トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

カテゴリー

FC2カウンター

カレンダー(月別)

02 ≪│2010/03│≫ 04
- 1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31 - - -

これまで書いた記事は・・・

全タイトルを表示

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Feed Me!

トランシルヴァニアへの扉  - Erdely kapuja-のRSSフィード

ブログ翻訳

カロタセグの花模様

ジプシー村の次は、
ハンガリー・フォークロアの宝庫カロタセグ地方へ。

ANAの機内誌「翼の王国」5月号で、
トランシルヴァニアのハンガリー村へ
手仕事を訪ねる特集が組まれることになった。
ライターの方から下見を頼まれたため、
再びこの地を訪れた。

白い雪がうっすらと丘の上を覆っている、
1月末のこと。
大都市クルージ・ナポカの周辺であるにもかかわらず、
村の景観は、古きよき姿を
今もなおとどめている。

szek 049

カロタセグ地方が注目を浴びたのは、
20世紀はじめ、ハンガリーの美術史家マロニャイ・デジューが
ハンガリーのフォーク・アートを収集した本を刊行したことによる。
民俗衣装をはじめ、
教会の天井画、門や墓の木彫りのモチーフなどに、
ハンガリーらしさを凝縮したかたちを見出した。
その発見は、
ハンガリーの近代における芸術活動に
大きな影響を与えることとなる。

カロタセグ地方の中心は、
バーンフィ・フニャド。
カロタセグ地方は、このバーンフィ家の領土であった。
町の中心には、
尖塔がそびえる古い教会が建っている。

szek 046

牧師さんの案内で、中へ。
石作りの大きな教会の内部は、
絵付けされた天井画と赤の刺しゅうとで埋め尽くされている。
これらの古いモチーフは、
キリスト教を受け入れる前から伝わる
古いモチーフであるといわれている。

天井画には、花模様と動物、天体のモチーフなど
まるでハンガリー民話や伝説を
物語っているかのようだ。
教会そのものが小宇宙を象徴しているならば、
その天井は天を意味する。
モチーフひとつひとつが、
星座を意味するという説もある。

シャンデリアには、
カロタセグ地方に古くから伝わる
お墓の墓標がデザインされている。
シンプルな木彫りには、
星や花など象徴的なイメージが込められている。

IMG_9336.jpg

1931年の年号と
コロジュ県の紋章が刺しゅうされた大きな旗が掲げてある。

szek 040

第一次大戦から第二次大戦間へかけて、
トランシルヴァニア地方は、ハンガリーとルーマニアの間で
大きく揺れ動いた。
80年もの年月を経ても、なお
ハンガリー人であるというアイデンティティは
消え去ることはない。

「 教会の後ろ正面にかけられたタペストリーは、
 ひとりの女性の手で描かれた
 もようを元に製作されました。
 このモチーフは、回転するバラと呼ばれています。

 そのおばあさんは、1cmの狂いもなく
 フリーハンドで正確に刺しゅうの図案を写すことができたのです。」

szek 044

ロゼッタをはじめ、
回転する形は原始的なモチーフと考えられている。
女性の手の技によって、
こうした古い形が受け継がれているのだ。

「 私がこうやって、教会の歴史を説明することによって、
本国ハンガリーの訪問者たちが心を動かされ、
教会の修復がなされています。

残念なことに、ルーマニア政府からの援助はまったく受けられません。」
と言い残した。



ラーザール・アティラさんは、
カロタセグ地方のフォーク・ダンスの指導者。
持ち前のリーダーシップを発揮して、
テュレ村の中高生たちに舞踊の素晴らしさを伝えている。
「 いつか、この子たちを日本へ連れていくことが目標だよ。」と語る。

szek 004

その日は、カーニバルの舞台を披露するところだった。
おどけた姿の子供たちも、
日が暮れる前には民俗衣装に着替えていた。

村の公民館では、
ちょうどリハーサルが始まっていた。
ヴァイオリンに、ビオラ、アコーディオンにコントラバス。
生の演奏が聴こえてくると、
体も自然と動き出す。

szek 106

その日の演目は、フォノー(糸紡ぎ場)。
むかし、冬の夜長に
若い女性たちが寄り集まって
糸を紡ぎ、針を動かし、おしゃべりをして過ごした。
そこへ、若者たちがやってきて
遊びやダンスがはじまった。
これが冬の唯一の娯楽であり、
男性と女性の知り合う場所でもあった。

szek 110

女の子たちは、他愛のないおしゃべりをしては、
ひそひそと耳打ちをする。
「 ・・・さんところの鶏が、卵をいくつ産んだんですって。」

szek 115

そこへ男性たちの登場。
仕事場は、とたん賑やかになる。

中央に座った男の子に、こう呼びかけた。
「 ヤンチは、お嫁さんがほしいんだが、
 お金がなくて、嫁さんを迎えることができない。
 さあ、こいつに何かを恵んであげないか?」

