トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ブログ翻訳

トランシルヴァニアの冬のご馳走

トランシルヴァニアで冬の代名詞といえば、
何といっても豚肉。
ブタを一年かけて太らせて、豚肉にする。
冷蔵庫のない昔から、ブタの解体はいつも冬と決まっていた。

私たちの住む町セントジュルジから、
北東にある町ケズディ・ヴァーシャールヘイへと着いたのは夜9時前。
友人の家で一泊して、朝7時には
村へと車を走らせていた。

冬の朝7時といえば、まだ夜明け前の雰囲気。
薄暗い景色に、雪だけが白く光って見えた。
温度計は-11度を指していた。

友人ゾリのおばあちゃんなのだか、誰の家かはよく分からない。
とにかく家に招かれると、作業前に一杯をみんなでやっていた。
お酒はもちろんパーリンカ。
無色透明の液体は、40度以上の蒸留酒。

体を温めたところで、
外へと繰り出す。
納屋の前の広場が、その会場となる。
藁が敷かれたところが、ブタの処刑所となるわけである。

そのかわいそうなブタは、最後の晩餐も与えられず
空腹のまま手にかけられる。
ブタ小屋で、悲鳴を上げて逃げ惑うその姿は、
さすがに見るものの哀れをそそる。
もう自分の最期を感じているかのようだ。

何のためにここまでやってきたか、十分承知していたはずだ。
その大きなブタをヒモで引っ張り、
外へと連れ出す。
そして、声になるかならないかのかすれ声で叫び続けるブタの姿に、
私はもう耐えられなくなって、息子とともに小屋へと入った。

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その最期の抵抗もしばらく続いていたが、
やがて4人の男性に取り押さえられて、ブタは息を引き取った。
ブタの首から流れ出す血を、たらいに入れて運び出す。

そしてその巨体をはしごに乗せて、
体重計へと運んでいく。
その重さは、190kg。
よくもここまで太らせたものだ。

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これから、ブタをゆっくりじっくりと焼いていく。
このおじさんが村でも腕利きの、ブタの解体職人。

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まず藁をかぶせて、火をつける。
暗い風景に、ぱっと炎が周囲を明るく染める。

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あっという間に、ブタは黒こげ。
上の燃えカスを、きれいにほうきで掃く。

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今度はブタの手足に、小さな薪をはさむ。
先ほどまで動いていたのが、まるで作り物のようだ。

8302.jpg

それから、もう一度火で炙る。


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淡々と仕事をする解体職人と、それを見守る人々、
そして赤々と燃える炎・・・
その無駄のない動きは、
何か神聖なものを感じさせる。
沈黙と緊張感。

よく焼けたら、皮をきれいにナイフで削る。
すると黒いすすだらけの中から、
白い皮がのぞく。
その白さは、そう、
土から引いたばかりの大根のよう。

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それを何度か繰り返したら、
今度はブタの体をひっくり返す。
ピンク色の片側が姿を現した。
まるではんこを押したかのように、
藁もブタの形がくっきり。

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じっと立ち尽くす私たちは、寒さが身に沁みてくる。
そんなときは、また一杯。
コーヒーの暖かさが、じんわりとかじかんだ手を温める。

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寒いのも無理はない。
窓ガラスが凍って、絵画のように霜が張っている。

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息子は、ブタの爪をを拾ったらしい。
この後、あまりの寒さのため
家に避難した。

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細長い桶が登場。
よく焼けたブタの上に、ぬるま湯を降り注ぐ。

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焼けたススと混ざって、黒い泥になる。
これをブタの体によく塗りこむ。
これは消毒効果があるということだ。

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雪がまた降ってきた。
この寒い中で、湯気の立つブタの姿、
ほんのりと漂ってくる香ばしにおい(ラーメンの匂いのようだ)・・・
これこそが最高のブタの解体だという。

またお湯で洗って。

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ナイフできれいに表面を削る。

disznovagas 186

ブタの体をひっくり返す。
ここからは、もうブタを切り刻む作業。

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いつの間にか、たくさんの容器が用意されていた。

disznovagas 199

まずはこの可愛らしい手足を切る。

disznovagas 206

それから頭。
このときに、耳を少し切ったものを味見させてもらった。
ちゃんと焼けているかどうか心配だったが、大丈夫。
香ばしく、コリコリとしていた。

disznovagas 225

背骨をきれいに取り除き、
体のさまざまな部分が次々に切り取られ、分けられる。
まさに、生きた生物の授業のようだ。
ここからは、ふだん肉屋さんで見るのと変わらない。

しっかりと目をふさいだ顔、彫刻か何かのように美しい。
顔ももちろん、血や、皮や、腸に至るまで、
そのあらゆる部分が、余すことなく利用されるという。

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この後も、まだ豚肉加工の作業は続いていた。
私たちは凍える体を温めに、家へと向かった。

046.jpg

ひっそりと静まり返った村の通り。
まだクリスマスの安らぎは続いている。

disznovagas 282

*友人のゾリは7年間ベジタリアンを通したが、
 その原因はブタの解体だったという。
 冬には野菜の種類が極端に少なく、果物もならないトランシルヴァニアで、
 肉なしの生活は考えられない。
 普段から口にするものが作られる過程を、自分の目で見ること・・・
 それは、やはり大切なことだと感じた。

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Theme:ルーマニア
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comments(10)|trackback(0)|イベント|2008-12-29_01:51|page top

クリスマスの過ごし方

家族としては初めて迎える、
トランシルヴァニアでのクリスマス。
12月にしては、暖かい日々が続いていたのだが、
クリスマスが近づいたある日、やっと雪が降り始めた。
まるで天使からの贈り物のようだ。

クリスマスイブには、
近くの教会へも足を運んだ。
中に入ると、子供たちでいっぱい。
牧師さんがお説教をする台の近くには、
大きなクリスマスツリーがキラキラと輝いている。

お話が終わった後、
子供たちのための催しが始まった。
まずは幼稚園児から、ひとりひとり前に出て、
クリスマスキャロルを歌ったり、
詩を朗読したり・・・
可愛らしさに、皆の笑い声も絶えない。
いつもとは違って、アットホームな雰囲気。

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プロテスタント教会なので、
イエス様の像ももちろんなく、
なかの装飾も至ってシンプル。
トランシルヴァニアでは、教会の中を
地元の人の手によるアートで、
フォークロアの花々で飾るのが特徴的。

