トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

カテゴリー

FC2カウンター

カレンダー(月別)

09 ≪│2017/10│≫ 11
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30 31 - - - -

これまで書いた記事は・・・

全タイトルを表示

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Feed Me!

トランシルヴァニアへの扉  - Erdely kapuja-のRSSフィード

ブログ翻訳

アーラパタクの刺しゅう展示会に向けて

シェプシ・セントジュルジの町の
ランドスケープともいえる、
セーケイ民族博物館。

ルーマニアのちょうど真ん中に固まって住んでいる
ハンガリー系セーケイ人は、
12世紀ごろにはすでに、
当時のハンガリー帝国の国境に
兵士として配置されていたといわれる。

セーケイの門と呼ばれる
高さ3m以上の木彫りの大きな門を建てて、
特権身分を示していた。

18.06.2010 16-41-36

ここセーケイ地方に残る
数少ないフォークアートが、
アーラパタクに伝わるクロスステッチ刺しゅう。
20世紀のはじめから中ごろまでに有名になり、
数々の展覧会へ出品されていた。

トランシルヴァニアの刺しゅうといえば、
カロタセグのイーラーショシュがあまりに有名になりすぎて、
よその地方の刺しゅうは忘れ去られようとしている。

ジプシー化してしまった村は、
もうハンガリー文化の火も消えつつある。
そういう事実を目の当たりにして、
この町で展示会を開催しようと思い立った。

まずは会場探しから始まった。
コヴァスナ県の県庁舎へ
アーラパタクの記事の載った日本の雑誌などを手に、
タマーシュ・シャーンドル氏を訪ねた。

「 私たちセーケイ人は、
 日本人とはもともと縁深いはずだからね。」

展示会のために会場を探していると伝えると、
セーケイ名物の大きな口ひげを撫でて、
タマーシュ氏はこう言った。

「 私のコレクションで世界地図の展示をしようと計画していたのだが、
 君たちに場所を譲るよ。」

すぐに携帯を鳴らし、
セーケイ博物館の館長に話をつけてくれた。
こうして運良く展示会場も決まり、
村での収集活動がはじまった。
 
アーラパタクのカルバン派教会。
牧師さんの口から、
その展示会についてを説明してもらうようお願いをする。
教会の入り口から、
すでに刺しゅうの世界が広がっている。

16.06.2010 18-10-27

村の人たちに展示会についての理解をしてもらおうと、
その刺しゅう展の概要を話す。
できるだけたくさんの人たちの協力を
必要としていることを訴えた。

協力者の名前と住所を
ノートに書き取る。
「 夏は畑仕事が忙しいから、
 夕方6時以降でないと困るわ。」

IMG_7298.jpg

刺しゅうの名人ピロシュカおばあさんは、
畑仕事の合間に、ガレージの中で
今も作業をつづけている。

ワークショップも開かれる予定なので、
刺しゅうの講師として招くことになりそうだ。

05.08.2010 20-28-05

イレーンおばさんの所では、
100年ほど昔の穀物袋をお借りすることになった。

嫁入り道具のベッドを再現するために、
ベッドカバーやピロカバー、
穀物袋を美しく積み上げて展示する必要がある。

IMG_7341.jpg

昔のカバーは、
こんな風に底の部分にだけ刺しゅうがされてあった。
決して使われることのなかった、
嫁入り道具の象徴としての作品は、
裏返しにして何十年とたんすの中にしまったまま。

IMG_7339.jpg

都市文化の流行を受けた刺しゅうも見られる。
信仰をテーマにした言葉が書かれたタペストリー。
「 神様がそばにいれば、何も恐れるものはない。」

村の民家は壁が漆喰なので、
こうしたタペストリーは壁を守るためのものでもある。

IMG_7380.jpg

韻を踏んだ、
簡潔な詩のようなものも見られる。

「 やわらかなベッドで、おだやかな夢を。」

言葉を針で刻み込む。
その神聖な行為によって生まれた言葉が、
そこで暮らす人々を守り続けるのだろう。

IMG_7383.jpg

アーラパタクの刺しゅうのモチーフには、
中世を起源とするもの、
それよりも古いものと多様である。
模様というかたちに
彼らの民族の謎が秘められているようでもある。

IMG_7403.jpg

ギゼラおばさんは、
古く美しいものをこよなく愛するひとり。

「 私は若い頃、町の役所で勤めていたから、
 あなたのお父さんはよく知っていたわ。」

民俗学者シェレシュ・アンドラーシュの名は、
この村でも知られている。
その名前も、私たちの仕事をいくらか助けてくれている気がする。

チューリップが彫られた、糸紬の棒。
男性は女性のために、美しい彫刻を施して、
この仕事道具を贈っていた。

IMG_7388.jpg

ギゼラおばさんが、お隣さんの家へも案内してくれた。
長い通路には、
赤い刺しゅうのカーテンがひらめき、
好奇心を駆り立てる。

IMG_7421.jpg

赤いステッチが生活の中に溶け込んでいるのが、
見てとれる。
老夫婦がにこやかに迎えてくれた。

IMG_7423.jpg

「 目がよく見えていたころは、
 注文にも応じて作ることがあったけれど・・。
 もうなかなかできないわ。」

隣には脳に生涯を持つ息子さんが座っている。
きっと子どものためにも、
そのひと針ひと針を動かしてきたのだろう。

IMG_7451.jpg

ギゼラおばさんも手伝いながら
ひとつひとつの作品をめくり、鑑賞する。

その年代、年代によって
糸の力強さ、素材の移り変わりを
目の当たりにする。

IMG_7456.jpg

先ほどまで太陽が出ていたかと思うと、
すぐに雨雲がやってきて、
雨粒や稲妻をまきちらしていく。
変わりやすい、夏の天気。

IMG_0256.jpg

展示会まであと二ヶ月半。
それまで、何度となく
この村へと通うことになるだろう。




トランシルヴァニアをこころに。

にほんブログ村 海外生活ブログ 東欧・中欧情報へ


にほんブログ村
スポンサーサイト

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(2)|trackback(0)|セーケイ地方の村|2010-08-14_18:25|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

非公開コメント

No title
美しいですね~ 感動です。
今だからまだ 探せば出て来るのですね・・・。
本当に赤の刺繍が多く、その地方に根付いた
ものであることが伝わってきます。

日本での展示会、近い場所ならいいなぁ などと
勝手なことを考えています。笑
Re: No title
霧のまちさん、
まだ2、30年まえに誰かが
集めていれば、もっとたくさんの刺しゅうが
生き残ったでしょう。

家といっしょに家具や手仕事なども
ジプシーのひとたちの手に渡りました。
大切に飾られている家もありますが、
火にくべられたりしたものもたくさんあると聞いています。

日本ではアーラパタクだけでなく、
ほかの地方の刺しゅうも展示します。
来年の夏、
どうぞ楽しみにしていてください。