トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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待合室での出会い

2010年の新しい年は、モルドヴァ地方で迎えた。

昨日の大騒ぎの後は、
水を打ったようにひっそりと静まり返った町。
その日も朝から歩き回った。

帰りの電車の切符を買い求め、
二時間の待ち時間をすごさなければならない。

半分ほど窓ガラスが割れているドアを開けて、
駅の待合室へと入る。
幸いにも、中は暖房は効いているようだ。
ざっと周りを見渡すと、
浮浪者だろうか、
壁際のベンチでは二人の男が横になっていた。

そして反対側には、
あまりガラの良さそうではない少年たちが3人。
いかにも村出身というおばあちゃんが一人いた。

先ほどから喉がかわいていた。
「さっきの店でオレンジを買ってこようか。」
ダンナが早くも腰をあげる。

普段なら平気で使いをさせるのに、
このときは急いでそれを遮った。
この場で一人になるのは、気が気でない。

退屈しのぎにおしゃべりをしていると、
少年たちのうちの一人が寄ってきた。
「ハンガリー語で話しているんだろ。
俺もちょっとなら、できるぜ。」
とめどなくルーマニア語でダンナに話し続ける。
「俺の母ちゃんは、ルーマニア語もハンガリー語もパーフェクトだ。
 電話番号をあげるから、今度電話しなよ。」

そのうちに、他の二人もやってきた。
3人は次々にまくし立てる。
「どこからきた?」
「ここで何してた?」
「何歳だ?」

根掘り葉掘り、
思いつくままに質問を浴びせてくる。
私の手元にカメラを見つけると、写真を撮らせようとし、
ビデオがついていると分かると、歌をうたいはじめる。

「実は俺たち、ジプシーなんだ。
 コヴァスナ県へ行って、くず鉄を集めているんだ。」
ジプシーの中には、
村から村へくず鉄を集めて売っている者もいるとは聞いていた。

ursul 368

すると向こうのベンチで一人で座っていたおばあちゃんも、
興味深そうに私たちの周りにやってきた。
「私の娘がこの町に家を持っていてね。
 今出稼ぎでイタリアへ行っているから、
 今度来るときはそこでとまってもいいわよ。」

おばあちゃんは、ここから少し離れた村に住んでいる。
その村では、クマ踊りの代わりに
ヤギの踊りが見られるという。
私たちが興味を示すと、
「じゃあ、これから私といっしょに来なさいよ。」

きっと子どもがいなかったら、
そのままおばあさんの住む村へ直行していただろう。
心から気の良さそうなおばあさんの誘いを
泣く泣く断った。
「来週の木曜日にも、村でお祝いがあるのよ。
 おいでなさい。」

しばらく考えて、来週も難しそうだと返事をした。
「それでも、待ってるわ。」
おばあさんは微笑む。

ursul 365

二時間はあっという間だった。
おばあさんに別れを告げる。
両頬にひとつずつ、
そしておでこに何度もキスをした。
私とダンナへの別れの挨拶だった。

「きっと、訪ねに行きますね。」
そう約束して、電車に飛び乗った。
移り変わる車窓の風景をぼんやりを見ながら、
まだ見ぬモルドヴァの小さな村を思い描いていた。

しばらくはモルドヴァの魔力にとりつかれそうだ。





トランシルヴァニアをこころに。

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comments(6)|trackback(0)|その他|2011-01-11_11:18|page top

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No title
人と人の出会いには物語がありますね~
素敵な出会いについウルウルと涙腺が緩みます
モルドヴァのお話の続きが楽しみです
No title
日本では いつからこんな風に 声掛けを
しなくなったんでしょうね。
人口が多いところは 自然に人同志が離れるんだと
聞いた事がありますが 果たして・・・。

若者3人、ちょっと近寄りにくい人たちですが
話せばけっこう面白いですね。

おばぁちゃんからの言葉も そちらでは
多いですね。
みんなが 家や自分の村においでと誘う・・・
なんか いいなぁと思います。
あこがれの旅~♪
あ~私もこんな旅したいなぁ~。
でも、女性にとっては面白さと恐さがいつも背中合わせのようですね。
Re: No title
たかちゃんさん、
コメントをどうもありがとうございます。

ほんの数時間でも、
言葉の障害があったとしても、
気持ちが通じる人っているものです。

私が10年前に学生として
ルーマニアを訪れ、
強く惹かれるようになったのも、
こうした人の暖かさだったと思い出させてくれる出来事でした。

おばあちゃんにお別れのキスをもらうとき、
まるで孫になったような気持ちでした。
こんな素敵なおばあちゃんに私もなりたいものです。
Re: No title
霧のまちさん、
初めてこの待合室に入ったときは、
異様な雰囲気だと思ったのですが、
こうしてあっという間に、
他人と他人がつながっていく様子は、
魔法のようでした。

それも今の社会でいうと無教育で失礼な、
ジプシー少年たちの技なのかなと思います。
一分たりとも周りを飽きさせない、
質問の山におしゃべり・・・
普段なら疲れますが、
この二時間の待ち時間では面白かったです。

見知らぬ人をこうしてお客に呼んだり、
相手が誰であろうが
両手を広げて迎え入れてくれるような愛情。
この世代の方だから、だと思います。

こういう人たちが
段々少なくなっていくのは残念なことです。
Re: あこがれの旅~♪
田中仁さん、
あけましておめでとうございます。

旅ってこういう人との出会いが、
いいですよね。
それには一人旅がいちばんです。
もう私もこの年では、
なかなか一人旅に出る事ができなくなりました。

もちろん、自分の身を守ることは大切ですが、
旅の恐さに背を向けては
いけないと思います。
だからこそ、新しい世界が見えてくるのですから。