トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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秋の色彩

今年は秋が長く続いている。
去年もおととしも、10月の半ばには初雪が見られたのに、
今年はまだ見られない。
ひとつの季節が長く続くと、
あたかも時が足踏みをして止まってしまったような感覚に陥る。
それでも、確実に時は進みゆき、
小さな虫たちは地中の奥深くもぐって春を待ち、
木々はその葉を黄色く染め、ひとつひとつ地上に落としていく。

森の中へひとたび足を踏み入れると、
そんな自然の息づかいが肌で感じられてくる。
野鳥たちは暖かい地方へすでに飛び立っていき、
森の中はしんと静まり返っている。
けれども、太陽の光に照らされた緑や黄色の葉が、
その色彩で音色を奏でているかのような華やかさを投げかけている。

oszikep.jpg

落ち葉のじゅうたんに腰を下ろし、
切り株に背をもたらせる。
かばんから手仕事を出して、縫っていると、
足腰から地面の冷たさがだんだんと伝わってくるようだ。
息子はというと、落ち葉の中から小さな木の実を見つけては
大切そうにポケットにしまいこんでいる。

IMG_8846.jpg

薄暗い雑木林から、今度は幹の太いがっしりした木々が並び立つ林にやってきた。
ここでは太陽の光が明るく差しこみ、広々とした空間がたっぷりある。
今年の秋の市で、お留守番をしたご褒美に手に入れた弓矢。
ようやく試すときがやってきた。
静けさを裂くように、ヒュンと矢を飛ばす音が鳴り響いた。

IMG_8887.jpg

ここに来て驚いたのは、自然はみなで共有するという意識が強いこと。
森にも持ち主がいるのだろうが、普通に誰でも入り、
それぞれの季節を楽しむことができる。
ここはビーロー婦人の広場と呼ばれるところ。
薄暗い森の中になじんだ目が、
青く吸い込まれるような空の色をとりわけまぶしく感じる。

IMG_8883.jpg

昔は何もない原っぱだったのが、やがて種がこちら側にも運ばれて芽吹き、
いまや低木となった。
ヘーゼルナッツの生る木は、ちょうど子どもが木登りするのにいい高さ。
緑から黄色、そして茶色へと色を変えていく葉のなかに埋もた姿は、
あたかも森の妖精のよう。
息子の子どもや孫たちの時代になって、
いつかここも、あの森と同じようになるのだろうか。

oszikep2.jpg

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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(4)|trackback(0)|自然、動物|2012-11-28_20:51|page top

古い一軒屋との出会い

夏のある日のことだった。
町外れに住む、お針子の知人を訪ねるために
小さな通りを歩いていた。

町で一番古い教会のすぐ横手にある道。
その先は原っぱが広がり、
さらに奥には炭酸水の湧き出る泉や森がある。
砂利道がちょうど舗装されるところだったから、
道路には砂が一面にしきつめられていた。

かつて共産主義時代の高層アパートが立ち並ぶ前は、
町の景観も今とは違って一軒屋が多く、
村のような佇まいだったという。
この地区はまだその頃の名残を留めているので、
歩きながらもつい、古い家並みを観察してしまう。

ふと、崩れそうになった小さな木の門に、
売り家と書かれた標識に目がとまった。
家は門ほどまではないけれども、
やはり人の手がかけられていない埃っぽさを感じさせる。

なんとなく心引かれて、庭の様子などをのぞき見しながら歩いていくと、
ダンナがこないのに気がついた。
近所のおばあさんと話をしていたらしい。
隣のおばあさんによると、あの家は彼女のもので
売りには出していないそうだ。
また別のご近所さんによると、そのおばあさんは頭がおかしくて、
狂言ばかり吐いては周りを困らせているということだ。
その不思議な家を後にして、知人の家へと向かった。

今年の夏の暑さは異常だった。
これまで熱帯夜というものを体験したことがなかったが、
今年は何日となくそういう日があった。
家にはクーラーはおろか扇風機さえない。
網戸もないため、窓を開けると大量の蚊が入ってくるから、
空けたくとも空けられない。
そのつらい夏の夜を重ねるたびに、
これが一軒屋だったらと恨めしく思われた。

アパートは窓越しに風景が見える。
それでも、ただの切り取られた風景であって、
手をのばして届く自然ではない。
それが一軒屋だったら、ドアを空けると外の世界がいっぱいに広がり、
花の香りや果物の色に、季節が肌で感じられる。

その古い小さな家は、なおも私たちの心を掴んで離さなかった。
持ち主と電話でのやり取りがつづいた後、
再び、その家に向かった。

IMG_2607.jpg

持ち主が亡くなって、相続者がいるだけで、
家は空き家のまま5年たっていた。
そのため家の価値はなきに等しいとされ、
土地の値段が売値となったようだ。

庭にはライラックの大木があって、
これだけ幹が太いのも珍しいという。
ほかに目ぼしい木は見られず、畑は荒地となっていた。
上り坂になった、細長い土地を歩いて隅まで行くと、
教会の裏手の墓地に突き当たる。
はるか遠くは、町外れの森まで見渡せる。

IMG_2600.jpg

家の中に入ると、前の持ち主が生活の匂いをそのままに封じ込めたかのような
さまざまな品があった。
古い箪笥には洋服がそのままにかけられ、
食器棚には古い磁器が埃をかぶってしまってある。
お風呂場の代わりに、たらい置き場があった。
「直すところが多いでしょう。」
そう家主に言われて、ダンナは首を振った。
「いいえ、できるだけこのままに残したいんです。」

