トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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村のおばあちゃんの家

どこまでも続く広大な平野に、
ジャガイモやニンジンの葉が青々と茂る中を車が走っていく。
「美しい畑」と呼ばれるこの平野には、小さな村が点在している。
旦那のおばあちゃんの村、ツォーファルヴァもそのひとつ。

国道沿いの道が村を真っ二つに分け、
中心の通りのほかは小道だけ。
この小さな村は、もしチャウセスク政権が長く続いていたなら、
消えてなくなる運命にあったと言われている。

最後にここを訪れたのは何年前だろう。
すでにおばあさんが亡くなってから、4年が過ぎている。
あれから残された二人の姉妹の話し合いがつかず、
家はそのままに残っている。
ブドウのつるが日陰を作る軒先で、
おばあさんはいすに腰掛けて通りをよく眺めていたものだ。

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村の外は、国道の車通りのせいで、
人と人の行き来もそれほどない。
どこか冷めた感じの村は、いつ来てもそれほど好きになれなかった。
それでも、家の庭はまるで小さな楽園のように美しい。
さまざまなりんごの生る樹があって、
隣の家との境にはラズベリーや赤スグリの茂みもある。

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りんごの花はとうに散り、
小さな実がもうふくらみはじめている。
夏に食べる青りんご、秋には赤りんご。
初めて来たときには、樹によって色も形も味も違うことに驚き、
それぞれを味見するのが楽しかった。

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ちょうど今は、エルダーフラワー(ニワトコの花)が盛り。
クリーム色の金平糖のような小さな花と、
つぼみの水玉が青い空に向かって大きく背をのばす。

手を伸ばして、麦わら帽子に花を摘んでは入れていった。
カラメルを作った鍋に水を入れ、
新鮮なエルダーフラワーとレモン汁を入れて三日待つ。
さわやかな初夏の味のジュースが出来上がる。

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家は空気を入れてあげないとすぐに傷むと聞く。
かつて家族が住み、老夫婦が住んでいた頃とは違って、
今はすっかり空っぽになってしまった。

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働き者のおじいさんがいた頃は、
庭と家を絶えず行き来して、
ドアはせわしく開けたり閉めたりの繰り返しだった。

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おばあさんが元気だった頃は、
絶えずかまどに火がともり、
スープを温めたり、お菓子を焼くにおいがしていた。

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庭では、ただ一匹の老犬がこの家を守っている。
昼の残りのパテをパンにつけて、一枚ずつ投げてやった。
缶はあっという間に空になった。

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「小さい頃は、毎年夏になると村に帰るのが楽しみだった。
たくさんのブタや牛を飼っていて、
子牛が生まれたときには、いっしょに納屋で一晩寝たこともあったよ。
でも、今は後味の悪い思い出だけが残ってしまった。」
旦那は寂しそうに言った。

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いつか子どもたちが大きくなっても、
この家は残っているだろうか。
だんだんと朽ちていく家の将来を思い、
なんとなく寂しい気持ちを抱いて村を後にした。
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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(2)|trackback(0)|セーケイ地方の村|2013-06-11_02:45|page top