トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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トランシルヴァニアの冬のご馳走

トランシルヴァニアで冬の代名詞といえば、
何といっても豚肉。
ブタを一年かけて太らせて、豚肉にする。
冷蔵庫のない昔から、ブタの解体はいつも冬と決まっていた。

私たちの住む町セントジュルジから、
北東にある町ケズディ・ヴァーシャールヘイへと着いたのは夜9時前。
友人の家で一泊して、朝7時には
村へと車を走らせていた。

冬の朝7時といえば、まだ夜明け前の雰囲気。
薄暗い景色に、雪だけが白く光って見えた。
温度計は-11度を指していた。

友人ゾリのおばあちゃんなのだか、誰の家かはよく分からない。
とにかく家に招かれると、作業前に一杯をみんなでやっていた。
お酒はもちろんパーリンカ。
無色透明の液体は、40度以上の蒸留酒。

体を温めたところで、
外へと繰り出す。
納屋の前の広場が、その会場となる。
藁が敷かれたところが、ブタの処刑所となるわけである。

そのかわいそうなブタは、最後の晩餐も与えられず
空腹のまま手にかけられる。
ブタ小屋で、悲鳴を上げて逃げ惑うその姿は、
さすがに見るものの哀れをそそる。
もう自分の最期を感じているかのようだ。

何のためにここまでやってきたか、十分承知していたはずだ。
その大きなブタをヒモで引っ張り、
外へと連れ出す。
そして、声になるかならないかのかすれ声で叫び続けるブタの姿に、
私はもう耐えられなくなって、息子とともに小屋へと入った。

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その最期の抵抗もしばらく続いていたが、
やがて4人の男性に取り押さえられて、ブタは息を引き取った。
ブタの首から流れ出す血を、たらいに入れて運び出す。

そしてその巨体をはしごに乗せて、
体重計へと運んでいく。
その重さは、190kg。
よくもここまで太らせたものだ。

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これから、ブタをゆっくりじっくりと焼いていく。
このおじさんが村でも腕利きの、ブタの解体職人。

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まず藁をかぶせて、火をつける。
暗い風景に、ぱっと炎が周囲を明るく染める。

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あっという間に、ブタは黒こげ。
上の燃えカスを、きれいにほうきで掃く。

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今度はブタの手足に、小さな薪をはさむ。
先ほどまで動いていたのが、まるで作り物のようだ。

8302.jpg

それから、もう一度火で炙る。


disznovagas 090

淡々と仕事をする解体職人と、それを見守る人々、
そして赤々と燃える炎・・・
その無駄のない動きは、
何か神聖なものを感じさせる。
沈黙と緊張感。

よく焼けたら、皮をきれいにナイフで削る。
すると黒いすすだらけの中から、
白い皮がのぞく。
その白さは、そう、
土から引いたばかりの大根のよう。

disznovagas 074

それを何度か繰り返したら、
今度はブタの体をひっくり返す。
ピンク色の片側が姿を現した。
まるではんこを押したかのように、
藁もブタの形がくっきり。

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じっと立ち尽くす私たちは、寒さが身に沁みてくる。
そんなときは、また一杯。
コーヒーの暖かさが、じんわりとかじかんだ手を温める。

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寒いのも無理はない。
窓ガラスが凍って、絵画のように霜が張っている。

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息子は、ブタの爪をを拾ったらしい。
この後、あまりの寒さのため
家に避難した。

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細長い桶が登場。
よく焼けたブタの上に、ぬるま湯を降り注ぐ。

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焼けたススと混ざって、黒い泥になる。
これをブタの体によく塗りこむ。
これは消毒効果があるということだ。

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雪がまた降ってきた。
この寒い中で、湯気の立つブタの姿、
ほんのりと漂ってくる香ばしにおい(ラーメンの匂いのようだ)・・・
これこそが最高のブタの解体だという。

またお湯で洗って。

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ナイフできれいに表面を削る。

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ブタの体をひっくり返す。
ここからは、もうブタを切り刻む作業。