アーラパタクのクロスステッチ刺しゅうの壁掛けが、
横に長く飾られている。
カセット式天井も、木の木目をそのままに
植物文様で埋め尽くされる。

BETHREHEM 023

BETHREHEM 022

ミサの後は、子供たちは
お菓子やフルーツでいっぱいのプレゼントをもらって大喜び。
外の寒さも気にならないほど、
あたたかい気持ちで家路に着く。

家に帰ると、また驚きが待っていた。
クリスマスツリーが、一足先に届いていたのだ。
「 天使がきて、クリスマスツリーを置いていったよ。
 でも忘れ物をしたそうだから、
 もしお利口でいたら、また夜中にやってきて
 今度はプレゼントも届けてくれるんだって。」とダンナ。

BETHREHEM 027

本当ならば、朝になってクリスマスツリーが
ドンと立っているのが大きな驚きだのだが、
偶然にも、息子はクリスマスツリーの到着を見てしまった。
だから今回は、ツリーとプレゼントは別々に到着となった。
「 天使が来るのを、待ってる。
 会ったら、ありがとうって言う。」と頑張っていた息子も、眠さでダウン。

やがて朝になると・・・
まるで魔法のように、クリスマスツリーのしたには
美味しそうなフルーツやお菓子、
絵本やおもちゃがたくさん。(プレゼントの中身はこちら

BETHREHEM 044

息子もこの笑顔。

BETHREHEM 043

そして昼ごろには、新鮮な空気を吸いに森のほうへと向かった。
まるで町中が眠ってしまったかのような静かさ。
そう、クリスマスの特徴はこの沈黙にもある。
一年で一番夜が長いこの時期、
私たちは家族のかけがえのなさ、
寒い寒い冬でも家の中のあたたかさに感謝する。

やがて静かな町から森の入り口へとさしかかった。

BETHREHEM 051

雪の影はなんて、澄んだ色なのだろう。
空の青が反射して、青く光っている。

BETHREHEM 048

森では、生き物の気配もしないとおもっていたら、
コツコツコツ・・・と不思議な音。
木々を見渡すと、小さく黒い鳥の姿。
キツツキだ。

森のはずれの松の木は、
すべて100年前の住民が植林したものだという。
この近くで見ることの出来る、日本的な風景。
私たちも100年後の住民のために、
何をしてあげられるのだろう・・・

BETHREHEM 058

セントジュルジで一番好きな風景。
春から夏にかけて、数多くの野花が目を楽しませてくれる。
冬は冬で、豊かな曲線を描いた丘の美しさを
真っ白な雪が浮き彫りにしてくれる。

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もうそろそろ、体が冷えてきたから家に帰ろう。
暖かい家が待っている。


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Theme:ルーマニア
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comments(0)|trackback(0)|文化、習慣|2008-12-28_20:16|page top

トランシルヴァニアの天使たち

年の暮れ、クリスマスの時期に
幼稚園では一大行事、ベツレヘム劇が行われる。

ベツレヘム劇とは、イエスキリストの誕生を祝いに、
3人の羊使いまたは、三人の賢人が
ベツレヘムの馬小屋へ訪ねて旅をするお話。

まずは前日に、教室の飾り付けから始まった。
その日の午後、私は息子を連れて幼稚園へ。
早くもハンナの両親が来て、
モミの葉を長くつなげていた。
辺りは爽やかな森のにおいで、いっぱいだった。

BETHREHEM 199

ショップに出せなかった
クリスマスのカーテンやクロスなどを飾りつけに、
私も取り掛かる。
カーテンが丸く開いた部分に、
ワラの飾りや、レースでできた鈴やボールなどをぶら下げ、
少しは華やかになってきた。

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やがて先生が帰った後も、
熱心に作業を続ける私たち。
隣の部屋で遊んでいた息子が、
ふと、「 トイレに行きたい。」といったことから
その事件は起こった。

息子が用を足した後、
つられて私も、トイレに行きたくなった。
息子を外へ追い出した後、私も中へ。
ちょうどトイレのまん前に机があり、
ハンナのお母さんはもくもくと作業中。
ゆっくりとドアを閉めた。

見るとトイレの中はガラス張りで、
子供用の低いトイレだから、
向かいのアパートからは丸見えである。
少し恥ずかしくなって、
急いで用を足してドアを開けようと手を伸ばした・・・

すると、どうやってもドアが開かない。
鍵もかけてないのに、どうして・・・
ハンナのお母さんも異常に気づいて、
ドアノブを一生懸命に動かす。
・・・それでもダメ。

それから、事務所に人を呼びに行ってくれたようだ。
やってきたのは、お掃除のおばさん。
おばさんが試みても
・・・やっぱりダメ。

息子はそれほどショックでもない様子で、
「 ママは扉を閉めなければ、よかったのにね!」
なんて、大声で叫んでいた。
私は思わず舌打ちをした。

それから女性の事務員さんが来て、
誰かを電話で呼んでいる。
幼稚園の園長先生のようだ。

暮れ行く空を眺めながら、
もしかしたらここで夜を明かすことになるかもしれない・・・
と考え事をしていたら、
2mほどの巨漢の、いかにも頼りになりそうな、
おじさんがやってきた。

おじさんが物凄い力で、
ドアノブをひねる。
メリメリと音が鳴る。
それでも、まだダメ。
何か道具を持ってきて中に差込み、
扉はゆっくりと開かれた。

私は息子との対面で喜び、抱き合う。
約一時間の後のことだった。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

次の日は、本番当日。
幼稚園に30ほど前に行くと、
もうきれいに着飾った天使たちの姿。
本当にウェディングドレスを着た、花嫁さんのよう。

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BETHREHEM 101

我が家の天使はこちら。
羊使いの役である。
本人は羊の役をしたかったそうだが、
あまりにセリフのなさ過ぎる役なので変更になったそうだ。
華やかさでは、さすがに天使には劣る。

BETHREHEM 108

主役のヨゼフとマリア。
クラスでも一番しっかりものの子供たち。
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そしてイエス様役は、この子。

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ベツレヘムの馬小屋で、イエス様が誕生するところ。
こちらも、クリスマスの雰囲気でいっぱい。

