トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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でこぼこ道のある村での記憶

6月の冷たい雨のふる中を、
車から下ろされて閉口した。

その日はラツィおじさんの車で
はるばるムレシュ県へやってきたのだが、
用事を済ませる間、
どこで待つかという話になり、
ダンナの一存でこの小さな村で降りることに決まった。

どんよりとした灰色の空、
雨のせいで肌寒い。
でこぼこ道には、
大きな水たまりがあちこちに生じている。

村のはずれの看板には、
この道路の不整備を訴える
ユーモラスな詩が書かれてあった。

Heviz 003

「泉」という名前の、小さな村。
ドイツ系のザクセン人の暮らしていた地方が
すぐ目の先のため、
家並みもどことなくドイツ文化の香りがする。

その家並みの中に、
黒い服のおばあさんが現われた。
なんとなく、そちらの方へついて行く。

Heviz 004

小さな曲がり角を曲がって
上り坂をゆくと、
そこは墓場の入り口だった。

おばあさんはなおも、
墓場の小道を登ってゆく。
その姿はやがて、
ルーマニア正教の教会へと消えていった。

Heviz 005

すべなく
そこで立ち尽くしていると、
後から後から
同じように黒い衣装のおばあさんたちが、
かさを手に坂を上ってくる。

「 こんにちは。」と声をかけると、
皺だらけの優しい顔が微笑んだ。
「 まあ、あなた。
 どこからやってきたの?」

黒いブラウスにスカート、
エプロンをかけている。
手作りの衣装だということはすぐに分かった。

「 これから、この教会でミサが始まるのよ。
 さあ、中へお入りなさい。」

小人みたいな
黒い服のおばあさんたちに囲まれ、
その人懐こい笑顔に包まれると、
不思議と足が中へと吸い込まれていくようだった。

平日の午前中にもかかわらず、
薄暗い教会の中には
電灯の光りが赤々と燃え、
黄金色の壁画を照らしていた。

おばあさんたちは、小さな階段を上り
二階へとあがった。

黄金に輝く壁画の文様、
お香の煙と、
黒尽くめの男性たちのコーラスが
小さな空間に響きわたる。

言葉も文化も分からないが、
宗教の力というものを
なんとなく肌で感じていた。

おばあさんは椅子を勧めると、
「 どう、気に入った?」と誇らしげに微笑んだ。
ほとんど村から出ることもなく
一生を過ごしたであろう、
おばあさんたちの人生を彩る大きな舞台のひとつが
この教会であったに違いない。

ずいぶんと時間が経っていたらしい。
その薄暗い祈りの場から
目を覚ますようにと、私を呼ぶ声がした。

小さな不思議の国へと迷いこんだ、
そんな体験だった。



トランシルヴァニアをこころに。

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comments(0)|trackback(0)|その他の地方の村|2010-08-13_23:36|page top

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