トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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パライドの塩鉱山

10月最後の週は、息子の小学校が休みだった。
せっかくなのでと旅行の計画が話題になるものの、
息子の咳もやまず、外の天気はいよいよ怪しくなっていくばかり。
遠出の話もそのまま立ち消えてしまいそうになったとき、
「このお休みは、ぜんぜん楽しくなかった。」
眼に涙をうかべてこう訴えた。

乗り気でないダンナを置いて、
次の日の朝早くにマイクロバスで北へ出かけることに決めた。
ここから北へ3時間ほどバスで行ったところは、
塩の地方と呼ばれるところ。
パライドという村には、塩鉱山があり、
そこは保養地であるばかりでなく、娯楽の場所でもあるという話だ。

真っ暗なうちに家を出て、
バスターミナルでマイクロバスを待つ。
10月も終わりとなると、朝晩の冷え込みがはげしく、
体を震わせながらひたすらに待たなければならない。
座席が15席ほどしかない長距離バス。
やってきたのは出発の10分前だった。

狭い座席で、息子の頭が視界を大きくさえぎる。
息子をひざにのせて車に乗るのも、もうあとしばらくだろう。
「どこか遠い所へ行きたい。」と話していた息子は、
そういえば小さい時から旅の連続だった。
はじめて遠出をしたのは、まだ生後二ヶ月を過ぎた頃だった。
ブダペストで当時大学に籍を置いていたため、
アパートを引き払いに行くときに小さな息子をバスケットに乗せて電車で向かった。
やがて生後6ヶ月で日本へ引越しをした。
日本とトランシルヴァニアを何度も行き来しているから、
旅が恋しくなるのも仕方のないことかもしれない。

もう紅葉も見納めにちかい、最後の色彩を放っていた。
町をすぎて、山越えをして「森の地方」を通って、
さらに山を越えて、今度はハルギタ県へと入る。
セーケイウドヴァルヘイをすぎて、さらに山道を登ったところが「塩の地方」である。
シェプシセントジュルジから、マイクロバスで3時間。
私たちは、小さな村で車を降りた。

村の中心まで行くと、塩鉱山の入り口があった。
料金を払いバスに乗ると、
すでにたくさんの子供づれが待っていた。
鉱山の入り口がぽっかりと口を開いていて、
やがて私たちの乗るバスが呑みこまれていく。

真っ暗のトンネルが続いて
5分ほど経っただろうか、
いつしかバスは入り口の前で止まった。
バスを降りると、まずその匂いが鼻についた。
なんともいえない湿った匂い。
これが塩の匂いなのだろう。

扉を開けて、長い階段を下りると、
そこは果てしなく巨大な空間だった。
ツルツルに磨き上げられた床は大理石のようだ。
まるで洞窟にスケートリンクを作ってしまったような感じ。
息子は、買ったばかりのローラースケートに履き替える。

Kolond 012

端にはずっとテーブルやいすが並んでいて、
皆各々に好き勝手なことをしている。
ノートブックパソコンを開いているおじさんや、
ピクニックよろしくお弁当を広げて昼食の真っ最中の家族など、
子どもたちはボール遊びをしたりして外の公園と
地下何メートルの洞窟にいるとは思えない。
みんなそろって「現実離れ」にいそしんでいる。

息子が楽しみにしていたのは、
周りがぜんぶ塩であるというその環境。
塩だから真っ白かと思っていたらそうではない。
白の部分と黒の部分が、マーブル状に混ざり合っていたり、
全体として灰色という雰囲気だ。
壁をなめて、その辛さを舌で確かめていた。

Kolond 018

中にはカトリック教会だってある。
日曜日にミサが開かれるのだろうか。
確かに音響はよさそうなので、オルガンの音や歌声がうつくしく響きそうだ。

Kolond 010

ひとつテーブルを選んで、私は本を読んでいた。
隣席のお母さんとおばさんが
息子にお菓子をくれたりして、自然と打ち解けてきた。
「私は喘息だから、子どもを二人連れて一週間療養に来たのよ。
子どもたちは朝から晩まで遊んでいるわ。」

走り回る子どもたちは元気そうだが、
ずっと座っているこちらは足腰が冷える。
どうしてか頭も痛むようだ。
そろそろ終了時間かと時計を見ると、
まだ二時間ほどしか経っていない。

昔は塩を採るためにここで一日中すごして働いていた人々を、
つくづく気の毒に思う。
日光の光りも当たらず、時間の流れとも無関係で暮らさなければならない。

Kolond 020

4時に引き上げることにした。
真っ暗なトンネルから出て突然、外の明るい世界に変ったとき、
そのまぶしさに目がくらんだ。
仲良くなった家族と次の日も来るように約束をして分かれたものの、
まだ泊まる場所も明日の予定すら決まっていなかった。

思い立って、二つ先の村に住む知人に電話をしてみた。
おととし、たかのてるこさんがトランシルヴァニアのジプシーと出会う旅をしていたとき、
人違いで出会ったガーボルジプシーだった。
まだ一度も会ったことはなかったが、何度か電話で話をしていた。
「次のバスで行きます。」
そう話をしてから、私たちはバス停へと向かった。



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comments(2)|trackback(0)|自然、動物|2011-11-01_04:49|page top

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No title
すごい場所があるんですね。  驚きです。
洞窟と聞き、もっとこじんまりした所かと思いました。
マーブル模様がなんとも 凄い・・・。
混じっているのは土ですか?
下は氷のようにツルツルですね。  冷えるのが
解かります。
日本では 土地から塩が採れる場所がありませんが
外国では いっぱい。
湖や山からミネラルの多い塩が採れますね。
今は採取してるんですか?
Re: No title
霧のまちさん、
何メートルの穴なのか・・
とにかく中はとてつもなく広いです。
昔は映画館やコンサートホールなどもあったそうですが、
今は子どもたちが遊ぶ公園のようになっています。
一日中いるのも、私には拷問です。
薄暗くて、底冷えのする寒さでした。
そして空気中に塩分が多いせいか、のどが渇きました。

黒いのは土でしょうか。
確かにお店で買う塩にも、
所どころこんな黒っぽいのが混ざっています。

今も採取しているようです。
鉱山の中ではどこもツルツルで塩は取れませんでしたが、
外では売っています。
お風呂用の塩も不思議な色つきで売っていました。