トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

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炭酸水通りの8月

成田から20時間を経て、私たちは再びトランシルヴァニアの地を踏んだ。
時間をさかのぼっての長い飛行機の旅を終わる頃には、
意識がもうろうとしてくる。
8月1日、二人の子どもを連れての長い里帰りは終わりをつげた。

日本から帰るときにはいつも、
自分の人生にひとつ区切りをつけるような気がしている。
そして、そこから新しい何かがはじまる。

故郷の空気は心地よく、肌にやさしくなじむけれども、
しばらくすると自分たちが宙に浮いている存在であることに気付く。
生活の基盤がそこにはなく、
あわただしい毎日の中で、右へ左へと流されているような気持ちになる。
自分の生まれ育った地から、1万キロも遠く離れたこの地の
我が家にたどり着いたとき、ちょうど実家に到着したときと同じ安堵が得られるのが不思議だ。

炭酸水通りの我が家の庭は、夏の真っ盛り。
例年にない雨の恵みを受けて、もう8月だというのに
植物がつややかに輝いている。

IMG_7559.jpg

大切な儀式であるように、ひとつひとつの植物を
丁寧に説明しはじめる旦那。
「ちょうどイチゴもグリーンピースも収穫ができたときに、
君たちがいなくて残念だったよ。」

IMG_7546.jpg

トウモロコシの何と大きなこと。
天を突かんがばかりに背伸びしている。
高いところから、人間たちを見下ろす気分はいかがなものだろう。

IMG_7545.jpg

「この花を知っているかい?」
夏の暑さを我知らず、涼しく透明なブルーを投げかける花。
それは、亜麻の花だった。
綿の育たない、北の冷涼な大地では、
古くからこの亜麻の茎が珍重されてきた。
乾かしてから、繊維を叩いて伸ばし、糸を紡ぎ、
それから冬の間中、機織り機を踏んでできたのがリネンの手織り布だ。

想像を絶する沢山の労働の果てに、
あの輝くような白い布が生まれる。
少しずつ種を増やし、いつかその美しい布の生まれる瞬間を見てみたいものだ。

IMG_7558.jpg

真夏の空に浮かぶ花火のような、白い花。
ドクニンジンの花は、ただの雑草だけれど、
可憐で繊細な姿かたちをしている。
もしも、女性を花に喩えるのならば、
大輪のバラや芍薬ではなく、小さな野の花でありたい。

IMG_7551.jpg

アザミの花は散った後も、
夢のように素敵な綿毛をのこしていく。
このひとつ、ひとつが子どもたち。
わが子を空高く飛び立たせて、その役目を終えるのだ。

IMG_7568.jpg

昼時となった。
ガスボンベがないため、外で火を起こして
大きな鍋で昼ご飯を作る。
おととしの夏、カロタセグ地方の村で過ごした一か月。
ひとつのお鍋だけで、すべてが事足りた。
欲を言えばきりがないが、
人間が生活をするのは至って簡単なことであることに気が付いた。

収穫したばかりのじゃがいもを、
冷たい井戸水の中に放り込む。
娘は、待っていたとばかりにその中で水遊びをはじめる。

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今年は雨の影響で小ぶりとなったが、
ルビー色に輝くじゃがいもたち。
包丁を入れると、ザクッと小気味よい音がする。

IMG_7577.jpg

真夏の太陽が降りそそぐ中、
キャンプファイヤーさながら火をたき、鍋で煮たセーケイ風じゃがいもの煮込み。
日陰に毛布を引いたら、ピクニック気分になる。
おなか一杯食べて、お隣のおばあさんにもおすそ分けをした。
再び、トランシルヴァニアの日常がはじまった。

IMG_7544.jpg

*7月に放送された「世界の村で発見、こんなところに日本人」の
番組についての感想をyuccalinaさんがこちらで述べていらっしゃいます。
私の思うところと一致していたので、ご紹介いたしました。
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comments(10)|trackback(0)|セーケイ地方の村|2014-08-09_16:59|page top

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以前コメント書かせていただいた藤原です。
せいこさんお帰りなさい。
私は今、遠く日本の京都三条の橋のたもとのスターバックスでせいこさんのブログを拝見しています。
せいこさんの文章は一つ一つがトランシルバニアの民族衣装の手仕事のように丁寧で綺麗な織物を連想します。
京都は先週末の台風一過で三条大橋から見る鴨川の水が澄んでいます。
橋から見える北の山々の景色は私の好きな風景です。
16日夜には京都の山々にお盆で帰られた魂をお見送りする、五山の送り火が点灯されお盆の終わりを告げると、京都の街も秋の気配がします。
また、ブログ楽しみにしています。
Re: こんにちは
鍵コメントさま、再度コメントくださってどうもありがとうございます。
こちらに帰国してなかなかブログを書くゆとりがなく、
遅くなったのですが、待って頂いたかのようにすぐにコメントくださって
とてもうれしく思います。

こちらも同じく、子どもたちと過ごす日々は
ときに自分の用事を優先させたり、気持ちにゆとりのない時もあります。
それでも、もう10歳の息子と一緒に過ごす夏があとどれだけあるかと考えると
さみしい気持ちもいたします。

