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トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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東欧クラフトマーケット

阪急うめだにて東欧クラフトマーケットが
10/18~22の5日間にわたって開催されます。
トランシルヴァニアの刺しゅうワークショップやトークショーも開催されます。
トランシルヴァニアのセーク(シク)村から
Bőjte Máriaさんが来阪し、
セークの刺しゅうを紹介してくださいます。
(私は土日月の3日間イベント会場におります。)
どうぞお誘いの上、お越しくださいませ。


ワークショップ日程

・カロタセグのイーラーショシュのブローチ
10/20(土)午後3:30~4:30
10/22(月)午前10:30~11:30

P1180295.jpg P1180296.jpg 

・アーラパタク村編みクロスステッチのブックマーク
10/20(土)午後5:30~6:30
10/22(日)午後0:30~1:30

P1170720.jpg 

・セーク村アウトライン刺しゅう
10/21(日)午後4:00~5:00
10/22(月)午後3:00~4:00

szeki15.jpg 
*ワークショップの申し込みは明日の10時からです。


トークショー「トランシルヴァニア手芸の旅」日程
巨大スクリーンに映し出されたトランシルヴァニアの手芸紀行。
カロタセグ、セークの村をあたかも旅する気分でご覧ください。

・カロタセグ地方
10/21(日)午前11時~1130
・セーク村
10/22(月)午後1時~130

kalotaszeg2_20181010002525379.jpg IMG_0059.jpg 
イベントについて、詳しくはこちらをご覧管さい。
阪急催事
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comments(0)|trackback(0)|トランシルヴァニア食文化|2018-10-10_15:49|page top

伝統のプルーンジャム作り

結婚式の取材を終えて帰ると、 待っていたのはプルーンジャム作りだった。 
50キロのプルーンを洗い、 種と実を分けて、大鍋で煮ること12時間。 
水も砂糖も一切なしの、純粋なプルーンジャムが出来上がる。

エルジおばさんの家には、
二晩、娘のエルジやその友人一家、
おばさんの親戚や友人たちが寄り集まった。
皆でプルーンの種を分けながら、おしゃべりが始まる。
昨日の結婚式のことで持ちきりだった。
村の生活の醍醐味は、助け合いの共同作業にある。
どんなに村人たちが金銭的に裕福であっても、
共通の文化行事や助け合う気持ちがなければ、
村の生活は無味乾燥したものとなるだろう。

  szilvaiz2.jpg

プルーンを使って、プルーン団子を作ったり、
セーク名物の揚げ菓子「チュルゲ」を作ったりした。

近くの町で暮らす娘夫婦、その友人一家がやってきて、
夜遅くまでプルーンジャムの煮込みをした。
娘のエルジさんは50代の女性で、
嫁入り道具もすべて自分の手で作った世代の人だ。
スカーフのバラ刺繍のやり方を、
近所の娘さんに教えてあげていた。
私も持ち寄った、セーク刺繍を取り出した。
すると、エルジおばさんも
「私も手仕事がしたくなってきたわ。」
とアトリエである納屋から紡ぎの棒を持ってきた。
人が働くのを見ると、自分も何かせざるを得ない根っからの働き者だ。
豆電球ひとつ照らされた庭では、
プルーンの大鍋をかき混ぜる人、薪をくべる人、
刺繍をする人、糸を紡ぐ人。
それぞれが別の仕事をしながらも、一人ではないという不思議な一体感がある。

「私たちが若い頃はね、
毎週決まった日にこうやって若い女の子たちが手仕事を持ち寄って集まったの。
すると、村の若者たちがやってきて、いたずらをしたり、おしゃべりをしたり、
踊ったりしたの。
手仕事なんてもちろん、はかどらなかったから、
1週間で何㎝しか刺繍も進まなかったわ。」とエルジおばさんは楽しそうに話す。

クルクルとスピンドルを回し、麻を糸に紡いでいく手つきがあまりに美しくて見惚れていると、
手から棒がすべり落ちた。
「こんな風にスピンドルを手から少女が落として、
それを拾った少年はキスをもらえるんだ。」とマルトンおじさん。
「さ、おじさん。早く拾って!」と皆が大笑いをする。

