トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ブログ翻訳

ブラーガ一家

その一家との交際がはじまったのは、
3年ほど前のこと。
息子の幼稚園のクラスメイトの家にはじめて招かれた。

家ではお父さんが昼間からアンティークミシンをカタカタと踏み、
お母さんはのんびりと料理をしながら客とおしゃべりをし、
子ども部屋はまるで王国のようだった。

人をあたたかく包み込む空気と、
そこだけあたかも違う時間が流れているかのように
ゆったりと穏やかだった。
ストレスで肩に力が入っているときなど、
彼らの家に行くと何もせずとも気持ちが楽になれる。

彼らは、何より今を楽しむことに長けていた。
ふとした思い付きで、キャンピングカーにギュウギュウ詰めで乗り込み、
あちこちへと小さな旅をした。
大人の私でさえも、胸がわくわくしてたまらなくなるような、
あの懐かしい気持ちを幾度も思い起こさせてくれた。

彼らの凄いところは、家族というものすごい結束で結ばれていること。
その力は私が思っても見なかったほど偉大で、
ここ3年彼らに学んだ中で一番の収穫だった。
家族が一つの目的に向かって生きること。

彼らの一つの夢は、何もない原っぱに彼らの王国を作ることだった。
電気は一切使わない(充電機があるので、パソコンや携帯は使うらしい)、
藁葺き屋根の家を設計して、家を建て始めていた。

ある日、その夢が崩されてしまった。
森を越えたはるか向こうの村からやってきたジプシーたちに、
建設のための工具類を根こそぎ盗られてしまったのだ。
夢のように美しかった彼らの土地で安全に暮らせなくなった今、
彼らは新しい目的を探さなければならなかった。

年が明けて、母親はこう言った。
「私たち、ハンガリーへ行くことにしたのよ。
神様の道に従って、他の家族と共同生活をしにね。」

強い信仰をもつ彼らの新たな道は、
同じような価値観の家族といっしょに共同生活をし、
子どもたちを学校へ送らずに、自分たちの手で教育することだった。
何年そこにいるか分からないと・・。

彼らは牧師でもなく、宣教師でもない。
それなのに、ひとたびその輝きにふれると、
日常生活のあらゆる煩わしさ、苛立たしさ、焦燥感を忘れ、
気がつくと、ゆったりとした彼らの時間の流れの中に組み込まれている。

「私たちも寂しくなるけれど・・。冬になったら、また帰ってくるわ。」
私たち家族を支えてくれたブラーガ一家と出会えたことは、
トランシルヴァニアの生活でも大きな出来事だった。
彼らは私たちの日常から遠ざかってしまうけれど、
これから少しずつ、私たちも自分たちの手で模索していかなければならない。
今から、彼らが故郷へと帰ってくる冬が待ち遠しい。

IMG_4758.jpg

Harom eve, hogy megismertem a Blaga csaladot.
A fiamat az ovodastarsak kozul ok hivtak meg magukhoz eloszor.

A gyerekek edesapja otthon egy regi pfaff varrogepen dolgozik,
az anyuka pedig fozes kozben nyugodtan beszelget a vendegekkel.
A gyerekszoba olyan, mintha egy igazi kiralysag lenne.

Olyan nyugodt volt a hangulat korulottuk,
hogy ugy ereztem, mintha maskeppen telne az ido.
Mindig melegen fogadjak a vendegeket.

Mindig elvezik a jelent.
Ha ugy volt kedvuk, beultek a lakokocsiba, es irany az orszagut.
Sokfele tekeregtunk.
Ilyenkor olyan erzes fogott el, amit mar gyerekkoron ota nem ereztem.
Izgultam a kalandozas miatt.

Megtanitottak mennyire fontos a csalad.
Ok nagyon szoros csaladi kapcsolataban elnek,
es egy kozos eletceljuk van.

Volt nekuk egy szep tervuk,
hogy majd tanyan fuggetlen, szep eletet kezdenek.
Ez egyszer osszeomlott.

Azutan megtalaltak egy uj tervet maguknak,
hogy elmennek Magyarorszagra, es ott kozos eletet kezdenek mas csaladokkal a hituk szerint.

Ok nem papok, s nem is misszionariusok.
Megis ha erintkezunk veluk,
akkor a mindennapi szorongas, a faradsag, aggodalom elfelejtodik,
es rajovok, hogy az ok eletritmusaban elunk.

