トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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イェッド村の別れ

ジプシーの髪結いの儀式のあと
カティおばさんの家に戻ると、もう深夜2時。

ベッドが足りないので、
私はカティおばさんの隣へ。
「 ほら、言ったじゃない。よそへ行くことなんてなかったのに。
 私たち、いっしょでも十分でしょ。」
同じ布団をかけて、
微笑むカティおばさん。

半年前に知り合ったのが嘘のよう。
まるで親戚のおばさんのようだ。

その日は、7時前に牧場見学の予定なので
6時半に目覚まし時計をセットしておいた。

「 ほら、もう起きないと!」と張りのある声で、
目ざましコールがかかる。
時計は、まだ6時。
おしゃべり相手がほしかったのか、
私だけ早く起こされてしまった。

真っ暗闇の中、
牧場で乳絞りを見学したあと、
ムンドラのところへ。
「 ねえ、髪を結ってもらいたいんだけど。」
「 もちろんよ。すぐに行くわ。」

蛍光ピンクとオレンジのリボンを差し出した。
ムンドラの慣れた手つきが半分に髪を分けて、
耳のよこ辺りから編みはじめ、
あごのあたりまできたら
リボンを織りまぜてゆく。
ぎゅっときつく締められた髪の毛で、
顔のヒフが引っ張られる。

黒い髪と蛍光色のリボンが絡みあい、
だんだん細くなってゆくと、
その先を小さく結ぶ。

「 あなたの髪は誰がやっているの?」とてるこさんの問いに、
「 これは私が自分でやるのよ。」と答え、
リボンの先が編みはじめの部分に差し込まれる。

昨夜は母親に結ってもらったあの花嫁は、
これからは自分の手で髪を結いあげる。

髪を結うという行為、
その神聖さを保ち続けるジプシー女性たち・・。

すべての髪が丸く収まると、
今度は女性のしるしであるスカーフが巻かれる。
このスカーフは、ふだんは取ることはない。
女性の美の象徴である髪は、
そのカラフルなスカーフの中に
閉じこめられるのだ。

背筋に一本、何かが通ったような気分。
気持ちが引き締まる。

髪を結ってくれたムンドラとも、
もうすぐお別れ。
「 ご主人が、子どもさんを可愛がらなかったのは、
 本当なの?」
「 いいえ、彼はシャイなのよ。
 でも、お母さんはそれが分からないの。
 彼は言ったわ。私を迎えにくると。」
彼女はきっぱりとした口調で、そう言った。

「 あなたがどこにいようが、きっと探すわ。
 幸せになってね。」
見ると、彼女の瞳はすこし潤んでいるようだった。

表に出て、お別れの挨拶。
てるこさんは、表にあったホウキをもって、
「 ねえ、カティ。こうやって、またがってみて。
 カティなら、きっと飛べるはず。」

DSC06728.jpg

カティおばさんが聞いた。
「 今度はいつ来るの?」
「 まだ分からないけれど・・。
 7月、8月、9月、10月、12月・・・と、 
 この村はもう5回目よ。
 きっと、また縁があるはず。」

カティおばさんに写真を託された。
亡きご主人さまといっしょの、
セピア色の写真。
「 これを大きく引き伸ばして、
 部屋に飾りたいの。」
きっと今度は、写真を手に
またイェッドの村を訪れるだろう。

こうして30日、イェッド村をあとにした私たち。
てるこさんたちは、
その後また大晦日を過ごしにイェッド村へ引き返し、
私はブカレスト行きのインターシティ(特急列車)で、
スフントゥ・ゲオルゲへ。

まるで黒い大蛇が乗っているような、
ジプシー・ヘアをお土産に、年越しをした。
2010年のお正月。

ciganygyerekek 005




トランシルヴァニアをこころに・・・。

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comments(0)|trackback(0)|ジプシー文化|2010-01-11_01:42|page top

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