トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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東京にて

神保町の一角にある小さな書店。
和書洋書の手芸の本を専門とするアートブックショップさんが、
展示会の会場となる。
レジから左側は、ガラス張りの小さなギャラリーとなっている。
この空間を、トランシルヴァニアの空気でいっぱいにするのが私の役目。

japankialliras2011 006

トランシルヴァニアから運んできたスーツケースを開くと、
古い衣装や布が次々と、手品のように飛び出してくる。
ずっしりと重い刺しゅうブラウスや色とりどりのエプロン、
赤いクロスや枕カバーで白い壁面を埋めていく。
柱にかかる白い布を、写真や言葉で覆いかぶせた。

搬入の二日目の夕方ちかく、ふと息子が静かなことに気がついた。
それまで会場に気をとられていたのが、
ふとそばを見るとスーツケースの中でぐっすりと寝息を立てている。

japankialliras2011 014

東京のオフィス街で、小さな水溜りを見つけては、
小さな虫を探し出し遊んでいた。
日本帰国、4日目のことだった。

japankialliras2011 015

こうして二日たっぷりとかけて飾りは終えると、
トランシルヴァニアの風が東京の小さな展示場にそっと吹いてきた。

japankialliras2011 026

展示会当日。
腹がキリキリと痛み、その夜はあまり眠れなかった。
荷物でいっぱいのリュックが重く、体を歪めるようだ。
電車で乗り網棚に荷物をのせようとすると、丸く膨らんだリュックから水筒が滑りだす。
あっと声を立てる間もなく、
鈍い音を立てて座席に座る白髪の男性の手に当たって落ちた。

「痛いよ、アンタ!」
静かな車内に怒りの声が響き渡る。
「すみません!・・・申し訳ございませんでした。」
その老人はしばらく手をさすった後、かばんから新聞と老眼鏡を出して読みはじめた。
ほっと安堵する。
また電車は、沈黙に包まれる。

電車は、いつしか暗いトンネルの中へと吸い込まれていった。
東京の心臓部へと近づき、
車内の乗客は少しずつ減っていくのに何故か心は重かった。
地下鉄は止まっては走り、
目に映るのは冷たい鼠色をした列車の車体と黒い革靴ばかり。
肩にかけていたポシェットにそっと手を当ててみる。
手のうちには、リネンの固い繊維と
赤と青の刺しゅうがあった。

すると、どうしたことだろう。
暗い地下道の中に、つい先日までいた村の風景がさっと目に浮かんできた。
それほどまでにも親しくなかった作り手のおばさんが、
「早く帰っておいで。」と微笑んでいるような気がした。
それは、トランシルヴァニアが故郷へと変わった瞬間だった。

私の心の眼は手の平になり、
その刺しゅうから何かを感じ取ったに違いない。
きっと、その何かを伝えるためにここにいるのだろう。

japankialliras2011 047

*トランシルヴァニア-手芸の旅へ
 展示品はこちらでご覧いただけます。
 ICIRI・PICIRIの小さな窓
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comments(17)|trackback(0)|その他|2011-07-08_19:32|page top

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スーツケースの中の宝物が展示され、その中にも可愛い宝物が眠る姿……母として働く母として、同じ思いを巡らせていました。
トランシルヴァニアが故郷に変わる瞬間……素敵なお話に 自分の京都帰省とダブらせていました。私は伊丹に着くなり 木々や空が浮かびあがりました。そう、喜界島の。

あなたの故郷であるトランシルヴァニアに必ず行きます。私の故郷である喜界島から。

どうぞ、暑い東京での展示会、お身体をご自愛ください。
管理人のみ閲覧できます
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No title
東京で展示会でしたか。
おめでとうございます。
あ、もう、何回もやられているのかな?
Re: タイトルなし
twelveseventeenさん、
今回の展示会、いろいろな意味で充実しています。
トランシルヴァニアの宝が無事に日本に到着して、
素晴らしい展示場で展示させていただいている。
これ以上、何も望むことはないくらい感動しています。

息子はスーツケースの中でぐっすりと眠っていました。
この旅でいろいろなエピソードが尽きず、
今すぐに喜界島に飛んでいってご報告したいくらい。

3年を過ぎた今、
あの自然やゆったりとした空気、人々・・・。
いつしか故郷になっていたのですね。
あと一週間、東京生活を頑張ります。
どうもありがとうございました。
Re: お疲れ様です。
Tさん、どうもありがとうござういます。
後姿で母だとすぐにお分かりになったのですね!
今回は珍しくサポートに回ってもらい、
息子のお守りをしてもらっています。
母の協力なしには今回の展示も有り得ませんでした。

