トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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冬の埋葬-2011年ファルシャング(謝肉祭)

きのうまでに降った雪が、
小高い丘をうっすらと白く染めていた。
一年に一度のファルシャング(謝肉祭)がブルン村で行われる。

キリスト教徒にとっては長く辛い謝肉の期間に入る前に、
最後の大騒ぎをしようというイベント。
冬の最後をしめくくる祭りである。

食べて飲んで、歌って大声を出して、羽目をはずす。
10月ごろに畑仕事を終えてから、
ずっと人々は家にじっと閉じこもる。
冬の村の仕事は少ないから、
日ごろの退屈しのぎに大暴れしたいという欲求が起こってもおかしくはない。

村に到着しすると、もう10時を回っていた。
丘にそびえる大きな円塔の建物は、
村のシンボルであるユニタリウス派教会。

bolon1.jpg

小川にかかっていた石橋は去年の洪水で
見事に崩れ果てた。災害の跡が痛々しい。
人がやっとすれ違うくらいの狭い橋を
通って村の向こう側へ。

IMG_3087.jpg

貝戸さん夫妻はぬいぐるみ、
息子は仮面をかぶっての参加。
静かな広間でキョロキョロしていると、
向こうからおじさんが息子に手招きをしている。
あちらへ行くと、緑の1レイ札を息子へ手渡した。
満面の笑みをうかべて、息子はこちらに戻ってきた。

そう、ブルンのファルシャングといえば、
面をかぶった輩が、お金をせびってくることで有名。

村人たちに馬車行列の行き先をたずねて、跡を追う。
真っ白な雪景色に、
鮮やかに映える衣装を着た行列が見えてきた。

IMG_3171.jpg

パレードで一際目立っているのが、
馬にまたがった花嫁と花婿たち。
結婚式さながらの、花輪をつけた馬が晴れ晴れしい気持ちにさせてくれる。

よく見ると二人とも若い男性。
ファルシャングの大切な要素はパロディであるから、
これも結婚式を風刺している姿にすぎない。
昔は12組あったのが、いまや6組に減ってしまったという。

IMG_3121.jpg

祭りを生き生きと盛り上げてくれるのが、
この奇怪な衣装を着たチンピラたち。

色とりどりの布がフリンジとなって揺れる衣装に、
帽子、毛むくじゃらの仮面・・。
人を見つけるが早いか、すばやく駆け寄ってお金をせびる。
お面のせいか、酒がまわっているせいか、
ずいぶん強引なのがまた面白い。
仮面をとると、どれも若い少年たちだ。

IMG_3176.jpg

ふと、村の住民のなかにどこか見知った顔を見つけた。
「 俺を覚えているかい?」
二年前に棒で散々追いかけまわされた、いたずら青年だった。
「 もう参加しないよ。
  俺はこの通り、ほら老いぼれてきたからね。
  新しい若い奴等に、役を回さないと。新しい風を入れないとね。」

彼らが本領を発揮するのが、集団でたかるとき。
正面から車が向かってきても、平気で止めてしまう。
スピードが緩んだらあっという間に取り囲んで、運転手と話をつける。

IMG_3223.jpg

そして忘れてならないこのファルシャングの主役は、
最後尾の馬車につながれて運ばれていく二人の藁人形。
背中には、アダムとイブと書かれている。
この祭りの要所である、いけにえの二人なのだ。

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村のおばあさんから話を聞いた。
「 昔はね、家で織った生地で洋服を作ったのよ。
  いいえ、勿体無くなんかないわ。
  だって、この生贄があってこその祭りなんですもの。」

この長い冬を追い出すことが彼らの祈りであるとしたら、
それ相当の犠牲が必要だ。
手間隙をかけて機で織られた衣装は、
どんなにか美しかっただろう。

IMG_3227.jpg

行列を一目見ようと、家の軒先から
人々が遠巻きに見ている姿が印象的だ。
ふだんはなかなか見ることのできない、
家の主人の姿と家とを見比べてみる。

IMG_3112.jpg

お年寄りの人たちは、
あの行列にかつての主人の姿を、

IMG_3160.jpg

かつてのわが姿を、
かつての息子の姿を重ね見ているのかもしれない。

IMG_3273.jpg
 
行列の跡をずっと追い続ける私たち。
雪道を歩いてきたせいか、足もかじかんでくる。
一回りして、中心の広場へ戻ってきた。
古い建物が立ちながら朽ちていくのが、いかにもルーマニアらしい。

IMG_3191.jpg

ここトランシルヴァニア地方では、
かつて死者の婚礼という習慣があった。
未婚にしてなくなった若い少年、少女の魂を鎮めるために、
偽装の結婚式をしたという。
ちょうどファルシャングは、その名残をとどめているかのようだ。