土に触れないアパートの生活では気が付かないことがたくさんあります。
庭のあることに感謝しながら、季節の移り変わりを楽しみたいと思います。
Re: タイトルなし
藤原さま、ご無沙汰しております。
遠く京都の町からの季節のお便り、うれしく拝見しました。

>トランシルバニアの民族衣装の手仕事のように丁寧で綺麗な織物を連想します。
もったいないほどのお言葉です。
私にとってブログを書くことは、自分の日々を見つめなおすことだと思います。
書きとめておかないと洪水のような日々の中で流れ去ってしまう大切な記憶、
できるだけ自分の言葉で綴っていきたいのです。

日本はちょうどお盆、ここ3年ほど経験していませんが、
心はご先祖さまの魂を思い慕っています。
こちらでは11月1日が死者の日、
日本とは違いたった一日だけです。
ヨーロッパでは、死後のことより今を大事にするからでしょうか、
それでも、亡き人々を慕いつづける日本人のこころが美しく感じられます。

No title
炭酸水通りって楽しい名前ですね~。 どうしてその
名前が付いたのでしょうか。
番組を見たり 今までの聖子さんのお考えに触れた折、
核の部分がとてもしっかりされている方だなぁと感心
していました。   便利なものや安易なことに流されるので
無く、本質的に大事なものをわきまえておられる事です。

レースフラワー、きれいですね~、大好きです。
Re: No title
霧のまちさん、この道の先は深い森があり、
炭酸水の湧き出る泉、温泉やスキー場もあるみたいです。
家から徒歩5分くらいのところにも、炭酸水の泉があるのですが、
今は整備中で使えません。

>核の部分がとてもしっかりされている方だなぁと感心
していました。
いいえ、まだまだです。
6年こちらで生活してようやく自分たちのペースが築けそうになったばかり。
ドボイの家も完成させて、引っ越すことはできませんでしたし...。
今は定年退職したお姑さんたちが、あの村の家に住んでいます。
生活のあかりの灯った家は、いきいきしているようにも見えます。

ドクニンジン、レースフラワーの名前のほうが素敵ですね。
大好きな花が増えました。
No title
こんにちは。
拙ブログの記事を紹介していただきありがとうございました。早速こちらの記事をトラックバックさせて頂きました。

聖子さんはすっかりトランシルヴァニアの生活リズムがしみついた様ですね。日本はきっと何でも忙しなくて落ち着かなかったかもしれませんね。今の日本では、時間短縮や効率アップが強迫観念になっている人が多いかもしれません。私ですら、時々息切れしてしまいますから。

ところで、長谷川さんの着ていらした民族衣装のことを教えて頂きありがとうございました。確かにあのジャケットは軍服っぽくて、村では見た事がないです。舞踊団の舞台では見たかもしれませんが。

亜麻のお花初めて見ました。可憐ですね。いつも素敵な野の花を紹介して頂きありがとうございます。


聖子さん
おかえりなさい!
なんとなく、夏と秋が入り混じったような空の色がブログの写真に見受けられるような気もするのですが、トランシルヴァニアの夏のにおいが感じられたりして(本当ににおいをかいだことないんだけれど)、聖子さんのブログって、やっぱり好きだなあとおもっています。
ご実家での夏休みもトランシルヴァニアでの夏休みも、一日一日を丁寧に過ごされているご様子、いいな!(^-^)私もこらから短い夏休みです。
お芋、赤いのですね!きれい。
Re: No title
Yuccalinaさん、なるほどトラックバックをすればよかったのですね!
あの番組をあれだけ丁寧に解説してくださって、
こちらこそうれしく拝見しました。
いまだに恥ずかしくて、まともに番組を見ていません。

昔は日本とこことを行ったり来たりするときに、
タイムスリップするような不思議な違和感を感じていたものですが、
最近、ようやくスムーズにこちらの生活に入り込むことができるようになりました。

日本にいるときは気が付かなかったのですが、
生活のペースの速さに疲れていたことがわかります。
息子が生まれた後、3年間、あちらで家族と暮らしていたときに感じた、
何かに追いかけられるような感じ、
それがYuccalinaさんのおっしゃる強迫観念なのかもしれません。

長谷川さんの着ていらしたDiszmagyarの衣装、
よくお似合いでしたが、厳密に言うと民俗衣装ではありません。
18、19世紀のハンガリー貴族の肖像画や写真で見ることのできる類のものです。

もう花の時期はそろそろ終わりに近づいていますが、
自然の美しさをまたお伝えしたいと思います。


Re: タイトルなし
愛さん、帰って参りました!
このころはまだ8月はじめなので、夏色ですが、
あれから雨や嵐が通り過ぎて、だんだん秋に近づいているのが感じられます。
土のにおい、太陽の輝き、風の音など
こちらの自然がそのままにお伝えできればいいのですが、
これが私の見たトランシルヴァニアです。

短い夏休みでは日頃のお疲れが癒える暇もないでしょうが、
どうかゆっくり骨休みをしてくださいね。

素敵なお土産とお便りを頂戴しました。
ちょうど帰国前のバタバタでご連絡ができなかったのですが、
こちらからゆっくりお便りさせてくださいね。

赤いお芋は煮物に使うんだそうです。
先日、マッシュしたらゴムのようにべたべたになってしまいました。