トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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喜界島の別れ

奄美諸島に浮かぶ小さな島。
ここに友人の一家が移住して、はや3年になる。

ご主人のご両親は島出身。
京都で生まれ育った二人、
そして4人の子どもたちが新しい環境の中で生きてゆく。
それは、確かに大きな試練であるに違いない。
それでも一家は島に新しい風を入れながら、しっかりと地に足をつけて暮らしている。

ある夜、彼らの新居へと招待された。
ほとんどの居住区がある海辺から、
島の真ん中にある小高い丘に向けて車を走らせる。
外灯すらほとんど見られない
真っ暗な夜道。
もしも後部座席に話し相手の息子や母がいなかったら、
恐ろしくなってとうに引き返してしまったかもしれない。

「ここの区域は特に、霧が濃くて・・。」と話していた友人の声が離れない。
去年の冬にはじめて訪ねたときに、
その霧に遭遇してしまい、
右も左も分からず混乱して電話で呼び出した事があった。

その暗い夜道を祈るような気持ちで上りつめていくと、
小さな集落が見えた。
台風の風除けのため曲がりくねった道を進むと、
その集落の終わりに彼らの家があった。

車のライトの光が消えると、
一瞬にして暗い夜空に無数の星屑がまばゆいほどに浮かびあがる。
周りには、サトウキビ畑が闇の中でザワザワとささやくばかり。
「ここは、ひとつ高くなっているので
町の明かりがすっかり隠れてしまうんですよ。」とご主人さんが教えてくれる。
その闇の深さ、虫の声と草のざわめきの心地よさ。

一歩、家に入ると、
そこは賑やかな家族の団欒の姿があり、
夜の心細さなど塵のように消えてしまう。
私たちは夜が更けるまで、
その家族のぬくもりに身を任せていた。


やがて出港の時間が近づいてきた。
近づく台風の影響で、その日は出港の時間がずれて、
しかも条件付きでの出港。
というのは、波が高い場合は、
湾に船が乗り入れる事ができずにそのまま行ってしまうこともあるとのこと。

サトウキビと星屑の夜空を後にして、湾を目指して下っていく。
船着場は、島を離れる人と残る人たちの熱気で包まれていた。
汽笛が鳴り響き、大きな船はもくもくと白い煙を吐いていた。

別れの時は刻々と迫っていた。
喜界島とトランシルヴァニア。
南の小島と北国の小さな町。

彼女の住むところと私の住むところは、
180度も異なる自然の中にある。
それでも、よそ者として異文化に暮らす
私たちの心境は驚くほど似ている。

「また一年後に、会いましょう。」
前と同じように、私たちはお互いの肩を抱いて別れた。
別れは、また新たな始まりでもある。
船は、大きく揺れながらも一晩の航海へと旅に出た。






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comments(0)|trackback(0)|その他|2011-08-29_15:24|page top

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