トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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五月の木の立つ村で

時は少しさかのぼって、五月。
遠くの町から帰りがてら、
寄り道をしようとバスを下車した。
午後のやわらかな日差しが、村の中心に立ち並ぶ
赤茶色いレンガの家々を照らしている。
バスが通り過ぎてゆくと通りもしんと静まり、
代わりに鳥の鳴き声が聴こえてくる。

IMG_7554.jpg

門の脇にある、ひときわ鮮やかな若葉をつけた木が目に留まった。
雪のように真っ白い肌をもつしなやかな幹、
そして風にゆれてさわさわと軽い音を立てる葉っぱ。
白樺の幹をよく見ると、男性の名前が彫られているようだ。

「これは、五月の木といって、
女の子の住む家に、村の少年たちが届けるんだ。
夜寝ている間にね。」
夜がふけてから、若者たちが森や林へとでかけ、
白樺の木を切り、村へ運んでくる。
昔は、恋人だけが想う相手の家に運ぶという習慣だったようだ。
朝目覚めて、少女はどんな気持ちで若葉の木を見たことだろう。

IMG_7569.jpg

家の軒先で、甘い香りをいっぱいに放つライラックの花。
五月を代表する、季節の花は、
やさしいうす紫の色とともにその独特の芳香で
甘い夢の世界へと誘ってくれる。

IMG_7565.jpg

ちいさな村をあてもなく歩くうち、
珍しく大勢の人が集まる家があった。
足を止めると、ちょうど庭に家を建設しているところのようだ。
若い村の衆たちが集まっては、一杯やりながら休憩をしているところだった。
村に戻ってきた青年が新しい家を建て、
両親の住んでいた古い家を壊してしまうようだ。
家の中に入らせてもらうことになった。

古い民家に入ると、色彩に囲まれるという感じがする。
厳しい寒さのため、窓が小さく、家の中はうす暗い。
代わりに、漆喰の白壁を色彩と文様で埋めつくすことを考えた。
その色や模様は、いつも自然を想わせる。
青々とした草原、色とりどりに花をつける野の花、みずみずしい果実・・・。
この部屋の中で、いかに春や夏や秋を待ち望み、
冬を越していたかが窺えるようだ。

IMG_7585.jpg

開け放たれた窓の縁には、ツバメが羽根を休めていた。
ちょうど、泥でできた家から外に出てきたところらしい。
おとぎ話のような、かわいらしい壁絵の部屋と
ツバメがいかにもふさわしい気がして、しばらく見とれていた。

IMG_7598.jpg

その姿をよく見ようと近づくと、
突然バタバタという音を立てて、黒い影が部屋をぐるぐると巡っている。
鮮やかなエメラルドグリーンの壁と、
白い天井の星に向かって、力いっぱい羽ばたいた。

tsubame1.jpg


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comments(2)|trackback(0)|セーケイ地方の村|2012-06-24_04:33|page top

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No title
古い家は 素敵な様式ですね。
水色の鮮やかな壁、線の模様、レトロな電灯、くり抜かれた
木の枠の窓辺。   こちらから見ると 何とも異国の
情緒が漂います。
リラの咲く季節は やはり遅いですね。
うちの近所にありますが 毎年4月10日ころに
咲いていますよ。
Re: No title
古い民家の雰囲気がとても好きです。
長い間、愛情をかけて人々が生活をしていた匂いが感じられます。
若い世代の人たちは残念ながら
こうしたものには見向きもせず、
プラスティックの窓枠や温水ヒーターや新しいものばかり。
部屋の中が暗かったり、すきま風が入ってきたり、
薪を割ったり・・。そういう不便なことも含めて村の生活の美しさなのだと思うのですが。

こちらは寒いので花の時期も果物の実りも遅いです。
ようやくイチゴが旬になり、
杏やさくらんぼも出始めました。