トランシルヴァニアへの扉 - Erdely kapuja-

古きよきヨーロッパの面影を残す、トランシルヴァニアへの扉をそっと開いてみませんか?

::自己紹介::

谷崎 聖子

Author:谷崎 聖子
1978年宮﨑生まれ。
大阪外大、ハンガリー語学科卒業。
ブダペスト大学で民俗学を専攻。
ルーマニア、トランシルヴァニア地方のフォークロアに惹かれて、セーケイ地方に移住、結婚。
三人の子育て中。

伝統手芸研究家。
トランシルヴァニアの文化、手しごとを広める活動をしています。主な著書「トランシルヴァニアの伝統刺繍 イーラーショシュ」、「カロタセグのきらめく伝統刺繍」。

東欧雑貨ICIRI PICIRIFOLK ART Transylvaniaのオーナー。

詳しくは、森の彼方-トランシルヴァニアへの扉をご覧ください。

カテゴリー

FC2カウンター

カレンダー(月別)

10 ≪│2017/11│≫ 12
- - - 1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 - -

これまで書いた記事は・・・

全タイトルを表示

メールフォーム

名前:
メール:
件名:
本文:

Feed Me!

トランシルヴァニアへの扉  - Erdely kapuja-のRSSフィード

ブログ翻訳

トランシルヴァニアの村の過ごし方

金曜日の夜、9時前に街の中心どおりにある停留所をバスが出る。
恐らく、これが最終便なのだろう。毎日の生活から開放されて週末をのんびりと過ごすために村へ行く人、町へ出稼ぎをしに来た人、年を取った親を看るために故郷へ帰る人・・・そんな人たちでバスはすでに一杯だった。
バスはその後も、2,3箇所で止まり、中は定員を超えるほどの人でむせ返っていた。それでも何のお構いなしに、気がつくと緑色の畑道を走っていた。

トランシルヴァニアの夏の日は長い。
もう9時だというのに、外はちょうど日没の時間だ。柔らかいオレンジ色と水色が混ざりあい、だだっ広い空を一面に染めている。今が一日で一番美しい時間だ。ふだんは部屋の中にいるから、こんな風景を見ることもない。勿体無いことだとつくづく思う。

30分ほどで、バスは村のおばあちゃんの住む家のちょうど向かいで私たちを下ろした。
うっすらと暗い中でも、家の軒先に咲いていた紫色のライラックが茶色に変わっているのにすぐ気がついた。季節は確実に動いているのを肌で感じる瞬間だ。
他にもどんな変化が訪れているのか確かめたい気持ちを抑えて、今夜はすぐに就寝。

朝食を済ますとすぐに庭に出てみる。
かつて白いスイセンや、赤や黄色のチューリップで賑わった庭には、白い貴婦人のようなシャクヤクがひっそりと咲いていた。おばあちゃんの家にも花瓶の中で咲いているのに、息子は自分の手で取ってみたいという欲望が抑えられない様子。かわいそうに、白いシャクヤクは首の下10cmほどのところで短く切られていた。

cofaluva-2 023_convert_20080608215936

りんごの花は散ってもう久しいので、小さな青い実が一杯に連なっていた。
私の故郷ではまず見られないので、宮崎の皆さんにお見せしたく写真を一枚。いつになったら、美味しいりんごが食べられるだろう。今から楽しみ。

cofaluva-2 025_convert_20080608220104

裏の畑に出る。
あれだけの実りをもたらしてくれた、春菊はすでに花が咲いていた。大根、ゴボウも確実に大きくなっている。豆粒ほどだったシソの葉も親指ほどには大きくなっている。
他にもいろいろな野菜の生長が、久々に見る私たちには喜びであった。

そして、一番大切な食料となるジャガイモ。
もう市場では新じゃがも見ることができるが、セーケイ地方のジャガイモはまだ小石ほどの大きさしかないに違いない。

私はジャガイモの葉の裏を一つ一つ丹念に調べる。
すると、すぐにオレンジ色の鮮やかな卵の粒が目に留まる。これがあの憎たらしい「ジャガイモ虫」の卵だ。小さなバケツに葉をちぎって入れる。白と黒の縞模様の虫たちも一緒に。

このジャガイモ虫、すさまじい繁殖力で大切なジャガイモの苗を食いつぶすのだ。
もしこれほど目立つ色合いでなかったら、この害虫駆除も難しかったに違いない。私は虫を触るのが好きなほうではないが、これも食べるため・・・と思い、今では手づかみでこの虫たちをバケツに放り込む。ただ子孫を増やすことだけを目的に生きる虫たちと人間との闘争である。