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ユーリア先生のご挨拶で、幕が開けられる。
12月はイベントづくしで、練習の時間も限られたが
みんな頑張ってセリフを覚えたそうだ。
そして、ほとんどが自分の希望する役柄になったという。

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納屋の家のご主人たちが、
マリアたちの到着を待っている。

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どこからか、天使たちの歌声が聴こえてきた。

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3人の羊使いが、元気よく登場。
ベツレヘムへ向けて旅を始めるが・・・

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途中で疲れてダウン。

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すると天使たちがその周りをぐるぐると回って、元気付ける。
それから、再び旅を始める。
これの繰り返し。

やがて息子の見せ場。
「 私は、小さな羊使いです。
  聖なるクリスマスの夜更けに、
  ベツレヘムへ向かいます。
  今ちょうど、そこへ急いでいるところです。」

BETHREHEM 141

やがて羊飼いたちも、ベツレヘムの馬小屋にたどり着いた。
生まれたばかりのイエス様に、
それぞれ飲み物と食べ物、着る物の贈り物をする。

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最後にみんなが、ひとつずつ
クリスマスの詩を朗読して終わり。

BETHREHEM 160

劇が終わると、今度はダンスが始まる。
毎週水曜日に、民俗舞踊のレッスンがあるので
その発表となる。

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ヴァイオリンの響きにあわせて、歌い踊る子供たち。
その楽しそうな姿に・・・

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保護者たちからも、微笑がこぼれる。

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「 みなさんにも、メリー・クリスマス!!」

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こんな所にも天使たちの姿が・・・

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Theme:ルーマニア
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comments(8)|trackback(0)|ルーマニアの育児|2008-12-24_23:56|page top

寒い冬の楽しみ

12月も末に近づくと、
さすがに寒く、そして夜が長くなる。

そうなると用でもない限りは
外へ出なくなるから、
必然的に家の中ですごす時間が長くなる。

こんな時期に一番ぴったりの時間のすごし方は、
ハンドメイド、お菓子やパンづくりである。

ダンナがある日突然、パンを焼き始めた。
たまに気が乗ると、料理やお菓子作りを始める。
そのパンの名は、塩味のキフリ。

キフリといえば、
ここでは幼稚園から小学生まで、
毎日、牛乳といっしょに配給される。
あの硬い、コッペパンのようなもの。

おばあちゃんがよく作ってくれた、懐かしい味だそう。

nap 105

イーストを、牛乳と小麦粉、
お砂糖と一緒に暖かい場所におき。
発酵してきたら、小麦粉と塩、
マーガリンと混ぜて捏ねる。
男性の手だから、
捏ねるのにもってこい。

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よく捏ねたら、少しねかせておく。

そして麺棒で薄く伸ばしてから、
小さな三角形にカットする。
マーガリンを縫ってから、お好きなものを入れて。
ここでは、ケシの実を挽いて砂糖と混ぜたもの。
他にはジャム入りや、
サラミとチーズの入ったもの。

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くるりと巻いて、月のような形にする。
あとは、オーブンで焼くだけ。

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きれいなキツネ色。
外は香ばしく、中はフワフワ、
ほんのりとイーストの香りも漂う。

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ドーンと積み上げて・・・
さすが男の料理。

nap 110

こちらはパンが主食。
それも硬くて、大きなもの。
そして直ぐにカラカラになってしまう・・・
私はそれに2ヶ月で飽きてしまったから、
この手作りパンの味は大歓迎。

「 このパンは・・」と私が言うと、
「 いや、これパンじゃなくてキフリだ。」とダンナ。
そう、こちらの人たちにとって見れば、
このフワフワで軽いのは、パンじゃない。
所詮、お菓子みたいなものなのだ。

3年間の日本生活で、
彼が恋しかったのは
トランシルヴァニアのパンと手作りのお菓子だったという。
日本の砂糖入りの食パンなどで、
満足いかないのもうなづける。

私もこのパンの味に慣れれば、
立派なトランシルヴァニア人になれるのだろうか・・・。


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Theme:ルーマニア
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comments(6)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2008-12-24_00:11|page top

アール・ヌーヴォーの宮殿へ

その旅行計画は、いつものように
降って湧いたものだった。

夜行列車で300kmほど離れた町、
トゥルグ・ムレシュ(ハンガリー名 マロシュ・ヴァーシャールヘイ)まで
行くことになった。
その旅行の発端は、とあるインターネットの広告であった。

ピカピカと黒光りした鉄のボディに、
黄金色の唐草模様の入ったヴィンテージ・ミシン。
それは、旧ソビエト時代に作られたもの。
このミシンを求めに、わざわざ親子3人で
はるばる旅行をすることになった。

夜行列車はカルパチア山脈を北西に伝って走り、
トゥルグ・ムレシュに到着したのは朝8時前。
まだ朝日の昇らない町の中を
歩き始めた。

トゥルグ・ムレシュは、ハンガリー系、ルーマニア系の
住民比が約半々の町である。
それだけに民族間の確執もあるようで、
90年代初めには両住民の衝突もあったといわれる・・・。

屋根がふっくらと円形になった、
エキゾチックな雰囲気の建物が見えてきた。
ユダヤの教会シナゴーク。

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そう忘れてはいけない、
かつてはユダヤ人も多く住んでいた。
トランシルヴァニアのユダヤ教会には
まだ一度も入ったためしがない。
残念ながら、その扉も閉ざされていた。

朝もやの中を路上で軽く朝食を済ませ、
まずはミシンの持ち主の家を訪ねた。
ミシンは思ったとおりのずっしりとしたもので、
状態もよかったので直ぐに購入。

ミシンの後は、町の散策に出かける。
トゥルグ・ムレシュの町を歩いていると、
孔雀の羽をあしらった門や、
チューリップを様式化した壁面の飾りなど・・・
いかにアール・ヌーヴォー建築が多いかに驚かされる。
通りには、中世からの石畳も見られる。

私たちが世紀転換期の世界に浸っていると、
ギラギラと目新しいブティックの列、
そして社会主義時代の巨大なモニュメントがドンと現れ、
思わず苦笑してしまう。

やがて最大の目的である文化会館が見えてきた。
20世紀はじめに建てられた劇場+コンサートホール。
20世紀ハンガリー芸術の金字塔・・・と私は呼びたい。

BETHREHEM 048

ちなみに隣は警察である。
まさか警察のためにこんな美しい建物が計画されたなんて
考えにくいし、元々は何に使われていたのだろう。
フォークアートのチューリップを模った、
セラミックがキラキラと輝いていた。

