トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ある日曜日の午後

ある日曜日の午後、
私たちは駅からむなしく家に帰り着くところだった。
その日の2時の電車で村に行くつもりだったのが、
目と鼻の先でそれを逃してしまった。
そうして、半ば脱力気味に
約40分の道のりをかけて歩いて帰るところだった。

町の中心に差しかかったとき、
きれいな服装をした二人の女性と出会った。
そのひとりは、ダンナが子どものころのお隣さんだったという。
娘さんのメリンダとは兄弟のようにして仲良く育ったものの、
彼女は単身ドイツに出稼ぎに行き、成人してからは会うこともない。

「うちの娘は、ついこの間まで二週間里帰りしていたんだけれど、
また帰っていったわ。
彼氏がまだ学生だから、まだ結婚はほど遠いわね。」
しばらく立ち話をしていたが、
同じ方向に向かって歩きはじめた。

隣にいた女性。
鮮やかなコバルトブルーのスーツを着た、
体格のいい初老の女性だった。
紹介によると、亡きご主人は校長先生をしていたらしい。

「世の中でいちばん大切なのは、愛よ。」
低いしゃがれ声できっぱりと言った。
「世間一般の愛ではなくて、恋愛のことよ。」

「若いころ私はそれほど美人でもなかった。
それでも写真を見た人は、口をそろえて美しいと褒めたたえる。
それはね、私が恋をしていたからよ。」

「人間の一生なんて、働いてばかり。
食事をつくったり、掃除洗濯をしたり・・。
つまらない仕事ばかりよ。
それを苦ともせずにやってのけられたのは、
私が主人を愛していたから。」
その恰幅のよい皺だらけのおばあさんは、堂々とそう言い放つ。

公園に差しかかったとき、バス停へ向かう彼女たちと別れた。
コバルトブルーのおばあさんは、
私たち一人一人の頬にキスをして
「愛のある素敵な生活をね。」と言葉を残した。

ご主人さんに先立たれても、
彼女は幸せそのものという空気をまとっている。
その日一日まるで魔法にかけられたように、
彼女の言葉を思い出しては、微笑んでいた。




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comments(2)|trackback(0)|その他|2011-09-21_19:20|page top

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No title
なるほど~、日本では聞かれない言葉だけに 驚きつつ読ませて頂きました。  日本では健康第一主義ですね~。
愛など 言葉に出すことすらないです。
宗教観の違いでしょうね。

同じことを思っても それを全くの他人に話すことは 更に無く・・・。  本当は一番大切なことかも です。
Re: No title
霧のまちさん、こういう言葉を恥ずかしげもなく言ってしまうのは、
ヨーロッパ、キリスト教圏だからでしょうね。

驚いたのは、こういう高齢のおばあさんが
初対面の私たち家族に対してこういうことを言ったことです。
人に本音で話をする、
そういう習慣がここは強いような気がします。