Mar alig varom a telet, hogy hazajonnek latogatoba...







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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(4)|trackback(0)|その他|2011-06-29_05:58|page top

ルーマニアの中の小さなハンガリー村

これまで雨続きだった天気に、ようやく変化が訪れた。
久々にふりそそぐ太陽の光が、冷えた体に心地いい。
私たちは丘ふたつ越えた隣村を目指して、出発した。

もう午後をだいぶ過ぎているので、
日が暮れるまでには戻ってこなければならない。
幸いに日が長いので、時間はたっぷりとある。

背の丈よりも大きく、青々と茂った葦。
天を突き刺すばかりに、まっすぐに伸びている。

kalotaszegi utazas2011jul 339

さらさらと葦のすき間から流れこむそよ風を聴いていると、
通り道のりも強い太陽の日差しも自然と忘れてしまう。

kalotaszegi utazas2011jul 340

太陽に照らされて黄緑色にかがやく丘が、
果てしなく連なっている。
動物の毛並みのようにしなやかで、やわらかそうな草。
もしも巨人になったなら、
そのなだらかな斜面をそっと手のひらで撫でてみたい。

kalotaszegi utazas2011jul 345

砂利道に沿って、紫色の花が群生している。
可憐な花たちは、旅人の心を和ませ楽しませてくれる。

kalotaszegi utazas2011jul 347

一本道は曲がりくねり、丘を登ってから
今度は隣村へと導いた。
私たちはここから左折して、さらに丘をもうひとつ越えないといけない。
丘を登りきると、足元に小さな村が見えてきた。
疲れた足も、元気を取り戻し足取りが速くなる。
はじめ手の中に納まるくらいだったのが、だんだんと大きく近くなっていく。

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村で一番はじめに訪ねたのは、
教会の近くに住むカトゥシュおばあちゃん。
村で一番の美しい刺しゅうをするし、お料理も上手。
「今日は祝日だから、縫わないのよ。」とお菓子を切って出してくれる。

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おばあちゃんのお手製のベイグリは、
しっとりとしていて口の中でやさしく溶けた。
「遠いところからよく来たね。」と労いの言葉をかけてくれるおじさん。

kalotaszegi utazas2011jul 366

刺しゅうが終わったクッションは、
ボタンホールステッチをしてからさらに縁編みでレースをつけて華やかにする。
「もう少し遅かったら、これも持っていってもらえたのにね。」
町への交通手段が何もないこのような小さな村では、
手芸がおばあさんたちの生計の手段となっている。

kalotaszegi utazas2011jul 358

お隣のエルジおばあさんは、
手芸をしながら一人暮らしをしている。
今日は祝日のミサで、教会もさぞ華やかだったことだろう。
「この村には、パールタ(ビーズの冠)をかぶるような若い女の子はもういないわ。」

若い頃に着たという衣装を奥の部屋から探して、見せてくれた。
大切なハレの日の衣装には、しっかりとしつけがかかっている。

kalotaszegi utazas2011jul 384

青い艶やかな素材はシルクで、深い緑はウール素材。
ワインレッド、黄色、緑、白に青に赤・・・。
クテーシュと呼ばれるつなぎ目には、豪華な刺しゅうが施される。
ありとあらゆる色を組み合わせて。
「赤、白、緑・・・の三色は、隣り合わせにしてはいけなかったの。
というのは、ハンガリーの国旗の色だからね。」

1919年のトリアノン条約で、トランシルヴァニア地方がルーマニアに割譲された。
ここは、10世紀から続いていたハンガリー王国の一部だった。
ハンガリー人は母国から引き裂かれて、
少数民族として暮らすことを余儀なくされる。

40年代、トランシルヴァニア地方の一部が再びハンガリーに返還された。
カロタセグ地方は、ハンガリーに属する村とルーマニアに属する村に分かれてしまった。
この小さな村は、その当時ルーマニア領になっていた。
二つの国の間で揺れ動く時代は、
人々に、いかに大きな不安を与えたことだろう。

kalotaszegi utazas2011jul 392

その日の日曜のミサの終わりに、ある政治家が話をしていた。
「私たちは、トランシルヴァニアのハンガリー人の権利のために
ハンガリー市民権をえるための手助けをしている。」
ルーマニアでできた、新しいハンガリー政党のPRのようなものだった。
今ではもう、書類の申請だけでハンガリー人であるという証明が簡単に得られる。
しかし、その小さな証明書にどれほどの意味があるのだろう。

