トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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春の兆し

その日はまだ薄暗いうちに家を飛び出し、
ドボイゆきのバスに間に合うよう急ぎ足で歩く。
青く深い色合いの中に、
不意にオレンジ色の光線が目に飛び込んできた。
ちょうど生まれたばかりの朝日に
目を細めながら、私は息子と二人でパス停へ向かった。

その日はダンナが気乗りしなかったので、
二人きりでバスに揺られて村を目指した。
霜が降って、一面真っ白になった畑を過ぎると、
今度は深い霧が覆い始めた。
なだらかな丘がまるで蜃気楼のようだ。

doboly 024

村から村へと景色は流れていく。
古いお屋敷の崩れかけた壁面に、
ちょうど鮮やかなオレンジが溶けていった。

doboly 027

やがてバスは道路の途中で止まり、
私たちは振り落とされるように
表に飛び出した。
朝のつめたく新鮮な空気が肌をさす。
上ドボイは、ここから2km。

doboly 029

矢印のほうには、オレンジ色の光を避けるようにして
村が横たわっている。
さあ出発と足を上げると、
すぐ前の車が私たちに呼びかけた。
どうやら村まで乗せていってもらえるらしい。
言葉に甘えて、車に乗り込んだ。

doboly 028

村の中心で車から下ろされると、
これからはひたすら坂道。
道はカチカチに凍っている。
山の陰にひっそりとたたずむドボイの村には、
朝の光が届くのがおそい。

ダンナの友人バルニの家につくと、
その薪ストーブのぬくもりで体がほぐれる。
今日ここにきたのは、
謝肉祭のお祭りがあるという話を聞いたからだ。
「ところで何時にあるの?」と聞くと、
「夜七時。」という返事。
「町への最終バスは?」と聞けば、
「夜の6時半。」と返ってくる。
私は唖然とした・・・とりあえず成り行きに任せよう。

夜までは時間がたっぷりあるので、
久しぶりに村を散策。
私の土地へ足を踏み入れた。

doboly 036

半年前までは、緑の草が茂り
羊たちが群れていたのがうそのようだ。
白い霜だけで、生命の息吹が感じられない・・・

d1.jpg

その急な斜面を登ると、私の好きな景色が開けた。
遠くの村々もオレンジ色に映し出されている。
なぜに、この村だけが影なのだろう・・・

d2.jpg

それでも森のすきまから、
やっと太陽の光がこぼれ落ちるのを見た。

d3.jpg

枯れたアジサイのうつくしさに
思わずため息をつく。
こんな風にうつくしく枯れることが出来たなら・・・

doboly 047

まるで昆虫の羽根のように
細やかな模様が透けるようである。

doboly 049

石臼に枯れたアジサイを生けるなんて・・・
子供って時に、とても粋なことをやってみせるものだ。

doboly 055

足の先が凍えてしまったので、ひとまず友人宅へ。
遅れて、バルニの彼女も到着したようだ。
夜の謝肉祭の見所は、
冬の象徴であるわら人形を燃やすこと。
日本でいう節分の鬼のようだ。
その、わら人形を作る作業がこれから始まる。
木で骨組みををまずつくり、

d5.jpg

ワラをヒモで縛り付けていく。

doboly 068

30分ほどで、立派なワラ人形の出来上がり。
芸術家殿もご満足ようす。

d6.jpg

ピノキオみたいな長い鼻、
ネズミのようなひげに、
舌までだして・・・

doboly 074

出来上がったワラ人形を、
夜の祭りのために村の公民館に運んでいく。

doboly 079

建物の中では、熱心な村の人たちが
夜のために準備をしていた。
大胆なチューリップのモチーフの舞台がかわいらしい。

doboly 063

日が差してきたので、
霜も解けて道はぬかるむ。
息子が泥まみれにならないように・・・と祈るばかり。

doboly 086

昼食の後は、退屈しきった犬たちを連れて
森の向こうへ散歩へ行く。

d4.jpg

薄暗い森を抜けると・・・・
私たちを待っていたのは、
広い青空と緑と茶の混ざった野原。
そして、

doboly 094

小さな小さなマーガレット。
知らない間に春がやってきていたのだ。
踏まないようにと気をつけながら歩く。

d8.jpg

犬たちは体で喜びをいっぱいに表す。
体のすみずみまで、草にこすりつけていた。
まるで春のにおいを、
体に吸い込もうとしているように。
私も胸のうちでは、いっぱいに飛び跳ねたいほど。

doboly 105

太陽の恵みを体で感じる・・・
なんて心地よいのだろう。
宮崎では当たり前だった太陽の光が、
こんなに有り難く思えるなんて。
手の下には、草の合間をアリが這い 回っている。
耳を澄ますと、ブンブンと小さな虫が飛んでいた。

d10.jpg

息子が先ほど森の中で見つけたお花。
影でひっそりと咲いていた紫の花が、
空の青に溶け入ってしまいそう。
それだけ今日の青は力強かった。

d7.jpg

今度は山の裏手、村のほうへと移る。
原っぱを通り過ぎると、

doboly 143

こんな美しい木が待っていた。
きゃしゃな枝が、青空に腕を伸ばす。
小さな子供たち、無数の松ぼっくりがぶら下がっていた。

d11.jpg

途中、ローズヒップの実を見つけて、
なかの実を押しだして食べてみる。
それは、まさに甘酸っぱいジャムそのもの。
トマトのような濃厚さとレモンの酸味が合わさったような味。

