トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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「太陽の子」の舞台裏

ヨーロッパの冬の娯楽のひとつに、演劇がある。
シーズンは、秋にはじまって
5月ごろには幕を閉じるというから、
今はもう後半に近づいている。

6時開演ということだが、
まだ高々と太陽が上っている頃。
緑がぐんぐんと伸び、太陽が惜しげもなく降りそそいでいる。
これから暗い劇場の中へ入ってゆくのが、
なんだか不思議な感覚だ。

シェプシ・セントジュルジの町には映画館はないが、
劇場は驚くほど多い。
人口7万人ほどの規模の町に、
国立の劇団が5つもある。
ハンガリー語の劇団には、普通の劇団とパントマイム系の劇団とがあり、
民俗舞踊団、人形劇団。そして、ルーマニア語の劇団。
ルーマニアの地理的には中心部に位置しながら、
ハンガリー人が町の過半数を占めるからである。

ダンナの友人ネメレのお陰で、
私たちは顔パス。
彼はブダペストの芸大の博士課程に属していて、
この舞台芸術を手がけている。

小さな劇場の中ほどにある
赤いベルベットの席に腰掛け、彼に尋ねる。
「 この劇の話はどんなもの?」
ロシアの作家、ゴーリキーの「太陽の子」。
世界文学に疎い、私はもちろん
彼の作品はまだ読んだことがない。

「 ロシアの19世紀末が舞台となっていて、
当時の知識人階級と農民階級の闘争。
知識人たちの力の限界や絶望・・。
それに、叶わぬ恋愛話も混ざったりして、
もちろんユーモアもあるよ。」

前方の舞台に目をやると、うっすらと暗い中に
カマクラのような洞窟のようなものが
ほのかに白く浮かびあがっている。
「 そして、この舞台は洞窟かしら?」
「 さあ、何だろうね?」
と作者は肩をすくめ、おどけて見せた。
やがて、室内は闇に包まれた。

真っ暗な闇に雑音がひびき、
青白いランプを照らしながら作業夫たちが何かを組み立てている。
その黒い影がやがて
奥へと姿を消して、舞台が明るくなった。

柔らかな素材で覆われた、
真っ白な建物。
それは、美しい曲線を描いて
白い踊り場のような空間を深くえぐり出している。
そのずっと奥には、たてに細く割れた穴。

やがて、
ある科学者をとりまく家庭問題から、
それぞれの孤独の姿がなぞられ、
物語は精神を病む若い女と求婚者の男性との
恋愛をはかなく、浮かび上がらせる。

その家庭の不協和音が
だんだんと激しく音をたて、きしみはじめると、
彼女の心はやせ衰えていく・・。

昼間の太陽がさし、ひかりがもれる様子は、
あたたかい色の光が
その細い繊維で包まれた屋根から、
かすかに零れ落ちる。
屋敷の庭の場面では、
中央奥の穴を隠すようにして、
太い白樺の幹が
天に向かって背伸びをしている。

napfiai.jpg

舞台の最後、悲劇の場面には、
ひかりを帯びた天井の円形のところが
まるで生き物のように
体をくねらせ捩じらせ、すとんと下に落ちた。

明るい光と役者たち、拍手が飛び交ったあと、
ネメレは言った。
「 これから、すぐ解体に入るんだ。
舞台裏を見においで。」

まだ演劇の後のほとぼりも覚めないうちに、
私たちは裏の方へと回った。
円形の大きな装置は、まるで
モンゴルのユルタのよう。
無数の鉄のひもが伸びて、
これがロボットのように天井部分を揺さぶっていたのだ。

鉄の階段を上ると、
巨大な建物が目下に見えた。
彫刻も専門としていただけあって、
なるほど舞台の裏までも美しい。

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やがて、あの気になる内側へ。

A nap fiai 023

ひかりの差し込む舞台の内側では、
ちょうど白樺の大木が立っているところ。

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そのふわふわとした
建物を覆っているものに触れてみると、
思ったよりも硬くてしなっている。

これは羊の毛ではなくて、
機織の縦糸に使う糸だそう。
舞台装置を作るときには、
俳優さんたちも総出で
この糸を貼りつける作業に明け暮れたという。

A nap fiai 046

あたたかく包み込むような、
それでいて繊細さをも持った空間。

A nap fiai 056

A nap fiai 058

作者ケレジ・ネメレはこれから、
6月にはパフォーマンス・アートを披露するため、
来日することになっている。

まるで子どものようにわくわくした、
満月の夜だった。



トランシルヴァニアをこころに・・・。

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*Tamasi Aron劇場のHPにて、
 「太陽の子」ギャラリー公開中です。




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comments(0)|trackback(0)|アート|2010-04-29_06:32|page top

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