先祖代々の衣装に身を包み、
ハンガリー語を母国語として身につけ、
ハンガリーの歴史や文学に親しみ、
そしてルーマニアで生活をしている。
それが何よりもの証拠である。

たとえば村で目に留まった、民家の木彫り。
彼らの血潮の中に流れるハンガリー人であるという意識。
それは、どんなに国境線が厳しくとりしめられようとも、
戸籍上の名前が変えられようとも、
パスポート上ではルーマニア人と書かれようとも・・・。
人々の意識だけは、たやすく変えられるものではない。

kalotaszegi utazas2011jul 216

おばあさんの衣装棚の中でも、
とりわけ興味を引かれて見せてもらったエプロン。
ウェストの刺しゅう飾りは、
チューリップに見せかけて実はハンガリーの紋章なのだ。
ベルベットのベルト部分がぼろぼろに擦り切れて、
色あせてもまだ着られた跡が残っている。

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ミサの最後に合唱したのは、ハンガリー国歌。
国歌というより、むしろ民族の賛歌なのだろう。
「神よ、マジャール(ハンガリー)人を祝福したまえ・・・」
可憐な衣装に身を包み、
困難な時代を生き抜いてきた彼らの強さを感じずにはいられなかった。

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(8)|trackback(0)|カロタセグ地方の村|2011-06-22_17:28|page top

カロタセグの精霊降臨祭

夜に簡単な食事の支度をしていると、
レベンテは村の人に呼ばれて出て行った。
やっと家に帰ってきたのは、1時間以上もしてから。

「今、家の修復をしているだろう。
たくさんの土砂を運ぶのに、わざわざ車で来てくれたんだ。
こちらが手伝いを呼ばなくても、あっちから声をかけてくれる。
本当にいい人たちだよ。」
1年以上もこの家を譲ってもらうために足繁く通って、
もう村の人たちに暖かく迎えてもらっているようだ。

「明日は精霊降臨祭があるから、教会に行こうと思うんだけれど・・。」
隣村まで出かける予定だったが、
少し延ばして日曜日のミサに出かけることに決めた。

朝になると、レベンテの婚約者のレーカも町から到着し、
ゆったりと朝食をとったあと、
10時半からはじまるミサに出かけることにした。

門を出ると、すでに美しく着飾ったおばあさんたちが
出かけていくところ。

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普段から手作りの服を着ているけれど、
正装となると極上のプリントスカーフを深くかぶり、
真新しいプリーツスカートに刺しゅうのエプロンに革のロングブーツが
いっそう祝日を輝かしいものにする。

kalotaszegi utazas2011jul 246

教会の鐘の音が高く鳴りひびく。
おばあさんたちは足並みをそろえて、せかせかと教会へ急いでいた。
その後ろから、今度は白無垢の衣装の若い少女が
やはり急ぎ足で跡を追うようにして歩く。

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パールタと呼ばれる、祝日に嫁入り時の少女にしか許されない
アンティークビーズの冠をかぶる。
後ろには、赤い薔薇の刺しゅうリボンがひらひらと揺らいでいる。
その眩いばかりの装いに、夢を見ているのではないかと疑ってしまう。

教会が見える角にたどり着くと、
白い娘は黒い老女たちをいつしか追い越していた。

kalotaszegi utazas2011jul 258

教会の前では、二人の少女が同じく白無垢の衣装に包まれて友人を待っていた。
白百合のような潔白さと、初々しさをもつ少女たち。
カロタセグの女性たちは衣装を着ると別人のように変身すると聞いた事があるが、
代々受け継がれた衣装の素晴らしさは、
装うものに精神性を与えてくれることにあるのだろう。

kalotaszegi utazas2011jul 270

村人たちの跡について教会の中へと入る。
男性は教会の前の方に、女性たちは後ろの方に。
そして牧師の説教台はちょうど教会の中心にある。
レーカが一番前の席に座ったので、私も横に並んで腰を下ろした。

