トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

カテゴリー

FC2カウンター

カレンダー(月別)

02 ≪│2013/03│≫ 04
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30
31 - - - - - -

これまで書いた記事は・・・

全タイトルを表示

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Feed Me!

トランシルヴァニアへの扉  - Erdely kapuja-のRSSフィード

ブログ翻訳

ヴィシュタのカルバン派教会

ひんやりとした石の階段を上っていく。
古い墓石が埋め込まれた壁は、
まるで小さなギャラリーのように目を楽しませながら
頂上のカルバン派教会へと誘ってくれる。

IMG_7928.jpg

教会の裏手には、墓地がつづく。
閉め切られた教会に入るには、鍵番を探さなければならない。
やがて墓地の方から、黒い衣装に身を包んだおばあさんたちが現れた。
葬式が終わって、もうすぐ鍵番のおばあさんがやって来るはずだと教えてくれた。

IMG_7937.jpg

カロタセグ地方には、ゴシック様式の古い石造りの教会が数多く残っている。
宗教改革前のカトリック時代の遺産を今に伝える装飾や、
プロテスタントに改宗した後の、農村の民俗モチーフをちりばめた木製の天井画など
それぞれの時代の足跡がそのままに感じられる。
どっしりとした石のアーチには、
波模様を描いてのびる植物が彫られている。

IMG_7931.jpg

教会そのものを支えているかのような木の柱。
無造作に描きつけられたしずくのような輪のような文様を眺めている視線は、
そのまま天井へと惹きつけられる。
「天まで届く樹」というモチーフは、ハンガリー民話にも見られる。
永きにわたって村の人々の間で伝えられてきた原始信仰が、
形になって現れたかのようだ。

IMG_7943.jpg

植物模様から星や太陽、月などの天体の形、
果物の木にカラスがとまっている絵も見られる。

IMG_7944.jpg

トランシルヴァニアのカルバン派教会では、
それまでのアカデミックな宗教美術とは違い、
その地域特有の土着的な装飾で室内が彩られてきた。
フォークアートが盛んになった背景のひとつには、
教会装飾という目的もあるのかもしれない。

IMG_7948.jpg

何気なく腰かけた木製のベンチもよく見れば、
カラスのような鳥が形をくねらせてデザインされている。
李朝民画の文字絵のような雰囲気。

IMG_7962.jpg

カトリック教時代のフレスコ画が白く塗りつぶされ、
その漆喰のおかげで良い状態で保存されていることが多いという。
トランシルヴァニアのハンガリー人教会は、
政府の援助を受けることができないため、
歴史的な遺産もなかなか修復の手が及ばないそうだ。

IMG_7953.jpg

誕生を祝う洗礼から、成人を迎える若者たちの信仰告白式、
若い男女を結びつける結婚式や、人生の締めくくりである葬式まで・・。
日常生活に特別な彩りを与えるのは、
他でもない村人たち自身の手である。

IMG_7971.jpg

村の女性たちの手刺繍によって彩られた空間は、
あたたかく来訪するものを包み込む。
教会へと案内してくれたカタリンおばあさんも、
きっと針に思いを込め、タペストリーを仕立てたに違いない。

IMG_7978.jpg

カロタセグ地方の教会。
古いカトリック美術と新しい農村の美術。
ふたつが融合して、今もなお村人たちに愛されている。

vista3.jpg

*トランシルヴァニアのハンガリー教会の中では唯一、観光客はユーロで入場料を取られる教会。
高い見学料は辛いけれど、教会の修復に役立つことを願っている。


スポンサーサイト

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(6)|trackback(0)|カロタセグ地方の村|2013-03-15_16:24|page top

初春の散歩

朝から青空がかがやいていた、日曜日。
久しぶりに森の散策に出ようと決めた。
リュックにパンやハム、クッキーを詰め込んで出発する。

近所で出会った知り合いと森へ行くことを告げると、
「そう、太陽の光を集めにね。」とにこやかに笑った。
この冬の数ヶ月の生活で欠乏していたのは、
他でもない太陽の光。
自然と体が光を浴びることを欲して、外へと向かうようだ。
ヨーロッパ人が夏になると、
その皮膚が弱いのにもかかわらず、
若者からお年寄りまで水着姿で野原や公園で日光浴をするのも、
そうした太陽の光への飢えに違いない。

町外れの住宅街を丘の方へ向かって歩いていく。
春には黄色いタンポポがじゅうたんのように敷き詰められていた原っぱも、
今は生命の兆しは息をひそめ、大地の底深くで眠っているようだ。

松林のトンネルに入った。
ここは、100年前に町の住民たちが植林をしたことによってできた林。
太陽の光は木漏れ日となって、
雪がとけたばかりの大地に注いでいる。

森の中は季節によって違った表情を見せてくれる。
春一番に咲く花は、原っぱではなくて
この薄暗い森の中。
5月になって森の木々が葉を茂らせる前に、
小さな白や紫の花がいっぱいに花ひらく。
たくさんの生命がお互いの成長の時期を見極めて、
共存している姿には驚かされる。

IMG_2971.jpg

コンコン・・・と扉をたたくような音が、どこからもなく聞こえる。
キツツキが巣を作っているらしい。
ひっそりと静まり返った森の中に、
これから次々と渡り鳥が引っ越してきて賑やかになるのだろう。

町外れには鉱山の跡があって、
その上にそびえる高台からは町が見渡せる。
町で一番古い城砦教会のある丘や、
私たちの家も確認できる。
町外れの丘の向こうの山々には、まだ白い雪が残っている。

崖のそばに、たくさんの芽をつけたネコヤナギの木を見つけた。
まるでウサギの尻尾のようなふわふわの毛なみの芽は、
イースターのシンボルでもある。
旦那に声をかけると、何もない崖の縁へかがみ、
叫び声をあげる私を無視して、3本の枝をちぎった。

IMG_2976.jpg

この町外れの地区は、はるか昔は新石器時代の居住地があったらしい。
私たちのお気に入りのこの高台にも、
土が掘り返されている所が何箇所かあり、
来るたびに旦那と息子はその土の中を掘り返しては、
小さな土器の欠片などを見つけて持ち帰る。
今回も、大発見があったらしく、
興奮したように、私の前に丸い石と小さな土器を突きつけた。
「これ、何だか分かる?
この円の石は、スピンドル(糸を紡ぎに使う棒)の底の部分。
土器もこんなにきれいな状態で残っているなんて。」

古くから、カルパチア山脈に囲まれたこの広い高地には、
たくさんの民族が行きかい、居住しては移動していった。
名もない民族の生きてきた証が、何千年も後になってなお残っている。

IMG_2988.jpg

初春の太陽の光を体いっぱいに吸い込んで、
乾いた色の芝生に腰掛けて、手仕事にいそしむ。
まだ風は冷たいものの、
太陽の光は確実に季節が移り変わっていることを伝えている。

電話の音、友達から呼び出しがかかった。
重い体を起こして、元来た道を戻っていく。
青虫のような芽のついたヘーゼルナッツの枝と、
ネコヤナギの枝をお土産に、家路を急いだ。

我が家にも、春の兆しをひとつ。

tavaszszorko.jpg

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(2)|trackback(0)|自然、動物|2013-03-09_17:45|page top