トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

カテゴリー

FC2カウンター

カレンダー(月別)

03 ≪│2017/03│≫ 04
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31 -

これまで書いた記事は・・・

全タイトルを表示

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Feed Me!

トランシルヴァニアへの扉  - Erdely kapuja-のRSSフィード

ブログ翻訳

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
comments(-)|trackback(-)|スポンサー広告|--------_--:--|page top

秋の終わりのリンゴ狩り

まだ外がうす暗いうちに跳ね起きた。
8時に村へと出発すると話してあったので、
あわててアパートの階段を駆けおりる。
ボティの赤い車を探してみたものの、どこにも見当たらない。
戻ってアパートの階段を登り、
念のため扉を叩いたがやはり反応はない。
きっと、もう行ってしまったのだ。

楽しみにしていた息子は、今にも泣きそうな顔をしていた。
部屋に戻り、ふとパソコンの時計を見ると、まだ7時を過ぎたばかり。
そして、はたと気がついた。
今日から冬時間に切り替わったのだ。

ヨーロッパでは、4月から10月までは夏時間、11月から3月までは冬時間を採用している。
その日は10月最後の日で日曜日だったから
昨日よりも1時間ずれて日常が回っている。

悠々と支度をして8時前に家を出ると、
黒い巻き毛を長く伸ばした長身の男がエンジンをかけているところだった。
アパートの古い住人ボティだ。
買ったばかりの村の土地で、
今年はじめて収穫を迎えるから手伝いに呼ばれていたのだ。

朝もやが立ちこめる広々とした平野を、車は走る。
もうジャガイモの収穫もとうに終わっている。
県道から左に曲がり、丘のふもとに横たわる村はアンジャロシュ。
「天使の」という意味の、可愛らしい名前。

村の終わりにある土地に到着して車を降りると、
見渡す限りつづく庭には真っ白な霜がふっていた。
リンゴの木々の合間から弱々しい朝のひかりが差しこむと、
やわらかな曲線を描いた丘は銀色にかがやいた。

2011halottaknapja 034

丘をのぼり、くだりしながらもまだその全貌は見渡せない。
途中で区切られた柵をこえて、銀色の原っぱの中を夢中になってどんどん進んでいく。
ふと気がつくと、朝露で靴がぐっしょりとぬれていた。

2011halottaknapja 043

何でもトランシルヴァニアには500もの種類のリンゴがあるそうで、
木の枝ぶりや、リンゴの色かたちを見ているだけでも飽きることはない。
お皿リンゴに、皮リンゴ、レモンリンゴ、バターリンゴ、ジプシーリンゴ・・・など
名前を聞いて、その形や味が想像できるのが面白い。

2011halottaknapja 025

やがて続々と助っ人たちがやってきた。
果ては20代の若者から、70代のおばあちゃんまで、
ボティの家族や親戚、友人を合わせて20名ほどにもなる。

まず落ちたリンゴを拾うことから取りかかった。
赤いナイロン袋を手渡され、バケツにリンゴを集めてはその袋をいっぱいにしていく。
傷んだリンゴは絞る工場へ持っていって、リンゴジュースになる。

2011halottaknapja 048

リンゴ拾いは、簡単そうだが意外に骨が折れる作業。
何度もかがむために、腰に負担がかかるようだ。
すべて拾い終えると、今度は木になったリンゴを大切にもいでいく。
冬リンゴはもいでから、冬の間ずっと保管するので、
傷がついていたりしてはいけない。
時に木によじ登り、時にはしごを使って摘み、
大きく太った立派なリンゴでバケツがすぐにいっぱいになった。

2011halottaknapja 050

小さな子どもが向こうから現れた。
真っ白い顔にかかった眼鏡が、瞳をくるくると大きく見せている。
近づくに連れて、家の近所の公園でたびたび出会う男の子であることが分かった。
ミオーカは不思議と息子のことが気に入ったようすで、
息子の跡をついて回るほどだったという。
この子の両親はプロの踊り手で、息子のクラスでも民俗舞踊を教えている。

2011halottaknapja 058

広大なリンゴ園では、ひとつひとつもいでいくのは時間がかかる。
そこで大きな網を広げて持ち、
誰かがよじ登ってリンゴを振るい落とすという新しい手段が考え出された。
ざっと雨のようにリンゴが降ってくると、
トランポリンのようにはじけては一箇所により集まった。

2011halottaknapja 053

カラーカという言葉がある。
共同作業のことで、村に住むには欠かせない要素だ。
家を建てるのにも、農作業をするのにも、
豚の解体をするのにも、村の人々はたびたび寄り集まって仕事をする。
仕事が簡単になるのは言うまでもないが、
さらに和気藹々と作業をすることで、いつしか仕事の大変ささえ忘れてしまう。

リンゴ摘みにおいては、
木のてっぺんにある一番美味しいのを味見できるというのも特権である。

2011halottaknapja 065

こうして日が暮れるまで、リンゴ摘み、より分け作業は続いた。
煮炊きをしていた人たちがジャガイモの煮込みを持ってくると、
遅い昼ごはんがはじまった。
主人であるボティの40歳の誕生日ケーキが切り分けられる。
知らない人たちとの出会いやあたたかいもてなしで、
満たされていくのがお腹ばかりでないことに気がついた。

2011halottaknapja 079

これから真っ白な雪と氷に閉ざされるトランシルヴァニア地方では、
リンゴの燃えるような赤は最後に見られる秋の色。
甘酸っぱい香りとその色彩は、
長く辛い冬における清涼剤のようなもの。

Dobolyi alma 012

リンゴ畑がふたたび闇に包まれると、
やがて一筋の白い光りがぼんやりと空を照らしはじめた。
私たちは、、一日の労働で疲れた体を横たえるために家に帰った。
スポンサーサイト

Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(2)|trackback(0)|自然、動物|2011-11-09_22:51|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

非公開コメント

No title
この方の家のお手伝いなんでしょうか?
いい風景ですね~。
日本では一部を除けばほとんど見られない景色。
大量のリンゴは いろんなものに加工されるんですね。
ああ、リンゴジャムなんか作りたいです。
家で作ったジャムは 美味しいですからね。

シードルのようなものにもなるのかな?
晩秋の美しい風景ですね。
Re: No title
私は九州の出身ですから、
見渡す限りのリンゴ畑は珍しい風景でした。
リンゴというと、大切に袋をかけて育てるイメージがありましたので、
ここのようにほったらかしで育つと、
小さな不ぞろいのリンゴたちになります。
日本のものほど甘くはありませんが、
本来の果物の味とはこういうものなのだと思いました。

こちらでは生で食べたり、お菓子に使ったり、リンゴ煮にしたり、
ジュースにしたりしますね。
ジャムを作るのもいいですね。
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。