イエスキリストの体が亡きあとに、
予言の通りに精霊となって戻ってきた魂を祝う日。
繊細なカットワークでできたクロスがいくつも重ねられ、
聖餐式のためのパンやワインを包んでいる。

kalotaszegi utazas2011jul 277

式が始まる前に、レーカがこう囁いた。
「村には二人の牧師がいるの。
牧師夫妻の、ご主人さまは普段大学で教えていて、
こういう特別な日だけは彼のお説教が聴けるのよ。」

やがて黒いマントに身を包んだ牧師の夫妻が入ってくると、
教会の中は厳粛な雰囲気が高まる。
牧師のお説教は宗教というものをこえて分かりやすく、興味を引くものだった。

やがて教会の最後に、
イエスキリストの体(パン)と血(ワイン)を分け与えるという聖餐式がはじまった。
机を囲んで、男性が20人ほど輪になって立つ。
牧師からパンをひと欠片ずつ与えられ、
赤ワインで注がれた聖杯を手渡され一口飲む。

今度は女性たちが席を立ったので、私も皆に混ざって机を囲んだ。
口にするあらゆる食べ物が、神の犠牲によって成り立っている。
与えられたパンをかみ締めると、
その生命の味が口にみなぎってくるようだった。
銀の杯からすすったワインは、体の血液を生き生きと力でみなぎらせてくれる。

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最後に、最前列に座っていた
輝かんばかりの乙女たちが聖食を受ける番となった。
16歳になり、信仰告白をしたばかりの若者たちが
はじめて受ける聖なる儀式。
親たちは、大人の仲間入りをする娘息子たちを見て、
目に涙を浮かべることだろう。

kalotaszegi utazas2011jul 283

教会のミサの最後に、牧師婦人がこういう。
「教会のミサに参加してくださった、ドイツからのお客様。
そして最前列と最後列に座っていらした、外国のお客様に感謝を申します。」

晴れやかな気持ちで教会を出る。
連れ立って家路につく村人たちを眺めていると、ダンナがこう言った。
「聖餐式は、信仰告白をした人でないとしないものなんだよ。
牧師もこういうものなんだ。
「聖食を得るものはその資格があるのか自分で問うてから参加しなさい」とね。」

見るからに異教徒の私がテーブルを囲んでいたので、
牧師さんたちも驚かれたことだろう。
恥ずかしい気持ちもあったが、
私自身厳粛な気持ちでミサを受け止めていたのでそれほど気にならなかった。

私たちは、近所のおばあさんを訪ねたりしたあと、
午後遅く隣村へと出発した。
村からの電車は、夜の6時過ぎと9時過ぎしかない。
それまでに帰ってこなければ。

軒先に座っておしゃべるするおばあさんたちが
どこへ急ぐのかと尋ねる。
「ああ、あの村ヘは、一本道をまっすぐに行って、
隣村の入り口に入る前に左に曲がってから、
丘を越えたところにあるわよ。」

kalotaszegi utazas2011jul 336

世にも美しい村に後ろ髪引かれながらも、
約束のおばあさんたちの待つ隣村へと足を急がせた。

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(2)|trackback(0)|カロタセグ地方の村|2011-06-20_17:14|page top

レベンテとの再会

その日の夜行列車で到着してから、
カロタセグ地方で一日中歩き回って帰りの電車に揺られていた。

山手の地方で電車が止まり、
ドアが開かれると痩せてあごひげを生やした男が乗り込んできた。
私と目があうと、開口こう言った。
「信じられない。」

相手がすぐに誰であるか分かった。
ブダペストで留学時代に仲良くしていた、
美大生のレベンテだった。
にこにこしながら、
私たちのところへまっすぐに来ると隣席に座った。

彼はセーケイ地方北部の出身だった。
大学卒業後にハンガリーのペーチにあるジョルナイのアトリエで復旧作業をしたり、
トランシルヴァニアのアルバユリアにあるカトリック教会の修復作業をしていたと聞いていた。
まさかカロタセグ地方のローカル列車で出会うとは・・。

「今、ここに住んでいるんだよ。」と予想もしなかった言葉。
オラデアの大学でピアノ講師をしている彼女と暮らすために、
ちょうどクルージとオラデアの中間地点であるカロタセグ地方を選んだという。
小さな村だけれど、村人たちの共同意識が強く、
これまでよそ者を入れたことがなかったという。
古い家を改装していて仕事が山ほどあることや
村の人たちが優しくて素晴らしい村だと目を輝かせて話していた。