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あれほど地面を覆っていた雪もいつしか解け、
かわりに地面は茶色の泥と水たまりで埋めつくされる。

IMG_3276.jpg

行く先々では、人々が行列をお菓子やお酒でおもてなしをする。
だから、なかなか先へ進まない。
優に6時間もかけて村を一回りするというのだから、
壮大なお祭りである。

こんな話も聞いた。
「 年々、参加者の若者が減ってきているの。
  子どもが祭りに出るとなると、
  その家ではまずおもてなしをしないといけないでしょう。
  それに衣装やら、馬やら・・。お金がかかるからね。」

これを聞いて、はっとした。
村人たちがお盆いっぱいにお菓子やらお酒やらのおもてなしを、
参加者だけでなく、私たち外部の者にも振舞ってくれる。
あのチンピラたちは彼らの子どもたちであるから・・・。
今まで、お金をせびる彼らが疎ましかったが、
それを聞いて納得した。

IMG_3303.jpg

祭りが進むにつれて、
はじめの堅苦しさがぬけたようだ。
彼らの目にも冴え冴えとして、凄みを感じさせる。
衣装も泥だらけ、これが祭りの本当の姿なのだろう。

IMG_3316.jpg

広場には、たくさんの村人が集まっていた。
観衆の前に引き出されてきたのは、
最後尾にいたあのアダムとイブ。

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藁に火が燃えうつるのを今か今かと
待ち構える人たち。

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やっと赤い火が現れる。
生贄の体に燃え移っても
若者たちは冷淡な目を注ぐだけ。

IMG_3375.jpg

あっという間に、
真っ赤な火が呑みこんでしまう。

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火が勢いづいて立ち昇ると、
彼らはその周りを踊り回りはじめた。

IMG_3381.jpg

燃えさかる炎と、二つの体。
冬の生贄をながめる人たちの心は、
まさに来たるべき季節を呼び寄せるかのよう。
さらに火の勢いは増していく。

farsang20011.jpg

大声で声を張りあげる。
陽気な踊りではなく、
むしろ儀式としての舞のようである。

IMG_3415.jpg

赤い火に、冬の終わりが見えた。
雪に閉ざされた数ヶ月の
心と体を浄化するような、炎。

farsang20012.jpg

気づくと黒いすすの塊が
目の前にあった。

IMG_3493.jpg

半ば放心して、藁の残骸と炎とを見つめる私たちの視界を
一人の若者がさえぎる。
いまだ赤い炎を発している上に飛び乗った。
布の端切れを、炎はメラメラと燃やしている。

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やがて炎の上を跳ねていった。
山伏が修行を終えてから行う通過儀式のように、
彼らの精神も鍛えられたのだろうか。

IMG_3512.jpg

隣で眺めていた少年が声をかけた。
「 来年もまた来ますか?」
そうねと考えたあと、こう尋ねた。
「 ねえ、あなたも大きくなったらこの祭りに参加したい?」
少年は迷わず、うなずいた。

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祭りの後の広場。
人々は夜にはじまるダンスパーティに備えて、
帰宅の途につくのだろう。

farsang20113.jpg

祭りの祈りが通じたのだろうか。
帰り道の車からの景色に、
厚い曇り空のすきまから太陽の光が差してきた。

春がやってくるのも、
そう遠くはないかもしれない。




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*2009年のファルシャングの様子は、
 こちらでご覧いただけます。
 トランシルヴァニアの謝肉祭(カーニバル)
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Genre:海外情報

comments(6)|trackback(0)|イベント|2011-03-05_20:35|page top

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No title
またこの季節がやってきましたね。
素朴だけど なかなか凄いお祭りですね。
それを余すことなく伝えて下さるのは
とてもありがたいです。

みのむしのような 衣装、面白いですね~。
それにしても 道のぬかるみが 気になります。
雪が残って寒そうだし・・・。
相当 お酒飲んでないと やってられないのかな。(笑)
Re: No title
霧のまちさん、
このファルシャングを見ると
いよいよ冬が終わるような気持ちになります。

世界遺産などに登録された
有名なお祭りよりも、かえって
こうした地元の人たちのために行われる
お祭りの方が味わい深いと思います。

二年前よりも大分あたたかかったです。
ぬかるんだ道も気にならないほど、
祭りの熱気でこちらも興奮しました。
はじめはきれいだった衣装が
だんだんと泥にまみれ、お酒に酔い、
終盤になってやっと祭りの本質が見えてくるようでした。

また来年も行きたくなると思います。
No title
宮崎大丈夫?lattam interneten nagyon nagy foldrenges..remelem jol van a csaladod. edesapukad remben van/
nem hiszem el hogy mi lattam. nagyon szomorul es sok ember meghalt...
puszi!
minden jo!
es nagyon szep volt a busu.
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