トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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トランシルヴァニアに家を建てる(9)

トランシルヴァニアの村で家を建てる・・・
このシリーズも、家の土台で今年はおわるのかと思っていたら、
9月に入ってから急展開を見せた。

9月のちょうど建設作業が始まった頃から
息子の幼稚園が始まり、なかなか村に行く機会を得なかった。

9月も終わりのある日、
やっと厚い雲のすき間から水色が姿を現した。
久々の青空である。
思い切ってその日は幼稚園を休みにし、
私たちもドボイに向かった。

車で秋の畑をみながら村に向かう。
途中、だだっ広い畑でジャガイモの収穫をする人の集団が見えた。

普段どおりの村の景色を何となく眺めていると、
さっと目の前を通り過ぎた建設中の家に
すぐには気が付かなかった。

真新しい木材の色が目に飛び込んでくる。
これが私たちの家・・・
ついこの前までただの土地であったのが、
この2週間ほどの間でこんなに形ができていたのだ。
「ほら基礎でみたときより。大きく見えるだろう。」
とラツィおじさんも満足そう。

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ご立派に窓までちゃんとついている。
気になるのは日当たりだ。
ドボイはきた向きの村である。
南側は山になるから、期待できるとしたら東から差す朝日だろう。
この極寒の地では、窓はもちろん二重窓である。

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ネコの額ほどの土地には、建設中の家と木材、資材でいっぱいであるから足の踏み場もないほどである。

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その木と木とのすき間に、小さな秋を見つけた。
すぐに息子を呼ぶ。
この花は、ウースィケ。
ハンガリー語で「秋ちゃん」とでも呼ぼうか。
ここトランシルヴァニアでの秋のしるし。

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すっと伸びた白いしなやかな茎に、
可憐なうす紫色の長い花びら・・・
その透き通るような存在感。
まるで小さな森の精のようだ。
その小さな体は、確かにここに秋が来ていることを知らせてくれる。
「あらー、きれい!」と息子からもため息が漏れる。

しばらく秋の花に酔いしれた後、
もう一方の土地も見に行ってみる。
これは私が買ったほうの土地だ。
この奥はもう森になるから、土地は坂になっている。
その奥のほうに年をとったリンゴの木があった。
数は知れているが、きれいな赤。

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もぎたてをかじると、心地よい甘酸っぱさ。
息子もりんごをかじりながら、もいでいる。

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他にもクルミの木があるはずだ。
探してみると、土地の左側にあったが、
枝にはほとんど実が付いていない・・・
足元を見ると、無数のクルミの殻が散らばっている。
リスだ、と直感した。
この土地を買った私よりも、この小さな動物が本当の土地の主なのかもしれない・・・
そう思いながら、クルミを拾っていると、

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カサカサと音がした。
ふわふわの大きな尻尾を揺らしながら、
すばやい動きで木から木へと飛び移る。
あっという間に、隣の庭へと消えていった。

mokus.jpg

プルーンは、小さな小屋の横にたくさんなっていた。
深い紺色の粒からは、中の水分がにじみ出ていた。
少し洋服でこすって、食べてみる。
シロップのような甘さが口の中にあふれる。
プルーンがこんなにも甘いものだなんて・・・

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プルーンをもぎながら、森の主のことを考える。
昨年の秋に、この庭に入ってプルーンの木を押し倒していったあの動物・・・
クマである。
私はプルーン狩りをしながら、ふとどこかからクマに見られているような感じがしてならず、プルーンはほどほどに建設中の土地へと買えることにした。

息子はお姑さんたちと一緒に、ひいおばあちゃんの住む村へ。
ダンナは建設作業で忙しい。
私は、仕方がなくクルミの収穫に専念する。

クルミの木は、ちょうど中央に位置する。
10mか、15m・・・分からないが、とにかく高い。
こんなに高い木には登れないから、木材をひとつ調達して叩き落す。
すると、緑の実に包まれたクルミをたくさん収穫できた。

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初めてクルミを収穫しに行ったとき、初めこの緑色のなかにあの茶色いクルミが入っているとは思いもしなかった。この緑の厚い皮が簡単にはげないときは、足で踏んで取り出す。
手に付くとこの汁は、茶色い染料なのでなかなか落ちない。

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しばらくして作業が休憩に入ると、
大工のジュリが話してくれた。
「あのお向かいの家には昔、クルミの木があって、
あの上に42歳の男が上って、落ちて死んだんだ。
まだ小さい子供もいたのに・・・気の毒だったよ。」
そんな危険を冒してまで、クルミを取ろうとは断じて思わない!

しばらく休むと、寒さに身震いをしてしまう。
ダウンジャケットを着ていても、まだ冷える。
向いのヤーノシュおじさんが、
「うちの奥さんが、今ザクスカを仕込んでいるところだから・・・」とすすめてくれた。

門を押して、中へ入る。
村の家は、夏は涼しく(時に寒いくらいに!)、
冬はまきを燃やすので暖かい。
エルジケおばさんは、「私は汗をかくくらいよ。」と大きな鍋の中でスプーンをかき回す。

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このザクスカというのは、日本でいうご飯の友。
パンに塗って食べるものだ。
いろいろヴァリエーションはあるが、夏に収穫した野菜などを煮つめてピュレーにする。
ここでは、トマト、パプリカ、たまねぎ、マメである。
美味しそうな野菜の香りが部屋にいっぱい。
この後ビンに詰めて、食物貯蔵庫へ入れる。