虫好きの息子も初めはいっしょに手伝ってくれたが、すぐに飽きてしまって、今度はカタツムリ採集を始めた。子供にとっても村の生活は理想的だろう。花や虫とすぐに友達になれるのだから。

cofaluva-2 055_convert_20080608215338

ところであの「ジャガイモ虫」だが、初めてアメリカ大陸からヨーロッパに輸入されたのは、ある植物学者のせいであるという。理由は、ただ単純に珍しくて美しかったから。なぜその学者の名前を、この害虫に与えなかったのだろう、と私は腹が立った。後々の百姓がこれだけ苦労しているというのに・・・。

いつか息子が近所のおばあちゃんに、アールバチハーニの花を見せたところ、おばあちゃんは「まあ、雑草!」と息子の手から奪って捨て去ってしまった。息子は好きな花が捨てられたので傷ついた様子だったが、百姓をするものにとってはどんなに美しい花も雑草は雑草なのだ。息子が緑色のやせたイモムシを見せたとき「汚い!」と叫んだ、ひいおばあちゃんも然り。

そんなことを考えながら必死で働いていると、12時の鐘の音が高く響いてきた。
気がつくとバケツの中は、虫やら卵つきの葉っぱやらで一杯になっていた。
おばあちゃんもお腹がすいているに違いない。急いで、家に帰ってスープを温める。セーケイの人の食事は一に二にスープである。スープを作るときは、20人分くらいの大きな鍋で作り、何日もそれを食べ続ける。

お昼を食べていると、外から物売りの声がする。
旦那は「ジプシーの金物やだよ。見てきたら。」というので、カメラを片手に家を飛び出す。
いやな顔をされるかもしれない、お金を要求されたらどうしよう、などと思いながら近づくと、意外と若い女性であった。お鍋や木のスプーンを抱えている。私が写真を撮りたいというと、簡単に承諾してくれた。

cofaluva-2 026_convert_20080608220150

鮮やかな花柄の衣装に身を包んだジプシーの女性は、村から村に行商をしているらしい。私は写真を撮りに来るよう伝えて欲しかったが、きっとよそに移っているだろうとの話。隣のマロシュ県にはこのような行商のジプシーの村があるらしく、中には大学を出るものもいるらしい。

村の一日はゆったりと過ぎていく。
夕方には、畑から村のはずれの原っぱに散策に出かけた。
マーガレットの花の中には虫が横たわる。もうじき花も閉じるので、虫は花をベッドに世を越すのだろう。映画「ミクロコスモス」の世界さながら。

cofaluva-2 035_convert_20080608215815

クリーム色の大きな花の塊が風で揺らいでいた。
つぼみはころころとしたピンクの玉なのに、花が開くとクリーム色になる。小さな花の集まりがこんなに感動させるなんて。

cofaluva-2 040_convert_20080608215713

不意に旦那が巨大マッシュルームを発見。
残念なことにもう古くて痛んでいるらしい。栽培されているのとは、味も香りも格段に良いのがこの自然のキノコ。息子も一つ見つけた。
また雨がたくさん降った後、新鮮なキノコをみつけられますように。

cofaluva-2 047_convert_20080608215612

いつか紹介した、キノコのタペストリーをつくるタポーツァ・ゴンバも見つけた。これも古いようで、表面はカチカチに固かった。

cofaluva-2 052_convert_20080608215458

村のはずれにある墓地の横には、大きな茂みにたくさんのボッザが花開いていた。
大きく開いたクリーム色のかたまりを摘むと、ふわっと甘いよい香りで包まれる。これでジュースを作ろう。あの甘酸っぱい初夏の香りのする飲み物を思い浮かべ、家へと急いだ。

cofaluva-2 057_convert_20080608215204
スポンサーサイト

Theme:東欧
Genre:海外情報

comments(8)|trackback(0)|セーケイ地方の村|2008-06-08_21:50|page top

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

コメントの投稿

非公開コメント

tulipanさんこんにちは!

バスで30分のところにこんなのどかな場所があるなんてほんとにうらやましいです。きっと時間の流れ方が違うんでしょうね~。癒されそうです。そういえば、草木の変化なんて最近感じたことないです…。

過去の記事でも拝見していましたが、息子さんがいらっしゃるんですよね!
可愛いですね~記事にあるような村の生活は息子さんの成長に絶対良い影響を与えると思います!私も子供ができたらこんなところに連れてきたりしたいな~。。。ってまあその前にまず、相手を見つけないといけないんですけど…(笑)

そうそう、先日「トランシルヴァニア」やっと見ました!
ストーリはありがちなんですが(すみません)、トランシルバニアの風景やジプシー音楽(映画ではロマって言ってました)を存分に楽しめました。記事の一番下の写真のような風景や、6/10の記事の市場にそっくりなところも出てきましたよ!

