トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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なつかしい我が家

クリスマスを前に、すてきなプレゼントが届いた。
半年間のハンガリー滞在をおえて、
ブラーガ一家が帰ってきたのだ。

そろそろ家に着くころかと、アパートの二階ををのぞき見たのは
これで二回目だった。
そして今夜、部屋に明かりが灯っているのを見つけると胸がおどった。
私たちは顔を見合わせ、わくわくとした気持ちをおさえて
ゆっくりと階段を上っていった。

呼び鈴を鳴らす。
しばらくして、「はーい。」と次女のボグラールカの声が応えた。
息子は喜びを抑えきれずに、思わず小踊りをはじめた。
扉がひらくと、懐かしい顔ぶれがそろっている。
半年前と同じ風景だ。
「さっき、家に電話したところなのよ。着いたことを知らせようと思って。」と母親のエンツィが笑う。
いつの間にか息子は靴を脱いで、子供たちと中で遊びはじめていた。

「不思議ね、家に帰る前はあんなに恋しかったのに、
帰ってきたら気が抜けて、気がふさぎこんでしまったわ。」
と話しながらも、彼女の笑顔は屈託がない。

ご主人のボティが、周りを包みこむような穏やかな表情で尋ねた。
「あれから、どうしていたんだい?」
半年という時間をどのように過ごしてきたかを伝えるのは、容易ではない。
驚くほどに空虚な塊のような気がしてくる。
変わったことといえば、息子が学校に通いはじめた、
ただそれだけのような気がする。
肩肘をはらずに、自然のままでいられるのは、
彼らの人徳のなせる業だろう。

子供たちが外に出たくて仕方ない様子だったので、
夕食ができるまでの間、下に連れ出すことにした。
お気に入りのそり遊びの場所も、道路にはすでにコンクリートが引かれてしまった。
オレンジ色の街灯の下を、白い雪がところどころ残っている。
きのうの深夜から、羽毛のように軽やかに舞い降りてきた雪も、
そのほとんどは溶けるか、氷といっしょにカチカチになってしまった。
子供たちは車の上やら、茂みの上にうすく積もった雪をかき集めては、
お互いに投げ合っている。
アパートの並び立つ夜の道路で、しばらく子供たちといっしょに駆け回った。

家に帰ると、トウモロコシがゆができていた。
お客でもなく、至極当たり前のようにいっしょに食事をしている。
他愛のない話で笑いあい、
なんとも言えない満ち足りた気持ちで彼らの家を後にしていた。

エンツィの母親が別れを前にして言ったことがある。
「ブラーガ一家は、みんなのものよ。」
彼らは、ただそこにいてくれるだけで周りを幸せにしてくれる。
個人というものが尊ばれる今の時代において、
この家族の力の偉大さを知っている人は少ないのではないかと思う。

半年間、あかりの灯らなかった家は、
にぎやかな子供たちの笑い声や生活の音で満ちあふれた。
一家の存在が、いつしか私たちにとって懐かしい我が家となっているのを感じた。







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comments(0)|trackback(0)|その他|2011-12-22_06:06|page top

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