トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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モルドヴァ地方のおおみそか

一年の終わりが近づいてくるとまず話題となるのが,
おおみそかをどこで過ごすかということ。
今年は、友人家族といっしょにモルドヴァ地方の町に行くことになった。

カルパチア山脈を越えていったモルドヴァ地方では、
おおみそかからお正月にかけてクマやヤギの祭りが盛んに行われている。
最近では、電車の中や遠くの町へも出かけていくので、
いろいろな場所でちいさな団体を見ることはできるのだが、
やはり本場で見るに越したことはない。

朝8時にシェプシセントジュルジの町を出発。
東に向かうとすぐに、カルパチア山脈につきあたる。
針葉樹の生い茂った森には、
白い雪で輪郭がくっきりとふち取りされていた。
街中とはちがい、山脈には雪がまだ多く残っている。

darmanesti2011 279

山を越えてモルドヴァ地方にさしかかると、おもむろに太陽が顔を出した。
こちら側はもう雪がほとんど溶けてしまったようだ。
しっかりとした瓦屋根の家が多いトランシルヴァニア地方に対して、
モルドヴァ地方ではてかてかと光るアルミの屋根が多いのに気がついた。

darmanesti2011 285

木の棒を大きく掲げて円になって踊る人たち、
ヤギの人形やクマの着ぐるみ・・・。
行く先々の町や村で、
仮装行列や人だかりが見えてくると、
いよいよ祭りの興奮が早くもこちらに伝わってくる。

「すでに祭りははじまってしまったのかもしれない。」
そんな不安が胸をかすめた。
去年は夜明け前に列車を乗り継いで行ったのだが、
正確に何時ごろだったのか記憶に残っていない。
やっとのことでダルマネシュティの町に着いたのは、昼前だった。

車のトランクに、シュニッツェルや鳥の揚げ物をならべて
簡単な昼食をとった後、町の中心に向かって歩きはじめた。
大通りはしんと静まり返っている。
町の中心には川が流れ、大きな橋がかかっている。

向こう側は、新しい住宅地のようで
ウングレニ(ハンガリーの)地区と呼ばれるところがある。
この住民は今はルーマニア語しか話さないが、
もともとはトランシルヴァニアから流れてきたハンガリー人たちのようだ。

新しい住民は、ほかにもジプシーの人たちもいる。
家の軒下には、鮮やかなクッションや布団が陽に干されていた。
見慣れないよそ者の一行の私たちに、
「どこへ行くんだ?誰をさがしているんだ?」と好奇の目が注がれる。

darmanesti2011 305

そわそわと何かを探していたダンナがふと消えたかと思うと、
わき道から誰かといっしょに姿を現した。
それは、ちょうど一年前のお正月に
近くの町の駅の待合室で知り合ったジプシーの少年たちだった。
あの時に写した記念写真を手がかりに、
こうして再会できてしまうところがいかにもルーマニアらしい。

darmanesti2011 315

一人でこのウングレニ地区を探索したいというダンナを置いて、
私たちは橋を渡って町の反対側に出た。
古い民家の立ち並ぶ通りを行くと、
やがてクマの一行と遭遇した。
ここぞとばかりにクマの子たちは体をはげしく揺らして、
旅行者にアピールをする。

かつてクマ踊りと呼ばれる大道芸の一種のようなものがあったという。
クマを踊らせて、恵みを施してもらう、
その名残のようなものがうかがえる。

darmanesti2011 331

珍しくクマの革をかぶった若い女性が、道端に腰かけていた。
小さなヴィラーグはそばによると、
そっとその毛並みをなでていた。
着ぐるみを着た女性は気がつくと、その少女にやさしく微笑みかけた。
引っ掛けのついた棒で、クマの頭部を引き上げて
やっとのことで彼女の頭にのせる。
どうやら相当な重さがあるようだ。

darmanesti2011 362

ダルマネシュティは、
ちょうど村が集まったような様相をしている。
四方八方の小さな地区から、
それぞれの行列が群れをなして町の衷心に集まっていく。
アパートが立ち並ぶメインストリートにたどり着くと、
いつしか大きなパレードとになっていた。
太鼓やホイッスルのリズム、
そして人々の騒ぎたてる声が渦巻いている。

darmanesti2011 405

祭りは果てしなくつづく。
ひとつの団体が去ったと思うと、今度は別方向から新たな行列がやってくる。
おおみそかの一日を、
町全体が大騒ぎをして過ごす。
一年のささいな出来事もすべて洗い流してしまわんばかりに、
声が枯れはて、肉体の限界がくるまでひたすらに踊り、舞う人々。
その大きな熱狂の渦のなかで、
いつしか私たち旅行者も日常を忘れ、
狂わしいまでの歓喜の中に身をおいていることに気がつく。