長いスピンドルの先についた麻糸の塊を手ですくいあげ、
マルトンおじさんは話した。
「麻糸に火をつけて、もし上に燃え上がったらその少女は少年が好き、
もし下に落ちてしまったら、きらい、と占いもしたんだ。
もちろんフォノー(糸紬の家)では室内だから、
空気が暖まって上に上がるのは当然だけれどね。」
おじさんが茶色い麻糸に火をつけると、
予想通り(屋外であるから)下に落ちてしまった。
皆が笑い転げる中、マルトンおじさんは肩を落として「嫌いなんだ。」と言った。

この世代の人たちが経験した、美しい時間の過ごし方。
それを語る人たちの表情から、いかに幸せな時代であったかが偲ばれる。

ジャム作りの大鍋に車軸のような混ぜ棒が置かれ、
50キロのプルーンがゆっくりと液状になり、やがて固まってくる。
この作業は少しでも休むと、プルーンが鍋底に焦げ付いてしまうため、
かき混ぜ続けないといけない。
さらに、薪の番をする者もいるから、
ふたりではとてもできる仕事ではないのだ。

 szilvaiz.jpg


3年前に作ったプルーンジャムは、
古い陶器のケーキ型に入っていた。
まるでガムのように弾力がある。
これを混ぜると、新しいものにコクが出て、固まりやすくなるという。

 szilvaiz1.jpg 

夜行列車の出発の時間が近づいたとき、
ジャムはほぼできあがり、ガラス瓶の中に熱いできたてのジャムを入れてもらった。
エルジおばさんの孫息子さんが職場から駆けつけ、
ケーキを囲んで、エルジおばさんの72歳の誕生日を皆で祝った。
町の駅まで車で送ってもらい、あたたかな思い出とお土産を手に、
7時間かけてセーケイ地方へ向かった。


comments(1)|trackback(0)|セーク村|2018-10-10_08:17|page top

セーク村の結婚式(後)

起床は6時。
6時半には、花婿宅へ向けて車が出発する。
普段ならこのように早起きをする必要はないのだが、
今回は花婿の住まいが遠くの町にあるがためである。

セークから1時間のところに、べトレンという町がある。
花婿の自宅は歓迎と記したアーチで飾り付けてあった。
「ようこそ、親愛なるお客さま。」という札と、
生花で飾り付けたアーチをくぐる。


szeki lakodalom (17) 

ふたりのセークの女性が出張着付けをしに来たのだ。
次々に服を重ねて、やがてセークの女性に変身していく。
「子どもさんがびっくりするほどきれいになるから、見ていなさい。」
陽気なおばさんたちに、すぐに打ち解ける。


szeki lakodalom (2) 

一方、花婿は、あっという間に身支度を終えた。
「何度もセークの衣装を着たんだ。」
とすっかり村になじみ、結婚後も花嫁の故郷に住むことに決めたそうだ。
「セークの男性みたいに立派よ。」
と若く堂々たる体格の花婿に見惚れる。
茶色いウールのパンツをはき、
バラの刺しゅうのほどこされた赤いネクタイをする。
これは若者の象徴で、結婚すると同時に黒に変えなければならない。
そしてウールの丸い帽子の上には、一際大きなボクレータ。
まるでクジャクが羽根を広げたように、華やかだ。


szeki lakodalom (18)


花嫁花婿の最も親しいものが何人か選ばれる。
女性は、花嫁衣装とほぼ同じである。
緑と黒のチェック柄のウール素材のプリーツスカートに、
ガーゼのように繊細な織のプリーツエプロン。

男性は、ウールの丸い帽子にボクレータが輝く。
手には美しい模様がつき、赤いリボンが下がったステッキをもつ。


szeki lakodalom (19)


花婿宅にセークの人々が楽団とともににぎやかに到着。
花婿宅の庭へ入ると、ここで花婿の別れの儀式がはじまる。
花婿の付添人が、長い別れの詩を読むと、
花婿の両親や親せきの人々が別れのキスをする。
「まるで葬式みたいに泣いてたよ。」と後に花婿が苦笑して話していた。


szeki lakodalom (21)