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ルーマニア語、ハンガリー語で書かれた
「文化会館」の文字の下には、
モザイク画が見られる。
HUNGARIAの玉座に座るのは
擬人化されたハンガリーそのものだという。

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別の壁には、
民俗衣装を着て機織りをしているような、
糸を紡いでいるような女たちの姿。
楽器を弾いているようにも見える。

BETHREHEM 015

入り口の扉の鉄格子も、
まるで孔雀のようなハートが渦を巻いている。
西欧に端を発したアール・ヌーヴォーも、
東欧にまで伝わると
今度は土着のフォークロアと結びついた。
ハンガリーでは、これを「ハンガリー様式」と呼ぶ。

BETHREHEM 018

入り口まで来てみて、愕然とする。
張り紙には、月曜休館の文字。
あっと声を上げる。
「ちゃんと調べてくるんだった・・・。」

この建物の一階は、ツーリスト・インフォメーションになっている。
私たちは帰りの汽車を調べようと中に入った。
事務員がテキパキと、時刻表を書き取っている間に
ダンナが文化会館へ入れるかどうかを尋ねてくれた。
「 一階だけなら入れると思います。
 こちらへどうぞ。」と思いがけない返事。

私は、半分夢心地で中へと足を踏み入れた。
中へ入って、思わずあっと声が出る。

BETHREHEM 026

自分の体が、そのままタイムスリップしてしまった感じ。
これまでアール・ヌーヴォーを外から眺め、
感じることは多かったが、
360度全てがこの世界・・・・
まるで鳥肌の立つような、
不思議なパワーを感じる。
これだけ密集しても、
これだけさまざまな要素が入り混じっていても
何の違和感もなくまとまっている。
まさに装飾の力なのだ。

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BETHREHEM 044

正面へ進むと、
天使の像にはさまれた碑が見られる。
ハプスブルク帝国の皇帝ヨセフ・フェレンツによって建てられた
この文化施設への寄付したものの名前が挙げられている。
公爵や実業家、弁護士、医者・・・・。
社会主義時代には、この碑は取り除かれたままで、
ここ最近やっと元の場所に取り付けられたそうだ。

BETHREHEM 029

正面と、劇場入り口をはさんで両脇には
クルシフーイ・クリーシュ・アラダールによる
フレスコ画が見られる。
幻想的で透明感にあふれた色彩、
物語や伝説をテーマにした
ドラマチックな光景に思わず息を呑む。

ハンガリーのキリスト教受容するまえの、
シャーマンを中心とした信仰世界。

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画家がこよなく愛した、
トランシルヴァニアのカロタセグ地方の民族衣装。

BETHREHEM 036

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BETHREHEM 046

中へと招かれて、劇場も見学。
うすいブルーの壁に黄金色の装飾が、
夜明け前にまたたく星のよう。

よくよく見てみると、
それは星ではない。
ハンガリーのフォークロアに見られる
鉢から体をくねらせて伸びたチューリップ。

どうして、ここまでフォークロアに執着したのだろう?
農村に生きる人たちの芸術が、
ただナイーブで新鮮だ・・・というだけではなく、
自分たちのかけがえのないルーツであると信じていた、
その思いが伝わってくるようである。

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さて見学もそろそろ終わり・・・というところで、
上への階段がふと目に留まった。
思わず興奮して、上へと足がのびてゆく。
なんて斬新な花模様!

BETHREHEM 040

これまでの具象的で、繊細な植物もようとは打って変わって、
マットなエメラルドグリーンと、黒、カラフルな配色。
黒地にベネチアン・グラスをちりばめたよう。
アール・デコがここには到来したかのようだ。

奥に見られるのは
ハンガリーを代表する作曲家、フェレンツ・リストを模った
ステンドグラス。

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このようにして、
文化会館・・・
アール・ヌーヴォーの宮殿の見学は終わった。
この二階には、最大の見所である「鏡の間」が控えていたが、
今回は仕方がなく見送ることにした。

ハンガリーの美術、工芸、建築・・・
あらゆる美と技術の結晶。
それに劇場の中のパイプオルガンは、
当時の世界最高レベルのものであるという。

どうして、トランシルヴァニアの中規模の町に
こんな大々的な建築物があったか・・・
それは、マロシュ・ヴァーシャルヘイ(現在の、トゥルグ・ムレシュ)の
市長の力によるところだという。

そして残念なことに、
鏡の間にあるステンドグラスのシリーズは、
国際博覧会へ出品する予定であったのが、
第一次大戦が始まったために、
世界の陽の目を浴びる機会を失ってしまったということだ。

それ以降、
アール・ヌーヴォーの流行が去るのと同時に、
ハンガリーの工芸は衰退していってしまった。

やがてトゥルグ・ムレシュを電車が離れ、
山を越えて待っていたのは
一面の雪景色だった。

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*旧ソビエト製ヴィンテージ・ミシンについては、
 もうひとつのブログで。

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Genre:海外情報

comments(4)|trackback(0)|アート|2008-12-21_07:52|page top

ハンドメイドのクリスマス市

エルドゥー・ヴィデーク(森の地方)のとある村で、
ハンドメイドのクリスマス市が開かれるという情報を聞きつけた。
12月の割には暖かな日曜日、
正午のバスに乗り込んだ。

セントジュルジから西は、深い森がどこまでも広がっている。
冬の柔らかな日差しが、山間の村々を優しく照らす。
やがてエテルカおばあちゃんの住むアーラパタクも通り過ぎ、
バスはさらに山のすそを伝って北へと進む。

遠くを見やると、白く霞んだ大地に
ぼんやりと大きな山が見えた。
ダンナにふと、その名を聞いてみると、
「 あれは、クリズバの山だよ。」と返ってきた。
クリズバとは、義父が生まれた村のことだ。

この平原に見える川を隔てた向こう側は
かつてドイツ系ザクセン人の住んでいた地方である。
ダンナの父はハンガリー系だが、
その村にはルーマニア系とハンガリー系が混ざり合い、
そして民家はザクセン文化の影響を受けている。