ぜひ、いつかルーマニアに遊びにお越しください。
私の家がもう個人博物館のようなものですから、
たくさんの手仕事を見ていただけると思います。

展示会もいろいろな方との出会いがあり、
充実しています。
どうもありがとうございました。
Re: No title
Thomasさん、どうもありがとうございます。
今年はじめて、
トランシルヴァニアの展示をすることになりました。
またいつか、東北地方にも巡回することができますように
私も努力いたしますね。

東京の夏はうわさの通りに厳しいです・・。
素晴らしかったです
展示の品々は本当に素敵で ため息が出ました。
写真で拝見していたものが 実際に見られるなんて
思ってもいない運びでした。
スーツケースの中で眠っちゃうなんて・・・何て可愛い・・・。
東京の雑踏の中で疲れちゃったんですね。

ずっと日本は猛暑で さぞキツい事でしょうね。
会場の周りの環境も 暑さを凌げるものは無く・・・。
先日、唯一の残念は 息子さんに会えなかったこと。

トランシルヴァニアが故郷になった瞬間、しみじみと
するお話ですね。
心のスイッチを そうして人間は切り替えて行くんですね。
だんだんと、または いつの間にか。
私もいつか トランシルヴァニアに行ける機会を
作りたいです。
Re: 素晴らしかったです
霧のまちさん、遠方からはるばるお越しいただきまして
本当にありがとうございました。
小さな空間ですが、トランシルヴァニアの手仕事に囲まれて
幸せな時間です。

お心のこもった、たくさんのお土産をどうもありがとうございます。
旅のお話ももっと伺いたかったのですが、
楽しい時間ってあっという間ですね。

息子は一日中、海や川で遊ぶのが楽しいようです。
本当にお会いしていただきたかったです。
いつかトランシルヴァニアで再会しましょう。
ゆっくり穏やかに流れる時間をごいっしょできたら嬉しいです。
お手紙しましたので、今日投函しますね。
No title
昨日はありがとうございました。
最後にルーマニアを訪れてからずいぶんたち、
いろいろ変わってしまったのではと思うとなんだか行くのが怖くもありましたが、
谷崎さんとお話しているうちに、また足を運んでみたくなりました。
楽しいひとときをありがとうございました。
Re: No title
satotomokoさま、
先日は展示会まで足を運んでくださいまして
どうもありがとうございました。

皆様さまといっしょにルーマニアのお話をすることができて
とても楽しいひと時でした。
素敵なお友達の方をお誘いくださって、
こちらもたくさんのことをお勉強させていただきました。

ルーマニア、
都市部はかなり変わってきていますが、
農村部では昔のように素敵な暮らしがまだ残っています。
ぜひいつか遊びにお越しください。

管理人のみ閲覧できます
このコメントは管理人のみ閲覧できます
No title
谷崎さん、本日はお会いできて、うれしい、楽しい時間が過ごせました。 ありがとうございます。Mさんとお昼頃にお邪魔しましたももです。
トランシルヴェニアに住む方たちの息吹がわかるような展示で感激いたしました。
あの時話しましたからむし織のことや上布のお話をしたいと思っています。 もしよかったら、こちらに書いたメールアドレスにメールをお願いいたします。
Re: No title
ももさん、お暑い中
展示会場までお越しいただきまして
本当にありがとうございました。
手芸を通じて、そこに住む人々の姿が見えてくるような展示を
心がけましたので、そう感じていただけて嬉しいです。

展示会に来られる方々から
逆に私自身が学ぶ事が多く、本当に感謝しています。
ももさんからも、福島の織りのお話や女性の体のお話を
聞く事ができて、楽しかったです。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
No title
国内で展示をされていると知りました。
大阪在住なので、来週日曜夕方には行きたいと思います。
私が彼の地にいったのは、もう13年も前のことで、それも
東欧旅行のなかで、クルージ・ナポカ(あるいはコロジュヴァール)
とシビウという街だけで、田舎にいけなかったのは残念でした。

日本は暑いでしょうが、ご自愛ください。
No title
本日はお忙しい中、ルーマニアについてお話する時間をとっていただき、本当にありがとうございました。
とても参考になりました!そして、ルーマニアに行くことがとても楽しみになりました。

ルーマニアやジプシーについて、これから勉強しようと思います。
Re: No title
H.A. さま、はじめまして。
大阪の展示場にお越しいただけるのですね。
どうもありがとうございます。

13年も前にトランシルヴァニアへ行かれたとのこと、
当時はさぞ面白かったのでしょうね。
コロジュヴァールでも2000年頃は、
まだ民俗衣装を着たおばあさんたちを見かけました。

台風の行方が心配ですが、
大阪会場22日から展示をしています。
会場でお待ちしていますね。
Re: No title
工藤拓さま、わざわざ会場までお出向きいただきまして
ありがとうございました。
ルーマニアの旅行プランを立てさせていただきますね。
7月中にはお送りできると思います。

ジプシーの村を周るのは、
なかなか普通の観光ではできない旅ですので、
刺激的なものになるかと思います。

またメールをいたします。