トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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高鍋の大師さま

宮崎市を南北につきぬける国道10号線。
高台の上から見下ろす巨大な石像群との出会いは、
車窓の一風景だった。

地元の民俗学的遺跡のほとんどを知り尽くしていた旦那と息子とともに、
国道を下りて、高台を上り、
いくつもの大小の塚を横手に見ながら細い道を進んでいく。
すると、目の前に石像たちが集う広場があった。

taishi (13)

あれから、何度もこの場所に通ったものだったが、
この夏にまた行こうと思い立ったのは、
ひとつのパンフレットを見たからだ。
「くぁんのんさんに恋をした」とある、わら半紙の見事なもの。
ボランティアガイドによる案内という一文を見て、すぐに電話をかけた。
そうして一週間後、私は再び石像たちに恋をした。

始めはガイドのKさんのお話も、半分耳から通り抜けるほど、
ただ目の前の石たちに夢中だった。
それが、穏やかな口調で、目を輝かせて語るKさんの話に
徐々に引きこまれていった。
「それぞれの感じ方で、ご覧下さい。」
それでも尋ねてみると、彼の解釈が次々とこぼれ落ちる。
私も恋したあの石仏たち、そしてその作り手と
長年対話をし続けてきた。
確かな愛情がそこに感じられるのだ。

taishi (1)

私が一番気になったのは、初めて目にしたあの広場だ。
「あれは、賽(さい)の河原ですよ。」
賽の河原というと、恐山や高千穂峡などおどろおどろしたものがあるのだが、
ここは一味違うと言う。

taishi (5)

泣くもの、笑うもの。
一人一人が愛おしく、いっしょに笑ったり、
頭を撫でてなぐさめてあげたくなる。

taishi (9)

「一山つんでは 父のため」
まるで石遊びをしているかのように、にこにこ顔。

taishi (14)

赤鬼と青鬼が見張っている。
ここは紛れもない地獄。
それなのに、どうしてこんなに和やかなのだろう。

taishi (10)

これら石像たちを手掛けた人物は、岩岡保吉という。
今から125年前に、四国の香川県で生まれた。
幼いころに、ここ高鍋に移り住み、
四国の88か所の巡礼地を作ることを夢みるようになる。
始めは仏師に彫らせていたのが、やがて自らも石を彫りはじめた。
半生をかけて作った石像は、700体あまり。

初期のころは、普通の仏像と変わらぬものを作っていたが、
だんだんと彼の独創性が増すとともに、
その規模も大きくなっていった。

5メートル以上はある巨大な神や仏たちが、
彼の70代80代と後期の作品にあたるというのが驚きだ。
後光がさすアマテラスオオミカミ。

taishi (16)

その足元には、ヤマトタケルが草薙剣を授かる場面がある。
K氏によると、彼の作る女性は必ずといっていいほど歯を見せている。
そういわれると、確かに魅惑的だ。

taishi (18)

鳥居の先には、小さな祠がある。
赤く色づけされた内部には、真っ白いお稲荷さん。
「けモの 一サい」

これは何だろう?と首をひねる私たちに、Kさんが語る。
「あらゆる獣たち、
それは人間に利用されてられてきた。
その代表がキツネで、勝手に神に仕立てられた。
真ん中の像をごらんなさい。
薪を背負っている神様、それが稲荷の神の本来の姿だ。」

taishi (20)

大きな神の横っ腹に、まるであばら骨のように浮き上がる千手観音。

taishi (17)

夫婦円満を願う、神もいる。
手と手をにぎり合わせる姿が微笑ましい。

taishi (22)

大海原を見晴らすところに、巨大な石像たちが立ち並ぶ。
旅人たちの安全を願うためだとK氏は言う。

taishi (23)

11めんくわんのん。

taishi (2)

火よけ みまもり 百たいふど。
目には、ガラス電球が使われている。

taishi (31)

高鍋大師と看板が掲げられた小さなお堂。

taishi (32)

ここは、岩岡老人その人となりに触れることができる場所。
この作者は何者なのか、いつの生まれの人なのか、
何を信念としたのか。
頼りになる情報などなくとも、その人を感じることができる。

天井から下がる色とりどりの千羽鶴。
そして、沢山の石仏や神たち。
さあ、手を合わせて挨拶をしよう。
大きなばちで巨大なかねを打つ音がこだまする。
子どもたちが、その音を面白がり、
競い合うようにして打ち鳴らす。
普通なら、あってはならない風景だが、
K氏も笑顔でこう話す。
「きっと岩岡さんが見たら、喜ぶでしょうなあ。」

taishi (25)

大きな木魚には、彼自身と信者たちの姿が刻まれている。
作品のあちこちに「無縁仏」という文字がある。
むかし、この丘の裏手に広がる持田古墳で
大規模な盗掘があったという。
その古代人の霊をなぐさめるために、彼はここに土地を買い求め、
石像づくりに一生をささげた。

taishi (28)

彼の手で築き上げたこのユニークな石像たちは、
きっと孤独な魂をやさしく包み込んだに違いない。
道具たちは無言だが、その作品は彼の心を物語っている。

taishi (24)

堂内に展示されている当時の写真からは、
地元の人々が一体となって信仰を深め、
そしてこの石像たちを愛したことが痛いほど感じられる。
高鍋大師は、これからもたくさんの人々に愛し、受け継がれていくだろう。

taishi (26)

*最後に町のボランティアガイドをして、熱く語ってくださったK氏に感謝の気持ちを捧げます。
友人の装っていたハンガリーの刺繍ベストに着目し、
それを羽織って見せてくれたその素敵な感性をひそかに敬愛いたしました。
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comments(0)|trackback(0)|その他|2014-07-26_22:10|page top

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