、
星の瞬きがそのままメロディーのように鳴り響くかのようだ。
生活のペースを落とすこと、
ゆっくりと自然の声に耳を傾ける時間が必要なことを肌身に感じた。

やがて、屋根に目新しい木色の飾りが取りつけられ、
庭に箱型のトイレが完成した。
今年の春から植えた木の苗も、すこしずつ大地に根を張っているようだ。

2週目になると、聖ベルタランの日、
伝統的な結婚式などのイベントが到来し、
ご近所を歩き、人々と知り合い、再会する時間ができてきた。
村での生活は、日々の町の生活に欠けている何かを
教えてくれているようだ。

夏の終わりの二週間を過ごし、後ろ髪をひかれるような気持ちで
新学期のはじまる我が家へと旅立った。













comments(0)|trackback(0)|セーク村|2019-10-08_10:48|page top

伝統のプルーンジャム作り

結婚式の取材を終えて帰ると、 待っていたのはプルーンジャム作りだった。 
50キロのプルーンを洗い、 種と実を分けて、大鍋で煮ること12時間。 
水も砂糖も一切なしの、純粋なプルーンジャムが出来上がる。

エルジおばさんの家には、
二晩、娘のエルジやその友人一家、
おばさんの親戚や友人たちが寄り集まった。
皆でプルーンの種を分けながら、おしゃべりが始まる。
昨日の結婚式のことで持ちきりだった。
村の生活の醍醐味は、助け合いの共同作業にある。
どんなに村人たちが金銭的に裕福であっても、
共通の文化行事や助け合う気持ちがなければ、
村の生活は無味乾燥したものとなるだろう。

  szilvaiz2.jpg

プルーンを使って、プルーン団子を作ったり、
セーク名物の揚げ菓子「チュルゲ」を作ったりした。

近くの町で暮らす娘夫婦、その友人一家がやってきて、
夜遅くまでプルーンジャムの煮込みをした。
娘のエルジさんは50代の女性で、
嫁入り道具もすべて自分の手で作った世代の人だ。
スカーフのバラ刺繍のやり方を、
近所の娘さんに教えてあげていた。
私も持ち寄った、セーク刺繍を取り出した。
すると、エルジおばさんも
「私も手仕事がしたくなってきたわ。」
とアトリエである納屋から紡ぎの棒を持ってきた。
人が働くのを見ると、自分も何かせざるを得ない根っからの働き者だ。
豆電球ひとつ照らされた庭では、
プルーンの大鍋をかき混ぜる人、薪をくべる人、
刺繍をする人、糸を紡ぐ人。
それぞれが別の仕事をしながらも、一人ではないという不思議な一体感がある。

「私たちが若い頃はね、
毎週決まった日にこうやって若い女の子たちが手仕事を持ち寄って集まったの。
すると、村の若者たちがやってきて、いたずらをしたり、おしゃべりをしたり、
踊ったりしたの。
手仕事なんてもちろん、はかどらなかったから、
1週間で何㎝しか刺繍も進まなかったわ。」とエルジおばさんは楽しそうに話す。

クルクルとスピンドルを回し、麻を糸に紡いでいく手つきがあまりに美しくて見惚れていると、
手から棒がすべり落ちた。
「こんな風にスピンドルを手から少女が落として、
それを拾った少年はキスをもらえるんだ。」とマルトンおじさん。
「さ、おじさん。早く拾って!」と皆が大笑いをする。

長いスピンドルの先についた麻糸の塊を手ですくいあげ、
マルトンおじさんは話した。
「麻糸に火をつけて、もし上に燃え上がったらその少女は少年が好き、
もし下に落ちてしまったら、きらい、と占いもしたんだ。
もちろんフォノー(糸紬の家)では室内だから、
空気が暖まって上に上がるのは当然だけれどね。」
おじさんが茶色い麻糸に火をつけると、
予想通り(屋外であるから)下に落ちてしまった。
皆が笑い転げる中、マルトンおじさんは肩を落として「嫌いなんだ。」と言った。