電車がやがて町に着くと、
土曜日に村を訪ねに来ると約束をして分かれた。
「この村には携帯の電波が届かないからね。
EMSを送ってくれよ。」

こうして土曜日の夕方に、村へやってきた。
丘の中腹にある無人駅に飛び降りると、
踏切のカンカンカン・・・という音が、のどかな田園風景に溶け込んでいった。
途中で花を摘みながら、ハイキング気分で丘を下っていく。

駅から村まで大分距離がある。
やっと村に着くと、一番初めの家の門がとびきり美しくて印象的だった。
大きなパイプをくゆらせたおじさんが彫られている。

kalotaszegi utazas2011jul 204

カロタセグ地方は装飾が豊か。
木彫りやアルミ細工の鳥や花や果物などが、
村の風景に生き生きと物語性を添えているようだ。

kalotaszegi utazas2011jul 231

「この村は牧師さんが有能で、村には孤児のための学校も出来ているそうだ。
村の女性たちに針をもたせ、手芸を売ったお金で、
村にアスファルト道ができたというのは有名な話だよ。」
少々不便だけれど、
かけがえのない豊かな生活のある村。
そこは、アーティストの二人にとってぴったりの場所だろう。

kalotaszegi utazas2011jul 218

教会のとなりの大きな家では、
サクランボの収穫で子どもたちが木によじ登って一仕事をしていた。
「最近村に越してきたレベンテという人、知らない?」と尋ねると、
「ええ、知ってるわ。」と一人の女の子が自転車を起こして案内をしてくれる。
可愛らしい道案内をともなって、
私たちはレベンテたちの新居へと向かった。

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(2)|trackback(0)|その他|2011-06-20_16:34|page top

雨降りのカロタセグ地方

その日はあいにくの雨。
カロタセグ地方の村から村へと移動する予定にしていた。
朝一番の電車にのって、町につくと
一番に古着屋さんで防寒具を買いこまなければならなかった。

町外れからで車を待つ。
ちょうど村を目指すおばあちゃんたちと、
乗り合いヒッチハイクで運良くすんなりと村にたどり着いた。
坂道を登りきると、
木造のとんがり屋根の教会がどっしりと佇んでいる。

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迷わずに向かったのは、ブジおばあちゃんの家。
数日前、電話で村の女性からイーラーショシュの図案ができたとの連絡を受けていた。
あの時は、4月に来ると約束していたのに、
延び延びになってようやく6月の半ばに来る事ができた。

なかなか注文の品を取りに来ないので、心配をしていたのだろう。
おばあちゃんは早速、
粗いリネン糸で織られたホームスパンの生地に
青いインクで丁寧に描かれた作品をテーブルに広げてくれた。
80歳なのにしっかり者のおばあちゃんは、
注文のひとつ、ひとつをしっかりと記憶していた。

「前に話していたブラウスのことだけど、見つかったのよ。
考えてもいない場所に、しまってあったわ。」
おばあちゃんのお母さんのものだったという、古いブラウス。
同じイーラーショシュのテクニックで縫われた刺しゅうは、
どうしても手に入れたかった。

あちらの部屋から手に持ってきたものは、
黄色く色が変わったブラウスに真っ黒な刺しゅうが襟元と肩、袖口にびっしりと刻みこまれている。
まるで扇のように折りたたまれた肩の刺しゅうは、
まぎれもないイーラーショシュのステッチだった。
1924年の年号と、持ち主のイニシャルも刺しゅうされてある。

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おしゃべり好きなおばちゃんは、話題にも事欠かない。
「この間、生まれてはじめてお店で売っている
カタツムリのパスタ(スープ用のパスタ)を料理したら、もうひどかったわ。
スープにどろどろと溶けてしまうんですもの。

それに引き換え、
村の女衆が集まって作るパスタはコシがあって最高よ。
ほら、糸紡ぎに使うスピンドルがあるでしょう。
あれと機織のビームを使って作るのよ。」

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もう使わなくなった糸紡ぎや機織の道具で、
どうやってパスタを作るのだろう。
機織の際にたて糸を通すビームは細かい木の枝が通っている。
それをまな板のようにして置き、
スピンドルの先っぽで小さなパスタをくるくると丸めていくと、しま模様ができる。