普通は同じ村の中で行われることなのだが、
花婿が遠くの出身であるがために、この後は車に乗り込んでセークに向かわなければならない。
セークの着付けのおばさんたちは花嫁の着付けのため、一足先に村に帰ってしまった。
「大丈夫。あなたはあの人と一緒の車に乗って帰りなさい。」
着付けをした男性を示した。
その男性がすでに車の運転席に乗り込んだ。
同じくセークの衣装を着た奥さんが助手席に、
そして後部席に入ると、隣にいたのは何と花婿だった。
結婚式の取材にきて、花婿と同じ車に乗れるなんて幸運なことだ。
花婿の車を先頭に、何十台もの車が列をなして、セークを目指す。

「セークの衣装の着心地はどうだい?」と花婿が親友の運転手に尋ねる。
「いいよ。だけど運転するのには適してない。」と
パリパリに糊がついて広がった袖で何とかハンドルを操縦している。
「息子に今夜はセークで寝るのと話したの。
そしたら、セーク(椅子)でどうやって寝るの?と目を丸くしていたわ。」と笑う。

花婿は時間通りに来られるのか心配のようだ。
町出身の若者がどうして村の伝統的な結婚式にこだわるのかが知りたかった。
「ジュジャ(花嫁)とふたりで、
どうしても伝統的な結婚式がしたかったんだ。
それでも、昔のような小屋がなくて、
僕たちのは半分が伝統的、半分はレストランになってしまったけどね。」

村に入り、中心の小学校の前で車を止める。
すでにセークの参列者が待っていた。
たくさんの子供たちが美しいセークの衣装に身を包んでいる。


szeki lakodalom (22) 


花嫁行列をひと目見ようと、村人たちも門の前までやってきた。
初めに、行列の先導者がふたり、
次に花婿、花婿の付添人の女性たち、
それからボクレータをつけた男の子たち、ヴァイオリン、ビオラ、アコーディオンの楽団、
最後にその他の参列者たちと続いていく。
セークのゆったりとした、
哀愁あふれるメロディーが鳴り響き、
そのリズムに合わせて、ゆっくりと歩調を合わせて進む。
少年たちは手に持ったステッキを、リズムに合わせて打ち付ける。
音楽のリズムと、荘厳な花嫁行列の風景が見事に調和している。


szeki lakodalom (25)


一方、花嫁宅では、同じようにアーチを取り付けて花婿の行列を待っているところだった。


szeki lakodalom (26) 

白と黒が清楚で美しい、セークの若い女性たち。
次の花嫁になるのは、誰だろうか。

  szeki lakodalom (27) 

花婿を伴った、行列がやってきた。
門のところで掛け合いがはじまる。
「誰を探しているのか。」
「花嫁を迎えに来た。」と先導者が応える。
こうした問答がつづき、ようやく門が開かれる。


szeki lakodalom (29) 

花婿たちは、花嫁のために用意された清潔の部屋に通される。
すぐには花嫁を差し出さないので、
2人ほど別の女性が連れてこられ、
ようやく花嫁が花婿に引き合わせてもらえる。
食べたり飲んだりの小休憩をはさんで、
いよいよ花嫁の行列を合わせて、教会へ向かう。


szeki lakodalom (30) 

赤いバラと金色の紙で縁取られたパールタをのせた花嫁の姿は、
中でも光り輝いていた。
ゆったりとした足取りで花嫁になった喜びを踏みしめるように、
静かに厳かに歩んでいく。
花嫁の表情を見ているうちに、はっと気が付いた。
セークの女性たちは幾度ともなくこの姿を見ながら、憧れつづけ、
ようやく晴れの日を迎えるということに。
「いつかはあの花嫁になりたい。」そう思いながら、
花嫁行列を見、時にはその行列で歩みを共にしてきたに違いない。


szeki lakodalom (31)


教会へ向かう道すがら、
通りにロープで通せんぼがされてしまった。
立て札に、パーリンカ10リットルまたはビール40本とある。
ここでも男性衆の交渉がはじまった。
結婚への道のりは長く、険しい。


szeki lakodalom (35)


役場で婚姻届けを出した後は、
高台の上にあるプロテスタント教会にて結婚の誓いをたてる。
再び、花嫁宅へ向かい、花嫁の家族と別れの儀式をしてから、
披露宴会場へ向けて最後の行列が出発した。
1日がかりの結婚式、
祖父母の時代と変わらず同じ姿で行列をなす村人たちの姿を
しっかりと目に、心に焼き付けた。

 szeki lakodalom (33)  
花嫁行列の風景


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