もう一つ気に入ったのは、雨どいの飾り。
ジプシーの職人が、アルミを加工して作ったもので、
波打った花びらが美しい。
どこかの村で、ペイントされたものも見たことがある。

IMG_2608.jpg

小さな古い家に、私たちが生活の火をともすのはいつになるだろう。
来年の春には果物の木を植えよう。
そして、土を耕して野菜を育てよう。
これから待っている沢山の仕事を想いうかべ、
来年の春が待ち遠しい。

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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(8)|trackback(0)|トランシルヴァニアの町|2012-11-10_17:42|page top

ジプシー宮殿の出来事

ルーマニアにはジプシー宮殿と呼ばれる、
不思議な建物が存在する。
とてつもなく巨大で、
屋根にゴテゴテとしたアルミの飾りがついているのが特徴で、
そのほとんどが未完成のままである。
ガーボルジプシーという商人ジプシーの富を表すためとしか、
用途がまるで分からない不可思議な存在。
特に、フエディンの町はずれに連立する風景は圧巻である。

3年ほどまでに、このジプシー宮殿を取材しようと
町を歩き回り、幸運にも一軒の家に入ることもできた。
今回もお客を連れてきたのはいいが・・。

町のまだ中心部にいるときのこと。
一軒目のジプシー宮殿に遭遇して、
隣で写真を撮るのを見ていたら、
遠くからおばさんがなにやらすごい権幕で怒鳴り散らした。
自分たちのこととは露ほども思わず、
ぼんやりしていたら、さらに奥から恰幅のいいおじさんが出てきて、
頭から湯気が出そうになるほどに怒り狂っていた。

こうなったら、走って逃げるより他はなかった。
町外れの砂利道をひたすらに走って逃げる。
悪いことをしたという感覚がないから、
実感が半分沸かないまま、ただ走った。

それにしても、写真だけでどうしてあれほどにまで怒られる必要があるのだろう。
きっと、何か違法の建設か何かしていて、
警察に見られてまずいことでもあるのだろうか。
彼らジプシー男性が連れ立っているところは、
黒づくめの成金ファッションでいかにもマフィアらしい。
そう合点して、警察に連行されても
彼らの肩をもつことはないし、大丈夫だろうと思った。

背中ではノートパソコンを入れたリュックが肩に食い込みそうだ。
息を切らして、走っては歩きしながら、
ようやく追っ手が来ないことで心からほっとした。
訳も分からず走って逃げることになった同行者に
とりあえず自分の予想をしたことを説明して、
他のジプシー宮殿の並ぶ通りへ向かった。
もちろん、カメラはしまってもらうことにした。

他の家も相変わらず建設中のままだ。
人のいる気配がまったくない。
通りを曲がるところで、見知った顔のおじさんにばったり遭遇した。
それこそ、二年前に息子の家に入れてくれた人だった。
家を見させてほしいというと、
「ああ、家内がいるから行きなさい。」とそれきり行ってしまった。

不思議な建物の装飾などを笑う気持ちももう起こらなかった。
こっそりと観察しながら、目指す家へ向かった。
おととしの洪水で町は大きな被害を受け、
そのおじさんのボロ家も水につかってしまったらしい。
息子夫婦はとなりに真新しい宮殿を建てているのに、
おじさんの家の貧しい様子が不思議な対照をなしていた。

大きな鉄格子の門を開けて中に入る。
呼び鈴を押して、しばらくすると子どもたちがドアを開ける。
「おばあさんは・・。」と聞くと、
奥から花柄のファッションに身を包んだ、太ったおばさんが出てきた。
家の中を見せてほしいと告げ、プレゼントをちらつかせると、
「さあ。」と中へ案内された。

一室に、おばさんと子どもたちが身を寄せるようにして座っていた。
おばさんはインスリンを打っているところで、
室内もお世辞にも裕福そうとはいえない雰囲気だ。
子どもたちはどうして学校に行かないのだろう。
家の外観とはまったく正反対の家族の様子に、
虚しささえ感じられる。
写真撮影にも応じてくれなかったので、
どこか未消化のままその宅を出た。

帰り道。
脇の豪華な建物を見ながら、
これを作る人の努力は果たして報われるのだろうかと考えていた。
結局、どんな家に住んでも、
住む人の暮らしようではどこも同じのような気がする。
私たちは、おとぎ話に耳を傾けながら
豪華なお城の住人になることにいつから憧れ、
それを実現させようとひたすらに働きつづける。

とある建設中の家に車が入るのを見た。
思い切って、誰かと交渉して見ることにした。
車から出てきた、いかついジプシーの男たちの中からひとり、
存在感のある者が、英語でこういった。
「ここの持ち主はいない。
私たちは労働者だが、ここで写真を撮ってはいけない。
問題が起こるぞ。」と激しい口調だった。

すごすごと引き帰すしかなかった。
この不思議な建設中の建物の周りにある、
ピリピリとした空気の原因はいったい何なのだろう。
3年前に一人で写真を撮りながら、歩いていたときのことが思い出されて、
なお納得がいかない。
こうして、ジプシー宮殿を後にした。

後日、ダンナにこの出来事を話すと、
おそらく、ジプシー宮殿がどこかのメディアで
面白可笑しく取り上げられ、それに傷ついているのかもしれないと言った。
確かに面白可笑しい建物だか、それを分かっていて設計したのではないのだ。
ジプシーの不思議な誇りを感じながら、
周りの目を気にせずにいられない意外な一面を見るような思いだった。


*3年前のジプシー宮殿の様子はこちら。
トランシルヴァニアのジプシー宮殿











Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(4)|trackback(0)|ジプシー文化|2012-11-10_17:06|page top
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