トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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End of my journey

「 ジプシーとは?」というテーマのもと、
ルーマニアのクレジャニ村、トランシルヴァニアの村々へと
ジプシーを追った一週間の旅。

劇場Uplinkでも上映された
ショート・ムービーEnd of my journey
ただいま、こちらでご覧いただけます。

ファッションブランドMeanの春夏コレクションのファッションと、
世界的ジプシーバンドTaraf De Haidoukusの音楽、
加藤アラタさんの映像美の融合・・・。

一瞬一瞬を強く激しく、鮮やかに生きる
ジプシーの精神性。
フィルムのなかに閉じ込められた
彼らの日常が、
生き生きとそれを物語っています。

mean 2010 SPRING & SUMMER EXHIBITION [ Gypsy ]
End of my journey


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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(0)|trackback(0)|ジプシー文化|2010-02-28_11:31|page top

カティおばさんの故郷

朝もやに包まれたイェッドの村を歩いていく。
夏とは違って、
冬はひっそりと静まりかえった村の通り。

真っ白の風景に、
鮮やかな原色のスカートが目に飛び込んできた。
「 テー・バフタリ!(あなたに幸運がありますように。)」
ちょうど家から出てきたばかりの
おばさんにロマ語で声をかける。

「 テー・バフタリ!
 まあ、今回はひとりなの?」
と今度はハンガリー語で返事がかえってくる。

「 ええ、今からカティおばさんのところへ
  行くところなんです。」
足取りをすこし休めて、答える。

イェッドに来るのは、もう6回目。
この村のジプシーの人たちは、
ガッジョ(よそ者)に、愛情をこめた好奇の目をそそいでくる。
それが心地いい。

ピンク色の壁に、えんじ色と白のしま模様が
カティおばさんの家の目印。
クリスマスの飾りもまだ残ったままだ。
「 チョーコロム(キスを)!
  カティおばさん。」と扉をひらいた。

「 さあ、中へお入り!
  靴はいいから、そのまま。」といつもと変わらず、
歌うような声の調子。

「 テリー(たかのてるこさん)たちが行ってしまったあとは、
 寂しかったわ。あれから、足を痛めてね。
 注射を何本も打ってもらったのよ。」と足をさする。

お砂糖たっぷりの、
レモ・ネードのように甘い紅茶をいただきながら朝食。
年末年始のエピソードに花を咲かせる。

「 そういえば、ムンドラはもういないよ。
 ダンナが連れて行ってね。
 それから一週間して、子供も連れて行ったわ。
 そのせいで、リンコは怒ってる。」

思わず息を呑んだ。
彼女が一ヶ月前に宣言していたことが、
こんなにも早くなるなんて。

一度は母親に引き離されたふたり。
今度はうまくやっているのだろうか、
彼女の顔が見たくなった。

「 明日に発つのなら、
 あそこの村へ行くのは無理ね。」とおばさん。



トゥルグ・ムレシュ行きのバスに乗り込み、
カティおばさんと買い物の用事をすませる。

町を歩いていると、
バスを見ながらふと思いついたように
つぶやいた。
「 ねえ、セントジュルジへ行ってみましょうか?」

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カティおばさんの故郷であるマロシュ・セントジュルジは、
町のすぐとなりにある、国道沿いの大きな村。

広場からマイクロバスに乗り込んで
車に揺られること、15分ほど。
温泉前の停留所で下車した。

ひっきりなしに車の行きかう大通りから
中へ入ると、とたんに村らしい雰囲気になる。

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通りはどこもかしこも、氷の膜で覆われている。
こんな坂道はとくに、歩くのが大変そう。
なんとなくジプシーの住んでいそうな通り。

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坂道を下りてやってくるのは、
どこかで見覚えのある顔。
結婚式でいっしょにダンスをした
ギズィおばさんだった。
いとこ同士の再会で、おしゃべりもはずむ。

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偶然の出会いで、彼女の家へ立ち寄ることになった。
氷でつるつるになった坂道を上っていく。
「 ここの通りは、ほとんどがジプシーよ。」とおばさん。
こんな寒い中でもジプシースカートが、きれいに干してある。

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寒い中でも、子供たちは元気にそり遊び。

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坂を上りきると、おばさんは立ち止まった。
 「 ここが私の家よ。」
おばさんの後について家の中へ。
家具が少なく、がらんとした印象は
たいていのジプシーの家で感じること。

壁際のいすに腰をかけると、
女性がちょうど赤ちゃんにお乳を飲ませている。
「 結婚式で会ったわよね。あなたのこと、覚えてるわ。」
とやさしそうな笑顔をみせる女性。
「 ほら、あのとき髪結いをしたのは私よ。
  花嫁の母親。」

思わず、あっと声をあげる。
あの16歳の可愛い娘の母親には、
まだこんなに小さな子供がいるのだ。

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ギズィのお嫁さんは、
ジプシースカートのお針子さんであると聞いて、
縫った洋服を見せてもらうようにお願いをした。