トランシルバニアの案内役の女性が主人公達をジプシーのいる酒場に案内する時に、“ここのジプシーは鋳物業を生業としているんだよ”みたいに言っていたのですが、上に金物売りのジプシーの写真があったので、おーっ本当に存在するんだ!と思いました。

ジプシーが踊っているところも出てきたのですが、特に男性の踊り(膝をたたいたりしながら踊るやつ)はかっこいいですね。普通のおじさんでもなんだかカッコよく見えてしまいます。あんなに足を早く動かして、わけが分からなくならないんでしょうかね。

一つ気になったのはジプシー音楽に合わせて女性がベリーダンスを踊っていたシーンです。衣装もベリーダンスの衣装でした。ベリーダンスはアラブの踊りなのに???と思いました。やっぱり色々な地域の踊りを吸収しているんでしょうか?

音楽もあの物悲しいメロディが私は結構好きです。「殺したいほど愛してる~」という歌詞がでてきましたが、ジプシーが歌うからよいものの、日本でこんな歌があったら“重い…”って言われそうですね。

そういえば刺しゅうの映像は全然出てきませんでした。

この映画はストーリに感動するというよりは、トランシルヴァニア地方やジプシー音楽を楽しむ映画だと思いました!

あと「ラッチョ・ドロム」は私がいつも借りるレンタルビデオ店には置いてませんでした。残念です。。。
トランシルヴァニア
サヤさん、ご報告をありがとうございます!

トランシルヴァニア,ご覧になったのですか。映画の場面が目に浮かぶようです。ジプシー音楽を堪能されたようですね。

ジプシーの女性がベリーダンスを・・・とありましたが、十分想像できます。
私も以前セントジュルジ祭のライブを見たときにジプシーのおじさんが、まるでインド人のように首を左右に振って踊っているのを見ましたから。(ジプシーの祖先はインドから来た・・と言われるのは確かですが)

音楽と踊りが心から好きな民族なのでしょうねー。私もあの憂いのある音楽は好きです。

いつか見たエミール・クストリツァの「ジプシーの時」も面白かったですよ。オススメです。彼の作品には(陽気、憂い、情熱など)バルカンが感じられる、そんな映画が多いです。

そういえば金物屋の話ですが、私はてっきりあの人たちがお鍋やらを作っているのかと思っていたら、それと引き換えに古い鉄やガチョウの羽をくださいということらしいです。つまり物々交換ですね。

古い鉄とは、アイロンなどの骨董品のことらしいのですが、意外にそういう方面に目が利くんですね。びっくりしました。

おばあちゃんの家にも、100年もののSINGERの足踏みミシンがありますよ。動かないのでただの飾りですが。
まだまだ田舎には骨董品が眠っていると思います。

これからもジプシーの話題をレポートしますね。子育てもがんばります。







Re:トランシルヴァニア
ベリーダンスの件、回答ありがとうございます!ジプシーの祖先はインドという事で納得です。
日本でももっとジプシー音楽や踊りが生で見られるようになればいいなと思います。来日してライブとかやってくれないかなあ。。。

あと、今でも物々交換したりするんですか。。。驚きです。

「ジプシーの時」今度、見てみますね!
昔呼ばれたブダペストの大学の文化祭でも、ジプシー音楽をうたうバンドが呼ばれていました。会場は興奮の渦。やっぱりライブでないと、あの雰囲気は味わえませんね。
日本にも呼ばれるといいですね。

物々交換は、ラジオでもされていますよ。
そういうコーナーがあって、例えば「自転車を砂糖何キロと交換してください。」とかいうものです。
穀物系が多いので、お国柄を示しているようで面白いです。



サヤさん・・・・ごめんなさい。
先ほど、貴重なコメントをいただいたのに、
何を思ったか、下にあったアダルトサイトを消すつもりで、誤まって消去してしまいました・・・

すごく申し訳ありません。
いつもサヤさんからのコメントを楽しみにしているのに・・・。
あのアダルトサイト、本当に頭にきます!
ほぼ毎日のように届くのですから・・

せっかくのコメント、読みたかったです。これからも、見に来てくださいね。
Tulipan
SAYAさんへ
コメントの欄に分かるように書きました。
本当に、ごめんなさい・・・。
Re:サヤさん・・・・ごめんなさい
tulipanさん

>誤まって消去してしまいました・・・
なんとなく、そうかなと思いました。いつも“最近のコメント”のところに、私のコメントと、そのへんなアダルトサイト(?)のコメントが並んでいるので(笑)

気にしないでくださいね~

もう一度コメント送っておきます!
ありがとうございます!!
本当に胸が痛かったんで・・・・。

いつもお優しい言葉に励まされ、こんな風にブログを通じてお知り合いになれてうれしいです。

これからもよろしくお願いします♪