トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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アールコシュの芸術の日

11月のある日、招待状がとどいた。
週末にアールコシュの屋敷で、一日中コンサートが開かれる。
食べ物や飲み物、子どものための工作教室などもあり、
充実したプログラムが盛りだくさんと書かれている。

朝10時に中心の広場からバスが出発。
町から6キロ離れたアールコシュ村までは、
すでに色を失った野原を右へ左へとくねり進んでいく。
二匹のライオンが両側で番をしている石造りの門が見えたなら、
そこがお屋敷への入り口である。

天に届きそうなほどの細長いポプラの木立を越えると、
お屋敷の前へと出る。
もともとハンガリーの貴族の持ち物だったのが、
共産主義時代に国有地として没収され、貴族は国外へと追い出されてしまった。
その後80年代には、あの悪名高いチャウセスク大統領の私有地のようにして使われた。

お屋敷の庭へやってくる。
大きな馬車にあふれるばかりの野菜が積み上げられ、
その周りには古いアイロンやら陶器やら布類がちょうどきれいに並べられているところだった。
後々訪ねようと思っていた、アールコシュ在住の友人ゾリの野外展示会。

arkos2011 006

彼は収集活動をはじめてから、20年を過ぎるという
ベテランでもあり、アマチュアでもある収集家。
職業として民俗学をやっているものよりも、
ずっと熱心でその心によどみがない。
何かのイベントがあるたびに、こうして自分の収集物を持ち出してはお披露目している。

arkos2011 001

これといった定職はなく、建設や庭仕事、村の産物ハチミツクッキーの販売など、
常にいろいろな場所に引っ張りだこである。

彼に会わないといけないと思い、すでに一年近くが過ぎた。
というのも、前年のアーラパタクの展示会で、彼からも収集物をいくつか借りたのだが、
訳あってそれを汚してしまったのだ。
ダンナは彼ならこんなこと気にしやしない、と高をくくっていた。
おそるおそる例のクロスを広げて見せると、
「ああ。それか。」と言ったきり、本のにこやかな顔に戻っていた。
これで、一年間の肩の荷がやっとおりた。

「木から落ちたリンゴだよ。」と道行く人たちに声をかけては、
かごいっぱいのリンゴを差し出す。
生粋の村人である彼は、おおらかで気前がよい。
真っ赤に色づいたリンゴをかじると、
甘酸っぱい香りと甘い汁がはじけた。

コンサートがはじまるまでの間、
子どもたちのための工作教室がひらかれる。
こしょうやシナモン、月桂樹の葉、かぼちゃの種に豆類。
自然のものを使った工作は、いかにもトランシルヴァニアらしい。

arkos2011 008

ダンボールの紙にのりをはって、麻の布を貼りつける。
そこにのりを貼ってから、木の実や種などを使って絵を描いていくというもの。
じっと立っているだけでも凍えてきそうなのに、
子どもたちは無心で小さな手を動かしている。

arkos2011 009

しばらくするとアナウンスが流れ、あたたかな屋敷の中へと入る。
この演奏会は、国営ルーマニアラジオのクラッシック局のプロデューサーが企画したもの。
招かれる演奏者のレベルも高く、プログラムも充実している。
ヴァイオリンとピアノのソナタがはじまった。
普通のステージとは違って演奏者との距離が近く、
寛いだ空間で音楽を聴くことができる。

コンサートが終わると、再び庭の会場へと戻り時間をつぶすこととなる。
日本人なら飽きてとうに帰ってしまうところだが、
こういう時間の過ごし方がこの土地の人たちらしい。

落ち葉でいっぱいの庭を、散策することにした。
お屋敷の離れにある小さな建物は、セントケレスト家の礼拝堂であった。
ここ近年になってようやく一般に公開され、
歌曲コンサートなどに使われている。

arkos2011 024

共産主義時代に没収された貴族の邸宅は、
当局の者たちが来る前に、まず地元の村人たちの手で無残に略奪されることとなった。
だから今の丁度類は、共産主義時代に新しく作られたもので、
作りものの屋敷という感が拭えない。
ゾリの収集物の中にも、もともとはこの家のものだった品もあるという。

arkos2011 031

落葉樹が、かろうじて黄色く色づいた葉を枝に残していた。
池や果樹園などを有する土地は広いものの、十分には管理されていない。
黒くにごった池の水もまた、物憂げな晩秋の色をそのままに表しているようだ。

arkos2011 035

やがて息子は、学校の同級生の姿を見つけた。
男の子たちの群れの中に混ざり、皆で池に浮かんでいたボートに乗り込んだ。
おぼつかない手つきで舟をこぐ少年と、当てもない航海に繰り出す子どもたち。

arkos2011 039

少年たちはゆっくりと岸を離れていった。
落ち葉ふる黒くよどんだ池は、あと一ヶ月もすれば真っ白な氷に変わるだろう。
水に映し出される最後の秋の香りを味わいながら、
子どもたちの乗る舟の帰りを待っていた。

arkos2011 048
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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(2)|trackback(0)|イベント|2011-11-23_15:51|page top

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No title
ゾリさんの収集した鳥模様の器、素朴で素敵ですね!
中心に描かれた植物は何でしょうか?

アールコシュを訪れた時にはお屋敷に鍵がかかっていて
中を見る機会がなかったのですが、こんなに敷地が広いのですね。
調度品が当時のものでないのは残念ですが、一度見てみたいです。

冬に向かっていく村の風景がとても美しいですね。
Re: No title
由希さん、コメントをどうもありがとうございます!
この絵皿、ナイーブな雰囲気が素敵ですよね。
私たちも、この中心の花の感じはあまり見たことがないので、
ルーマニア人のものかなと話していました。
リンドウでしょうか、色からすると忘れな草・・。
淡いブルーの花は珍しいですよね。

アールコシュのお屋敷の中はそうたいしたものではありませんが、
やはりこの庭を歩いて眺める風景に、伝統の重みが感じられます。
離れに、馬屋を改造したギャラリーがあるのですが、雰囲気があります。
いつか、またアールコシュ散策をいっしょにしましょう。

あれから、しばらく雪が降りません。
さっと一瞬で消え去ってしまう雪景色は、まさに冬の魔法のようですね。
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