トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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きらめくビーズで春を祝う人々

春の気配があちらこちらに漂いはじめていた。

はるかセーケイ地方からいくつもの山や森を越え、
カロタセグ地方でイースターを過ごすために今年もやってきた。
なだらかな丘には、すでに若草がみずみずしい色を放っている。

IMG_4743.jpg

イースターの日曜日。
村では、教会の礼拝を告げる鐘の音が高らかに響き渡る。
すると、あちらからこちらからと
眩しいほどに着飾った少女たちが現れる。
ある者は女友達といっしょに腕を組み、
またある者は身内に囲まれて大切に守られるようにしながら。
そのしずしずとした足取りは、
晴れ舞台の姿を一時でも長く記憶の中に留めたいという
乙女たちの心の表れのようだ。

ゆっくりと石の階段を上って、
高台の上の教会にたどり着いた。
杉の大木が影をつくる教会の前の広場に、
ひとり、またひとりと輪に加わり、
色彩の洪水が氾濫する。

穏やかな太陽の光が、彼女たちの頭飾りに降り注ぎ、
そのまばゆい煌めきがさらに無垢な少女たちを美しく見せる。
眺めるこちらの心にも、あたたかな春の風が流れてきた。

IMG_4523.jpg

この日は、キリストの復活を祝う日。
赤い刺繍が、無機質な石の壁に血を通わせている。
誰が置いたのだろう。
少年の晴着に合わせる、
ビーズの飾りつきの帽子が椅子に腰かけていた。

IMG_4662.jpg

説教台の近くに席をとるのは、
パールタという冠をかぶった少女たち。
信仰告白式をへて、正式に大人として受け入れられたばかり。
パイプオルガンの音がこだますると、
いよいよ祝日の礼拝が幕をあけた。

kalotaszeg husvet10


急いで車に乗り込んで、今度は隣村へと向かった。
祝日の礼拝の始まりが村によって違うからだ。
高台の上の教会を目指して、
村人たちがゆっくりとした歩みで丘を上ってくる。

IMG_4864.jpg

甲高く一定のリズムを打つ鐘の音。
澄み渡った青空に、春のあたたかな太陽が降り注ぐ。
長い冬を越して、ようやく美しい季節がやってきた歓びで、
心なしか足取りも軽やかなようだ。

IMG_4735.jpg

挨拶を交わした後で、おばあさんたちがこう囁きあうのを聞いた。
「ねえ、あのエプロンを見た?」
取り繕って着た、私の民俗衣装風の出で立ちが奇妙だったのか、
見慣れない衣装が気になって仕方ないという風だ。
恥ずかしいというよりも、むしろ微笑ましかった。
昔から、人々は相手の祝日の装いをこっそり忍び見ては、
互いに品評をしてきたのだろう。
こうした装うことに対する執着心こそが大きな特徴であり、
ひいてはカロタセグの衣装や手仕事を並ぶもののない水準へ押し上げてきた。

パールタを被る少女たちの、晴れやかな立ち姿に出会った。
恥じらいと誇り高さとが入り混じった、
魅惑的な眼差しに目が釘付けになる。
すると母親だろうか、少女の冠を手をかざして、
壊れ物に触れるようにそっとなおしている。

IMG_4883.jpg

緑色のフェルト帽をすっぽり覆い隠してしまうほどの、さらに華やかなビーズ飾り。
赤や緑、ゴールドやシルバーのアルミビーズが揺れるボクレータ付きの帽子を、
誇らしく手に持つ少年。

bokreta.jpg

きらめくビーズと極上の色彩と、
春を歓び迎える習慣は今の時代も変わらない。
祝日とは、灰色の毎日の中から、
ひとつをすくい上げ、特別の色に染め上げて、
私たちの生活を楽しく、かけがえのないものに変えるということ。
彼らの鮮やかな衣装を愛でるだけで、
春の魔法にかかったような一日だった。

kalotaszegtesei.jpg

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comments(2)|trackback(0)|カロタセグ地方の村|2014-10-07_05:08|page top
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