トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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ニワトリとボッザと虫たちと

春のある日、
ひとりで里帰りをしていた私の元に写真がとどいた。
ふわふわとした丸いヒヨコが3羽。
淋しがる息子のために飼いはじめたという。
電話口でも、息子は興奮して新しいペットのことを報告していた。
「今ね、タマゴ二個の大きさになった。」

イースターはもともと春の再生と生命の誕生を祝う祭りであったから、
多産の象徴とされるヒヨコやウサギ、またはネコヤナギが
ポストカードに使われることが多い。

csibe1.jpg

春に生まれた3羽のヒヨコたちを、
初めて見たときには、もう半分ニワトリ化していた。
声だけは外見を裏切るような、かわいらしいものだったが、
赤いトサカが見えはじめ、クチバシも足も黄色く尖っていて、野性味を感じさせる。
「コルミとチュプケとバルニだよ。」
と息子は一羽一羽を指して紹介する。
3羽のニワトリは、狭い我が家のベランダで日に日に成長していった。

問題は、やがて大きくなった雄鶏のコルミが
大きく鳴きはじめることだ。
朝一番に、ニワトリの一声でご近所の人たちが目覚めたら大変。
アパートの前は一軒家が並んでいて、
そちらからもニワトリの声は聞こえてくるのだが。
とにかく、目に見えて大きくなっていくニワトリたちの今後が大きな問題となった。

「ニワトリはもちろん家畜だから、絞めるべきだ。」
とダンナは平然としていっていた。
ヒヨコのころから名前をつけてかわいがってきたニワトリだから、
息子は当然反対するだろう。
腕にのせて、撫でられるがままにしているコルミを見ながらダンナが言った。
「ニワトリは、ひょっとして人間に一番近い動物かもしれない。」
やがて、焼き鳥の話は話題にならなくなった。

IMG_9707.jpg



6月になり、村に通う回数が多くなった。
北向きのドボイの村にも太陽の恵みがいっぱいにふりそそぎ、
春の終わりに植えた種も若草色の芽をふきはじめた。

ダンボール箱につめて運んできたニワトリたちを、
6月の芝がむかえてくれる。
ベランダ育ちの動物たちは、はじめて出会う大自然におびえたようにしていたものの、
やがてミミズを取ったり、草をついばんだりしてのびのびと過ごしていた。

IMG_9740.jpg

ドボイ村に二つ土地を買ったのは、息子が2歳のとき。
4年前に家を建てはじめて、いまだに仕事がつづいている。
家が建っている土地には、大きなクルミの木が影を作っていて、
もうひとつの土地は日当たりがよく、リンゴやプルーンの木が毎年たくさんの実をつける。

野生化しているボッザ(エルダーフラワー)の木。
6月になると小さな白い花をいっぱいにつけるが、この花は美味しいジュースになる。
砂糖でカラメルを作り、ボッザの花とレモン汁を入れて、
3晩ほどねかせると、さわやかな清涼飲料水の出来上がり。

IMG_9746.jpg

青い空を見上げると、
クリーム色の丸いつぼみと白い花がまぶしく輝く。
6月の旬の味のボッザは、ほかには喩えることのできないもので、
長い冬の間は無性に恋しくなるときがある。
青い空と太陽と、緑を感じさせる味だからかもしれない。

bodza.jpg

誰も知らないところでひっそりと咲いていた花。
果物の木が茂っている影で、
春のはじめにはクリスマスローズが咲いていた場所で、
初夏には名もしらない花が、太陽に背を向けて赤紫色の花びらをひらいていた。

bodza1.jpg

ドボイの村で用事をすませた後は、ツォーファルバの墓場に向かった。
平原の上に広がる空では大きい雲が流れゆき、大きく固まり、
今か今かと雨を降らせるのを待っている。

入り口の門のところでニワトリ番がじっと座っている。
「今のうちに、草のにおいと土の手触りをしっかりとかみしめておいて。」

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花粉と甘い花の香りをベッドにしてすやすやと眠るカナブンたち。
長い夏の一日に昼寝をしたいと思っているのは、
人間だけではないようだ。

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見たこともない鮮やかな赤紫色の虫。
風に吹かれてしまわないように、
黄色い花の上で足をふんばっている。

IMG_9779.jpg

雨宿りをしようと、
小さな体をかくすために花を探している。
その花を選んだのは、大きさのため?
それとも美しさのためだろうか。

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いつもはせっかちなハエも、
このときばかりは雨に打たれないように体をしっかりとこわばらせて。

IMG_9813.jpg

さきの尖った花に足をとられないように。
この雨雲が去っていったら、
ふたたび青い空目指して飛んでいくのだろう。

IMG_9809.jpg

薄暗い空に、明るい光が差してきた。
大地は天からの恵みをうけて、
緑はいっそう輝きを増すだろう。
長い長い夏の一日が、もうすぐ終わろうとしている。

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Genre:海外情報

comments(8)|trackback(0)|自然、動物|2012-06-30_18:05|page top

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No title
ああ、あの時 ひよこを飼われたんですね。
小さなうちは可愛いけど やがて大きくなったら・・・と
特にニワトリの場合は考えますね~。

うちの近所にもそういう人がいましたよ。
抱っこして可愛がっていました。(笑)
きょうから7月、どうされましたか?
Re: No title
残念ながらかわいらしいヒヨコの時期は見られませんでしたが、
毎日世話をしているとかわいいものです。
こんなとき、ちいさな庭があったらと思います。
やはり、ほかにそういう方がいらっしゃるのですね。
鳥の中では、人間に懐くほうだとおもいます。
身をよせあって、眠る姿もかわいらしいです。