食料貯蔵庫として使われるはずの
北向きの小さな倉庫では、
カラフルなスカートがくるくると巻かれて
ぶら下がっていた。
そのひとつを解いて見せてくれた。

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ウェストには、たっぷりとミシンステッチが施され、
ぎっしり詰まったプリーツが波打っている。
大きなレースがいかにも、ジプシー好み。

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次々に人が入ってくるので、
誰が誰の子かわからなくなる。
成熟するとすぐに花嫁、母親、おばあさん・・・というように、
世代の入れ替わりが激しい。

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トゥルグ・ムレシュ周辺のジプシーは、
美人が多いことで有名。

IMG_9113.jpg

にぎやかなギズィおばさんの家を出て、
やっとカティおばさんの生家へと向かう。

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「 ここが、私たちの通りよ!」カティおばさんが振り返った。
立て札には、「せまい通り」という名前が書かれていた。

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「 この通りにはね。私たち親類一族が住んでいたの。
 ここの家の弟も死に、あっちももういない。」
細く小さな通りを上っていく。

一軒の古い民家にむかって、歩みを進める。
ピンク色の壁に、
色のはげかけた緑のベランダがついた家。
「 ここで、私たち6人の兄弟が生まれたのよ。」
今では、カティおばさんの弟さんのお嫁さんと
娘さん家族が暮らしている。

IMG_9163.jpg

娘のカティが精一杯のおもてなしをしてくれた。
肺に欠陥のある子供さんをかかえて、
それでもさっぱりした陽気な性格の持ち主のようだ。

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カティおばさんが小さいころ、
そりをして遊んだという丘。
今も真っ白い雪で覆われている。

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「 暗くならないうちに、帰らないと。」
帰る仕度をする私たちを、
カティが息子さんの手をひいて見送りにきてくれる。

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「 セントジュルジも悪いところじゃないでしょ。」
14歳のときに故郷を離れたカティおばさん。
こんな風に見送りに行く途中、
後にご主人さまとなる男性にイェッドまでつ連れていかれた。

「 今の私があるのは、主人の両親のおかげよ。
 まるで自分の娘のように、私を愛して、
 そして育ててくれた。
 不思議だけれど、実の両親よりも
 ずっと愛着があったのよ。」

「 私は、やっぱりイェッドの村がすき。」
と思わず答えていた。
あの人懐こい人たちの顔が浮かんでくる。

今はその両親も、
ご主人さまもいないイェッドの村。
私たちの乗ったバスは、私たちを
彼女のもうひとつの故郷へと運んでいった。




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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(0)|trackback(0)|ジプシー文化|2010-02-23_00:22|page top

ルーマニアの夜行列車

カチカチに凍りかたまった道を
歩くこと40分、
スフントゥ・ゲオルゲの駅に着いた。
時刻は、夜中の12時をまわったころ。
足早に歩いたせいで、
すこし汗ばんでいる。

切符を買うと、駅員さんがこういった。
「 列車は、35分遅れよ。」
・・・ああ、やっぱり。

いすに腰かけて、切符を見つめる。
トゥルグ・ムレシュまでは、
250kmの距離。
それなのに、かかる時間は
なんと6時間。
鉄道路線が大きく反れるためである。

剥げたタイルの柱に、
泥で黒くまだらに染まった床、
閉鎖されたスタンド・・。
無機質な駅の構内をぼんやり眺めていると、
おじさんが話しかけた。
「 どこから来たんだい?」

ルーマニアの人は、暇つぶしが上手だ。
というよりも、おしゃべり好き。
慣れないルーマニア語を駆使して、
なんとか言葉をつなぐ。

首をひねる私に、たまりかねて
「 君は、他にどんな言葉を話すんだい?
 ドイツ語、それとも・・?」

やっと共通言語がハンガリー語であることが分かると、
おじさんは私のここ10年ほどの歴史をすべて
知りえることになる。

やがて電車がくると、
ヤンチおじさんはこういった。
「 君、人生つまづいたね。」
私はただ苦笑するより他はなかった。




ものすごいブレーキの音とともに、
長い列車がきしんで止まった。
思ったよりも長い電車の列に、
座席のある車両が見つからない。
仕方なく、そばにあった扉に乗りこんだ。

「 君の乗る車両はもっと先だよ。ここは寝台車だからね。
 デーダで降りなさい。10分休憩があるから。」
車掌さんは、切符を見ていう。

人のいないコンパートメントへ入って、
ほっと一息。
カーテンを引いて、少し横になろう。
そう思っていると、
カーテンの隙間から、
そわそわ動いている何者かの足が見えた。