この世代の人たちが経験した、美しい時間の過ごし方。
それを語る人たちの表情から、いかに幸せな時代であったかが偲ばれる。

ジャム作りの大鍋に車軸のような混ぜ棒が置かれ、
50キロのプルーンがゆっくりと液状になり、やがて固まってくる。
この作業は少しでも休むと、プルーンが鍋底に焦げ付いてしまうため、
かき混ぜ続けないといけない。
さらに、薪の番をする者もいるから、
ふたりではとてもできる仕事ではないのだ。

 szilvaiz.jpg


3年前に作ったプルーンジャムは、
古い陶器のケーキ型に入っていた。
まるでガムのように弾力がある。
これを混ぜると、新しいものにコクが出て、固まりやすくなるという。

 szilvaiz1.jpg 

夜行列車の出発の時間が近づいたとき、
ジャムはほぼできあがり、ガラス瓶の中に熱いできたてのジャムを入れてもらった。
エルジおばさんの孫息子さんが職場から駆けつけ、
ケーキを囲んで、エルジおばさんの72歳の誕生日を皆で祝った。
町の駅まで車で送ってもらい、あたたかな思い出とお土産を手に、
7時間かけてセーケイ地方へ向かった。


comments(2)|trackback(0)|セーク村|2018-10-10_08:17|page top

セーク村の結婚式(後)

起床は6時。
6時半には、花婿宅へ向けて車が出発する。
普段ならこのように早起きをする必要はないのだが、
今回は花婿の住まいが遠くの町にあるがためである。

セークから1時間のところに、べトレンという町がある。
花婿の自宅は歓迎と記したアーチで飾り付けてあった。
「ようこそ、親愛なるお客さま。」という札と、
生花で飾り付けたアーチをくぐる。


szeki lakodalom (17) 

ふたりのセークの女性が出張着付けをしに来たのだ。
次々に服を重ねて、やがてセークの女性に変身していく。
「子どもさんがびっくりするほどきれいになるから、見ていなさい。」
陽気なおばさんたちに、すぐに打ち解ける。


szeki lakodalom (2) 

一方、花婿は、あっという間に身支度を終えた。
「何度もセークの衣装を着たんだ。」
とすっかり村になじみ、結婚後も花嫁の故郷に住むことに決めたそうだ。
「セークの男性みたいに立派よ。」
と若く堂々たる体格の花婿に見惚れる。
茶色いウールのパンツをはき、
バラの刺しゅうのほどこされた赤いネクタイをする。
これは若者の象徴で、結婚すると同時に黒に変えなければならない。
そしてウールの丸い帽子の上には、一際大きなボクレータ。
まるでクジャクが羽根を広げたように、華やかだ。


szeki lakodalom (18)


花嫁花婿の最も親しいものが何人か選ばれる。
女性は、花嫁衣装とほぼ同じである。
緑と黒のチェック柄のウール素材のプリーツスカートに、
ガーゼのように繊細な織のプリーツエプロン。

男性は、ウールの丸い帽子にボクレータが輝く。
手には美しい模様がつき、赤いリボンが下がったステッキをもつ。


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花婿宅にセークの人々が楽団とともににぎやかに到着。
花婿宅の庭へ入ると、ここで花婿の別れの儀式がはじまる。
花婿の付添人が、長い別れの詩を読むと、
花婿の両親や親せきの人々が別れのキスをする。
「まるで葬式みたいに泣いてたよ。」と後に花婿が苦笑して話していた。


szeki lakodalom (21)


普通は同じ村の中で行われることなのだが、
花婿が遠くの出身であるがために、この後は車に乗り込んでセークに向かわなければならない。
セークの着付けのおばさんたちは花嫁の着付けのため、一足先に村に帰ってしまった。
「大丈夫。あなたはあの人と一緒の車に乗って帰りなさい。」
着付けをした男性を示した。
その男性がすでに車の運転席に乗り込んだ。
同じくセークの衣装を着た奥さんが助手席に、
そして後部席に入ると、隣にいたのは何と花婿だった。
結婚式の取材にきて、花婿と同じ車に乗れるなんて幸運なことだ。
花婿の車を先頭に、何十台もの車が列をなして、セークを目指す。