道が悪いのか、タイヤがおかしいのか、
バスはガタンガタンと物凄い揺れ方である。
ふだん車酔いはしない私でさえ、少し気分が悪くなってきた。

そうして揺られること約40分で、
目的地であるナジ・アイタヤ(大きな扉)に到着。
道中は見られた太陽が、もう姿を隠していた。

市が始まるまでに、まだ時間があるらしい。
私たちは、村を散策することにした。
町の入り口では、古い建物が荒れ果てた表情を見せる。

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小高い丘を登っていくと、墓地にたどり着いた。

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振り返れば、遠くに隣村が見える。

mikulasnap 019

さらにこの丘を進むと、村の教会が見えた。

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トランシルヴァニアでは珍しくない、この要塞教会。
中世のハンガリー王国の国境であったこの辺りは
戦火が激しかった。
そこで、村の中心であった教会が
戦いの場となった訳である。

高く積み上げられた石壁には、
こんな風に戦争の名残も見られる。
ここから、銃が顔を出したのだろう・・・。

mikulasnap 026

教会の周りは、墓場になっている。
私たちの目的は、これである。
エルドゥー・ヴィデーク地方のプロテスタント教会では、
美しく彫刻されたコピャファ(矛の木)と呼ばれる
木の墓標が見られる。
この美しい文様は、ハンガリーの
アール・ヌーヴォーの芸術家たちをも魅了した。

mikulasnap 031

ここが教会の入り口。
ドラキュラでも出てきそうな雰囲気・・・

mikulasnap 040

もう体も冷えてきたし、
そろそろ暖かい飲み物が欲しくなってきたので
クリスマス市へと向かった。

村の中心の広場の、巨大なモミの木がクリスマスツリーとなり、
こじんまりとしたお店が並ぶ。
木で出来たパズルのようなおもちゃや、
ハチミツクッキー、
花模様がペイントされた板、
地域自慢の織物・・・
小規模だけれども、
手作りのぬくもりが感じられる出し物ばかりである。

mikulasnap 075

昔ながらの、ワラで作ったクリスマス・オーナメントにも味がある。
煌びやかなものを見慣れた私たちには、
かえってこちらの方が新鮮である。

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織物を広げているおばあちゃんと話していたら、
「 こちらに織り機があるから、見に来なさい。」
と言われるままについて行く。
広場に面した大きな建物の中へ。

大きな機織り機には、作りかけの作品が。
おばあちゃんは、
「普段はね、靴下だけでするんだけれど、
 今はブーツを履いているから、やりにくいわ。」
と言いながらも、薄暗い部屋の中で腕を披露してくれた。
さっと糸を通して、ガシャン。
その鮮やかな手の動きに、足も加わっている。
若い女の子たちも、横から興味深そうに眺めている。

mikulasnap 054

木の色がいい感じに茶色帯びているので、
「 これは、どれくらい古いのだろう。」とつぶやくと、
おばあちゃんが、
「 きっとこれと同じくらいよ。」と見せてくれたものは、
糸を入れた細長い木の箱。(これをシャトルと呼ぶらしい)
そこには1892年と文字が刻まれている。

100年もの間に、この機織り機は
一体どれだけの作品を生み出してきたのだろう?
私たちが日常に使う道具に、
100年もつ物がどれだけあるのだろう?
そう思うと、この木の道具が愛おしく感じられた。

やがて機織りを見物していた女の子たちが、
踊りの練習を始めた。
もうすぐ出番で、広場のステージでフォーク・ダンスを披露するのだ。

mikulasnap 060

このクリスマス市のイベントは夜遅くまで続くそうだが、
私たちは帰りのバスへと向かった。
もう4時、曇った空にも夜の気配。

帰りがけに、砂糖の焦げるいい香りが流れてきた。
トランシルヴァニア名物、クルトゥーシュ・カラーチ。

mikulasnap 078

薄く延ばした生地を棒に巻きつけ、砂糖をまぶしたものを
炭火の上でじっくりと焼く。
砂糖が溶けて、こんがりとキツネ色になったら出来上がり。
クルミをまぶして、いただきます。

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パリパリの生地と、
ほんのりとイーストのよい香り。
それは食べたらクセになる、トランシルヴァニアの味。
かじかむ手に、暖かなお菓子のぬくもりも心地よい。

やがてバスに乗り込む。
クリスマス市で出会ったおばあちゃんたちの
名刺をにぎる。
今度は、どんな手仕事との出会いが待っているか・・・楽しみである。



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comments(8)|trackback(0)|イベント|2008-12-13_05:29|page top

風邪封じの薬

風邪のはやるこの季節、
日本なら生姜湯や卵酒、ネギなど・・・
昔から風邪に効く薬は、親から子へと言い伝えられてきている。

トランシルヴァニアでは、塩が効くという話。
息子が風邪を引いたときに、
塩を炒ったものをフキンで包み、
それをのどに当てて寝るとよいと聞いた。
早速試してみたが、息子が嫌がったため
やむなく中止。

翌日フキンを開いて触ると、
中の塩はまだ温かかった。
きっと、この保温効果がいいのだろう。

そして、もうひとつは大根シロップ。
こちらの大根の品種は、皮が真っ黒で
カブのように丸くて太い。

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この分厚い皮をきれいにむいて、
中央に大きく穴を開ける。
それから箸で下まで穴を貫通させておく。

mikulasnap 001

それからこの穴に、砂糖をサラサラ・・と流す。
穴が一杯になるまで入れても大丈夫。

mikulasnap 002

そのまま一晩置いておくと・・・
砂糖が大根にしみ込んで、
穴を伝って下に落ちていく。
こうして出来たのが、「大根シロップ」である。

mikulasnap 010

こちらの乾燥した空気のせいで、
大根はもうカラカラに干からびてしまった。
大根の栄養と砂糖の甘みが混ざった
このお薬の味は、息子にも大好評。

良薬はたくさんあるけれど、
風邪は引かないに越したことはない。
皆さまも、どうぞお気をつけください。


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comments(8)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2008-12-12_05:39|page top

サンタが幼稚園にやってきた!

