トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

カテゴリー

FC2カウンター

カレンダー(月別)

10 ≪│2017/11│≫ 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

これまで書いた記事は・・・

全タイトルを表示

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Feed Me!

トランシルヴァニアへの扉  - Erdely kapuja-のRSSフィード

ブログ翻訳

カロタセグのルーマニア村

ルーマニアでの列車の旅には、
数々の忘れえぬ思い出がある。

8人がけの小さなコンパートメントで、
思いもよらぬ出会いや再会などの
ドラマが繰り広げられる。

IMG_2499.jpg

その日は、向かいでおしゃべりをしている
ルーマニア人のおばあさんたちと一緒になった。

IMG_2401.jpg

手織りの袋が気になったので、
聞いてみると、その村ではまだ手仕事が残っているとの話。
ノートにメモをして、
地図でその場所を確かめる。

同じカロタセグ地方のようだ。
ハンガリー人の村の方が有名な、カロタセグ地方。
ルーマニア人の村へも行ってみよう。
こうして、旅の予定は決まった。



朝早い電車に乗って、
小さな駅で降りる。
周りには村らしきものは見られない。

先を歩いていたおじさんに声をかけて、
調べておいた村の名前を聞いてみると、
ちょうどおじさんもそこへ向かう途中だという。
「 この村の神父がいとこだから、
 よくここには来るんだ。
 いっしょにおいでなさい。」

真っ青な空の下、
素朴な十字架の飾りが
旅の安全を祈ってくれているようだ。

IMG_2504.jpg

丘を越えて下を見晴らすと、
山を背景に大きな村が姿を現した。

IMG_2513.jpg

ちょうど夏の終わりは、
村では仕事が大忙し。
冬に家畜のえさとなる飼料をつんだ馬車が、
勢いよく通り過ぎていく。

IMG_2516.jpg

村の真ん中にあるルーマニア正教教会の横にある
民家に入っていく。
納屋でちょうど仕事をしているらしき、
家の主人に話しにいく、おじさん。

その主人とやらの声だけが聞こえる。
怒りで顔が硬直しながら、
ダンナがその声を訳して聞かせてくれた。
「 この村には、ハンガリーからたくさんの外国人がやってきた。
 もうこの村には、まったく衣装なんて残っていない。
 あいつらの目的は、ルーマニア人の民俗衣装をなくすことなんだ。」

「 教会の中も見せない。」という言葉で、
私たちはすぐに家に背を向けた。

仕方なく、ノートに書かれたおばあさんの名前を
頼りに村を歩く。
神父がこのような民族主義者なら、
村の人々の考えもそうなのだろうか。
多少の不安を覚えながら、村を訪ね歩く。

やがて、アニタおばあさんの家を突きあてた。
黒いスカーフをかぶり、
黒ずくめの衣装を着た小柄なおばあさんは、
ニコニコと出迎えてくれた。

たんすの中から、
手織りの布を見せてくれる。
「 今日は孫たちが来ているから・・。
 また別の時に、ゆっくり見せてあげるわ。」とおばあさん。

IMG_2539.jpg

親戚の女性が、今度は
お母さんの家へと案内してくれるという。
「 うちの家には、もっと古いものがいっぱいあるわよ。」

IMG_2548.jpg

うす青く輝く壁を、
赤や黄色の華やかな絵皿がぎっしりと敷きつめている。
「 この絵皿をすべて、売ってほしいという人もいたわ。
 当時は、アパートの1部屋が買えるほどの値段でね。
 でも、私は売らなかったわ。」

IMG_2557.jpg

ウールの男性用のコート。
カラフルなフェルト生地が、
はさみこまれてフリンジのように揺れている。

IMG_2591.jpg

「 この村でも、これほど古い衣装はほかにはないはずよ。」
とたんすの奥から出してくれたのは、
ずっしりと重い男性のシャツ。

かつて村の女性たちは、
渾身の力をこめて縫い上げたシャツを
花婿への贈り物とした。
その女性の力が込められた刺しゅう。

IMG_2631.jpg

繊維の亜麻から栽培し、
それを糸に紡いで、織って布に変え、
さらに細やかな刺しゅうを施して、
洋服に仕立て上げる。
途方もない時間、そして人の手の技・・。

それを着たものも、
作ったものもすでに亡くなっている。

時間の風化で色味を帯びてきた白の色味、
光を浴びて輝きを増す
象牙彫刻のような花の模様。
あまりにも美しい傑作のシャツは、
なぜか抜け殻のような哀しささえも漂わせている。

IMG_2635.jpg

列車での出会いから、
美しいシャツとの出会いが生まれた。
旅の不思議さ、面白さは
こんなところにあるのかもしれない。



トランシルヴァニアをこころに。

にほんブログ村 海外生活ブログ 東欧・中欧情報へ


にほんブログ村
スポンサーサイト

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(2)|trackback(0)|カロタセグ地方の村|2010-09-10_01:46|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

非公開コメント

No title
何かを一生懸命探していると ある日 それは向こうから
やって来る…本当ですね。

凄く手の込んだシャツですね~、驚きです。
手仕事の苦手な女性たちは いったいどうしてたんでしょうね。。(笑)
Re: No title
探すということは、
何かしらその電波を発しているのではないでしょうか?
今回はほとんど下調べもせず、
成り行きの旅でしたが、
見たいものはすべて見ることができました。

トランシルヴァニアの農村社会。
100年前はいかに豊かであったか、
こうしたモノによって思い知らされます。
今はそれに比べると共同意識も低いですし、
とても貧しいものになってしまいました。