トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ツィテラの音色

9月に入ると、一気に秋がやってくる。
ここトランシルヴァニアに暮らして持った感想だ。
前日の朝に、セーケイ地方を出るときに受けた秋の洗礼。
ここカロタセグ地方ではまったく無関係に、
朝からまぶしいほどに太陽が輝いていた。

朝起きてすぐに、教会の裏手にある集会所で朝食がはじまった。
このフォーラムに参加するメンバーは、
トランシルヴァニア地方を主にするが、本国ハンガリーからも多数の参加者があった。
朝昼晩と顔をあわせるうちに、自然と共同意識が芽生えてくる。

kalotaszegi konferencia 018

教会の近くの公民館に、
陶器やペイント家具、刺しゅう作品が並べられて、
見る見るうちに小さな展示会場となった。

その会場の小さな舞台に子どもたちが上がった。
テーブルに小さな箱をおいて弦をしずかにかき鳴らす。
澄んだ音色がときに重なりあい、ときに離れ離れになりながらも、
美しい和音が生まれる。
それに子どもたちの真っ直ぐな歌声が加わった。
ハンガリーの伝統楽器、ツィテラである。

kalotaszegi konferencia 024

開会の式がおわると、
展示品よりも先に舞台上のツィテラの方へ足が向かった。
これまで楽器に対してさしてもたなかった興味が、
この不思議な音色のツィテラにたいして沸き起こった。

ダンナの祖父も、このハンガリー琴の名人だった。
すでに弦がきれてただの木箱と化した自家製のツィテラが、
我が家の壁にかかっている。
合奏にも適していて、何よりハンガリーの民謡にとてもよく合う。

「これはどこで買ったの?」
ひとりの女の子をつかまえて、尋ねはじめた。
新品の楽器はハンガリーから取り寄せているようだが、
中には父親や祖父の手による手作りのものを使っている子どももいるという。

このツィテラ楽団を率いるのは、温厚そうな先生。
「ジラフにいつか来たら、その時に探してあげましょう。」
ここからさらに北に行ったところの町、
先生は毎週子どもたちの住む村に行って楽器を教えている。

昼食までの間に、各々の車で隣村を訪ねることになっていた。
そのツィテラ楽団の人たちに誘われて、彼らのミニバスに乗せてもらった。
「まあ、私たちを裏切ったのね。」といたずらそうに、セーケイ人のピロシュカが笑う。

いつもは歩いて渡る、この二つの村のアスファルト道。
なだらかな原っぱには、透きとおるような紫色したイヌサフランが見事に咲き乱れていた。
秋を告げる花として知られている。

ツィテラの先生たちと話していると、
後部座席からたくましく通る歌声が合唱となって聞こえてきた。
ハンガリー民謡を歌う子どもたち。
美しい風景を目にして、
彼らの中から自然に歌が突き上げてきたのがよくわかる。
ただ楽器だけに惹かれたのではなく、
この子どもたちが音楽を心から楽しむ空気があってのことかもしれない。

浮き立つ気持ちの余韻に浸りながら、村に到着した。
ここの教会に来るのは、もう何度目だろうか。
教会の説明をするのをぼんやり耳にしていた。

kalotaszegi konferencia 075

日本で生まれ育ったのに、不思議と団体行動が好きではない。
いつも訪ねるおばあさんが気になってそわそわしていた。
教会の説明が一通り終わると、
昼食までには戻ると誰かに告げて、我先にと飛び出した。

教会を下り、また丘を登って道に出た。
人が少なくしんと静まり返った村。
おばあさんの家の門を開けて、「ブジおばさん!」と連呼する。
納屋の方から、お下げの髪を両側から長く垂らし、
ひとつに結んだおばあさんが出てきた。
「あら、ちょうど悪いときにきたのね。
2時から結婚式に呼ばれて出かけないといけないのよ。」
しばらくおしゃべりをして、また本道に戻った。

先ほど車を降りたところに、まだ何台か止まっていた。
「村の女の子が衣装に着替えて、みんなが写真を撮っているわ。」と教えてくれる。
いそいで教会の方へ戻ると、
若い女性がひとりビーズの冠をつけた盛装をしていた。
白と赤が、若い女性をさらに初初しく飾り立てている。

kalotaszegi konferencia 109

村の食堂に帰る。
白い壁だけの無機質な空間に、音楽が満ちていた。
食事の準備であわただしいその部屋の隣では、
まさにツィテラのレッスンが始まっているところ。

kalotaszegi konferencia 154

小さな指先が、弦を押さえたり離したりする。
ピックを持った右手は、時につま弾いたり、時にかき鳴らしたり。
「この楽器は、君たちの国の方から伝わってきたんだよ。」
先ほど先生がそう話してくれた。

その弦を張りつめた木箱が東にいくと箏となり、
西にいくとツィテラのような楽器になったのだろうか。
かつて遊牧民族だったハンガリー人が10世紀頃ヨーロッパに移動してきたとき、
すでにこの楽器を持っていたという。

kalotaszegi konferencia 150

小さな少年の弾くツィテラが、特に目を引いた。
幾層にもなった形、
そして黒光りした木の味わい。
表面にはモノグラムが彫ってある。
聞くと、おじいさんが作ったものらしい。

kalotaszegi konferencia 160

この大人ばかりの集まりに、
音楽好きな陽気な子どもたちが華やぎをもたらしてくれた。
彼らにとって、この楽器は一生の友となるだろう。

kalotaszegi konferencia 184

やがて、彼らの師が私に一冊の本を贈ってくれた。
彼自身が書いた本で、
中にはプロテスタントの賛美歌や民謡、子どもの歌、
古いハンガリーの歌などが音符とともに載せられていた。
この予期せぬ出会いに感謝して、いつかぜひ彼らの住む土地を訪ねてみたい。


ハンガリー人奏者によるツィテラ演奏。
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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(4)|trackback(1)|カロタセグ地方の村|2011-09-14_19:16|page top

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No title
ひょんなことで、ツィタラを手に入れてしまいました。楽器はからっきしなんで、ちゃんと弾けるか怪しいものですが・・・。
Re: No title
松山さま、ツィテラを手にされたのですね!
素敵です。合奏をしてもきれいです。
YOUTUBEなどで弾き方の解説があるといいですね。
No title
小型なので子供用かもしれません。非常に簡素な造りです。
Re: No title
ツィテラは日本の琴に比べると小さいですよね。
私もいつか手に入れたい楽器です。