12月5日、その週最後の登園日にミクラーシュがやってきた。
ハンガリーでいう、サンタ・クロース。

ハンガリーのカレンダーを見ると、
日にちの横にはいつも名前が並んでいる。
本当ならば12月6日ミクローシュとある。
これが、ミクラーシュの名前の日。

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その日は、朝から子供たちはそわそわと普段以上に落ち着かない。
円になって、アドベントのリースを囲んで座っている間も
「ミクラーシュはいつ来るの?」とささやきあっている。
今週はアドベント1週目だから、
ひとつのロウソクに火を灯す。
オレンジ色の優しい光を見つめると
体の芯がホカホカと暖かくなるようだ。

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子供たちは先生の後をついで、
ミクラーシュの詩を朗読する。
それから、歌を歌いながら電車ごっこ。

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廊下に出ると、先に男の子がお手洗いに。
女の子たちは、先ほどの歌の続きを歌っている。
それから、こんな盛り上がりも見せた。

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続いては女の子がお手洗いに行く間、
男の子たちが待つ番。
男の子はというと・・・他愛のないことで大騒はしゃぎ。

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いつものように10時のおやつが始まる。
お祈りをして・・・いただきます!

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さて食事の後は、いすを遊び部屋に運ぶ。
子供たちはミクラーシュが来るのを今か、今かと待ちかねている。
たまりかねて、窓から外をチラチラと覗き見する子も。

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やがて・・・ピンポーン!
とインターホンが鳴り響き、緊張が走る。
先生が出ると、何だハンナのお母さんだそうだ。

それからもざわざわとおしゃべりが始まると、
突然低い声で
「 ここかね。ユーリア先生のクラスは。」
振り返ると、そこには真っ白なおひげのミクラーシュおじいさん。

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あっ、来た!!!
子供たちのこの嬉しそうな顔ときたら。

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大きな赤い袋を抱えたミクラーシュは、
「 荷物が重いので、手伝っておくれ。」と声をかける。
すると男の子たちはすぐに飛んで行った。

ミクラーシュが重い腰をいすに下ろす。
子供たちはまだ夢から覚めやらぬ風で、
じっと白ひげのおじいさんの挙動を見つめている。

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先生がミクラーシュの詩を朗読するように促して、
みんなは元気よく大きな声で暗唱した。
そして、サンタさんは一人ずつ子供たちを呼び寄せる・・・・

いつもの元気はどこへやら、
はにかんだような表情を見せる女の子。
まだ怖くて、ミクラーシュに近づくことすら出来ない年少の子。
今は詩や歌をうたう気分じゃないと訴える子。

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それでも、ミクラーシュが優しく子供の肩を抱き、
よく通る低い声で語りかけると、
まるで、つぼみがほころんだように
すてきな表情を見せる子供たち。

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bogi.jpg

アヴィゲールの両親はハンガリーに出稼ぎに行っているので、
普段はおばあちゃんが面倒を見ているという。
「 夏にお母さんたちのいるブダペストに行ってね、
  海岸にも行ってきたのよ。」
「 ブダペストに海があるのか?」と驚いたミクラーシュおじさん。
(ハンガリーには海がありません)

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普段はあまり幼稚園に姿を見せないぺトラ。
懐から紙を取り出して・・・

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驚いたことに、長々と詩の朗読を始めた。
識字教育が遅いトランシルヴァニアでは、珍しいこと。
家でお母さんが教えてくれたとのこと。

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「 チャナード!」 と一人の男の子の名前が呼ばれる。
クラスで一番の暴れん坊である。

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「 クラスのみんなと仲良くしないとだめだぞ。
  いつもバラージュとおもちゃを取りあうそうじゃないか。
  ほらあっちへ行って、バラージュに優しくするって約束しなさい。」

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チャナードは息子のところへ行って、仲良し宣言をした。
普段から息子は、この子のすることが気になって仕方がないらしい。
悪いこともするが、それだけに魅力的なのだろう。

「 話したついでに、バラージュ。」 と息子の番がきた。
ミクラーシュおじいさんの言うことに、珍しくじっと耳を傾ける息子。

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「 困ったことがあるときは、
  泣かないでちゃんと先生に言いなさい。」
息子はおとなしくうなづく。

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そして、遊び歌を歌い始めた。
「 丘でクルミを割りましょう。
  どうかお願い、よく見てください。
  そして、地面にしゃがみましょう。よいしょ。」

あれ、本当はキラキラ星を日本語で歌うはずだったのに・・・
「 バラージュ、星の歌は?」と先生が聞いても、
忘れたの一言。
プレゼントをもらって、さっさと座ってしまった。

忘れられない素敵な思い出をくれたミクラーシュおじさん。
今夜もよい子の家にプレゼントを届けにきてくれる約束をした後、
帰っていった。

次はまた来年・・・
みんながよい子でいたならば、きっとまた会える。

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*息子の通う白雪姫幼稚園のHPはこちら
  ミツバチ組のページに飛びます。




Theme:海外の子育て
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comments(2)|trackback(0)|ルーマニアの育児|2008-12-11_03:25|page top

手芸のおばあちゃんを訪ねて

ある晴れた日の午後、
町から20Kmほど離れたところにある村へ
とある有名なおばあちゃんを訪ねに行くことにした。
その方は、学校の教師の傍らで手芸を教えていた。
70年代には「アーラパタクのフォークアート」と題した本が出版されたが、その編集にかかわったのがルーリンツ婦人エテルカおばあちゃんである。

私たちの住む村、セントジュルジから西の方角は深い森がどこまでも続く風景。
ここから二番目の村なのに、距離は20Kmも離れているというから、どんな風であるか想像に難くないであろう。
自然は文句なしに美しいのだが、この辺りは村がほとんどジプシー化されてしまったため、民家は荒廃した感じだ。

私たちの乗った大型バスは森に挟まれた道を、右へ左へとくねりながら進んでいく。
野原では羊を放牧するさまが見られた。
たまに別荘などが見られるだけで、ほとんどが手付かずの自然な状態だ。

私たちが座ったのは、ちょうど真ん中の辺り。
すぐ横には後部ドアがあるのだが、絶えず隙間風が吹いてくる。
見るとこのドアを閉じているのは、いかにも頼りないカギだけ・・・
何かの拍子にパッとドアが開きかねない感じだ。

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私の心配をよそに、バスは無事アーラパタクへと到着。
並木のある通りを、家の番号を見ながら探す。
とあるハンガリーの旅行本に、おばあちゃんのことが紹介されているし、住所も載っているので安心だ。

