トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ジプシー村のカティおばさん

「 大丈夫よ。私たち、言葉がなくても
 なんとか通じ合えるわ。」と次の日、カティおばさんが笑顔で言った。

てるこさんの話によると、
あれから皆で酒盛りがはじまって、
カティおばさんにお化粧をほどこしたら、
ご機嫌になって踊りはじめたそう。

「 カティの踊りがもう止まらなくって。
 コーヒーをいれながらも、体を揺らしていたくらい。」

ユーモア好きだけれど、
いつも規律正しいカティおばさんからは
想像できずにびっくりした。

カティおばさんの穏やかな表情が、
その人生を物語っている。
「 私は35年間主人に連れそって、
 まったく問題もなく。幸せだったわ。
 それは立派な人で、ガス修理屋としてきちんと働いていたのよ。」

「 でもね、たった一つ後悔したのは、
 籍を入れておかなかったこと。
 だから、私は年金がもらえないの。」

去年の10月に村に訪れたときには、
カティおばさんはハンガリーに出稼ぎに行っていた。
ニンジンの収穫をするために、この村からも何人ものジプシー女性が
かりだされて行ったそう。

「 カティは、ご主人さまがなくなってから
結婚をしようと思ったことはなかったの?」
てるこさんが尋ねる言葉を、ハンガリー語に置きかえる。

「 ええ、一度もないわ。
 もししたいと思ったら、100回はできただろうけどね。」
冗談かと見たら、真剣そのもののまなざし。

カティおばさんは
52歳でご主人さまをなくしてから、9年たつ。

「 面倒なのよ。
 主人がいたら、ああしなさい、こうしなさいと言われるし。
 もしかしたら、お酒を飲む人かもしれない。
 一人で生活するのは、もちろん寂しいけどね。」

今度は大声なって、
てるこさんに向かって言う。
「 あんた、ここでいいロマ(ジプシー男)を探していきなさい。」
 私が見つけてあげるから。トシにもね。」
とカメラマンにもうなづく。

「 いい?私に日本からいい男を連れてくるのよ。
 若くて、かっこいいのがいいわ。」
冗談をいって大笑いしたあと、
ふと真面目な顔でこう言った。
「 ねえ、セイコ。
 あなたにも一度も言ったことなかったけれど、
 私は、心に辛いものを抱えているのよ。」


カティおばさんの言葉はこうだった。
おばさんの長男のピシュタが、奥さんといっしょにスロヴァキアへ出稼ぎにいった。
やがてピシュタは奥さんと別れてしまい、
それ以来、一人息子のチャビはカティおばさんがみることとなった。

やがて17歳になるまで面倒をみたあと、
チャビはスロヴァキアにくらす母のもとへと旅立つ。
すでにご主人さんを亡くしていたカティおばさんには、
彼を学校へ行かせることもできなかったから。

チャビは去年の2月に、
久しぶりに父親に会いに行った。
ほかの兄弟といっしょにハンガリーで働いていたピシュタは、
息子にこう約束した。
次の日も同じ場所で会おうと。
それから、ピシュタはその場所に現れず、
以来ずっと行方が消えているという。

「 捜索願も出したわ。
 それでも、何の音沙汰もないの。」とため息をつく。

「 おかしいのはね、
 チャビがそれからというもの、
 まったく連絡を取ろうとしないということ。
 それまでは、ことあるごとに電話をくれていたのに。
 もしかして、息子について何か知っているのかもしれない・・・。」

「 元気だったら、それでいいのよ。
 誰かいい人を見つけて、暮らしているのなら。
 私だって、それならそっとしておいてあげたい。」
とカティおばさんのいつもの笑顔が、
思い悩む母親の顔になっていた。

「 さあ、もう出かける時間よ。
行きなさい。」とカティおばさん。
時計はもう、11時を指していた。

ジプシーの結婚式である、髪結いの儀式に呼ばれた私たちは、
カティおばさんの不思議な話に心をひかれながらも
雪の凍った夜道へとくりだした。



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*カティおばさんについての記事は
 コチラ
 
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comments(2)|trackback(0)|ジプシー文化|2010-01-07_14:42|page top

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無知なので教えてください。ジプシーの方って籍をいれずに、いわゆるに事実婚というのが、多いのでしょうか。

カティおばさんは本当に素敵な女性ですね。
母親が子供を思う気持ちは、国が、人種がちがっても、本当に一緒ですね。
基本はやはり同じ人間だということを、実感です。
Re: タイトルなし
マリチカさん、ご訪問くださって
ありがとうございます。

ジプシーの結婚ですが、
どれだけ事実婚が一般的かは分かりません。
ただ、今回の場合もそうなように
ジプシー内輪での結婚式をして、数年してから
籍を届ける場合も多いようです。
結婚をする時期が早いせいでしょうか。
まだ、よく調べてみないといけません。

カティおばさんのような、
素敵な方との出会いがあったことをうれしく思います。
相手が誰であろうと、
対等に広いこころで接することのできる
珍しい方だと思います。
母親としても、素晴らしい女性。
憧れです。