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トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニアのフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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春の歌声

太陽の光が大地を照らし、
ちいさな生命がふたたび目を覚ました。
次男の成長とともに、
季節の移り変わりにはっとさせられる日々。

我が家の庭にも、繊細な花びらをいっぱいに広げて
ひなぎくが咲いた。

tavaszi enek (6)

春の兆しは、木々の色から。
大地の色を吸い上げて、木の枝が赤く血の通ったようにドラマティックに変わる。
長い冬の灰色の世界に住まう私たちの眼は、
そんな僅かな変化にも不思議と敏感になる。

それから、春は野原にも、森の中にも
少しずつ忍び寄り、ある日を境に一気に開花するのだ。

この冬に、古民家のお隣さんがどちらとも他界してしまった。
主人を亡くし、がらんとした寂しい家や庭にも、同じように春が訪れる。
庭のはずれの町を一望する小高い丘に、
マルギットおばあさん、オルガおばさんが眠っている。

我が家の亡き主人の墓が同じように、庭のはずれに立っている。
アカシアの木の下の陰に、ひっそりと隠れるようにして
ちいさな春が出迎えてくれた。
それは、無数のスミレの花だった。
心地冷たい風が通り抜けると、かすかに甘い香りが鼻をくすぐっていく。

tavaszi enek (7)

生まれたばかりの緑に腰を下ろして、
うす紫と白の蝶のような花を愛でる。
風に揺れてかすかに動くさまは、まるで肩をゆすって笑う子どものようで愛らしい。

tavaszi enek (8)

4月のはじめ、自然の変化が目覚ましいこの時期。
森の中では、枯れ葉の間から鮮やかな緑色の芽が起きだし、
大地は無数のちいさな花で覆われる。
木が芽をふくと、すぐに日陰になってしまうから、
その前のほんの僅かな間にこの花は短い命を燃やす。

夕方、日の暮れる前に森の中に足を踏み入れた。
裸の木々の足元には、まばらに緑やうす紫の花が茂みを作り、
空からは、鳥たちの歌声が絶え間なく降ってくる。
それも、数え切れないほどのさまざまな鳴き方で。
だんだん薄暗くなる森の中で
春を告げる歌声に耳を澄ましていると、
その日の重荷がほぐれてすっと消えてしまった。
春の神秘に触れて、夢心地で森をあとにした。

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comments(2)|trackback(0)|自然、動物|2016-05-07_06:15|page top