トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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イースターの準備


2月の謝肉祭で冬を埋葬して、
やっと4月の終わりになって遅い春がやってきた。
今年の春は、花のつぼみが膨らみはじめてから冬のような寒気に見舞われ、
山に近いセーケイ地方でも雪が積もった。
その雪も太陽の熱でみるみるうちに溶けてゆき、
今度はモモやプルーン、リンゴやチェリーの花がときに白く、ときに赤く色づきはじめた。

イースターのすこし前に、私たちはドボイに向かった。
村へと向かう分かれ道の国道でバスを降りる。
ここからドボイの村は2km。
若草色の草で覆われた大地が目にまぶしく飛びこんできた。
白銀の毛で覆われていたネコヤナギの芽も、
すでに無数の小さな花を咲かせていた。

ICIRI PICIRI58 002

雪解けの水が大地に池をなしている。
人々が春に対して漠然と抱いているのは、水のイメージだろう。
だから、ハンガリーに特有の民俗習慣として
男性が女性に水をかけるということがある。
春風が雪をとかして水をもたらし、
人々の心にも春がやってくるというイメージは民謡でも歌われている。

ICIRI PICIRI58 004

ドボイの村で今夜、イースターエッグの絵付けをすることになっている。
友人の芸術家バルニが企画したイベントで、
すでに消えてしまった伝統に再び火を灯そうという試みである。

ICIRI PICIRI58 006

バルニの家で休憩したあと、
村の中心の公民館へ向かう。
ご近所のジュリが馬車から、乗らないかと声をかけてきた。
息子が飛び乗ると、出発。

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雪解けの水が道をどろどろにしている。
村の上の方へはこの細い道しかないため、
この急な道で馬車と車が出会ってしまうこともたびたびある。

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イースターの赤い卵は、生命の象徴として
この祝日には欠かせないもの。
美しく絵をつけた赤卵を、
女性は訪ねてきた男性にプレゼントする習慣がある。

「卵の絵付けの会」のポスター。
皆さん各自、卵と染料を持ってくること。

ICIRI PICIRI58 012

公民館の前では、すでにジプシーの子どもたちが
大勢待ち構えていた。
「もう、中へ入れるの?」
みんな楽しみなのか、そわそわしている様子。
村では若い人たちはほとんど去っていったため、
子どもといえばほとんどがジプシーの子ども。
息子はジプシーの少女に強引に遊ばれて、
泣きべそをかいている。

6時集合といっても、村であるから人はぼつぼつと次第に集まってくる。
ジプシーの子どもたちがほとんどの席を占めると、
ハンガリー人のおばさんたちが声をかける。
「あなたたちは、学校ですればいいじゃない。」
かくして後からやってきた大人の女性たちによって席は占められ、
ジプシーの子どもたちは別室へと移った。

まるで部屋の中は婦人会のような賑わい、
みんなおしゃべりをしながら、家から持ちよったお菓子やお茶などを広げている。
「卵なんて描いたのは、生まれて初めてよ。」

20世紀はじめにマロニャイ・デジューが編集した、
「ハンガリーのフォークアート」という本がある。
100年前はこの辺りでも、さまざまな種類のモチーフが収集されたのだが、
もうその習慣は廃れてしまった。

洗練された植物文様もあれば、
生命そのものを表現するような不思議な幾何学模様も見られる。
農耕具やカエル、水、魚などを描く地方もあるという。

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ゆで卵にしたもの、または中身を出した殻だけのもの、
アルミを巻いた小さな管を棒切れにくくりつけた自家製の筆を用意する。
ロウを溶かし、筆をつけて卵の表面に手早く線を描いていく。

ICIRI PICIRI58 019

ロウはすぐに冷えて固まってしまうから、
手早く描かないといけない。
もしもロウをつけすぎると、
塊がしたたり落ちてしまうので注意が必要である。
また表面が丸いため、まっすぐな線を描くのが意外と難しい。

ICIRI PICIRI58 016

子どもからお年寄りまで、卵の絵付けに夢中になる。

ICIRI PICIRI58 022

ロウをつけ終わったら、卵用の染料にしばらく浸す。
そこに食用酢を入れると、色が定着するという。
昔は染めるのに、たまねぎの皮を使っていたそうだ。
そうすると真っ赤にはならず、茶色っぽい色がつく。

色がついたら、今度は熱湯にひたしたふきんを使って
卵の表面をこするとロウが溶けて、
柄がうつくしく見えるようになる。

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たくさんの人で最後まで部屋はいっぱいだった。
驚いたのは、若い女性たちはもちろん、おばさんたち、ジプシーの子どもたちまで
しっかりおめかしをしていたこと。
村にとって、いかにこういう行事が必要なのかが分かる。
夜遅くまでにぎわった。

次の日は、太陽が昇る前に家を出た。
群青色の空が、地平線からしだいに赤く広がっていく。

ICIRI PICIRI58 036

遠くから見ると山のふもとの森に見える。
小さな電灯がまたたいて、ドボイの村を飾り立てていた。

しらじらと夜が空けてきた頃、
町行きのバスがやっと到着した。

ICIRI PICIRI58 038



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comments(2)|trackback(0)|文化、習慣|2011-04-25_18:51|page top

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No title
ささやかだけど とても素敵なイベントでしたね。
美しい細い線は そうやって生まれるんですね。
よく解かりました。
絵柄にもいろんな意味があって・・・。
それにしても、男性がいないようですね。(笑)
Re: No title
霧のまちさん、
村の生活は静かで何も変わらないので、
こんなささやかなイベントでも大きなことのようです。
何より手を動かすのはいいことですね。
そして、元々はご先祖様がしていたことなのですから。
日本でいうと、正月の飾りを作るみたいなものでしょうか。

イースターエッグは、
女性が男性に贈るものなので、男の人はいません。
これで今年のイースターは、
ドボイ村の男性たちは美しい卵を手に
家に帰ったことでしょう。