トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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雨降りのカロタセグ地方

その日はあいにくの雨。
カロタセグ地方の村から村へと移動する予定にしていた。
朝一番の電車にのって、町につくと
一番に古着屋さんで防寒具を買いこまなければならなかった。

町外れからで車を待つ。
ちょうど村を目指すおばあちゃんたちと、
乗り合いヒッチハイクで運良くすんなりと村にたどり着いた。
坂道を登りきると、
木造のとんがり屋根の教会がどっしりと佇んでいる。

kalotaszegi utazas2011jul 161

迷わずに向かったのは、ブジおばあちゃんの家。
数日前、電話で村の女性からイーラーショシュの図案ができたとの連絡を受けていた。
あの時は、4月に来ると約束していたのに、
延び延びになってようやく6月の半ばに来る事ができた。

なかなか注文の品を取りに来ないので、心配をしていたのだろう。
おばあちゃんは早速、
粗いリネン糸で織られたホームスパンの生地に
青いインクで丁寧に描かれた作品をテーブルに広げてくれた。
80歳なのにしっかり者のおばあちゃんは、
注文のひとつ、ひとつをしっかりと記憶していた。

「前に話していたブラウスのことだけど、見つかったのよ。
考えてもいない場所に、しまってあったわ。」
おばあちゃんのお母さんのものだったという、古いブラウス。
同じイーラーショシュのテクニックで縫われた刺しゅうは、
どうしても手に入れたかった。

あちらの部屋から手に持ってきたものは、
黄色く色が変わったブラウスに真っ黒な刺しゅうが襟元と肩、袖口にびっしりと刻みこまれている。
まるで扇のように折りたたまれた肩の刺しゅうは、
まぎれもないイーラーショシュのステッチだった。
1924年の年号と、持ち主のイニシャルも刺しゅうされてある。

kiallitas3 041

おしゃべり好きなおばちゃんは、話題にも事欠かない。
「この間、生まれてはじめてお店で売っている
カタツムリのパスタ(スープ用のパスタ)を料理したら、もうひどかったわ。
スープにどろどろと溶けてしまうんですもの。

それに引き換え、
村の女衆が集まって作るパスタはコシがあって最高よ。
ほら、糸紡ぎに使うスピンドルがあるでしょう。
あれと機織のビームを使って作るのよ。」

kalotaszegi utazas2011jul 155

もう使わなくなった糸紡ぎや機織の道具で、
どうやってパスタを作るのだろう。
機織の際にたて糸を通すビームは細かい木の枝が通っている。
それをまな板のようにして置き、
スピンドルの先っぽで小さなパスタをくるくると丸めていくと、しま模様ができる。

小さな葉っぱを使って実演するおばあちゃんの姿は、
まるでおままごとのようで微笑ましい。

kalotaszegi utazas2011jul 148

昼をすぎてもなお、雨はやむことを知らなかった。
雨にぬれながら次の村を目指す。
小さなアスファルト道には車の通る気配もなく、
通り沿いに野ばらの茂みが続いていた。
やさしいピンク色がもやのかかった風景に、ぼんやりと浮き上がって、
幻想的な風景を作り出す。

今は耕すもののなく、広々とした原っぱがどこまでも続く風景は、
まさに秘境とするにふさわしいものだ。
プリンを逆さまにしたような、
なだらかな丘がかすんで見える。

kalotaszegi utazas2011jul 166

雨でぬれても、植物は喜び、生き生きと色を投げかけている。
淡いピンクに黄色、紫、白・・・。
さまざまな色が混ざり合い、溶け合って
えも言われぬ色彩を作っている。

kalotaszegi utazas2011jul 173

首に巻いていたスカーフを、息子の頭にターバン巻きにした。
雨の道もそれほど苦を感じずに歩くことができのも、
この美しい花畑のおかげ。

kalotaszegi utazas2011jul 176

2.3km離れた隣村にやってきた。
村の中心にある折衷様式の建物の、
カロタセグ特有の木彫りの扇型の飾りが目を惹く。

kalotaszegi utazas2011jul 179

もう一人の図案描きボルバラおばあちゃんは、
ちょうど祝日のためのお菓子を焼いているところだった。
約束していた図案を受け取り、
私たちは再びヒッチハイクを重ねて町へと戻った。

kalotaszegi utazas2011jul 182
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comments(6)|trackback(0)|カロタセグ地方の村|2011-06-19_00:17|page top

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No title
村の建物も味わい深いですが、花盛りの草原!! まるで夢の中の風景!! 素晴らしい写真をいつも見せていただいて、ありがとうございます^^。
No title
あの草原で羊とか飼っている訳ではないのですか?
ただの草原なんですかね。
私にして見れは、いい光景に見えますが、
木の生えていない光景は、
私には、不思議に見えますね。
イギリスだと、こんな感じのところには、
羊が放されていますので、
どうなのかなと思いまして。
No title
骨董品のような素敵なブラウス! 涙が出るほどです。
仕上げるのに何ヶ月もかかりそうですね。

ブジおばぁちゃんの 座った風景、絵になりますね。
赤っぽい 年代を経た壁もいい味を出しています。

山々や、丘の煙った風景は素晴らしいです。
こんな景色を見慣れた育った息子さん、
東京の街は どんなふうに映るのでしょう。
Re: No title
Kotomiさん、車で村へ向かうのは簡単でしょうが、
それでは分からないのはその土地の自然の美しさ。
今の時期にしか見られない花々、
そして雨降りだったから出会えた色。

トランシルヴァニアには、夢の中のような花畑がたくさんあります。

Re: No title
トランシルヴァニアのほとんどでは、
こういう原っぱがあるとヒツジの放牧に出会うものなのですが、
ここではまだ一度も出会った事がありません。
だいぶん過疎化しているところなので、もうヒツジを飼っていないのかもしれませんね。

私にとってもこの木のない風景は、
とてもエキゾチックです。
私の住むセーケイ地方は深い森が多いのですが、
この地方はこの平たい丘で有名なんです。
奥の方に森もありますが、ほとんどはこのような丘です。
土がやせているようで、農業も栄えなかった。
それで昔から出稼ぎに行ったり、
女性たちは手芸に勤しむようになったようです。


Re: No title
私もこのブラウスを見たときには、
感動して写真がうまく撮れませんでした。
このブラウス写真は後で家で撮り直したものです。
魂が感じられるような手芸に出会うことは稀ですが、
このブラウスは間違いなくそのひとつです。

この肩の密に刺しゅうされた部分は、
プリーツが寄っていてしつけされたままなんです。
本の少ししか見えないのに、ここまで念を入れて刺しゅうした。
現代の人々の美意識とははるかに遠い、
この装飾の感覚に深く感動してしまいます。

村で生まれ育ったおばあちゃんは、
この風景にふさわしくなるものなんですね。
町へは死んでも行きたくないと言っていました。
頭の回転の速い、チャキチャキした可愛らしいおばあさんです。

都会で育った子どもたちは、
こういう何もない風景はすぐに飽きてしまうようですが、
息子は逆にこういう場所が一番好きなようです。
よく気をつけてみると、たくさんの植物が咲いていたり、
いろいろな虫が潜んでいたり・・。
自然が好きになるんですね。