小さな葉っぱを使って実演するおばあちゃんの姿は、
まるでおままごとのようで微笑ましい。

kalotaszegi utazas2011jul 148

昼をすぎてもなお、雨はやむことを知らなかった。
雨にぬれながら次の村を目指す。
小さなアスファルト道には車の通る気配もなく、
通り沿いに野ばらの茂みが続いていた。
やさしいピンク色がもやのかかった風景に、ぼんやりと浮き上がって、
幻想的な風景を作り出す。

今は耕すもののなく、広々とした原っぱがどこまでも続く風景は、
まさに秘境とするにふさわしいものだ。
プリンを逆さまにしたような、
なだらかな丘がかすんで見える。

kalotaszegi utazas2011jul 166

雨でぬれても、植物は喜び、生き生きと色を投げかけている。
淡いピンクに黄色、紫、白・・・。
さまざまな色が混ざり合い、溶け合って
えも言われぬ色彩を作っている。

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首に巻いていたスカーフを、息子の頭にターバン巻きにした。
雨の道もそれほど苦を感じずに歩くことができのも、
この美しい花畑のおかげ。

kalotaszegi utazas2011jul 176

2.3km離れた隣村にやってきた。
村の中心にある折衷様式の建物の、
カロタセグ特有の木彫りの扇型の飾りが目を惹く。

kalotaszegi utazas2011jul 179

もう一人の図案描きボルバラおばあちゃんは、
ちょうど祝日のためのお菓子を焼いているところだった。
約束していた図案を受け取り、
私たちは再びヒッチハイクを重ねて町へと戻った。

kalotaszegi utazas2011jul 182

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comments(6)|trackback(0)|カロタセグ地方の村|2011-06-19_00:17|page top

6月の麦畑

アーラパタクの村を出て、
隣村へと向かったときだった。
県道ぞいに広がる、一面の麦畑。
緑の海のなかに、幻のように一点の紅色が浮かんでいた。

ovoda kicsengetes 041

大きく穂をふくらませた6月の麦畑に、
偶然のように紛れこんだ鮮やかなポピーの花。
こちらに向かって呼びかけているようだ。
じっと見とれていると、
中から小さなカナブンがのそのそと這い出てきて、
いつしか飛んでいってしまう。

ovoda kicsengetes 046

初夏の太陽がさんさんと降りそそぐ中、
そよ風が麦畑から吹いてきた。
しなやかに、そのやわらかな穂先が体を泳がせる。
さわさわと音を立てて、
夏の香りをいっぱいに漂わせた。

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後ろから馬車が二台、通り過ぎていった。
アスファルトの道に戻り、
私たちはまた歩きはじめた。

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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(0)|trackback(0)|自然、動物|2011-06-17_23:50|page top

白雪姫幼稚園の卒園式

トランシルヴァニアで再び生活することになったのは、
3年前の冬のこと。
こちらに来てはじめての仕事は、
息子を幼稚園へと送り出すことだった。

白雪姫幼稚園のユーリア先生のクラスは、
年齢もさまざまな子どもたちが午前中の4時間を過ごしていた。
編入であるにもかかわらず、あたたかく受け入れてもらい、
この3年間で息子は体も心も大きく成長した。

幼稚園の体操室。
保護者や兄弟たち、祖父母に親戚が集まり、
小さな教室は人であふれかえる。
今年は7人の子どもたちが巣立っていく。

ovoda kicsengetes 058

最後の一年には新しい先生が来て、
小さな新しい子どもたちがたくさん入ってきた。

ある日、息子が嬉しそうにこう報告した。
「ママ、ルカがBaba(赤ちゃん)って言ったよ。」
ルカはまだ二歳になったばかりで幼稚園に入った。
その頃はおしゃぶりをくわえ、小さな体で、おまけに両親がルーマニア人のようで
ハンガリー語は一切分からなかった。