そろそろニワトリらしい声が聞かれるようになり、
一羽でも絞めたほうがいいとお姑さんからも言われます。
せめてタマゴを産むのを見たいですが、
どうなるか・・。
お久しぶりです。
日に日に大きくなっていく大樹君の成長にも驚きますが、
春に聞いたあの可愛い鳴き声のヒヨコがもうニワトリになったのですね。
あれだけ大樹君が喜んでいただけに自然の習わしとはいえど、
そう簡単には絞められませんよね。
ドボイも緑がいっぱいになって気持ち良さそうですね。
バケツに入りきれないほどのプルーンを一緒に穫ったのが懐かしく、
そんな村での時間を過ごせることをとても羨ましく思います。
Re: お久しぶりです。
哲弥さん、ご無沙汰しています。
フランス旅行の記事をいつも楽しみに拝見しています。
フランスの雰囲気がお二人にぴったりですね。

春にお宅にお邪魔したときに、
スカイプでお話をさせてもらいましたよね。
あのときに、かわいい声で鳴いていたヒヨコたちは、
もうそろそろ声変わりしようとしています。
家畜の運命ではあるけれど、
私もあの動物たちが食べ物になってしまうのは悲しいです。

こちらは夏真っ盛り。
おととしの秋のように、今年もプルーンが豊作になりそうです。
またここでご一緒できるのを楽しみにしています。
エルダーフラワー
お久しぶりです。エルダーフラワーのハーブティーは風邪や花粉症にも良いと、日本でもポピュラーになりつつありますが、ジュースにして飲むとは知りませんでした。美味しそうですね。お茶でも十分甘味が感じられるので、何となく想像出来ます。古くは日本でもお酒にしたり、枝を神事に使ったりと身近な植物であったようですが、、。
ところで、ひよこの話で思い出しました。トランシルヴァニアのとある村で、ご馳走をしてくれると、女性や子供達が鶏の羽をむしってたのを見て、衝撃が走ったことを。子供達は「これ美味しいんだよ」と言ってるみたいで、嬉々としていました。ご主人の「家畜は絞めるもの」という意識は、そういう環境で育たないと、中々受け入れ難いものがありそうです。
Re: エルダーフラワー
yuccalinaさん、お久しぶりです。
エルダーフラワー、日本名はニワトコですね。
日本では縄文時代から使われてきたなじみの深い植物だったはずなのに、
今はヨーロッパからの輸入品みたいになってしまったのは残念です。
ハーブティーにもしますが、ジュースが一般的です。
一時はエルダーフラワー味のファンタなども販売されていました。
秋には黒くなった実をジャムにします。

家畜は食べるものという意識は、、まさにそういう環境で生まれ育たないと難しいですね。
私たちは鶏肉は買うものという意識があるから、
かわいがって育てたニワトリを絞めるよりは、
買ったほうがましと思ってしまいます。
町の子どもと村の子ども、ともにいい面悪い面ありますが、
実践的な生きる力は村の子どもたちの方が強いと思います。



No title
こんばんは。
眠れずに久しぶりにこちらへ来させていただきました。
偶然にも同じような時期に
三羽のひよこを飼い始めたこと
すごく嬉しく思っています。
まるで、そちらの三羽も兄弟のように思ってしまいます。
うちも庭を自由に駆け回り、
虫を食べたり、葉をつまんだり、
三羽仲良く身を寄せて眠る姿は
とても愛らしいです。
大樹くんが抱っこする姿が我が子とだぶります。

こちらでも『飼えなくなったら、絞めるから、いつでももっていらっしゃい』
と、親戚の皆さんに言われます。
その度に主人とわたしは
下を向いてしまいます。
でも、それとは反対にこどもたちには
『このニワトリたちが唐揚げになるんだよ』と教えるんです。
みんな、それはそれは驚いた顔になります。
わたしがベジタリアンになったのは
そこがベースなのかもしれないです。

エルダーフラワーの花を見てビックリ!
島にもあるんですよ!あの花。しかも、
家の庭に6月頃から白い花が満開で
すごく似ているんです!!
少し調べてみます。
わたしも憧れのそのシロップをつくれるかもしれないです!!!
Re: No title
おはようございます。
眠れぬ夜に、こちらを覗きにきてくださって
ありがとうございます。

ちょうどブログでニワトリを飼われたと見て、
偶然に私も驚きコメントさせていただいたのを思い出します。
動物は飼ってみないとその愛らしさがわからないものですね。
ニワトリなんてどれもいっしょと思っていましたが・・・。
今ならよそのニワトリと一緒になっても見分けられる自信があります。

ヨーロッパは肉食の文化をもちますから、
ブタの解体にはじまって、こうした家畜を食べることは当たり前として
人々の意識の中に息づいています。
このような冬には何も実らない国では、
ほかに栄養源がありませんから当然だと思います。

今のルーマニアでは、肥満の人がものすごく多いです。
お金を払えばいくらでも食べられる時代。
そして昔のような肉食の生活は残っていながら、
厳しい農牧業などをしないことが挙げられると思います。
もっと、食べるものに感謝する気持ちを持たないといけないですね。

エルダーフラワーは、日本ではニワトコの木と呼ばれるそうです。
縄文時代ごろからあり、食べられていたという証拠が残っているそうです。
昔から身近にあった植物を、日本語として知らないのは残念ですね。
いかにも外国の珍しい植物として、シロップなども高く売られているそうですし・・・。

お庭にあるものがそうでしたら、
ぜひシロップ作ってみてください。