darmanesti2011 409

白いブラウスに赤い織りのスカートをひらめかせて、
雪の精たちが舞いはじめる。
鮮やかな刺しゅうのクロスを腰にかけて
手織りのベルトをクロスさせた姿は、
大人であろうが子どもであろうが、
女性だろうが男性だろうが、
まったくその別が気にならないほどに神聖味を帯びていた。

darmanesti2011 192

ホイッスルの軽快なリズムと、二拍子のスキップのくりかえし。
やがて体をくるくると回して、
赤いしま模様のスカートが大きく広がった。
さまざまな色や複雑なもようが溶けあい、
色味のない冬の風景の中でひときわ鮮やかに燃えあがる。

darmanesti2011 449

祭りはまるで花火のように、
その一瞬一瞬を華々しい火花をほどばしらせたあと、
やがて終わりを迎える。
それは、いかにも一年の終わりにふさわしい儀式のようだ。

darmanesti2011 480

ダルマネシュティの住人たちと、
大晦日を過ごすのは今年で二度目。
ただ楽しみ我を忘れて騒ぐだけであるのに、
人々の心をひとつにする祭りの不思議さ。
それは一見すると単純なようで、実は奥が深い。
一年後も再びここに戻ってくるのだろうか、ぼんやりとそんなことを考えた。

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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(6)|trackback(0)|イベント|2012-01-07_08:04|page top

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No title
年越しを そうやって賑やかに過ごす民族は
多いですね。
考えてみると 日本は紅白見て、いく年くる年 見て・・・
何かテレビ漬け。
まるで主体性がない・・・。
そして静かに過ごすものですね、日本では。
Re: No title
霧のまちさん、明けましておめでとうございます。
日本はお正月がメインですから、
昔の大晦日はその準備で明け暮れていたのでしょうね。
今はそれだけ、何でも買えるから簡単になったということでしょう。

日本の大晦日はこちらのクリスマスイブに似ていると思います。
家族が主体で静かに過ごすもの。
ただ昔のような信仰がうすれてしまったのは残念です。

今年も、世界各地のさまざまなたび情報を
楽しみにさせていただきますね。
どうぞよろしくお願いします。
はじめまして
はじめまして。
9歳になる娘が、
バルトークの「村の夜」「熊踊り」
をピアノの発表会で弾くことになり、
娘と、トランシルヴァニアとは?
熊の踊り?と疑問だらけになり、
貴サイトにたどり着きました。

想像出来なかった熊の踊りを見る事ができて嬉しかったです。
他にも、これは何だろうとワクワクした気持ちになれる
お話しがたくさんあり、これから少しづつ読ませて頂きたいと思います。
コメントをどうもありがとうございます!
いちとせさま、素敵なコメントをうれしく拝見しました。
お嬢さまの演奏させるバルトークから、
熊の踊りやトランシルヴァニア・・とこんな風にイメージがリンクされていくこと、
すてきなご縁を感じました。
音楽って、ひとつの文化を知るための大きな扉なのだなあと思いました。
小さな個人的な出来事ばかりですが、
そんな扉のひとつとなれればと思っています。

ただいま中国を旅行中ですので、お返事が遅くなりまして申し訳ありませんでした。
お元気ですか?
コメントするのははじめてですが、ずっとここのHPを愛読しているものです。趣味でルーマニアの民族楽器パンフルート(ルーマニア語ではNaiですね)をやっています。いつも素晴らしく幻想的な写真と興味深いルーマニア便りを楽しみに読んでいました。このところ更新がないのでどうしたのかなぁと思っています。ルーマニアも春めいてきたでしょうか。またときどきお邪魔させていただきます。
Re: お元気ですか?
パンフルートさん、
コメントをどうもありがとうございます。
ずっとご訪問をいただいて、本当にうれしくおもいます。

ルーマニアの民族楽器をお勉強されているんですね。
私も最近、楽器をはじめたばかりですが、
その民族独特の音色にふれられる楽器というものの素晴らしさを感じています。

実はしばらく中国を旅していまして、
今は日本に一時帰国をしています。
ルーマニアに戻ったときは、もう春の真っ盛りのころでしょうか。
また気持ちを新たに、トランシルヴァニアの生活をはじめたいとおもいます。
どうぞよろしくお願いします。