トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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雨の日の出来事

ついに、雨が降ってきた。
車どおりのない道を、ただ黙って
ひたすら隣村へと歩いていた。

ダンナの背中には古い陶器などでいっぱいの重いリュックサック、
手には2m以上はありそうな木のシャトルを持っていた。
私はというと、大切なノートや布地、カマも入れた手さげをもった。
肩からはカメラを入れたショルダーバッグをさげ、
食料を入れたリュックサックも背負っていた。

やっと隣村にたどり着いたとき、
雨がいよいよ大降りになってきた。
「 こちらが近道かしら。」
そういって、手前の角を曲がって急ぎ足でいく。
ここを先に行くと国道が見えるはずだ。

先ほどから、カメラを入れたバッグが気がかりでならなかった。
そしてノートをいれたバッグも。

小さな細道が橋に代わり、
やがてあぜ道へとつながっていった。
おかしい。
もう村の終わりなのに、
この小道はというと畑の方へのびているだけだ。
焦れば焦るほど、悪い方向へとすすんでいく。

やっと遠くで、国道らしき
ねずみ色に光るアスファルトが見えてきた。
私たちはやっとのことで、国道に合流できたのだ。

国道から駅のある町までは、
10km以上ある。
雨は激しくなっていくばかり。
ヒッチハイクしようにも、車が通る様子もない。

前髪に雨がしたたり落ちる。
雨に濡れるのは、みじめな気持ちだった。
やっと後ろから聞こえてきた車の音も、
親指を上げた私たちが見えないかのように
高速で脇をすり抜けて消えていってしまう。
2mの棒を手にした人間が怪しいからだろうか。

車があったらなとこんな時、つくづく思う。
悲観的な考えを抱きながら国道のすみを歩いていくと、
ふと真っ赤な新車が5mほど先で止まった。

慌てて、車の跡をおった。
ルーマニア語で行き先を告げると、
うなずいて「早く乗れ。」とせかす。
運転手と助手席には浅黒く日焼けした男性が、
後部席には10歳くらいの少女が乗っていた。
車に乗り込み、扉をしめる。

窓ガラスにダンナの姿が映った。
「 彼は乗らないのか?」
「 でも、荷物が・・。」と先の言葉が続かないでいると、
すぐに助手席の男が車を降りて、
荷物入れをあけて木の棒を中へ入れてくれる。
大きな車だったが、斜めにして運転手のギアのところまで届くほどだった。
私は片手でしっかりと抑えた。

ダンナものせて、車が走りはじめる。
先ほどまでの風景が嘘のように、
みるみる内に移り変わった。

先ほどまでの状況が、180度も変化した。
人の好意にすがるような、頼りないわが身を恥ずかしくも思うが、
こういう見ず知らずの人からの思わぬ優しさを受けると、
ますますこの地が好きになってくる。

「 こんな天候だから、乗せないわけにいかなかったよ。」
と浅黒い顔が微笑んだ。
好意で乗せてくれるのが、身にしみて感じられる。
ダンナが、村で古いものを譲ってもらった話をした。
そして彼らが、スペインで土建業をしに出稼ぎに行って、
里帰り中ということも知った。

やがて町の駅のそばにつくと、
車が止まった。
ヒッチハイクをする者は、
交通機関のせめて半分のお礼をすることが
暗黙の了解としてある。
紙幣をにぎった手を差しだすと、
運転手は首をふった。
「 でも、ガソリンは高いから・・。」
それでも首をふった。

赤い車を手をふって見送る。
旅の素晴らしさは、こんなところにある。

雨は、もう小ぶりになっていた。




トランシルヴァニアをこころに。

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comments(2)|trackback(0)|その他|2011-03-26_17:28|page top

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No title
一番恐ろしいのは人間ですが 一番暖かいのも
また人間なんですよね~。

感謝できるひとで いたいなぁとこの頃とくに
思います。
震災の被害者の方々を思うと 普通に家で水を
使い、布団に横になれることがどんなに
ありがたいか 身に染みます。

同じように tulipanさんの文章を読むとき、
しみじみとしたものを いつも感じます。

縁があって遥かな国で暮らしていらっしゃって
なかなか大変なことがあっても
凛としておられる姿が見えます。
Re: No title
霧のまちさん、こちらこそ
いつも思いやりあるコメントに励ましていただいています。
ここにいると外国人である気安さからか、
人の良い部分と出会う事が多いような気がします。

震災のことでも、
日本人の私のことを親身に気遣ってくれる人たち。
本当にありがたいです。

恵まれた生活ばかりをしていたら
見えてこないことは多いので、
多少不便なくらいがちょうどいいかもしれません。

震災でいまだに避難生活を強いられている方々のことを想うと、
ほんとうにいたたまれない思いです。
こんな時だからこそ、
こうしたちょっとした優しさ、思いやりをもって
何かができればとこの頃いつも考えています。