トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

カテゴリー

FC2カウンター

カレンダー(月別)

08 ≪│2017/09│≫ 10
- - - - - 1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

これまで書いた記事は・・・

全タイトルを表示

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Feed Me!

トランシルヴァニアへの扉  - Erdely kapuja-のRSSフィード

ブログ翻訳

ルーマニアの夜行列車

カチカチに凍りかたまった道を
歩くこと40分、
スフントゥ・ゲオルゲの駅に着いた。
時刻は、夜中の12時をまわったころ。
足早に歩いたせいで、
すこし汗ばんでいる。

切符を買うと、駅員さんがこういった。
「 列車は、35分遅れよ。」
・・・ああ、やっぱり。

いすに腰かけて、切符を見つめる。
トゥルグ・ムレシュまでは、
250kmの距離。
それなのに、かかる時間は
なんと6時間。
鉄道路線が大きく反れるためである。

剥げたタイルの柱に、
泥で黒くまだらに染まった床、
閉鎖されたスタンド・・。
無機質な駅の構内をぼんやり眺めていると、
おじさんが話しかけた。
「 どこから来たんだい?」

ルーマニアの人は、暇つぶしが上手だ。
というよりも、おしゃべり好き。
慣れないルーマニア語を駆使して、
なんとか言葉をつなぐ。

首をひねる私に、たまりかねて
「 君は、他にどんな言葉を話すんだい?
 ドイツ語、それとも・・?」

やっと共通言語がハンガリー語であることが分かると、
おじさんは私のここ10年ほどの歴史をすべて
知りえることになる。

やがて電車がくると、
ヤンチおじさんはこういった。
「 君、人生つまづいたね。」
私はただ苦笑するより他はなかった。




ものすごいブレーキの音とともに、
長い列車がきしんで止まった。
思ったよりも長い電車の列に、
座席のある車両が見つからない。
仕方なく、そばにあった扉に乗りこんだ。

「 君の乗る車両はもっと先だよ。ここは寝台車だからね。
 デーダで降りなさい。10分休憩があるから。」
車掌さんは、切符を見ていう。

人のいないコンパートメントへ入って、
ほっと一息。
カーテンを引いて、少し横になろう。
そう思っていると、
カーテンの隙間から、
そわそわ動いている何者かの足が見えた。

ここに入ってくるだろうか、と思っていたら
案の定、扉が開いて、
背の高い頭のはげかかった男が現れた。
「 こんばんは。俺は、コルネルだ。君は?」

目をぱちくりさせて、
とりあえず名を名乗ると、
その大男はひざをついて、手の甲にキスをした。

すぐに、ものすごい勢いで話しはじめる。
「 ここは、一人ではとっても危ない。
 だから、すぐ隣へきなさい。
 大丈夫。俺は国会ボディガードだから。
 あのバセスクがいるところさ。」
と名刺と身分証明書のようなものを
目の前につきつける。

仕方なく、ほぼ強引に、
隣のコンパートメントに移ることになった。

おじさんは荷物を軽々と
すべて荷台に乗せてしまうと、
私の足を持ち上げて横に並んだ座席にのせる。
「 ほら、ゆっくりしなさい。
 ここで寝ても大丈夫。俺がいるから。」

なんだか、ドサクサに紛れて
腰の辺りも触られたような・・。
この人、酔っ払ってでもいるのだろうか。
不安は募るばかり。

おじさんはなおも、すごい勢いで話し続ける。
「 俺はこれからバイア・マーレに行くんだ。
 クマを退治にね。TV見ただろう?」

「 列車のなかは、コソ泥が多いんだ。 
 でも、俺がいれば安心さ。こうやって、やっつけるから!」
と撃つような身振りをしめした。
「 トゥルグ・ムレシュまで、ここにいなさい。」と
何度も言い聞かせる。

突然、私の額にキスをして、
今度は自分のはげ頭を指さした。
「 ほら、君も。」
あっけにとられてから、笑いとばした。

「 もう、寝るかい?」と電気を消そうとする。
「 このままで、いいです!」
やがて、おじさんのいびきが聞こえると、
安心して眠りについた。

誰かが横に立ったような気配で目が覚めた。
車掌さんが言う。
「 もうすぐ、デーダだから
 降りる支度をしなさい。」

隣のコンパートメントへ移って支度をしていると、
また車掌さんがやってきた。
「 今夜は冷えるね。
 チークセレダから、デーダのあたりは本当にきれいだよ。
 ほら、そこにマロシュ川が見えるだろう。」
目の先には、電光に照らされた川が
キラキラと輝いていた。

デーダで列車を降り、後ろの車両へと移る。
なるほど、ここにはトゥルグ・ムレシュ行きとあった。
そして今までいたところは、
バイア・マーレ行きとある。
そのまま、あの車両に残っていたら・・・。


やがて列車は、早朝のトゥルグ・ムレシュに到着。
一ヶ月前に訪ねたばかりの、
カティおばさんのところへ。




トランシルヴァニアをこころに・・・。

にほんブログ村 海外生活ブログ 東欧・中欧情報へ



スポンサーサイト

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(13)|trackback(0)|文化、習慣|2010-02-08_18:16|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