「セークの衣装の着心地はどうだい?」と花婿が親友の運転手に尋ねる。
「いいよ。だけど運転するのには適してない。」と
パリパリに糊がついて広がった袖で何とかハンドルを操縦している。
「息子に今夜はセークで寝るのと話したの。
そしたら、セーク(椅子)でどうやって寝るの?と目を丸くしていたわ。」と笑う。

花婿は時間通りに来られるのか心配のようだ。
町出身の若者がどうして村の伝統的な結婚式にこだわるのかが知りたかった。
「ジュジャ(花嫁)とふたりで、
どうしても伝統的な結婚式がしたかったんだ。
それでも、昔のような小屋がなくて、
僕たちのは半分が伝統的、半分はレストランになってしまったけどね。」

村に入り、中心の小学校の前で車を止める。
すでにセークの参列者が待っていた。
たくさんの子供たちが美しいセークの衣装に身を包んでいる。


szeki lakodalom (22) 


花嫁行列をひと目見ようと、村人たちも門の前までやってきた。
初めに、行列の先導者がふたり、
次に花婿、花婿の付添人の女性たち、
それからボクレータをつけた男の子たち、ヴァイオリン、ビオラ、アコーディオンの楽団、
最後にその他の参列者たちと続いていく。
セークのゆったりとした、
哀愁あふれるメロディーが鳴り響き、
そのリズムに合わせて、ゆっくりと歩調を合わせて進む。
少年たちは手に持ったステッキを、リズムに合わせて打ち付ける。
音楽のリズムと、荘厳な花嫁行列の風景が見事に調和している。


szeki lakodalom (25)


一方、花嫁宅では、同じようにアーチを取り付けて花婿の行列を待っているところだった。


szeki lakodalom (26) 

白と黒が清楚で美しい、セークの若い女性たち。
次の花嫁になるのは、誰だろうか。

  szeki lakodalom (27) 

花婿を伴った、行列がやってきた。
門のところで掛け合いがはじまる。
「誰を探しているのか。」
「花嫁を迎えに来た。」と先導者が応える。
こうした問答がつづき、ようやく門が開かれる。


szeki lakodalom (29) 

花婿たちは、花嫁のために用意された清潔の部屋に通される。
すぐには花嫁を差し出さないので、
2人ほど別の女性が連れてこられ、
ようやく花嫁が花婿に引き合わせてもらえる。
食べたり飲んだりの小休憩をはさんで、
いよいよ花嫁の行列を合わせて、教会へ向かう。


szeki lakodalom (30) 

赤いバラと金色の紙で縁取られたパールタをのせた花嫁の姿は、
中でも光り輝いていた。
ゆったりとした足取りで花嫁になった喜びを踏みしめるように、
静かに厳かに歩んでいく。
花嫁の表情を見ているうちに、はっと気が付いた。
セークの女性たちは幾度ともなくこの姿を見ながら、憧れつづけ、
ようやく晴れの日を迎えるということに。
「いつかはあの花嫁になりたい。」そう思いながら、
花嫁行列を見、時にはその行列で歩みを共にしてきたに違いない。


szeki lakodalom (31)


教会へ向かう道すがら、
通りにロープで通せんぼがされてしまった。
立て札に、パーリンカ10リットルまたはビール40本とある。
ここでも男性衆の交渉がはじまった。
結婚への道のりは長く、険しい。


szeki lakodalom (35)


役場で婚姻届けを出した後は、
高台の上にあるプロテスタント教会にて結婚の誓いをたてる。
再び、花嫁宅へ向かい、花嫁の家族と別れの儀式をしてから、
披露宴会場へ向けて最後の行列が出発した。
1日がかりの結婚式、
祖父母の時代と変わらず同じ姿で行列をなす村人たちの姿を
しっかりと目に、心に焼き付けた。

 szeki lakodalom (33)  
花嫁行列の風景


comments(2)|trackback(0)|セーク村|2018-10-05_15:49|page top