この地域はドイツ系のザクセン人の村の造りに似ていて、通りぞいに一列にずっと家と門が並んでいる。門は家の屋根に届くほど高いので、中の様子がうかがうことができない。
番号を探し当て、門の扉を開けようとすると犬がほえたので、すぐに家の主が出てきた。

彼女がルーリンツ婦人エテルカおばあちゃんだ。
静かな口調で用件を聞くと、すぐに家の中に通してもらった。

家の玄関に入ると、すぐに赤と白の幾何学模様が目に飛び込んでくる。
「これは、私が小学校3年生の時に作ったものよ。」と指差すほうを見ると、大きな星模様が印象的なクロスが敷かれていた。
こんな完璧な作品を見ると、私は3年生のときに何ができたであろうか・・・と思わざるを得ない。

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特に目を惹いたのは、ミニチュアのベッドに織物が何重にも敷かれ、上には刺しゅう入りの枕が積まれているものだ。

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これは花嫁さんの嫁入り道具である。
年頃の娘は、枕やシーツ、タオルなど生活用品をコツコツと作りためておく。
女性にとって、針仕事がいかに大切であったかがよく分かる。

このセーケイ地方の南部では、一見まるで織物かと見間違うようなクロスステッチ刺しゅうが主である。一目の狂いもない、正確なクロスステッチ・・・
赤一色であるから、なお模様の美しさが生きてくる。

本来は枕の端の部分にだけ、装飾の刺しゅうをしていたそうだ。
それが、だんだんと華やかさを強調して枕の表全体に刺しゅうをするようになった。
枕は正面ではなく、端をチラッと見せるのが本当なのだ。

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織りはおばあちゃんの創作である。
図案は全て自分で考え出したというから、すごい。
作品の製作年をユニークなやり方で入れるのが、エテルカおばあちゃん流。
どこにあるか分かりますか?

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セーケイの民族衣装を着た女の子がブランコをしている。
「 ヒンタ、パリンタ、ザクセンの森にマダールカ(鳥さん) 」
これは、ブランコをするときに歌うわらべ歌のようなもの。

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ブランコをつる板の部分に、1974年製作とある。

女の子が2人糸をつむいでいるそばで、男の子が間に立っている。
「 私は18歳の時に、お嫁に行く支度をしました。 」

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ここでは、お皿を飾る棚のところに、アーラパタク、1970年とある。

これはおばあちゃん自身のことかしら・・・と思っていると、「これはこういう民謡からきているのよ。」と歌を聴かせてくれる。
フォークアートはそれだけ単独にできているのではなく、農村に生きる人たちの生活、あこがれ、ユーモア、趣向・・・・あらゆるものが含まれているのだ。

さらに部屋には、イースターエッグやレースの縁飾りが壁にびっしりと並んでいる。
本当に展示室にでも来たかのようだ。

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おばあちゃんのキッチン。

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どうしてこの村だけがこんなにも針仕事で有名なのかと尋ねた。
すると、おばあちゃんはきっぱりとこう答えた。
「それは私がいたからよ。村に一人でも、古くから伝わるものを大切に残そうと集めれば、それで十分。」

そう、これはちょっとした村の住民の意識の問題なのだ。
もしもエテルカおばあちゃんのような人が、他の村にもいたら・・・そう考えると、エテルカおばあちゃんがいかに貴重な存在であるかが分かると同時に、残念でもある。

おばあちゃんはもう針を持つことができない。
帰るがけに、自分の手を私たちに見せた。
いくつもの作品を生み出したその黄金の手は、高齢のために震えていた。

家を出た後に、教会にもおばあちゃん作の刺しゅうが飾られているというので、見に行くことにした。
小高い丘にひっそりとそびえる教会。

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中はちょうど改装中で、飾りは全て取り除かれていた。
教会をぐるりと囲んで並ぶ墓、この平野の向こうには大都市ブラショフの姿も浮かんでいる。

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このアーラパタクのフォークアートの担い手も、あのおばあちゃんで最後だろう。
通りを行きかうジプシーの人たちを見て、そう思った。
村に住む人も時代と共に、こうして入れ替わってしまうのは寂しいような気持ちだ。

ただあの赤と白の強烈な刺しゅうだけは、ずっとそのままである。


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*こちらは手芸雑誌「ホーム・スウィート・クラフト vol.5
 に掲載されました。
 なお雑誌の記事の写真は、プロの写真家が撮ったものです。
 あわせてこちらもご覧ください。
 

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(4)|trackback(0)|セーケイ地方の村|2008-12-04_23:35|page top

雪の楽しみ方

雪が二日二晩と降りつづけた次の朝、
息子を連れて白銀の世界へと飛び出した。
全てが凍る雪の世界の気温は・・・
私の感じからいくとマイナス20度といったところか。
札幌の雪祭りさながらの芸術品が並んでいる。

hofeher.jpg

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家の軒先には、長さは30cm以上の太いつららが並び、
まるで凶器のようである・・・

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初めてつららを手に取った息子は大喜び。

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約束していたように近所の子供たちがやってきたので、
そりを引いてさあ出発。
息子は当然のように、そりの上にまたがっている。
足をまっすぐ伸ばしているのは、足が雪まみれにならないためだ。

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ちなみに背景の不思議な建物。
町外れに新しく出来た共同墓地の葬儀場。
ハンガリーの有名な建築家、マコベツ・イムレが設計したとか。

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宮崎からの里帰りの後だったので、
いくら厚着はしていても、この寒さはやはり堪える。
せいぜい30分くらいしか耐えられないとあらかじめ断りを入れておいた。

やっとのことで、町外れの谷間にやってきた。
つい2、3ヶ月ほど前までは青々とした草が茂り、
羊や馬が放牧されていたのが嘘のよう。
一面が真っ白。
11月終わりの寒さは、全てを雪で覆ってしまった。

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しばらくため息をつくのも忘れて風景に見入っていると、
子供たちはどんどん崖を下りていってしまった。
私も息子の手を引いて、
一緒に雪の中へとなだれ込む。

やがて谷を乗り越えたところで、
そり遊びが開始する。
子供たちに、4歳の息子にはここでよいと何度も繰り返し、
谷あいの小さな坂からそりは滑り降りた・・・・
と思ったら意外に進まず、途中の雪で止まって転げ落ちた。