非公開コメント

お一人での旅でしょうか。

読んでいてドキドキしました。。。

英語コンプレックスと
ずっとアジア圏にいるので欧米の方は苦手です。
目があうだけでドキドキします。
私だったら、すぐに逃げ出しそうです。

カティおばさまはお元気でしょうか。
続きを楽しみにしています。
列車の中の雰囲気がとてもよく伝わってきます。
日本ではあり得ないような会話がなされますね、外国って。 少し不安げなtulipanさんのお気持ちも。
そんなに遠くにあったんですか、カティおばさんの家。
まるで「深夜特急」
こんにちは~
この旅には、一人で出かけられたのですか?
まるで小説の中のワンシーンのような出来事ですね。
何事も無く、目的地に到着されて、ホッとしました。


ちょうど今、沢木耕太郎さんの、「深夜特急」を読んでいるのですが、
こちらは26歳の男子が、目的地ロンドンを目指し、
地図もガイドブックも持たずに、陸路の旅に出る話なんです。
言葉もわからないアジア諸国を、バスや列車で移動していくのですが、
tulipanさんのこの旅、よく似た状況だなあ~

憧れるけど、こんな怖い状況に敢えて出かける勇気は、
私には無いです…残念ですが。
今後の報告が、楽しみ半分、心配半分です~
Re: タイトルなし
shin さん、
久しぶりの一人旅でした。
ふだんなら、こんなに不安になることはないのですが、
あいにく、不思議な旅客と知り合ってしまったので・・・。
若い頃は、夜行列車で一人旅もしましたが
どこでもすぐに眠れましたし、
今ほどは疲れませんでした。

ルーマニアの人は、
日本では考えられないほど
他人とよくおしゃべりします。
これで、少しは言葉も鍛えられますね。

アジアの大陸の列車、
私にとっては未知の世界なので
あこがれます。


Re: タイトルなし
霧のまちさん、
今回は買い物を頼まれて
トゥルグムレシュへ行きました。
イェッドは、これで6回目です。
去年の7月にはじめて行ったのですが、
こんなに遠いところなのに、不思議な縁ですね。

ハンガリー人のおじさんに、
質問攻めにあってしまいました。
日本では、考えられませんよね。
こんな会話・・・。
Re: まるで「深夜特急」
ホリホック さん、
その小説はまだ読んだことはありませんが、
ルーマニアの列車では
いろいろな出会いがあって、面白いです。
でも、こんなに不安になったのは
今回がはじめて。
年をとったせいでしょうか・・・。

アジアの陸路の旅は、
もっと面白そうですね。

ルーマニアの列車って
不便なんですけれど、その分
長い旅を楽しもうという気持ちがあるようです。
8人座席のコンパートメントは個室なので、
必然的に乗り合わせた人が
行き先や目的を語り合い・・・
ちょっとした旅仲間になるんです。

少しずつ、新しい列車が導入されて
だんだん人も変わってきていますから、
何十年もしたらこんな習慣はなくなるでしょうね。
残念です。
ご無事で何よりです!
ご無事で良かったです。いつもこんなに危険なのかしらとはらはらしましたが、そうではないのですね。本当に長い時間お疲れさまです。カティおばさまのお宅は遠いのですね。。。私は新幹線の二人掛けの指定席でよく似た経験があります。男性が一緒の駅で降りるようにと促すので、車掌さんなどに助けを求めましたが皆さん無視。仕方ないのでなんとか逃げました。たった二時間の長かったことといったら!思い出して海外で?と比べると気が遠くなりました。
Re: ご無事で何よりです!
Dilla さん、どうもありがとうございます。
何事もなく、無事に帰ってまいりました。

若い頃さんざん一人で電車に乗りましたが、
今回は少し緊張しました。
人がフレンドリーなのはよいことですが、
迷惑なときもありますね。

新幹線でもそんな危ないことがあるのですね。
車掌さんが助けてくれないなんて、
ひどいです。
管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
 こちらも車で飛ばせば4時間以内で付ける場所も6時間はかかります。でも我が家は列車の旅大好き(もちろん私はロシア語駄目なので同行者がいないとどうしようも有りませんが)。
 このところ夜初の寝台列車を使うので皆さん乗り込むと直ぐに寝床をしつらえて寝てしまうのでこちらはあまりそう言う事無いかなー、昼間だとおもしろがって聞いて来ますが。
Re: タイトルなし
越後やさん、お久しぶりです。

列車の旅はいいですね。
中での人とのかかわりもどうやら、
座席の配置によるものらしいです。

昔はすべてが8人がけのコンパートメントになっていて、
個室になりますから自然と会話が始まります。
今ふえつつある西欧型ですと、
二人がけずつに並んでいるタイプで、
見知らぬ人と顔を付きあわせることもなく・・・といった感じです。

一度シベリア鉄道にも乗ってみたいですね。
ロシア人も付き合うと面白そうですね!

No title
笑っていいのかどうか…(笑)
結局笑っちゃいましたけど、
それにしてもすごい移動ですねぇ…。、
旅人歴長いんでしょうね。
寝台で行くとしたらいくらぐらいかかるんでしょうね。
渡しは腰が弱いので6時間列車はきついですね(笑)
Re: No title
こんな古い記事まで・・
どうもありがとうございます。

一人でうろうろしたのは、
10年前の大学生時代です。
最近はあまり一人旅はできなくなりました。

ここルーマニアでは、
こんな夜行列車の旅も当たり前です。
といっても、新しい種類の列車もできてきて、
昔ほどは趣が感じられなくなりました。

ぜひルーマニアにこられたら、
ローカル列車、しかもコンパートエントに仕切られているものに
乗車されることをお勧めします。
暇つぶしの会話が、
また楽しいものです。