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いつの間にか、たくさんの容器が用意されていた。

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まずはこの可愛らしい手足を切る。

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それから頭。
このときに、耳を少し切ったものを味見させてもらった。
ちゃんと焼けているかどうか心配だったが、大丈夫。
香ばしく、コリコリとしていた。

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背骨をきれいに取り除き、
体のさまざまな部分が次々に切り取られ、分けられる。
まさに、生きた生物の授業のようだ。
ここからは、ふだん肉屋さんで見るのと変わらない。

しっかりと目をふさいだ顔、彫刻か何かのように美しい。
顔ももちろん、血や、皮や、腸に至るまで、
そのあらゆる部分が、余すことなく利用されるという。

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この後も、まだ豚肉加工の作業は続いていた。
私たちは凍える体を温めに、家へと向かった。

046.jpg

ひっそりと静まり返った村の通り。
まだクリスマスの安らぎは続いている。

disznovagas 282

*友人のゾリは7年間ベジタリアンを通したが、
 その原因はブタの解体だったという。
 冬には野菜の種類が極端に少なく、果物もならないトランシルヴァニアで、
 肉なしの生活は考えられない。
 普段から口にするものが作られる過程を、自分の目で見ること・・・
 それは、やはり大切なことだと感じた。

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 日本ではなかなか出来ない体験をされましたねー。解体は見る事ができてももうほとんどが機械で行う物ですからね。
 こうやって丁寧に解体された豚はきっと美味しいのでしょうね。村で売っている豚肉、皮付きの物が結構あり(サーラ豚脂塩漬けにするので)ますが毛が付いたままの物が多いのです。そのてん、そちらは藁で焼く事でしっかり穫れているのでしょう。
 血は血のソーセージ等にするのかな?
 きちんとした伝統的な解体はきっと無駄が無く肉に無理もかかっていなくて綺麗なのかもしれません。

 -11度にしては息子さんの洋服が薄着の様な…。こちらでは足下と頭は子供もこもこにしています。上着も結構着込んでいるかなー。あと、首元が開いていると体温が逃げていってしまいますよ~。上着のフードの下からマフラーを回して上着毎隙間を埋めるようにマフラーを膜とぐっと寒く無くなります。
どうもありがとうございます!!
ブタの解体、これで見るのは2度目なのですが、
本当によい経験でした。
越後屋さんのおっしゃるとおり、
ほとんどは機械化されて、以前したときはガスバーナーで焼いていました。
こんなに丁寧に、じっくりと藁で焼くものとは思いませんでした。
豚肉も、お店で買ったものとは新鮮さが違って美味しかったです。
まるで儀式のように美しかったです。

息子の洋服の着方までご指導を・・・ありがとうございます!
そうですよね、こちらの子供たちは本当にモコモコしています。
思わず写真撮影に夢中で、気が回りませんでした。
この後、暖かい部屋でTVを見ていたので風邪は引きませんでした。

以前Tulipanさんから聞いたブタの解体。
とっても興味があったので、こういう風にするのか~とじっくり見入ってしまいました。
なるほど、焼いてから解体するんだね。
イスラムの犠牲祭での羊の解体は、お祈りの後、頸動脈を切って屠殺し(これが一番苦しまないらしく、あっという間に息絶えました)、皮膚に切り込みを入れ風船のように羊を膨らませて羊毛を剥いでいきます。膨らませると剥ぎやすくなるみたい。そのあとは解体して内臓を取り出します。
頭蓋骨からおしりの脂肪まで、(動物の血を食すことはイスラムでは禁じられているため)血以外はすべて無駄なく使われるので、初めて見たときは見事!と思いました(笑)。
生きるということは何かの命をいただくことなので、こういった経験は子供にとって素晴らしい教育になるんじゃないかなと思います。
私も自分にもそう言い聞かせて目をそらさず見ていたけれど、やはり初めて見たときはかなり衝撃的でした・・。
それにしてもそちらは相当寒そう!!
風邪には気を付けてね!
羊の犠牲祭
Sachieちゃん、どうもありがとう!
11月に会ったのがウソのよう・・・遠く感じられます。