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今度は熟練をしたお兄ちゃんの番。
子供たちは、寒さは全く忘れてしまったようにそりに夢中になる。
私にもこんな時代があったのだろうか。

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谷あいの茂みには、秋の実りの名残も見られる。
鳥にも食べられなかった黒い実は、カチカチに凍っていた。

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ふと見やると、息子は雪の中でじっとたたずんでいた。
やはり寒さがこたえるのだ。
・・と思ったら、雪が口の中に入ってしまったらしい。

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このくらいの坂道では満足しない子供たちに
引っ張られるようにして、
私たちはさらに小高い山を目指すことになった。

レヴィが突然、雪に寝そべって
手足をバタバタと動かした。
「雪の天使を作っているんだよ。」
それでも意味がよく分からない。
そして彼が立ちあがった後の雪を見て、やっと分かった。

手足を左右に動かして・・・

ho10.jpg

こんな可愛い天使の型の出来上がり。

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さらに雪の道を上へ上へと進んでいると、
前方の雲行きが怪しい。
どんよりと重く灰色に濁っている。

先ほどから、時折吹きすさぶ冷たい風にも我慢ならない。
風と一緒に、雪の粉が降りかかってくる。
風景が白く霞んでみえるほどだ。

ho13.jpg

ついに私は山を登ることを断念した。
子供たちがそりをして下りてくる間、
その場で見届けてから元の道を引き返す。

谷を下ると、またあの崖が待っていた。
いよいよその最後の難関を越えようとしたとき・・・
息子を引いたそりは、まだ後方に残っていた。
滑り降りると、転倒したのか息子が泣き叫んだ。

慌てて駆け寄ると、
どうやら怪我をしたわけではないようだが、
足が寒さでかじかんでいる様子。
私は息子を背負って谷をわたるが、
崖までは上れない。
そりで引いても足が引っかかって、さらに泣き叫ぶ。

今日の一日を悔いるとともに、
この苦難をどう乗り越えようと頭が混乱する。
仕方なく息子の手を引っ張り、
崖を乗り越えたときはもう疲労困憊。

それからの帰り道もまた長かった。
そりから何度も落ちそうになって、べそをかく息子を引いて帰る
雪道は悪夢のようだった。

暖かい我が家について、
布団に寝かせるときに聞いてみた。
「またそり遊びがしたい?」
すると息子は苦い顔をしていった。
「ううん、もうしたくない。」

今年の初雪には、苦い思い出が残ってしまった。


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comments(10)|trackback(0)|ルーマニアの育児|2008-12-03_00:15|page top

冬の日のフクロウ観察

私たちがトランシルヴァニアに帰って
3日目には、この冬初めての雪が降り始めた。

夜からずっと降り続いていた雨が
徐々に重みを増してみぞれのようになり、
やがてフワフワの天使の羽のような
白い塊が次から次へと舞いおりてきた。

雪の降りはじめる瞬間を見ると、
いつものように驚き、そしてある感動に包まれる。
殊に、暖かい室内からその様を眺めているのは、
飽きることがない。
 
驚くほどスローで次から次から生まれては、
消えてゆくの繰り返しを眺めていると、
まるで時間さえもが止まった、
というよりは同じところで足踏みしているような感覚。

ところで、ここ数日間の私の楽しみのひとつは、
窓の外の唐松の木に泊っている
フクロウを見ること。

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つんと尖った耳、そしてフワフワの茶色い毛を覆った
丸っこい体は愛嬌がある。
はじめ一羽だったのが、多いときでは7羽も見られるようになった。
どんなに寒い朝でも、そこで不動のまま
居眠りをしている。

幾度か撮影を試みたが、
望遠レンズなしのカメラではどうしても距離が足りない。
それでも一番近く正面が撮れたものは
こんな感じである。

bagi.jpg

このフクロウが、たまに瞬きをして首を横に回したり、
毛づくろいを始めたりしたので、
あわてて今度はビデオカメラを持ち出した。
もちろん望遠つきだ。

キッチンの横の分厚い二重窓をあけるもの、
神経を使う。
音を立てないようにそっと・・・外れた。

するとドッと真冬の凍りつくような空気が
室内になだれ込んでくる。
中には小ぶりの雪も混じっている。

それでも窓枠にひじをまっすぐに立て、
カメラの準備を始める。
時々、フクロウの様子を確認してみたが、
いまだ私の動きには気が付いていないようだ。
それとも、関心がないだけなのか。

学校の校庭を背景にした唐松が、画面いっぱいに映し出される。
それからだんだんクローズアップして
(このスピードが意外に難しい)
やがてカメラの焦点が例のフクロウに当たった。

その茶色い小動物は、いまだ横を向いたままだ。
目は開いているのだろうか。
その静止した状態を数分とり続けると、
不意に身動きを始めて、
今度は毛づくろいを始めた様子。

一心に懐の下あたりを、つついている。
正面下を見たフクロウの目は、
まるで微笑んでいるかのように目じりがさがっている。

そしてゆっくりと、再びその顔を上げた・・・
そのレンズの中のフクロウが
今度は私の顔をまともに見る。
赤みがかった茶色い瞳を、まん丸に開いて。

私はその場に凍り付いて、
まだなおカメラを回していた。
私が見ているのがビデオカメラのレンズでなければ、
きっと恐ろしくて、そのまま見続ける事はできなかっただろう。

瞬きすらせずにこちらを凝視する
その丸く茶色い瞳には、
怯えたような表情も読み取ることができる。

その時間たるや私には数分に感じられたが、
おそらく数十秒だったのか・・・
この摩訶不思議な生物を見たということなど
すっかりと忘れてしまったかのように、
元のようにまた横顔を見せていた。

私はカメラの焦点をゆっくりと引いてゆく。
そして画面が再びもとの学校の校庭を映したとたん、
カメラの電源を切った。

気が付くと氷のように冷たくなって手に、
血が通い始める。
生まれたばかりの最高傑作を見せるため、
家族の下に飛んでいったのは言うまでもない。

そのまま消えてしまうかと思われた雪は、
一日、二日と静かに降り続き
気が付けば窓の外は白銀の世界に豹変していた。

 


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comments(4)|trackback(0)|自然、動物|2008-12-02_12:10|page top