トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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イェファルヴァの夏休み

6月の半ばから、長い夏休みがはじまった。
息子は学校から開放されて、つかの間、
今度は家で退屈をするようになった。
そんなある日、友人から電話があった。
「今から、イェファルヴァに来ない?」

昼すぎのバスに揺られて、二番目の村がそうだ。
メゾソプラノ歌手のエリカは、
ビロードのように美しい声で歌いながら、イチゴジャムを作っていた。
赤く色づいたイチゴには、雨のしずくのような黄色い種が散らばっている。
ここセーケイ地方では、イチゴの季節は6月。
市場には旬の果実しかならんでいないので、
時期は短いがどれも美味しい。

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町から村へ引っ越しする若者たちが増えたのは、
ここ5年くらいの間だろうか。
モカヌ一家も、村のはずれに大きな家を建てた。
それが村の中では、次第に増えていく町の移住者と、
もともと住む村人との間にあまりよい関係ができていなそうだ。

「私たち、町からの移住者たちが協会を設立することにしたの。
村に遊具所ができるように公募したり、
少しでも暮らしやすいように変えていきたいと思っている。
村の人たちはただテレビの前に座って、人のうわさ話をするだけ。」

お昼をご馳走になったあと、子どもたちを連れて
村のはずれを流れるオルト川へ泳ぎに行くことになった。
オルトという川は、隣のハルギタ県が源流で、
はじめは小川といっていい小さなものなのが、
だんだんと大きくなって、やがてドナウ川へと流れこむ。

午後の日差しが、肌に容赦なくつきささる。
緑がかった冷ややかな流れを目にするなり、
子どもたちは歓声を上げて飛び込んだ。
水の冷たさも一向に気にならないようだ。
4年生のファンニのロッククライミングで鍛えた体が、
大人の私の目から見ても美しい。

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妹のベッラは、今年小学生になる。
水の流れが速いので、浮き輪に揺られて流されてくる。

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両側からのびた木々が、心地よい日陰を作っている。
魚になったようにして水と戯れる子どもたちに追いつこうとするが、
彼らはどんどん遠くへ行ってしまう。

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決して澄んでいるとはいえない川だけれど、
子どもたちがこうして泳げる内はまだいい。
昔、祖父や叔母たちが泳いでいた近所の川は、
私たちの時代には汚されてしまった。
子どもたちのために、身近な自然を残していくことの大切さは
親になってはじめて気がつくのかもしれない。

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水から上がると、今度はひび割れた大地と
乾いた草が待っていた。
もう雨は何週間も降っていない。

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すこし傾きかけた太陽の光がぬれた肌を乾かし、
生ぬるいそよ風がさらさらと音をたて、
心地よく肌をなぞってはなれていく。

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麦の穂も、もうすぐ垂れる。
この色を見ると、夏の盛りが近づいたのが肌で感じられる。

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家でしばらく休んだあと、
日が落ちる前にもう一度オルト川に向かうことにした。
昼過ぎとは違い、いくぶん涼しくなった空気を楽しみながら、
川のほとりまで歩いていく。
子どもたちはいくら遊んでも飽き足りないほどに、
ふたたび水着になって飛び込んでいった。

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丘に沈む前のとろけるような橙色が
原っぱの草にしみわたる。
自然の織りなすグラデーションの美しさに、はっと息を呑んだ。

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小麦色に焼けた子どもたちの肌が、
オレンジ色の草原と同じ色に染まった。

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もう、日が沈んだ。
羊たちも家へと帰る時間。

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夏色にかがやく麦娘。

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終わりのないような、長い夏の一日。
美しい想い出は、これから歳をかさねてもなお、
小さな欠片となってずっと生きつづけるだろう。

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夕暮れ時のそよ風に吹かれながら、一日にそっと感謝した。

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comments(4)|trackback(0)|セーケイ地方の村|2012-07-14_17:29|page top

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No title
聖子さん、こんな記事が私もよく知っているイェファルヴァについて日本語で書かれていることなんて、夢を見ているような気がする。Szentgyörgyで生まれて、大阪外大で日本語を勉強して、日本で3年間生活した私と逆に聖子さんは大阪大学を卒業して、今私の生まれた町で生活している。こんな人がいることさえありえない気分、信じられない。言葉にできないほど嬉しい。
またSzentgyörgyへ帰ったら、聖子さんと直接会えるかな。
Re: No title
クリスティナさん、私もびっくりしました!
Szentgyorgyで生まれて、今日本で勉強されているのですね!
私が大阪で勉強したのは、もう昔のこと。
2002年に卒業しました。
それからハンガリーに留学して、
Szentgyorgy生まれのダンナと結婚しました。
子どももここで生まれました。

日本語も教えているので、
生徒たちがあなたのことを知ったらきっと喜びます。
日本での勉強をどうぞがんばってください。
いつか里帰りされたら、お会いできたら嬉しいです。

No title
人工的なオモチャやゲームではなく、こんな自然の中で
過ごせば 豊かな人間になれそうな気がします。
私の子供のころの話のようです。
麦の穂の金色に輝く景色や 人のいない静かな
川の風景は いいですね~。

それから 旬の時期にしか無いものが並ぶ店も
とてもいいです。
年中 同じものは要りません。
Re: No title
霧のまちさん、トランシルヴァニアのすばらしさは、
こうした自然がたくさん残っていることなので、
今の子どもたちにもありがたく感じてほしいです。
町育ちの子どもたちの中には、
こうしたよい部分が未発達という風に解釈をして、
外国ばかりを夢見るひとも多いです。
日本なら遠くまで旅をしないと出会えない風景が、
身近にあるのですから、幸せだと思います。

旬のものしか手に入らないということは、
逆に言えば美味しい果物や野菜しか市場に並ばないということなんですよね。
私たちは冬のイチゴや春のリンゴなど、ありとあらゆるものに囲まれて、
いつしか美味しい果物や野菜の味を忘れてしまった。
冬はすべてが凍ってしまうので、
ジャガイモ、にんじん、たまねぎのほかはあまり野菜がなく寂しいですが、
それが北国に住むことなんだなと思います。