トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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イースターの一日

昨日は、イースターの月曜日。

旦那は朝早くシャワーを浴びて、珍しくスーツの上を着て、
なんだかそわそわしている。
ノーカラーの黒いボーダーのセーター姿の息子を見ると、
「いや、こんな格好じゃだめだ!」と着替えをするよう命じる。
何をそんなに意気込んでいるのか?

イエス・キリストの復活を日曜日に祝ったあと、
イースター・マンデーは、ハンガリーの異教徒時代の習慣である、
男性が女性に水をかけにいく日である。
女性の知り合いに客として男性が訪ね、
まず詩を読む。
女性を花にたとえ、枯れないように水をかけましょうという。
そして女性の了解を得たら、水をかける。
その後は、お菓子や飲み物(お酒が主)でもてなされる。
・・・という男性諸君にとっては、とてもオシシイお祭りである。

「シャツはないのか?」と聞かれるので、
生成りとグリーンのチェックのシャツを着させ、
亀の模様の入ったスカーフを首のところで結ぶ。
確かに、祝いの場にふさわしいような格好だ。
さらには「改まったジャケットは?」などとくるから、
私は腹が立って
「こんな子供にまで、何でそんな服装を!」とやり返した。

「さあ、詩をいってみてごらん。」と息子に、最近、父親や幼稚園の先生から習った
水をかける詩を復唱させる。

「私は、小さな庭師の若者です。
 お花にお水をかけてまわっています。 
 ここのお花が枯れそうだと聞きました。
 お水をかけてもいいですか?」
と舌がもつれそうになりながらも、やっと最後まで言ったとき・・・

旦那がいきなり私の首筋にコップで水をかけた。
不意打ちに、寒いやら、頭に来るやらで、
男二人をうちから追い出してやった。

せっかくきれいな格好をしても、
こんなことでは全くの無駄だ。
男どもに良いだけの祝いである。

息子たちは、小学生になったばかりのいとこの所や、
姑の女友達の所をまわるはずである。

朝は、子供たちが通りを行きかい、日が暮れるにつれ
男性たちが多くなるという。

私は一人家に残されて、
少々心細い気持ちで、本を読んでいた。
誰を待つともなく、待たなければいけない。
なんともイヤな時間である。

ふと家の外を見ると、
黒い格好をした男が急ぐように歩いている。
子供をつれた中年の男もいた。

昨日までは旦那の物置であった客間は、
すっきりとはいえないが、今は人の座る空間は保たれている。
私がいつかブダペストの蚤の市で買った
可愛いニワトリのテーブルクロスに、
ヴィンテージ物のカラフルなお皿にのったお菓子の数々・・・
姑が持たせた、赤タマネギで染めた茶色の卵、
息子が幼稚園からもってきた若草色の麦の苗・・・
セーケイ地方の花模様の描かれた、澄んだブルーの
いすとテーブル。

イースターのテーブル

そんな、いかにも祝日らしいセッティングをした小部屋の中をひとり、
そわそわとした心持で待つなんて馬鹿らしい。

そうしているうちに昼になり、子供と旦那が帰ってきた。
息子は可愛らしい真っ赤な卵をたくさん持ってきた。
「まだ誰もきてない?」と聞くので、
「そうよ。」と憎たらしく答えた。

息子は、どうやら三箇所まわって、
お菓子を死ぬほど食べたらしい。
最後の家では、カラーチという甘いパン生地のものを
残してきたという。

私たちは、祝日のために作った「肉のスープ」を食べた。
これは、数種類の野菜と骨付き肉を何時間も弱火で煮込んで、
塩で味付けしただけの、いわゆるコンソメスープ。
それをこしたものに、細いそうめんのような麺を入れて食べるのが
ハンガリー風である。

