トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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黒い湖の市で

日がだんだんと短くなり、
太陽の光も次第に和らいできた10月。
友人のキャンピングカーに乗り込み、
クルージ方面を目指していく。

黒い湖と名のついた、
一年で一度開かれる市で4連泊をする。
生まれて初めての試み。

この市の時期には、必ず雨が降る。
そういう話を学生時代にも聞いたことがあった。

重いグレーの曇り空の町を昼前に出て、
一山こえると嘘のようにくっきりと青空が広がっていた。
太陽をすかして見える
黄色く色づいた木の葉を眺めながら、
長い旅がはじまった。

かつてザクセン人の暮らしていた
おとぎ話さながらの古い村をいくつもすぎ、
小川沿いに小さな村の並ぶトゥルグムレシュの村を通りこして、
緩やかな丘陵地帯のクルージナポカへとたどり着いた。

山のふもとにある黒い湖にくると、
河川敷はたくさんの車でひしめき合っていた。
市がはじまるのは2日後だというのに、
もう場所取り争いが白熱している。

黒い湖の市は歴史が古く、
かつては娘市場と呼ばれていた。
近隣の農村から若い男女が集まり、
結婚相手を探しにくる。
物だけでなく、
人の交流の場でもあった。
今では、学生たちや骨董品愛好家などによって
知られている。

友人の車の場所がやっと確保できると、
薄暗くなった会場を散策しはじめた。
祭りの前。
活気があるのは、屋台の前だけ。

feketeto2010 037

火を燃やし、暖をとる人々。
山並みのせいか、本当に肌寒い。

feketeto2010 024

飲み屋では、民謡を唄う歌手の歌声に
自然と人の和ができていた。

feketeto2010 034

キャンピングカーの二階。
ぐるりと布を張ったものに、
防寒用のシートを内側からかぶせてある。
寝袋に包まって就寝。



目が覚める。
天井にある小さな窓からは、
夜明けの空が見渡せた。
ふとどこからか、
金管楽器の調べが聴こえてくる。
その姿を捉えようと、
いそいで車から飛び出した。

あたりは小さなテントがいっぱいにひしめき、
朝もやのなかを起きたばかりの人々が行き交う。
先ほどから、何度も同じメロディーが耳を打つ。

feketeto2010 153

音のするほうを注意してみてみると、
山の中腹ほどに小さな人の影が見られた。

やがて山を降りてきたのが、
このおじいさん。
このクラリネットの音で目を覚ますのが、
朝の日課となった。

feketeto2010 228

会場の様子を見定めようと、
ダンナと二人で繰り出した。
テーブルを並べ、
車から色々なものを広げるのを眺めながら歩く。
ふと、昨日の飲み屋の前で足が止まった。

feketeto2010 152

パトロールカー。
そして地面には血の跡。
夜中に喧嘩でもあったのだろうか。

嫌な予感がしながらも、
不思議な光景に眉をひそめてそのまま去ろうとした。
すると、ダンナが通行人に何かを尋ねている。
重い面持ちでこう言った。
「 夜中に誰かが刺されて死んだそうだ。」

まだ市も開けていないのに。
昨日の夜、ちょうど足を止めていた
まさにあの場所で・・。




市は日に日に大きくなり、活気を帯びていった。
いつもと変わらず朝は楽器の音で幕が開けると、
すっきりと青空が広がった。

feketeto2010 021

山の向こうに日が沈むと、
小川は黒く色を濁していく。

feketeto2010 144

金曜の朝には霜が降った。
屋外に出された家具の上も、
うっすらと白く色づいている。

feketeto2010 146

朝早く散策をしていると
セークの麦藁帽子をかぶったおじさんが呼び止めた。
「 今日一番のお客さんだからね。
  シャツを安くしてあげるよ。」
一番目のお客さまを優遇すると、
後がうまくいくというジンクスがあるそうだ。

feketeto2010 176

洗濯物もきれいに乾きそうな秋晴れ。
美しい手仕事のクロスが、
風に吹かれて舞っていた。

feketeto2010 183

ジプシーの職人たちは、
木を彫り、やすりをかけて家具を作る。
市の合間にも仕事に精を出していた。

feketeto2010 089

土曜日が最大の市。
午後には、木の橋がきしむほどの
大勢の人でにぎわう。

feketeto2010 244

人ごみとざわめき、音楽の音・・・、
祭りの興奮は最高潮に達する。
これだけの人が求めにくるのは、
必ずしも物ばかりではないはず。

feketeto2010 243

こうして3日間の祭りも
幕を閉じた。
村では収穫祭の後、
夏の仕事をすべて終えたあとの休息でもあった
この市。

来年も、この川のほとりで
どれだけの人と物が出会い、別れるのだろう。

feketeto2010 149





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No title
山あいの素朴な場所ですね。
楽しみにされている市の様子が伺えます。
ちゃんとした広場でなく、足元が微妙に
厳しい中、後のゴミ処理なども大変そう。

それにしても、事件があったなんて・・・
日頃の鬱憤などが、アルコールが入ると
狂ってしまうのですね~。

ジプシーたちの作る木の彫り物は
とても素敵ですね。
もう 霜が降りるほど寒いんですか…。
Re: No title
こんな山間の小さな村に
どうして古くからの市があるのか・・・。
本当に不思議です。
テントで連泊する人たちは、
なぜこんな時期にと不満を漏らしていますが、
やはり農業のカレンダーに沿った
一番よき日が定められたのだろうと思いました。

最終日は一度に撤回したので、
ゴミの量もおびただしかったです。
最後は色々なものを安くで放出する業者もいました。

色々なことがありましたが、
学生時代に戻ったような不思議な体験でした。
周りの人たちもただ売りに来るだけでなく、
市を楽しんでいる様子でした。

マラムレシュに暮らすスイス人のおじさんは
みなにお酒を振舞って周っていましたし、
ハンガリーから来た鉄職人のご老夫婦は、
ベルギーワッフルを焼く型などを販売しつつ、
お菓子を振舞ってくださいました。




これが商売の原点ですね!
物を売るだけでなく楽しむこと、これが商売ですよね。
ただ、設けることしか考えなくなると互いに潤いがなくなりますからね。
あ~、行ってみたいなぁ~…。
でも、こんなところには普通の旅人はちょっと行けないよね。
よかったですね~♪

でも殺人はね…。
ま、日本でも、同じか。
私もそう思います。
今の社会ではなかなか見られない、
売る側も楽しもうという雰囲気。
それがこの市を生き生きとしたものにしているんでしょうね。

隣のおじさんは、
商売道具のはずのお菓子の型のようなものを
みなに振りまいていて、
最後には売れ残った墓場に置く飾りを
友人にプレゼントしていました。

この寒いなか、
3日間もテントで過ごしたのは、
若い人たちばかりでなく、
おじいさんおばあさん方もいらっしゃいました。

事件だけが異質な出来事でしたが、
それ以外はよき思い出です。
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