トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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エルドゥーヴィデーク(森の地方)博物館

エルドゥーヴィデーク(森の地方)の博物館で
日本の日のイベントの話を持ちかけられたのは、4月のはじめ頃。
館長のデメテル・ゾルターンと町の公園で会うことになった。
「博物館といっても、基金の中で運営している小さなものでね。
予算がないんだ。」

バロートという町は、元々共産主義時代に
鉱山夫を集めてできたものだったため、
鉱山が閉鎖されてしまった今、町の活気はないという話は前から聞いていた。

ゾルターンは、いかに故郷が豊かな自然の恩恵をうけた土地であるか、
故郷出身の偉大な学者や知識人の名前を挙げては、
その魅力を力説して聞かせてくれる。

「俺たちは、それでもエルドゥー・ヴィデーグが世界の中心だと思っている。」
そういう彼も、さまざまな職歴を経て、
ここ何年か故郷の政治、文化活動に絡んでいるようだ。

約束のその日は、あいにく雨模様。
セントジュルジから北の国道から長い山道を越えて、
高原の上に出ると、おとぎの国のようなのどかな風景に美しい村々が点在している。

Barot japannap 005

いくつか村を越えると、
ここエルドゥー・ヴィデークの中心地バロートに到着する。
町の端は一軒家ばかりで、村が少し大きくなっただけのような感覚。
中心には鉱山の町らしく、たくましい鉱夫たちの像が立っている。

Barot japannap 042

それから博物館へ入り、荷物をほどいて準備をはじめた。
民家を改造した建物の地下室は、
少し天井が低いようだが石の壁で覆われていて快適な空間のようだ。

博物館の職員さんがやってきた。
「ホフマン・エディットよ。どうぞよろしく。」と握手を求める女性は、
40代くらいだろうか、一言二言交わしただけで
感じのよい人であることが分かる。

折り紙の見本を作ったりしながら、
自然とおしゃべりがはじまった。

「この町は、90年代から段々と景気が悪くなっていって、
もう若い人はほとんど出て行ってしまった。

私の姓を見ても分かる通り、
ザクセン人(トランシルヴァニアに暮らすドイツ人)の血も引いているんだけれど、
昔ドイツにいたことがあったの。
ドイツ語は話せるけれど、好きじゃないわ。まだ英語の方がまし。

そこで滞在許可証を発行して、
いよいよ本格的に移住するというときになった。
そのとき、目の前にあのヴァルジャシュの渓谷が・・、
あなたは行ったことがあるかしら。
それは美しい風景なんだけれど、
故郷の景色が鮮やかによみがえってきて、ついこう言ってしまった。
「ごめん、私はここにはいられないわ。」
そうしてここに帰ってきてしまったわけ。」

思わず手をとめて、
彼女の顔を見入ってしまった。
そして、その表情の中にあたたかなものを感じると、
不意に目が潤んできたようだ。
彼女はそれを敏感に感じて、すかさずこう言った。
「ごめんね。あなたには悪かったわね」

これほどまでに彼女を引き付けて離さなかったものが、ここにはある。
その想いが嬉しかっただけなのだ。

「いいえ、私は日本は大好きだけれど、
ここに居て、なおさら日本人で居られるような気がする。」
とっさに私はこう返していた。

Barot japannap 045

やがて6時になるかならないかの内に、
たくさんの子どもたちが日本の文化に触れ合いにやってきてくれた。
筆でもち、漢字を書いたり、
折り紙で小さなものの形を作ったり・・。
飽きずに何度も何度も、挑戦してくれる。

Barot japannap 050

それから日本の写真を見ながら、いろいろな話をさせてもらった。
自分の故郷を愛する人たちは、
きっと他の人間の故郷をも愛する事ができるはずだ。
話が終わったあとも次々と質問が飛び交い、
まるで十数人のの人たちといっしょに、
おしゃべりをしているような感じがして時間を忘れてしまった。
気がつくと、もう10時を回っていたようだ。

森に囲まれたエルドゥー・ヴィデーグは、
ほんとうの故郷のように私を受け入れてくれた。


*日本の日のイベントの様子は
 こちらでご覧いただけます。
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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(5)|trackback(0)|トランシルヴァニアの町|2011-05-26_05:51|page top

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Re: No title
ザジさん、こんにちは。
3ヶ月ほど前にメールを頂き、
すぐにお返事を出しましたのですが、無事に届いておりますでしょうか?

ローマ字表記はErdővidéki Múzeumです。
小さな町ですので、すぐに見つけられると思います。
交通が不便な場所ですが、自然が美しく、
いい田舎の風景が広がっています。

日本の展示会は美しい手仕事ばかりでなく、
トランシルヴァニアの魅力を丸ごとお伝えできたらと思っております。


No title
離れていると よけいに日本人でいられる・・・
解かるような気がします。
こいのぼり 素晴らしいですね。
そちらの皆さんも たぶんそれには絶句というか
驚かれたでしょうね。
客観的に見ても・・・こいのぼりって かなり奇抜ですよね。(笑)
日本のこともそうですが どの土地にもある
それなりのアイデンティティは 深く美しいです。
Re: No title
霧のまちさん、このこいのぼりはナイロン製ではなくて
布にひとつひとつ手描きされたものなんです。
こういう古いタイプのものは、
もう日本でもあまり見られませんよね。

いつかブダペストの美術館で、
日本の現代アーティストの合同展示があったのですが、
その時に鯉のぼりのトンネルがありました。
またつかわれなくなった鯉のぼりをつかって、
エコバッグを作っているところもあります。
素晴らしいデザイン性だと思います。

ルーマニアの少数民族ハンガリー人が、
ここに存在する理由はアイデンティティだけなんです。
それを失ったら、ルーマニア人になってしまい、
そしてただのヨーロッパ人になってしまいます。
こういうボーダーレスの時代だからこそ、
正しくアイデンティティを育てる事が大切だと思います。
今の大人は、そういうことに目を向けず、
ただ食べていくことで精一杯。
皆で子どもたちを育てていかないといけないと思います。

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