ブタ解体も羊の解体も、同じ様に大切な動物を
有難く頂くという気持ちは共通するものがあるね。
今すべてを出来合いで手に入れる私たちのほうが、
食べ物を簡単に捨てたりするし・・・
子供たちに、ぜひ経験させるべきだと思います。
友人たちも、小さいときには
血を入れるたらいを持つお手伝いをしたと
言っていました。

犠牲祭という言葉そのものにも、生命への畏敬が感じられます。
いつかイスラムの犠牲祭も、Sachieちゃんのリポートで見てみたいなあ。
丁寧な写真と共に豚の解体がとてもよく解りました。
何もかもムダにしないで使い切る、この画像を見る限り 有り様が心から理解できます。
私は幼い頃、ウチで山羊や鶏を潰していましたから
何となく悲惨さの中に ありがたさや掟が存在するサマが当時も掴めていました。
今の日本のように何でもシステム化した社会の中では「いいとこ取り」が当たり前になってしまって自己中にならざるを得ない環境です。
それにしても 寒さで窓ガラスにあんな模様…凄いです。
霧のまちさん、ありがとうございます。
そうですか、そういう光景をご覧になっていたのですね。
昔の日本なら、そう珍しくはない光景なのでしょうが、私は家畜さえも見慣れていないので、
衝撃的でした。
このシステム化された社会の欠点に、トランシルヴァニアで生活するうちに初めて気づかされた思いです。
それでも、この社会もまた変化をしています。
いい部分を残しながら、変わっていけばいいのですが。
来年も宜しくお願いします。
Tulipanさん、最近はあまり訪問できませんでした。
時々拝見していたのですが、
コメントまで残せず、ごめんなさい。
今年はTulipanさんと出会って、色々東欧の文化など
知ることが出来て楽しかったです。
この素敵な出会いに感謝です。
ありがとうございました。
また来年も宜しくお願いします!!

ブタさん、こちらでは切り身がパックに入って売っている
のしか見かけませんが、
こうやって解体する過程を見ると、
「人間は命を頂いている」とまざまざ考えさせられます。
有り難く頂かないといけませんね。
またトランシルバニアからのお便りを楽しみにしています♪
素晴らしい体験をなさいましたね。
本当に命をいただくって感謝の気持ちを持たずにはいられませんね。

もうすぐそちらに住まわれて1年になるのでしょうか。
四季折々の素晴らしい写真、実際に生活するものとしてのTulipanさんの目を通しての説明。
いつも感嘆して拝読させていただいております。

2009年もご家族みなさん、よい年になりますように。

こちらこそ、よろしくお願いします。
Carinaさん、どうもありがとうございます!
こちらこそ頻繁にブログを訪問してくださって、
ありがとうございます。

私もCarinaさんの日記を楽しく拝見させていただいています。
それにしても年末のタイの空港での事件は
大変でしたね・・・。
でも無事にご旅行を終えられて、こちらも安心しました。
もうお風邪は大丈夫ですか?
素敵なモノと出会うのには、ある意味
冒険が必要ですね。

私も今年は、もっと勇敢に(?)
色々な村を見て回って、たくさんの新しい知識を得ていきたいと思います。
どうぞ今年もよろしくお願いいたします。
Re: タイトルなし
penguin さん、どうもありがとうございます!
もうこちらへ移って一年・・・早いものです。

こちらこそ、penguin さんのような
手仕事のプロの方に見ていただいて、光栄です。
こちらは素朴なデザインのものが多いですが、
西欧にはないアルカイックな色、形が多いと思います。
もっとトランシルバニアの手芸についても、
今年は力を入れてお届けしたいと思います。

どうかpenguin さんにとっても、
素敵な一年でありますよう・・・アルバムを楽しみにしています。
どうもありがとうございました。