「 ブタ三頭。」
「 馬車1台。」
「 庭付きの家。」
「 私は、カロタセグの美しい部屋をひとつ。」
「 東芝のノート・パソコン。」
村社会と現代社会とのギャップを楽しむジョークなどで、
みなの笑いが誘われる。

やがて、ヴァイオリンの澄んだ音色が響きわたると、
男女がペアになって踊りがはじまる。

szek 092

カロタセグ女性の花模様と
その鮮やかな色彩が、くるくると回るにつれて、
だんだんひとつに解けてゆく。

緩急の豊かな音楽、
男性が手や足を打ちつける
激しいリズムに、だんだんと見ているほうも
踊りのもつ特有の陶酔感に浸りはじめる。

szek 102

二時間ほどの長いステージが幕を閉じた。
村の人たちの温かい拍手と、熱気、
配られた手作りのドーナツのぬくもりで、
冬のさなかに熱い興奮に包まれた。

丘に囲まれた小さな村で、
こんなにも心のこもった催しが
人々を楽しませるなんて誰が想像しただろう。

聞けば、この村の人口比は
ハンガリー人、ルーマニア人半分ずつと聞く。
この村では、
ルーマニア人もハンガリー語を理解し、
ハンガリー舞踊を踊っている。

言葉や舞踊や、民俗衣装・・・
お互いの文化の違いを認め、共存すること。
その垣根をこえるのは、
そう難しいことではない。
まずは、相手に興味を持つこと。

誇り高いカロタセグの人々の姿が、
どうか変わらないように。
豪華絢爛な衣装に身を包み、
踊りを踊る若者たちの姿がある限り、それはずっと続くだろう。

szek 124



トランシルヴァニアをこころに。

にほんブログ村 海外生活ブログ 東欧・中欧情報へ


にほんブログ村
スポンサーサイト

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(7)|trackback(0)|カロタセグ地方の村|2010-03-17_00:23|page top

白いジプシースカート

その輝くような白いスカートが
目の前にあらわれたとき、
なにか運命めいたものが感じられた。

IMG_9231.jpg

夏にはじめてこの村を訪ねたとき
印象的だったのが、
この白いスカートをはいて葬式に参列した
おばさんの姿。

IMG_9233.jpg

ジプシー・スカートといえば
原色の花柄とばかり思っていたのに、
このスカートだけは特別だった。
シルクのように輝く素材は
しっかりと厚みがあって、
プリーツのひだの上を光りが優しくすべるようだ。
飾りはただ、ミシンでなぞられた赤いステッチだけ。

IMG_9239.jpg

昨日、村ゆきのバス停で
おしゃべりをしていると
「 あなた、スカートを買わない?」と話をもちかけてきた。
古いものにしか興味がないという私に、
「 ええ、それは古いスカートなのよ。」と彼女は微笑んだ。



カティおばさんの後ろを歩いて、
久しぶりに超えた境界線。
いつからか、私は下通りのジプシーと交流するうちに
上の通りは足が遠のくようになっていた。

IMG_9201.jpg

この村には、二つのジプシーが存在する。
お互いはあまり行き来がなく、
常に見えない壁があった。

「 いい?カメラを出しちゃだめよ。
 あとで厄介だから。」とたしなめるカティおばさん。
ぐるりと囲んで写真撮影をしたら、
後でみんなに配って回らないといけない。
その上、何度も何度もせがまれる。

たくさんの子供や大人が興味深そうに
取り囲んでくるものの、
きびきびした足取りで進むカティおばさんには
かなわない。
やがて、一軒のかわいらしい家の門を
押して入っていった。



「 ジプシーのスカートはね、
 昔はみんな無地で、サテンのように光沢のある素材だったのよ。」
その前の晩、
村の仕立て屋のマリアさんのところで
あるハンガリー人女性がそう話してくれた。
彼女の亡き母親が、仕立て屋さんだったそうだ。

その美しいスカートに
子供時代の彼女も魅了され、
母親が仕立てたばかりの色とりどりのスカートを
そっと身につけてみたりしたそうだ。
「 小さいころから、大好きだったわ。」と、
できたばかりのスカートを試着して
ファッションショーを見せてくれた。
美しいものに対するあこがれは、
いくつになっても変わらないもの。

素材や色の流行はあっても、
自分たちの美意識を貫きつづける姿、
変わらないファッション。
「 私はジプシーよ。」と胸をはって、
いつまでも身につけてほしい。

IMG_9243.jpg



トランシルヴァニアをあなたに。

にほんブログ村 海外生活ブログ 東欧・中欧情報へ














Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(8)|trackback(0)|ジプシー文化|2010-03-08_09:55|page top