d13.jpg

やがて小さなドボイの村が眼下に広がった。
遠くの平野に見える、ポッコリと黒い穴のようなものを指差して
「 あれ、なあに?」とたずねる息子。

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あまりの心地よさに、
横になって寝入ってしまいそうな3人。
それでも山のこちら側は、しっとりと地面も湿っていて肌寒い。

d9.jpg

もう風も心なしか、寒く感じられてきた。
今日の日の恵みに感謝して、
私たちは山の斜面をまた降りていった。

d12.jpg

一足早く、春の兆しを感じられた一日。
まるで美しい夢のように、
その余韻が胸の奥に残っていた。



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comments(10)|trackback(0)|セーケイ地方の村|2009-02-13_00:25|page top

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素晴らしい風景ですね。
でも こう言う場所では・・・人間の資質が問われますね。
今の物質オンパレードの日本の住民にはかなりキツいかも知れません。
淡い太陽の光、かすかな春、変化する植物、空気の匂い、そんなものを敏感に感じて楽しんでしまえる人でないと…。
その点 tulipanさんは素敵です。
息子さんもそんな空気を吸い取って感受性の豊かな大人に育って行かれるんですね。
私も昨日、山に有る公園の滑り台で空を見上げ、あまりの気持ちよさに、「寝てしまいそう」って思ったところでしたが、寒さがあまりにも違いそう。写真を見ているだけで、寒さを感じます。
バス停から2kmって・・・。公園が家から2kmの所に有って、そこだって、自転車で行くのに~!
前回、村がそこに出来た由来を教えていただきましたが、何回見ても、ナゼ日なたに家を建てない!って思って仕舞います。
でも、山と暮らすのは、安心感が有って、良いなあ~と、チョット前まで山の方に住んでいた私も思います。
どうもありがとうございます。
霧のまちさん、お褒めの言葉をどうもありがとうございます。
私は20代のはじめ、
比較的感受性の強い時期にルーマニアにきて、
自分でも変わったと思います。
そしてそのために、日本の社会に順応ができず
困ったこともありますが・・・
逆に、私はそういうものに楽しみを見つけないと
ここでは長く生活できないと思います。

日本でも、田舎の町や村では
きっとまだそういう部分があるでしょうね。
いつか宮崎の山、
霧島のそばの町に住んでみたいと思います。

息子は小さいときから、
日本とルーマニアの違いを感じてもらえたらな
と思います。
山の生活
櫻東風 さん、ありがとうございます。
こちらではバス停から2kmなんて
まだ近いほうです。
皆さんよく歩くから、本当に足腰が丈夫そうです。

私も日のあたる部屋が好きなので、
どうして日陰にあるのだろう・・・と不思議ですが、
そのためにこの村が生き残ってこられたんでしょうね。
逆に、日当たりのよい山の向こうへ行けば、
丘がまるまる自分たちのものになります。
その感じもまた素敵ですよ。

日本の山の生活にも、あこがれてしまいますね。
こちらとどう違うのか・・・いつか体験してみたいです。

春が待ち遠しいですね♪
ご無沙汰していました。
ブログは拝見しておりましたが、なかなかコメントも
出来ずにいました。

今日、九州から関東まで、春一番が吹きました。
お雛様を飾って、桃の花を生けて、菜の花を食べました。

そちらにも、少しずつ春が近づいていますね♪
土の中で春を待ちわびているような、
虫や植物の息吹を感じられる素晴らしい風景です。


春一番
Carinaさん、お久しぶりです♪
日本ではもう春一番が吹いたのですか。
こちらは、一雨ごとに春に近づくと言われています。
お雛様に桃の花、菜の花・・・素敵!
季節を楽しんで生活していらっしゃるのですね。

ちょうどドボイにいたのは、先週の土曜日。
そして昨日からは、また雪が降り始めました。
それでも、いつもの乾いた雪とは違って
すぐに湿ってしまう雪です。
もう雪の時期もそろそろ終わりでしょう。

土の中で春を待ちわびる植物や虫たちに
負けず劣らず、私たち人も春が待ち遠しいです。

先日、拍手のところにコメントも書いたのだけど、
うまく反映されなかったみたいでこちらにコメントするね。

中々時間がなくてゆっくりブログを読んでいないのだけど、
もうすぐ職業訓練が終わるので、またじっくり読ませてもらうね。
どうもありがとう!
なちゅさん、コメントをどうもありがとう!
ご無沙汰していてごめんなさい。
何度かブログは、始まったかどうか
覗いたことはあったんだけど・・
もう職業訓練も終わりなんだね。
きっと、たくさんのことを勉強したんでしょう。
3ヶ月間、お疲れ様でした☆

またブログの再開を楽しみにしています♪
久し振りに
ひさしぶりにブログを覗きにきました。
写真が、とても素敵。
こんな風景を見られるtulipanちゃんがうらやましい。

また、見に来るね。
光栄です!
さやかちゃんのような
写真がプロ並みの人からの
お褒めの言葉・・・
とっても光栄です。

大都会で暮らすさやかちゃんに
トランシルヴァニアの自然が届くことを
うれしく思います。