トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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カロタセグの丘を越えて

よく晴れた木曜日の午後、
カロタセグ地方の村につくと、
すぐにその足で隣村へと向かった。

「 トゥレに向かうなら、 
 少し遠回りだけれどきれいな道と、
 近道だけれどあまりよくない道とがあるよ。」
そう聞いて、
道順をおぼろげに頭の中に詰め込むと、
すぐに出発。

選んだのは、近道であまりよくない道。
村はずれの墓場をすぎて、
すぐに原っぱに出た。

空は青々と澄み切って、
うすく滑らかな雲が泳いでいる。
さわやかに風が吹き、
秋の訪れを感じさせる天気。

IMG_2213.jpg

太陽の光をあびて、きらきらと
まるで宝石のように輝く野の花たち。

IMG_2215.jpg

原っぱのなかに、
ひときわ目立つのは向日葵。
「 いい香りがするよ。」と
その大きな花のなかに顔をうずめると、
すっぽりと入ってしまうほど。

IMG_2222.jpg

背の丈よりも長い、
のっぽの向日葵が立っている分かれ道。
「 トゥレは丘を越えたあちら側だから・・。
 こっちだ。」
と言う旦那のあとをついていく。

IMG_2230.jpg

柳の葉っぱが冷たい風をうけて、
さらさらと音をたてる。
今にも、あの雲に向かって羽ばたいてしまいそう。

IMG_2232.jpg

やがて丘を登りきると、
乾いた色の大きな道に出た。

IMG_2237.jpg

道のとおりすがら、
脇には小さな池が点在している。
中にはどんな生き物がいるのだろう、
と息子はすぐに探索をはじめる。

IMG_2239.jpg

大きな道は、行き止まりになった。
巨大な砂場が目の前に現れると、
ようやく、その道は本当に村に続くのだろうかと心配になる。
広大な土地を見渡しても、
どこにも人の姿は見られない。

真っ白な池。
よく見ると、水が枯れて、
砂がむき出しになっている。
この地方は、磁器の原料となるカオリン石が採れるそうだ。
おそらく、この乾いた池もそうだろう。
 
IMG_2247.jpg

長く雨が降らないので、
まるで亀の甲羅のように
地面にひびが刻まれている。

IMG_2256.jpg

道のない、道をゆく。
はじめは足首を覆うくらいだった草も、
気がつくと腰のあたりまで伸びてきた。
草を掻き分けながらなので、
少しずつしか進まない。
サンダルばきの裸足を
ときどき意地悪な草が引っかいていく。

やっとのことで
雑草の林から開放されると、
きれいに刈り込まれた原っぱが迎えてくれる。
その丘を登りきると・・・。

IMG_2267.jpg

カロタセグ地方特有の
なだらかな丘陵地帯が眼下に広がっていた。
オレンジ色に輝いている野原をみて、
そろそろ夕暮れ時が近づいていることを知った。

IMG_2269.jpg

丘の下にある小さな村めがけて、
勢いよく下っていく。

ベンチに腰をかけておしゃべりをするお年寄り、
野原からかえってきた牛の群れ。
夏の一日の終わりの風景が、
いつもと変わらずに繰り広げられている。

IMG_2291.jpg

墓地へ写真を撮りに行った旦那を待っていると、
先ほどひとりのおばあさんと知り合ったという。

家の中へ足を踏み入れると、
グリーンの織りのタペストリーが、
部屋中を覆っていた。
星や花などのさまざまな模様が浮き上がる。
赤と緑を見せてくれたおばあさんは、
「 私はもう年寄りだから、 
 緑だけを飾るのよ。」と微笑んだ。

IMG_2320.jpg

あたりが暗くならないうちにと、
畑道をずんずん歩く。
群青色から橙色へと変わる
鮮やかな空へと向かって歩いていくと、
いつしか月明かりの夜空に囲まれていた。

暗闇を歩くこと30分ほどで、
先ほどの向日葵の分かれ道にたどり着いた。
村はもうすぐそこだ。



トランシルヴァニアをこころに。

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comments(4)|trackback(0)|カロタセグ地方の村|2010-08-29_05:59|page top

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No title
いつも拝見していて思いますが、全く何でもない田舎の
普通の風景を こうして瞬時に見せて頂けるのは
素晴らしいことです。
観光地や有名な建築ならともかく 実際に足で
歩いた景色は そう簡単に見ることは
出来ませんから。

そんな意味でも 日本人の感性から見た
日々の暮らしや人々の様子、野の花や
季節の移ろい、毎回本当に楽しみですよ~。
No title
緑の刺繍素敵ですね。赤が圧倒的に多かったのでとても新鮮です。
手元にモスクワで購入して送った本が届きましたが、こぎん刺しに似ていたり、コチラのサイトで見かけた刺繍に似ている物があったり、人間が考えだす模様というのは共通点があるのかもしれませんね。
Re: No title
霧のまちさん、
一見なんでもないような自然の風景が、
有名な観光名所よりも心に残ったりもしますよね。

我が家は車がなく、
今回の旅でも泣く泣く歩かないといけない場面も
たくさんありましたが、
歩くということは、
その土地を一番よく知ることかもしれません。

カロタセグの華やかな刺しゅうや衣装のうらはらには、
こういう自然の厳しさ、
乾燥した粗野な自然があるというのも
よくわかりました。

やせた土地なのに、
これだけの富を築いてきた人々の勤勉さに
頭が下がる思いです。
Re: No title
越後やさん、
こちらは織りなのですが、
これだけの複雑な模様を作るのは大変だったようです。
カロタセグ地方では織りの文化はもう残っていないようです。

赤は本当によく見ますよね。
この淡いグリーンの配色が気にいったので、
おばあさんに譲ってもらったのです。
来年夏の展示会には、お目にかかれますように。

織りは特に、限られた技術で、
縦横の決められた模様ができるので、
とてもよく似ていますよね。
それでも、同じモチーフが世界中のいろいろなところで見られるのには、
はっとしますね。
人間の体を覆うものを作る、
初めての発明品が織りでしたから、
それだけに古い模様がたくさん残っているのでしょう。