トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ジメシュ流のおもてなし

カティおばあちゃんを訪ねようと、今度は教会の裏手の山を登っていく。
旦那が「おばあちゃんは、いつもこの道を通って教会へ行くと言っていた。」というので、
例の木の柵を下ろして奥へと進んでいった。やがて小川にぶつかったので、どうやって先に進むのかと思ったら、およそ25cm幅の丸太の上を渡ってどんどん先に行ってしまう。「息子はどうなる!」と怒鳴ると、引き返して息子の手を引いていってしまった。

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ただ一人取り残された私・・・。
向こう岸までの長さは、5mほどか。落ちておぼれるような川ではないが、やはり中に入ることは極力避けたい・・・。意を決して先に進む。せめて水平に切ってあればよかったのだが、ただの丸太なので足場が悪い。まるで綱渡りでもするかのような緊張感で、足はがくがく震える。旦那に揶揄されながらも、ようやく渡りきった。

その先はひたすら登り道である。
かなりの急坂道なので、息も荒くなり喉もからから。息子はとっくに父親の頭にしがみついている。ちょっとそこらで休憩と思ったら・・・。旦那が「熊の足跡だ。」と顔色を変えだした。「急げ。こんなところで熊に会ったら、大変だ。」とどんどん先に進む。私もゼイゼイ言いながらも、取残されたくない一心で前に前にと向かった。
旦那は若い頃、一度だけ熊に会ったことがある。友人たちと山登りをしていたら、遠くに二匹の熊を発見。見る見るうちに熊たちはやってきて、気がつくと後ろを追いかけられていた。旦那はこのとき追いかけられながらもカメラにその姿を収め、後で現像してみたらフィルムが古くて何も写っていなかった、というのは武勇談の一つである。
それ以来、熊と聞くと異常な反応をしめす。昔、山の山頂近くで熊の遠吠えらしきものを聞いた途端、ものすごい勢いで我先にと山を下った。もちろん私のことなど忘れて。

80歳のおばあちゃんがこんな冒険をして教会に通うとは到底思われない。
きっと道を間違えたのだ。私たちはようやく山を越えて、家らしきものを探したが見当たらない。下のほうに村の集落が見える。仕方がないので、下っていくことにした。

誰かのうちの庭にたどり着き、犬がいないか確認してから通りに出る。
もう昼過ぎなので家に帰ろう。そう思って歩いていると、以前道案内をしてくれたおじさんの奥さんと会い「さっき、エーヴァに家で焼いたパンをあげると約束したから取りにおいで。」と声をかけてもらった。そして大きな家の前に来ると「少し家で食べていきなさい。」とまた勧めてくださった。旦那と顔を見合わせていると、家に通されて、あっという間にテーブルがきれいに準備されていった。

ご主人がワインを注いでくれ、少し酸味のあるワインを飲みながら、自家製のパンを頂いた。パンを持ち上げてみて、その重みに驚く。普通のパンの二倍くらいは中身が詰まっているのだ。口に入れると、その食感はまるで鹿児島名産のかるかんのよう。あのモチモチとした、水分の多い粘った感じだ。よく見ると、ちいさなジャガイモのかけらが見える。
パンだけでも十分なご馳走だ。
テーブルの上には、さらに自家製のソーセージやチーズがいっぱいに盛られていた。

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奥様が今度は、私の好物の「羊のチーズ入りプリスカ」を鍋に持って来てくださる。
プリスカは、ルーマニア名物のとうもろこしの粉を茹でたものだ。これに羊のチーズがよく合う。家で作るよりも格段に美味しかった。残念なことに、お腹がいっぱいになってしまった。

奥様は、隣の部屋にあるかまどを見せてくれた。
普通の部屋なのに、ふたを開けるとかまどが。ここであのパンを焼くのだ。エーヴァにパンを焼くことを教えたという。私もいつか教えてもらうよう約束をした。

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ご主人は、「旅行者をもてなすのは当たり前。自分もよそに行ったときに、歓迎してもらえたからお互い様のことだ。」と話す。よっぽど人とよい関わりをしてきた人なのだろう。私が「セントジュルジでも、日本でもお待ちしています。」というと、「人生どんなことだってありえるさ。」と言って笑った。
息子は奥さんにねだって、やっと開きかけたチューリップやスミレの花をちぎらせてもらい満足そう。夕方牛乳をもらいに行くように約束をして別れた。

やがて日が傾きかけて、ペットボトルを二つ抱えてフィリップさんの所に向かう。
ちょうどウシの乳を搾るところらしく、中を拝見。大きなウシ二頭に子牛もいた。息子も乳絞りを初体験させてもらう。が、ウシのお乳はとんでもない方向に向かって飛んでいった。おばさんはさすがベテラン。あっという間にバケツが一杯になり、「絞りたてが一番体にいいのよ。」とコップを差し出してくださった。
搾りたての牛乳は、幸せな味。なぜこんなに美味しいものがあるのに、ジュースや酒を買うのだろう。ペットボトルにもたくさん牛乳が注がれた。

小屋から出るとご主人が馬小屋に呼び入れる。
つるつるに光った茶色の肌をした立派な馬が二頭。「馬は足の力が強いから、決して後ろに立ってはいけない。」こう聞かされていたから入るのを躊躇していると、馬を連れてご主人が外に出てきた。どうやら息子を乗せてくれるらしい。馬の背には毛布がしかれ、快適そうだ。優しい目をした馬の背に抱え上げられ、息子は誇らしげである。おじさんがゆっくりと庭を二週させた。午後の日差しに、馬の毛並みが美しく輝いた。いったん馬から下りたものの、もう一度とせがむので、もうあと一周させてもらった。

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自家製のチーズと牛乳を安くで分けていただき、カティおばあちゃんにも牛乳を持っていった。ちょうど夕食時だったようで、少し話をしていると「さあお食べなさい。」とゆでたてのジャガイモと羊のチーズをテーブルに置いた。明日もう帰るので、今日は急ぐことを告げると「まあ、可哀想に。」といった。

こうしてコーシュテレクの気さくな村人たちと別れた。
まだここにいながらも「次はいつ来られるだろう。」と考えている。
どうして知り合ったばかりの人に、心をこうも開けるのだろう。もてなし上手、お客好き・・・。きっと村の人たちは、お金で買えないものの大切さをよく知っているからだろう。ほとんどを自給自足でまかなうから、人との交流、付き合いに物を惜しまない。
都市の生活との決定的な違いはここだ。お金はなくても、どこか心にゆとりがあるのだ。
もう一度、この村に帰ってこの「おもてなし精神」を学びたい。よくしてもらった分、どこかでお返ししたい。そう思った。

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Theme:東欧
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comments(2)|trackback(0)|その他の地方の村|2008-05-15_06:13|page top

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田中先生ありがとうございます!
いつも先生には素晴らしいセンスとパワーを分けていただいています。

新しい作品を心待ちにしています。
Hpはお作りになっていませんか?
きっと面白いものができると思いますよ。

またお会いしたいです・・・。