トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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セントキラーイに訪れる春

ハンガリーから友人一家が里帰りをしたのは、
二月の末だった。
まだ雪が大地を厚く覆っていたころ、
夫婦は三人の子どもたちとお腹の中の赤ちゃんを連れて、
キャンピングカーに揺られて故郷の町にたどり着いた。

ハンガリーへの移住を一番望んでいたはずのエンツィは、
「すぐにホームシックになっちゃったわ。」
とハンガリー西部の人々の暮らしや様子などを語りながらうんざりと言った。
仕事を探しに西側に人が流れていくのは、
ここ30年ほどのヨーロッパの状況だが、
革職人で、子どもたちの教育も家でする彼らにとっては
縛られるものは何もない。
半年の生活を終えて、ようやく
故郷へ帰り、近くの村に家を建てることを決めたという。

自由に憧れ、村のはずれの原っぱに土地を買い、
家を建てはじめたのは二年前のこと。
当時は革の仕事と掛け持ちでしていたため、
ほぼ放置状態がつづいて、
近郊の村のジプシーたちに荒らされてしまった。
そこで、建設を断念。

IMG_4051.jpg

途中まで組み立てていた家もすでに取り壊され、
今回は柵のための柱を除くためにやってきた。
三人の男手に、二人の少年も加わって・・・。
子どもたちは、どちらかというと遊ぶ方に熱心の様子。

IMG_4116.jpg

せっかく作った柵を壊すという作業はどこか切ないものの、
子どもたちの手にかかると楽しい遊びのようだ。

IMG_4066.jpg

広大な大地に太陽の光が差しはじめた。
太陽の光が、乾いた色をした草に再び活力を与え、
ここにもやがて色彩豊かな春がやってくる。

建設のための工具や資材などを入れていた小屋も、この有様。
中身どころか壁の板さえ取り除かれて、痛々しい。
代わりに、使い古しの子供服やゴミなどが散々と捨ててあった。
いくら生活が貧しく仕方なかったとはいえ、
人が何かを作り築きはじめたものを壊して、
彼らの心は少しも痛まなかったのだろうか。

IMG_4055.jpg

あたたかい太陽の光の下、眠気がさしてきた。
家の基礎のために掘った穴に、焼き捨てられた藁の山の残りが埋められていた。
そこに腰かけて横になる。
あたたかな藁は、彼らの家の屋根になる予定だった。
いつしか、青空の下でぐっすりと眠っていた。

旦那がやってきて、こう言った。
「ほら、あっちを見てごらん。花が咲いているよ。」
どこに花がと頭をひねると、
一昨年彼らが植えた球根のことだという。
エンツィは子どもたちに花を選ばせ、
いっしょに花の庭を作ろうと語っていた。

遠くから見たら、ただの枯れた原っぱ。
それでも、腰をかがめてよく見ると・・。
確かに、透けるような薄紫の花びらのクロッカスが美しく咲いていた。

IMG_4179.jpg

小さな手を広げたような白いヒヤシンスも。

IMG_4180.jpg

そして、今にも花ひらきそうなスイセン。
1年以上の間、寂しい原っぱの中で
主人の帰りをずっと待ち望んでいたかのような可憐な花たち。
心があたたかくなった。

IMG_4182.jpg

帰り支度が始まった。
子どもたちは捕まえた虫や幼虫を、
ひとつずつ取り出して、そっと大地に返していた。

IMG_4156.jpg

いつの日か、ここに彼らの家が建つときが来るだろうか。
もしかしたら、子どもたちがいつか大人になって、
家族を連れてここへやってくるかもしれない。
彼らが愛した大地や自然は、きっとそんな日を待っているに違いない。

IMG_4174.jpg
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Theme:ルーマニア
Genre:海外情報

comments(4)|trackback(0)|セーケイ地方の村|2013-04-25_17:05|page top

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No title
そちらでは 家を建てるのも全部自分たちでやってしまうんですね。  業者を頼むことはしない訳ですか?
もっとも お金もかかるので 出来るだけ自分ででしょうか。
教育まで 家庭でする家族もいるんですね~。

それにしても、他人の小屋や持ち物まで 荒らしてしまうとは
う~ん、かなりすさんでいますね。
美しい自然に囲まれていても やはり貧しさが そうさせて
しまうのでしょうか。
Re: No title
霧のまちさん、こちらは地震がないせいか
手作りの家も昔ほどではないですが、多いです。
村の人たちが自分たちで建てた一軒やは、100年経っても頑丈ですが、
社会主義時代に立てられたアパートなどはすでにひびが入っているものも多いです。

ジプシーの村もいくつも訪ねましたが、こういう被害を見ると心が痛みます。
貧しさと物質の豊富さのせいで、人の心もゆがんでしまうのでしょうか。
この美しい環境で、家の建設が実現しなかったのが残念です。

家族はいたって楽観的なので、またいつか家を建て始めるかもしれませんね。



No title
聖子さん、 ルーマニアの北部にあると言う メリー墓地は
ご存知ですか?
濃いブルーに塗られた 可愛い立て札のような 墓標が
立っているんです。  以前 何かのサイトで見ました。
おとぎ話のような雰囲気があって その家族のありし日の
暮らしがイラストで描かれているんです。
もしも 北部に行かれた折には ちょっと覗いてみては
如何でしょうか。
Re: No title
マラムレシュにある陽気なお墓といわれるところでしょうか?
私も本で読んだりして、一度行ってみたいと思っていたのですが、
ここからクルージまで電車で8時間、
さらにマラムレシュの町まで8時間近くかかるみたいです。
あまり古くからの習慣ではないようですが、
ペイントが面白いですよね。
学生時代に墓標の研究をしたことがあって、
古いお墓に興味があります。
この辺りは、木彫りのチューリップや星などの文様が彫られた
人の背丈くらいの墓がありますが、
文字を持たなかった農民たちは、このようにして
モチーフで死者の性別や年齢などを表したといわれています。