食事のあとで、子供を昼寝させて、旦那もうとうととしていた。
そんな時、玄関の方で激しい音がなって、はっとする。
午前中に息子たちが訪ねた家のおじさんだ。

「××おじさん!」と旦那を起こし、客が来るのを待つ。
まもなく、口ひげを生やした中年の男性がやってきた。
「間違えて、一階下の家に入るところだったよ。」と笑顔だった。
「水をかけても良いですか?」と聞くので、「どうぞ。」と言うと、
何やら香りの強いスプレーが、頭の上にかかってきた。
これが都市の習慣である。

まず客間にお通しして、飲み物を尋ねる。
「ワインを。」というので、台所でワインを注いでいると、
またインターホンが・・・

出ると、昨日外で会った少年だ。
何年か前、息子と公園で遊んでいる時に出会い、
日本に興味をもっていたので、箸をプレゼントしたことがあった。

いきなりの、年齢も違い、初対面の二人の客に私は緊張した。
少年は、小さな紙にぎっしり書かれたイースターの詩を読んだ。
何やら早口でよくわからなかったが、
イエスキリストの復活の意味と、春を迎える習慣について書いたものであった。
そして、また香りの強いスプレーが髪にかかる。

しばらく日本のことを話題に話をしたり、
まだ沢山の所に行くのかと聞いたりした後、二人の客は帰っていった。

旦那のところへ行き、「なぜ、部屋に来なかったのか?」と非難の目を注ぐと、「これは、君のお客様だからね。」と意地悪そうに笑った。

しばらくの後、息子が起きてくると二人はアパートの隣人のところに出かけた。
上に住む、17,8の娘さんは年頃なので、さぞお客も多いだろう。

なかなかやってこない旦那の友人に連絡すると、
「あと30分で着く。」という返事。
50kmほど離れた村に住む彼は、村でも知り合いを訪ねてから来る。
旦那は、一緒に昔のクラスメートを訪ねようと彼を待っていた。

セーケイの民族衣装の、縞のスカートを見ると、
「あいつも水をかけるはずだから、着替えたほうがいい。」と言った。

しばらくして、インターホンがなる。
ドアを開けると、長身の彼の姿。
また水をかけられると思うと、おびえながら扉を開く。
「どうしてきたか知っているでしょう。」とニヤニヤするので、
「知ってるけど。手加減してよね。」とお願いをする。

小さな小瓶で、首のところに冷たい水が注がれる。
朝の旦那ほどの量ではなかったが、やっぱり冷たいのですぐに服を着替える。
そして、客部屋の方へ戻るとまた扉をたたく音がする。
もう、来ると見ていた客は皆やってきたような気がしたので、
不審に思ってのぞいてみると。
2メートルほどの大男、しかもセーケイの民俗衣装に身を包んでいる。
旦那の古い友達であった。
扉を開けると・・・

zoli

大きな白いバケツを手に部屋に入ってくるではないか。
「きゃあ」と叫んで、旦那の後ろに隠れる。
子供のころ、宮崎の田舎でハレハレどんという恐ろしい男に出会ってしまった
あの恐怖を思い出した。

意地悪な旦那は、横に逃げる。
「そこに水が入っているの?」と聞くと、
彼はにこりともせずに「もちろん。」と言う。
「ほら、水をかけるから、風呂場に行くぞ。」と機械的な口調でいうので、
私はたまらなくなって、
「風邪を引いているから、ほんの少しにして。」
と訴える。

バケツの中に大きな手を入れて、
首の辺りに引っ掛けた。
まだ、バケツいっぱいでなかっただけましである。

「そのバケツ、アールコシュから持ってきたの?」と聞くと、
水はここのだけれど、バケツはそうだと答える。
彼は、セントジュルジの隣にある村から来ている。
通りでも、相当目立つはずだ。
本当にほかの女たちは、よくこの姿で家に通したものだ、と感心する。
これも、イースターという風習のなせる業か。

その後、夜には土砂降りになった。
これでは、男性たちも外を歩くのに困難であろう。
少しは、女の身が分かってよかったかもしれない。
いまだに様々な香水の匂いがこもっている頭に、
まだイースターの名残が感じられる。























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comments(2)|trackback(0)|文化、習慣|2008-03-25_22:18|page top