トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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セーク(シク)村の手仕事を訪ねて(後)

午後になるとたちまち、
どこからか雨雲がやってきては、
地面を湿らす。

SzekesKalotaszeg 177

また一雨こないうちにと、
目指す家の門を叩いた。
玄関口からは、様子を伺いに外に出てきたのは
小柄なおばあさん。

「 機織りを見せていただけませんか?」
おばさんは一瞬考えたあと、
「 どうぞ。」と小声で言い、
家の中へと案内した。

薄暗い部屋のなかに、
ぴんと張られた縦糸のあまりの白さに、
鳥肌が立つ。

SzekesKalotaszeg 184

小さな部屋の中、
大きな機織機を動かしはじめると、
生活空間はたちまちにアトリエに早代わりしてしまう。
ただじっと、その動きを見つめ、
その音に耳を澄ます。

SzekesKalotaszeg 214

横糸の入った筒を、右へ左へと動かす。
バタンと厚い木の板で、
生地を押して整える。
その一定のリズムが、なんとも心地よい。

SzekesKalotaszeg 220

機織に向かうその姿は、
まるで鍵盤をたたくピアニストのよう。
美しい旋律の代わりに、美しい模様が紡ぎだされる。
織っているうちに、
自然とおばあさんの顔には笑みが浮かんだ。

SzekesKalotaszeg 228

たっぷりと時間を吸い込んで黒ずんだ木目。
この機織機は、
どれだけの夏と冬を越してきたのだろう。

SzekesKalotaszeg 242

セークの村でも唯一の、
立体模様の織りを作りだすカティおばさん。
村の人たちからの注文に応じて、
機織をつづけている。
結婚式や葬式など、
今でも織りのクロスは生活のあらゆる場面を彩っている。

SzekesKalotaszeg 201

先ほどまでの雨雲はとたんに姿を消し、
ふたたび青空が戻ってきた。
丘の上にあるペンションへと戻り、
セークでの半日も終わった。

SzekesKalotaszeg 178



朝日が差してきた。
なだらかな曲線を描く谷あいを一望する、
ペンションからの風景。

SzekesKalotaszeg 284

ゆっくりと朝食を食べ、
村へ向かうと、もう畑仕事を済ませた
おばさんたちがやってくる。
真っ白なブラウス、紅色や黒のプリーツスカート。
もったいないほど美しい日常着。

SzekesKalotaszeg 286

人づてに聞いた、刺しゅうの職人さんを訪ねる。
ジュジャさんは、
「 これが一番古い衣装よ。曾おばあさんから伝わるもの。」 
と美しい衣装を次々と見せ、説明をしてくれる。
細やかなプリーツの寄せられたスカートは、
すべて手縫いで作られてある。

SzekesKalotaszeg 335

「 私はね、生まれてから一度も市販の服を着たことがないのよ。
 ブダペストに出かけようとも、いつもこの衣装。」
年の頃は、50前くらいだろうか。
高校を出たばかりのお嬢さんがいる。

ふくよかなその指先からは、
驚くほど繊細なバラ模様が生まれる。

SzekesKalotaszeg 388

縁にバラ模様の連なったスカーフは、
セークの女性の晴れの服装である。
サテンのようななめらかな光沢の黒地に、
鮮やかなバラの模様が美しい。

SzekesKalotaszeg 436

ご主人さまのために作ったという、
アコーディオンプリーツのシャツ。
「 シャツの袖には、
日曜日の朝は必ずアイロンをかけるの。
そうしないと、綺麗なプリーツが寄らないからね。」

SzekesKalotaszeg 339

胸からは、刺しゅう入りの
細長いネクタイがちらりとのぞく。
未婚の男性は赤を、
既婚の男性は黒を見につけるという。

SzekesKalotaszeg 340

お隣のお嬢さんにつれられて、
セークの部屋を見せてもらう。
まだ中学生くらいの少女のために
すでに嫁入り道具が用意されている。

家の富を手仕事に注ぎ込む、
セークの伝統的な価値観が
ここにもしっかりと根付いている。

SzekesKalotaszeg 417

衣装も見につけず、
針仕事もしない今の世代の少女たち。
彼女たちの時代には、
セークの村はどんなにか変わっていることだろう。

SzekesKalotaszeg 428

少女が絵付けをした額縁には、
若き日の両親の結婚写真が収められていた。

SzekesKalotaszeg 434

診療所の前では、
女性たちがおしゃべりに花を咲かせる。

szek4.jpg

こんな風に、紅い布が干してあるというのも
セークならではの風景。

SzekesKalotaszeg 453

黒いブーツがずらりと並んでいる、古い民家。
ベルギー人が家を買い取り、
住んでいるという。

szek5.jpg

こちらはハンガリー人が別荘にしている、
古いカヤブキの家。
こういう古い家を村の人よりは、
外国人が珍しがって買い取ることが多いようだ。

SzekesKalotaszeg 475

土で塗り固められた壁。
家の壁をより白く見せるために、
青が使われていた。

SzekesKalotaszeg 477

家の中は、まるで展示場さながら。
部屋を彩る鮮やかな色が、
光りの少なさを補って、
生き生きと明るいものにしている。

SzekesKalotaszeg 478

中世の残る村に
まだまだ後ろ髪を引かれながらも、
町行きのバスに飛び乗った。



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comments(4)|trackback(0)|その他の地方の村|2010-07-15_06:35|page top

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tulipanさん、いつも見てます。
女の人が頭にしている白い布、
私の子供のころ、青森の女の人達も、あんな感じだったよね。
ふと、「日本で、他にあんな格好をしているの見たことないか?ひっとして青森だけ?そんなことないよね」と、頭の中「???」で、コメント入れました。
Re: tulipanさん、いつも見てます。
thomasさん、
いつも見てくださって
どうもありがとうございます。

そうなんですか。
青森ではむかし、こんな風景が見られたのですね。
白い頭巾をかぶった女性に、
黒い頭巾をかぶったお年寄り。

失われてしまったから、
この美しさに気がつくのかもしれません。
No title
今日のはまた更に素晴らしいセークの部屋ですね。せめて今時な娘さん達が自分は縫わなくとも、この部屋のものを素晴らしいと思って持ってお嫁に行ってくれることを願います。

機織り、立体織がこのおばあさんだけとなると何れは廃れてしまうのかしら。もったいないですね。機織りと言えば芸術家さんのおばあさんも機織りが得意だったのだとか。この前頂いたルーマニアの刺繍本から題材を取ろおと芸術家さん宅へ持って行ったらモルドヴァと図案はほぼ同じだと言っていました。
ただし配色に緑が入るのがモルドヴァ風なのだそうです。
やはりほぼ同じ国なんだな~と思いながら聞いていました。
Re: No title
越後屋さん、どうもありがとうございます。
本当におっしゃる通り、
こうした財産を売ってしまうのは簡単ですが、
その価値をしっかりと受け止めて、
村に残しておいてほしいです。

モルドヴァ共和国も、
あれだけ近いのにまだ行ったことがありません。
ひとが素朴でやさしい所と聞きます。
同じルーマニア語を話し、
同じ文化を持つのに国が違う。
東欧諸国では、
このような問題がどこにでもあるのですね。

刺しゅうの本をお役立ていただけて
嬉しく思います。
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