トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ちいさな出会い

「 まあ、あなたまた来たの?」
ここはジプシー市場。
古着に古靴、古下着に、古靴下・・・となんでもそろっている。
顔をあわせるうちに、私のことを覚えてくれるようになった。

私を抱きしめ、喜んでくれるおばさん。
ほかのジプシー仲間にも、
「 私の友達よ。」と嬉しそうに話す。
 
IMG_5781.jpg

「 ねえ、ムンドラ。
 この服はどう?あなたにお似合いよ。」
とおばあさんは、私を勝手につけた名前で呼び、
次々に洋服をあてがう。

「 他の人にはこれだけだけど、
 あなたには特別安くしといてあげるわ。」
おばあさんの選ぶ服は、不思議と私のツボをおさえている。
いくつか、クラシカルなワンピースやスカートも買った。

おばさんはロマ語とルーマニア語しか話さない。
「 男の子は、どうしてるの?」
「 イマ、ヨウチエンニイッテイマス。」と
これだけ答えるのでやっと。
だから、会話はほとんど交わしていない。
人間には相性があるようで、
言葉なしでも不思議と仲良くなれる人がいるものだ。

いつかルーマニア語が
もっと上達したら、おばさんとたくさんお話ししよう。




市場の中でも、
いつも日陰の方にものを出しているおばさん。

「 ねえ、私のところでは見ていかないの?
 今日はまだ、誰も買っていかないのよ。」
そう声がかかると、興味がなくても
一応、洋服の山をひっくり返して見てみる。

小さなエプロンを見つけて
おばさんにお金を払うと、
「 これで、あたたかいコーヒーでも買ってくるわ。」

IMG_5786.jpg

エプロンをひるがえすと、
スカートのちょうど真ん中にくるポケットから
そっと小さな錠剤を出して飲んだ。




いつか市場を歩いていると、
興味深そうに私に話しかけてくるおじさんがいた。
「 君はどこから来たの? 」
「 そうか、日本か。
 どんな国だっていい、俺たちは同じ神様の子どもなんだから。」

大きな茶色い口ひげを生やした、大柄のおじさん。
他のジプシー男性とは違って、
口調も穏やかだ。
この大きなハットをかぶったジプシー男性は、
ガーボル・ジプシーと呼ばれる。

IMG_5783.jpg

その親しみ深いおじさんの顔を見つけると、
決まってあいさつをするようになった。
おじさんはロマ語とルーマニア語、ハンガリー語を話す。
学校教育もきちんと受けていて、
アドベント派の教会に通っている。

いつごろか、おじさんの顔が暗く、
思い沈んでいるように見えた。
「 聞いておくれ。
 うちの次男の嫁が、可愛い孫を連れて出て行ってしまったんだ。
 まだ3歳だけど、賢くてそれは可愛い男の子さ。
 電話ごしで言うんだ。
 いつ、おじいちゃんたちのところへ帰れるのって。」

「 こんな辛いのは、生まれて初めてだ。
 自分の親が死んだときだって、こんなに悲しくなかった。
 こころが引き裂かれるようだよ。」

「 どうか神様が、 
 あの若い二人に物事を考える力を与えますように。」
と哀しげなな面持ちのまま、そう言いはなった。




ある夏の夕暮れどき、
三人の子どもたちが道端で通せんぼした。
まるで絵本からとび出してきたかのような、
かがやくような顔をしていた。

ぼろぼろのワンピースに、
くしの通していないぼさぼさの髪、
大きな白いふくろを背負った女の子。
まるで、何かすてきなプレゼントでも
入っているかのようだった。

「 アタシが何してるのかって?
 ブタにえさをやるのに、決まっているんじゃない。」
その大きな瞳には、
思い描いていたナイーブな純粋さというよりも、
不思議な強さ、たくましさがあった。

elopatak 005

洋服もやぶれているが、
白いふくろだってやぶれている。
空き地で、青々しいにおいの立つ草を
ふくろいっぱいに入れて運ぶ女の子。

気が付くと、そらはうす黒く色づきはじめている。
子どもたちは、すでに家路へむかっていた。


トランシルヴァニアをあなたの心に・・・。
              
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comments(0)|trackback(0)|ジプシー文化|2009-11-15_17:21|page top

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