もうそろそろ私もお腹がすいてきた。
土地に戻って、ダンナと二人で質素なピクニックをした後、
お墓のお墓の間で、一人暮らしをしているユリシュカおばあちゃん訪ねた。

ユリシュカおばあちゃんは75歳。
2,3年前にご主人様に先立たれて以降、このガスも水道も、電気さえもない家で一人暮らしをしている。

おばあちゃんが村のニュースを話してくれた。
誰々さんの家で、最近150kgものブタをクマが襲ったということ。
ブタ小屋の屋根ももぎ取られたそうだ。
誰々のところで、オオカミが羊を何頭か襲ったこと・・・・
それにしても、なんて危険な土地なのだろう。
こんなところで一人暮らしは、さぞ心細いだろう。

おばあちゃんとおしゃべりをしていると、今度はイロンカおばあちゃんがやってきた。
耳の遠いおばあちゃんは、なかなか近所づきあいが難しいようだ。
がユリシュカおばあちゃんのところへは、日に何度も足を運ぶそうだ。

ユリシュカおばあちゃんが、麻の種を見せてくれた。
「これを植えて、刈り取った後の作業がまた大変なのよ・・・
草を干して、叩いて、くしですいて・・・
それから、糸を紡がなくちゃならない。
もう今の人にはとてもじゃないけど、できないわね。」

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そして、その収穫した麻で織った袋を懐かしげに広げて見せてくれた。
「これはまだ一回も使わずに、たんすの中にしまってあったのよ。」とおばあちゃん。
花嫁の引き出物に、女性の手仕事がたくさん詰められる。
そのうちのひとつ。

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大きな麻袋は、穀物を入れるもの。
うすい赤色の縞模様が刻まれるが、この模様や色でどの家のものかを区別していたそうだ。
麻の手触りにも、年月が感じられるようだ。

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そして、ユリシュカおばあちゃんがふと思い出したように笑った。
「この人、この前なんて夜の10時に私を訪ねてきたんだから!」と語り始める。
「その日は、もう10時すぎたので眠ろうとしてベッドに横になっていたのよ。
そしたら門を開ける音がするものだから、びっくりして耳を澄ましたの・・・
今度はドアを叩く音!
私は夜は戸を開けないことにしているから、もちろん出なかったわ。
もうそのときにはイロンカおばあちゃんだと分かっていたけれど。
・・・それでも足りずに、次は窓を叩くのだから!」
どうやら、イロンカおばあちゃんは夕方早くに寝てしまい、
夜にはもう目が覚めてしまったようだ。
そして朝だと思って、イロンカおばあちゃんを訪ねに行った・・・

2人で大笑いするおばあちゃんたち。
とぼけた感じのイロンカおばあちゃんと、はきはきしたユリシュカおばあちゃん。
いいコンビだ。
ドボイで一人住まいをするおばあちゃんたち。
元気の良い笑い声が聞けてよかった。

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そろそろお暇を・・・とおばあちゃん宅を後にして、戻ってみる。
私たちの家も、もう一階部分はほぼ出来上がった。

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この家が完成した時には、
村の人たちを呼んでパーティをしよう。
完成が待ち遠しい。


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comments(4)|trackback(0)|村に家を建てる|2008-10-05_21:44|page top

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私の家も基礎の時は小さい家のように感じていたけど、骨組みができてくると結構大きい家なんだろうなぁって思っていた頃を思い出し、懐かしい気持ちです。
あともう少しだね~。

ウィースケっていうお花、淡い紫色がとってもキレイ。
りんごやプルーンも美味しそうだね。
こちらもすっかり秋になりました。
秋真っ盛り
なちゅさん、ありがとう♪
私は宮崎の実家では、
気が付くと家が出来ていた感じで
初めの頃は本当に自分の家か実感がわきませんでした。
それでも今回は、違います!
自分で石を運び、穴を掘り、
木材を運び・・・
近所の人たちと一緒に建てている家。
だからこそ愛着が沸くのでしょうね。

こちらの秋も満喫していますが、
やっぱり故郷の秋が恋しいな。
帰国が待ち遠しいです。
家も形になってきましたね。
前の家を取り壊す所から見ていたので、
ずいぶん進歩したな~って思います。
(実際手がけている人はその過程も
大変だったとは思いますが。。。)

秋を告げるお花や、リンゴ、クルミ、
リスなど自然がいっぱいで羨ましいです。
クルミって、あの硬い殻がそのまま
木になってると思ってました!
ぎんなんと同じですね。果肉にくるまれて
いるとは初めて知りました。

この写真にあるプルーン、食べた事があります。プラムみたいに甘酸っぱくて美味しいですよね。料理しないで、そのまま食べたい感じです。(^^;

日本でも最近、クマに襲われたニュースが立て続けにありました。奥多摩と新潟で。
怖いです。
その上、オオカミもいるんですね。
おばあちゃんたちも不安でしょう。
お茶目な話を聞いて微笑ましいですが、
一人暮らしで、水汲みとか火熾しとかも
ご自分でされているんですよね?
逞しいですよね。お年寄りって。
私がおばあちゃんの年になってもそんな
事は出来ないと思います。
クマの事件
はい、私もニュース読みました。
日本でもクマに襲われる事件があるんですね。
だからといってクマを狩るわけにも行かないし、どう気をつけたらいいのでしょう・・・
あのイロンカおばあちゃんの息子さんもクマに襲われ、それが元で亡くなったそうです。

おばあちゃんたち、陽気に笑っていますが、
普段は一人で大変な思いもたくさんしているようです。村で一人生きていくのは、本当に大変です。

くるみの実はやっぱりご存知ありませんでした?良かった、私だけじゃなかったんですね。今は新鮮だから、中身も真っ白でサクサクしています。私たちが普段食べるのは、乾燥して茶色くなったものです。味はこちらのほうがコクがあって、美味しいです。

もう家の建設もクライマックスを迎えようとしています・・・天気さえ良ければ。