小さな子どもたちの成長を、
まるで家族の一員のように喜び見守っていた最後の年。

ovoda kicsengetes 074

年長さんたちは、セーケイの民俗衣装に身を包む。
トランシルヴァニアの東の果て、
かつての国境警備兵だった彼らは誇り高い。
少数民族となって100年近くたってもなお、
ハンガリー文化を大切に引き継いでいる。
子どもたちもその血を引いて大きくなるのだろうか。

ovoda kicsengetes 132

クラスでは民俗舞踊の先生の指導のもとで、フォークダンスを習う。
子どもたちの踊りのあとは、保護者なども加り
大きな円になってモルドヴァのチャーンゴーの踊りを踊る。
小さな教室が熱気ではちきれそうになる。

ovoda kicsengetes 192

ダンスのあとは、家から持ち寄ったお菓子を食べて
ホームパーティのような雰囲気。
学区ごとに通う学校が違い、クラスもさまざまだから
同級生とも今日でお別れ。

兄弟のようにして育ったタシの一家は、
ハンガリーに引っ越すことになった。
キリスト教の施設で多家族と共同生活をして、
学校へ通わずに、両親といっしょに通信教育で学ぶそうだ。

息子は秋から近くの小学校に入学する。
ステップ・バイ・ステップという新しい教育法で、
子どもたち主体のコミュニケーション重視のクラスを選んだ。
シュタイナー教育に似ているものらしい。

ovoda kicsengetes 234

卒業式には、肩掛けかばんを渡す習慣がある。
巣立っていく子どもたちを旅人にたとえ、
昔はパンや塩などを入れていたという。

白雪姫幼稚園のミツバチ組を卒業した子どもたち、
蜂のように元気に飛び立っていった。

ovoda kicsengetes 249

Theme:海外の子育て
Genre:海外情報

comments(4)|trackback(0)|ルーマニアの育児|2011-06-17_05:15|page top

花を愛するひと

5月のトランシルヴァニア地方は、
花を愛するひとにとってはまさに天国だと思う。
そうでない人も、きっと
この小さく可憐な野の花の虜になってしまうだろう。

か細い花びらをいっぱいに広げて、
雪のように白い花が天にむかって大きく伸びをした。

去年と同じ場所で見た花と、
今年も同じ時期にまた出会ったのだ。
そう思うと、ますますこの小さな花がいとおしく思えた。

ICIRIPICIRI62 003

透き通るような青は、若草色の原っぱの中でも
特に目をひきつける色。
どんなに強い太陽光線の下でも、
この青をみるだけで心にそよ風が吹いてくるようだ。

ICIRIPICIRI62 029

この虫たちの花好きなことといったら、
私たちの比ではないだろう。
体いっぱいに花の甘い香りを吸い込んで、
夢心地になって眠っているのだから。

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5月の原っぱに横たわると、
草の香りと緑の色がいっぱいに満ちてきて、
自然の一部になったような気持ちになってくるから不思議だ。

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目の前をせわしく動き働く虫たちを見ながら、
いつしか体の力がふっと抜けて何もしない贅沢を体いっぱいに感じていた。



もう、ここは森の入り口。
広々とした原っぱに牛が寝そべり、ヒツジは草を食んでいる。
小さな谷あいの茂みは、ちょっとした花たちの隠れ家になっている。

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黄色からだんだんと赤みがかっていく。
小さな実が今にもはじけそうに、生き生きとしている。

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なんて麗しい紫色。
背の高くほっそりとしたこの紫が、
若草色の草原でさざめくように揺れているのを見たことがある。

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イソギンチャクの触手のように、
ひらひらと風になびいている長い綿毛。
「これは珍しい花だから、採ってはいけない。」と言い聞かされ、
さすがの息子もこれだけは手にしないようだ。

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色とりどりの花に囲まれて、
ふと花のかんむりを作ろうと思いついた。

手をのばせば、あちらこちらにシロツメ草もレンゲの花も、
名前の知らない紫や黄色やピンクの花も・・・。
野いちごの三つ葉も、カラスエンドウの羽みたいな葉っぱも。
材料はいくらでも手に入る。

三つ編みにして、所々に花を差し込みながら
時間を忘れて夢中になった。
やがて、野の花のかんむりができると、
息子の頭にかけてやった。

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花のかんむりをかぶれば、
もしかしたら原っぱの王様になれるかもしれない。

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それとも花の妖精になって、
今にも緑の中にふっと消えてしまいそうだ。

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この花畑は永遠には続かない。
次にここへきたときには、また別の生命が誕生して
また違う表情を見せてくれるだろう。

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5月の花畑に足を踏み入れたなら、
トランシルヴァニアの自然に恋してしまうかもしれない。

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

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