ここに入ってくるだろうか、と思っていたら
案の定、扉が開いて、
背の高い頭のはげかかった男が現れた。
「 こんばんは。俺は、コルネルだ。君は?」

目をぱちくりさせて、
とりあえず名を名乗ると、
その大男はひざをついて、手の甲にキスをした。

すぐに、ものすごい勢いで話しはじめる。
「 ここは、一人ではとっても危ない。
 だから、すぐ隣へきなさい。
 大丈夫。俺は国会ボディガードだから。
 あのバセスクがいるところさ。」
と名刺と身分証明書のようなものを
目の前につきつける。

仕方なく、ほぼ強引に、
隣のコンパートメントに移ることになった。

おじさんは荷物を軽々と
すべて荷台に乗せてしまうと、
私の足を持ち上げて横に並んだ座席にのせる。
「 ほら、ゆっくりしなさい。
 ここで寝ても大丈夫。俺がいるから。」

なんだか、ドサクサに紛れて
腰の辺りも触られたような・・。
この人、酔っ払ってでもいるのだろうか。
不安は募るばかり。

おじさんはなおも、すごい勢いで話し続ける。
「 俺はこれからバイア・マーレに行くんだ。
 クマを退治にね。TV見ただろう?」

「 列車のなかは、コソ泥が多いんだ。 
 でも、俺がいれば安心さ。こうやって、やっつけるから!」
と撃つような身振りをしめした。
「 トゥルグ・ムレシュまで、ここにいなさい。」と
何度も言い聞かせる。

突然、私の額にキスをして、
今度は自分のはげ頭を指さした。
「 ほら、君も。」
あっけにとられてから、笑いとばした。

「 もう、寝るかい?」と電気を消そうとする。
「 このままで、いいです!」
やがて、おじさんのいびきが聞こえると、
安心して眠りについた。

誰かが横に立ったような気配で目が覚めた。
車掌さんが言う。
「 もうすぐ、デーダだから
 降りる支度をしなさい。」

隣のコンパートメントへ移って支度をしていると、
また車掌さんがやってきた。
「 今夜は冷えるね。
 チークセレダから、デーダのあたりは本当にきれいだよ。
 ほら、そこにマロシュ川が見えるだろう。」
目の先には、電光に照らされた川が
キラキラと輝いていた。

デーダで列車を降り、後ろの車両へと移る。
なるほど、ここにはトゥルグ・ムレシュ行きとあった。
そして今までいたところは、
バイア・マーレ行きとある。
そのまま、あの車両に残っていたら・・・。


やがて列車は、早朝のトゥルグ・ムレシュに到着。
一ヶ月前に訪ねたばかりの、
カティおばさんのところへ。




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comments(13)|trackback(0)|文化、習慣|2010-02-08_18:16|page top

ズズマラ

ズズマラ・・・
なんて不思議で、すてきな響き。

それは、湿った空気中の水分が
外気の温度で結晶化したもののこと。
めったに起こらない自然現象で、
それによって
小さな氷の粒が木々にはりつくようだ。

いつかダンナが話してくれた。
「 ある雪の日の朝。
 湿った空気で、町中の木々が
 ズズマラで真っ白になった。
 それが、太陽の光ですこしだけとけてから、
 また凍ったんだ。
 細くて長い、柳の枝が
 砂糖でできたクリスタルみたいだった。 
 それが風でゆらいで、まるで風鈴のように
 きれいな音がしたんだよ。」

1月28日木曜日、
いつもより早く目覚めた。
天気予報によると、この寒さも
きのうから大分、和らいだという。

ふと窓のそとをのぞき見て、
胸が躍った。
まだ外はうす暗い。
それでも分かる、真っ白の木々。
一夜のうちに、まるで精巧な氷細工のように変身してしまった。
これがあの、ズズマラ。

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太陽がやっと顔を出しはじめた、昼ごろ。
待ちかねて、外へ飛び出した。

肌にまとわりつく、冷たく湿った空気。
相変わらず寒いけれども、心はわくわくとする。
木々までもが白く姿をかえた
その日の美しさは、絶品だった。

見慣れたはずの雪なのに、
新しい季節を迎えたかのように
何もかもが新鮮である。
こんなにも木の枝が変化に富んでいて、
表情深いものだなんて・・・。

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いつもよりも一段と白く、明るい景色に見とれていると、
ときおり、音もなく
雪のかたまりがふんわりと舞いおりてくる。

雪の質がいつもと少し違うことに、
そのとき気がついた。
きめ細やかな雪の粒は、
羽のように軽い、雪の結晶だった。

スタジアムの近くのフェンスもご覧の通り。
ななめ格子のもようが、
あつい雪で覆われている。

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中でも目を見張ったのは、
近所にある白樺の大木。
その堂々たる美しさたるや、
こぼれるほどの花をたたえた桜の大木のよう。

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この枝がみんな氷と化して、
風が吹いたなら、いったいどんな音が鳴るのだろう。

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comments(6)|trackback(0)|自然、動物|2010-02-01_17:07|page top